2023年11月17日
#876 中村 亮土 『人もボールもより動くラグビー』
フランスワールドカップでは日本の12番としてほぼフル出場の活躍をした中村選手。そのワールドカップで得たものは?そしてそれは今シーズンのサンゴリアスへどう繋がるのでしょうか? (取材日:2023年11月中旬)
◆間違いなく自信はあった
――ラグビーワールドカップフランス大会では、ほぼフル出場でした。どうでしたか?
楽しめました。必死でしたけれど、手術をして昨年の秋に日本代表に復帰して、今年の夏に合宿をやって、ワールドカップに入っていくという過程の中で、チームがまとまっていく姿とか徐々にチームとして成熟していく感じが、僕も一緒に入って見られたし、そうやって中に入って出来ました。大きなひとつの経験として、日本代表に入れて良かったなと思います。ワールドカップでもちゃんとジャージを着て戦えたということは、これまでやってきたことが成果として出た訳で、とても良かったと思っています。
――自信になりましたね
そうですね。もうこれ以上の自信がないです(笑)。ずっと自信があったし、これ以上いくと過信になってしまうので、もう一度足元を見つめながら成長できたらと思います。
――世界一の12番になると言っていましたが、手応えはどうですか?
いゃー、まだその域には達しなかったですね。今のトレンドとして、12番にはボールキャリアに優れた選手が多い中で、僕はちょっと違うタイプです。トレンドから外れていると言うか、ちょっと違うのかなと思いつつも、僕のスタイルはこれだし、代表にマッチしていた部分はあるので、そこは自信を持って自分なりの12番は出来たのかなと思います。
――チームが成熟していく中で、自分も12番として出来上がっていった感覚ですか?
僕自身としては、ワールドカップに入る前はノンメンバーだったり、22番や23番だったので、そこからワールドカップに入って、よりチームに貢献する時間が長くなるということは、成熟というか、自分的には良かったですね。
――イメージしていた通りですか?
ここまで試合に出るとは思わなかったですね。ワールドカップ前の感じでは、1、2試合くらい出してもらえれば良いかなという感じでした。けれど、間違いなく自信はあったので、僕が12番で出ることによって違う貢献の仕方はあると思っていました。
◆フィジカル、タックル、接点
――前回大会と比べて日本チームは進化していましたか?
していると思います。日本自体も進化しているし、ラグビー自体も進化していると思います。世界のラグビーの進化が早いですね。
――やってみて、新たな課題としてはどんなことを感じましたか?
課題というより、もう一度フィジカルのところ、タックルのところ、接点のところ、これらをもっともっと良い状態に持って行かなければいけないと思っています。12番としてボールキャリアー、そして接点のところでチームを前に出すという意味では、南アフリカやアルゼンチンに比べると、まだウィークポイントだと思うので、まだまだ出来る、成長できる余地はあると思っています。
――そのためには、東京サンゴリアスでどういう取り組みをしているんですか?
もう一度、身体のコンディションを整えて、自分の身体を正常化して、より動きやすい、よりパワーを出せる状態にしていかなければいけません。サンゴリアスのS&C(ストレングス&コンディショニング担当)とミーティングをして、1週間単位でプランニングをして実行するということをやっています。あと身体の使い方、脚の運び方、パワーの伝え方の部分ですが、S&Cとのミーティングで改善の余地があると感じたので、今やっているところです。
――次の2027年大会に向けては?
僕は提言はしないですけれど、それに対しては、今までよりは貪欲さは無いです。例えば4年後に向けてプランニングしてやっていく、という先を見据えた感じではないです。一年ごと、一年を通して、自分の成長にフォーカスしてやっていこうと思っています。
――まだまだ成長していける感覚はありますか?
まだまだあると思います。今回、コンディション的にも良かったですし、パフォーマンスも全体的に良かったです。でも過信するほどのことは無いですね。
◆いま自分が出来ること、やらなければいけないこと
――東京サンゴリアスに合流しましたが、今シーズンのラグビーは見えてきましたか?
まだちょっとしか入っていませんが、今コミットして理解し始めている段階ですね。
――昨シーズンで多くの選手がチームを離れ、今シーズン多くの選手が加わりましたが、そういうシーズンで気を付けていることはありますか?
まず僕は新しく入ったメンバーの癖や特徴を掴まなければいけないと思っています。あとはちょっとずつメンバーが変わることで、変わって良い部分もあるし、変わっちゃいけない部分もあります。僕もベテランの域になってきたので、チーム全体を見ながらアプローチしていければと思っています。
――昨シーズンの結果が4位で、今シーズンはとても大事なシーズンになると思いますが
あまり考えていないですね。いま僕が出来ることは、早くチームにコミットして貢献すること、自分がベストな状態でいること、リーダーとして若手を引っ張ることなので、今までよりも優勝や順位にフォーカスしていないと思います。
――目の前のことに集中している感じですか?
そうですね。いま自分が出来ること、やらなければいけないことしか考えていません。
――更に達観してきましたね
先のことや過去のことを考えても何も始まらないです。もちろん自分の中でプランニングはしますけれど、今は積み重ねていく段階だと思っています。今後、どう考えが変わるか分かりませんが、今はそんな感じです。
――そういう中でテンションが上がる時はどんな時ですか?
やっぱり、チームと自分がやろうとしていることが、結果として生まれた時じゃないですかね。それこそ試合のスコアでもあるし、トライの取り方、ディフェンスであれば練習で出来たことが試合でも出来た時とか、やってきたことの成果が見えた時はチームとしても自信になりますし、やりがいはありますね。
――昨シーズンはそこがもう一歩だった?
そんなことは無いですよ。練習があっての試合なので、それが多く出る部分もあれば、なかなか発揮できない部分もありました。
◆自分のベストを出し続ける
――目標は何ですか?
自分のベストを出し続けること。
――そのための課題はありますか?
課題と言うよりは、毎日成長したいという向上心があるので、若手の見本になれるように。見本になりたいと言っても、僕がやるべきことをちゃんとしていれば、そういう姿になってくるので、自分の成長に貪欲になることを忘れないようにしたいと思います。
――身体はどうですか?
伸びしろしかないです。
――今シーズン、注目してもらいたいポイントは?
僕のことに注目してもらわなくても良いです(笑)。ラグビーにおいても、もう自分じゃないんですよ。自分1人でやっているわけじゃないですし、自分の個人技でこうしたいということもないので、ここに注目して欲しいということも無いんですよ。その中でも、やっぱりサンゴリアスらしいアタッキングのところは、今までと変わった部分を見せられると思うので、そこは楽しみにしていて欲しいと思います。
――どこが変わるか詳しく言えますか?
言えないです(笑)。人もボールもより動くラグビーが出来るかなと思います。今の流行りがキッキングゲームになっていますが、そことボールも人も動くラグビーが融合して、見ている人たちが楽しいと思えるようなラグビーが出来ると思うので、楽しみにしていてください。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]