2023年11月10日
#875 齋藤 直人 『もっともっと深く追求していける』
ワールドカップのグループ戦途中から9番で出場し、トライも取った齋藤選手。ワールドカップで得たものは何か?そしてそれを新シーズンにどう生かしていくのでしょうか?(取材日:2023年11月上旬)
◆プレッシャーの中で自分の能力を発揮する
――ラグビーワールドカップフランス大会はどうでしたか?
楽しかったですし、いろいろな感情がありますね。まずは、最高でした。自分が夢に見たワールドカップでプレーしたこと、街の雰囲気もワールドカップを感じることが出来て、そういう面で楽しかったです。その舞台に自分が立てたことが、いちばん嬉しかったです。
――試合中の顔つきを見ていたら、相当集中していたように感じましたが?
もちろん集中していましたよ(笑)。もちろん楽しかったということもあるんですが、勝てなかったところではいろいろと思うことがありました。自分に目を向けた時に、足りない部分が多かったなと思います。
――例えばどういう部分ですか?
あぁいう大舞台の様々なプレッシャーの中で、自分の能力を発揮する部分は、まだまだだったと思います。
――能力が発揮できなかった原因は?
全くできなかったわけではありませんが、出来なかった部分に関しては、やっぱりそれだけのプレッシャーを想定してのトレーニングが出来ていなかったのかなと思います。
――そのプレッシャーとは、自分の内面のプレッシャー、相手から受けるプレッシャー、どちらですか?
相手から感じるところがありました。ブレイクダウンの圧力や、キックひとつにしても、強いプレッシャーをかけてきました。4年に1度の大会に向けてどのチームも仕上げてきていて、どのチームも一戦一戦に懸ける気持ちが強く、そういう中でプレーするのと普段のテストマッチとでは、「そりゃ違うよな」という感じです。
◆経験を繋げなければいけない
――今大会はキックが多かったと思いますが、自分のキックに対してはどうでしたか?
そこの精度が、今後も課題だと思っています。プレッシャーがある中で、プレッシャーを軽減するために早く蹴らなければいけない状況がありました。先ほど言ったプレッシャーを受けたというのは、僕の中ではキックのところでした。基本的に練習では気持ちよく自分のタイミングや間を作って練習していたんですけれど、ワールドカップとなると相手のプレッシャーがあって、戦術の中でタイミングをずらして蹴るのではなく、出てきたボールを流れのまま蹴らなければいけない場面がありました。そういういろいろなシーンでも、精度高くやらなければいけないと思いました。
――それを感じられたところは楽しかったのでは?
楽しかったというか、それが楽しかったわけじゃないですけれど、それを経験したということが本当に大きいと思います。ただ、経験しただけで終わっていたら意味ないので、その経験を繋げなければいけない。やっぱり経験しないと分からないことでもあるので、あのプレッシャーの中であぁいう状況が起きるということを考えた上で、日頃のトレーニングをしていければと思っています。
――そのプレッシャーをイメージしてトレーニングするんですね
そうですね。それに近い状況を作り出すことは出来ると思います。自分の間合いで蹴ることが多かったんですが、あまり綺麗じゃない状態で流れのまま蹴る練習をしたり、誰かに手伝ったもらってプレッシャーをかけてもらったり、いろいろやれると思います。
――そういうターゲットが定まっていって、なおさら楽しいんじゃないですか?
もっともっと深く追求していけると思います。
◆静かに入って徐々に上げていく
――スクラムハーフとしては、イメージ通り動けたと思いますか?
大会を通して成長していったんじゃないかなと思います。
――先発出場に変わった時には、かなり気合が入りましたか?
やっぱり気持ちは入りましたけれど、動揺とかは無かったです。もちろん準備はいつもしているので、その準備をより入念にしました。いつもグラウンドに入る時に思うんですが、めちゃくちゃ気合が入って緊張するというよりは、どちらかと言うと静かに入っていって、徐々に上げていくイメージです。本当に入る時は「あーこの舞台に来ちゃったなー」くらいの感じでグラウンドに入っていて、キックオフまでには気持ちの準備が出来ているという感じです。
――それだと空回りはしないですね
そうですね。試合が始まっちゃった方が良いですね。
――やり切れたと思いますか?
持てる力は出せたかなとは思いますけれど、まだまだ足りない部分が大きいですかね。
◆キック、ディフェンス、タックル
――東京サンゴリアスで自分を磨くとともにチームを引っ張っていかなければいけないと思いますが、どんなイメージを持っていますか?
課題や今後何を伸ばしていくかは、まだ完全に明確になっているわけではありませんが、ある程度のイメージは自分の中にはあって、そこをもっとコーチたちと話をしていかなければいけないと思っています。自分の中にはここを伸ばすとか、改善するというポイントがあるので、それを周りから見た時にどうかという部分がまだ出来ていないので、そこを明確に出来たら、そこに対してどうアプローチしていくかということですね。
――具体的にはどういった部分ですか?
ワールドカップでいろいろ思いましたが、まずキックのところがまだまだ伸ばさなければいけない部分で、あとはフィジカルの部分ですね。単に身体を大きくするということじゃないんですが、世界のスクラムハーフを見ると、ディフェンスでの貢献度が高いと感じました。これまで妥協してきたわけではありませんし、ディフェンスでも貢献したいと思っていましたが、より思いましたね。ディフェンスやタックルの面も伸ばさなければいけないと思っています。
――チームに対してはこうしたいと思うことはありますか?
これからチームに合流するので、まだそこまで考えられていないです。
――選手の入れ替わりがありましたが、リーダーの一人として期待していることはありますか?
入れ替わりは毎年あることなので、今シーズンが多かっただけだと思います。まだ一緒に練習は出来ていませんが、挨拶などは出来ているので、これから合宿に参加して、新しく入ってきた選手のことを知っていけたらと思っています。
◆毎日成長したい
――東京サンゴリアスでどんなラグビーが出来たら理想ですか?
今シーズンにどんなラグビーするか、まだ少ししか聞いていないので、正直言うと分かってないんですよ。自分がどうしたいか、またチームとしてどうしたいか、まだないですね。自分の置かれた場所で思いっきり頑張りたいですし、もちろん優勝を目指したいですし、絶対に成長できるシーズンにしたいと思っています。
――しばらく優勝から離れていますが、優勝することは相当大変なことですか?
いやー分からないですね。簡単ではないと思いますけどね。あとはチームとして伸び続けないといけないんじゃないですかね。
――個人的な目標はありますか?
成長し続けたいですね。良い意味でもっともっと自分を追い求めたいですね。過信とかではなく、「もっと出来る」「もっと出来る」と思って、「もっともっと良い選手になりたい」と思っています。そのためにシーズン中も成長していきたいと思っています。
――毎試合成長していくイメージですか?
毎日じゃないですかね。ちょっとでも毎日成長したいですね。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]