2023年9月 8日
#866 仁熊 秀斗 『誰にも負けない』
出場したら結果を残している印象のある仁熊選手。その出場数を増やすために、今どんな取り組みをしているのでしょうか。(取材日:2023年8月上旬)
◆試合に出るためにトライをする
――昨シーズン3試合出場でワントライ、手応えは?
満足してないです。全然まだまだだと思います。
――出場試合数に対して満足していない感じですか?
出場回数もそうですが、出場した3試合で1トライというのは少ないかなと思います。出た試合は必ずトライする、僕が出たら絶対にトライをしてくれるという信頼も植え付けないといけないというところなので、やはり出た試合は必ずトライしたいです。そして、そういうことが重なると試合の出場回数にも影響すると思います。試合に出るためにトライをする、そういう関係があると思います。
――チーム内にライバルが多いですね
一人ひとり持ち味や良いところが違うと思うので、自分の強みをもっと磨いて、自分にしかないプレーをどれだけ出せるかだと思います。練習中もそうですが、練習試合などでどれだけ自分の強みをアピールしてトライを取れるかというところが肝心だと思います。そのパフォーマンスを出すための準備として1日1日があると思うので、1日を大切にして、その中でもコーチ陣の信頼を得て、自分の足りないところをフィードバックしてもらうことも含めて、やっていきたいと思います。
他の選手も気になりますが、フォーカスを自分に当てて、選ぶのは監督やコーチ陣なので、そこで選ばれなかったとしても、自分にフォーカスして行きたいと思います。これまでのプロセスがあり、やってきた自信があれば、次につながると思うので、そういったプロセスを大切にしていきたいです。
――その"強み"は具体的には?
"強み"はいろんなところに顔出しができるところや、外からのキック、あとはディフェンスの部分で相手が余っていても止めるというところです。ディフェンスの安定感は自分の強みだと思います。そういったところを伸ばしていきたいなと思っています。
――速さはさらに増しているんですか?
速さは進化中です。まだ伸びていくと思います。
◆1発目から100%
――練習試合でのアピールは?
練習試合は数が少ないですし、人数が多い分、前半後半で替わってしまうこともあるので、そういったところでは限られた時間で力を出さないといけないというプレッシャーもあります。その限られた時間で力を出した選手が選ばれていくと思うので、そこで出せるくらいの準備とメンタルを持たないと、この世界では上がれないのかなと思います。
――特に最初に結果を出すことが大事ですか?
そうですね。どれだけインパクトが残せるかというのは、やはり大事だと思います。そこにフォーカスを持ってくるというのは大事だと思います。限られた練習試合の中で戦っていくというのは、徐々にというよりはすぐに結果を出して、コーチ陣が試合に出してやりたいなという印象を残すことが本当に大事なので、最初の1、2試合は大事だなと思います。
――その最初に力を出すためのポイントは?
やはり練習の入りや練習に入る前の準備、スキル練習や気持ちの面で、自分から引っ張っていくじゃないですが、自分のファーストプレーを意識して、どれだけ100%に持っていけるかというところまでの準備をしているかどうかです。「これなら試合でも繋がっていく」というように、体だけでなく頭に感覚を染み込ませていかないと、いざ試合に出るとなった時にいきなり出せるものでもないと思います。なので、日々重ねていき、体も頭も慣らしていき、試合でもいつも通りできたら1発目からスムーズに100%出せるかなと思います。
――その心掛けは「フレンズデーの司会を買って出る」というところにも出てきますね
そうですね(笑)。やはりチームのために、なんでも率先して自らやろうと。何か出来ることがあればやりたいという気持ちはあったので、そこにも繋がっているかなと思います。
◆1発目から100%
――体重85kgをキープしていると言っていましたが、今はもっと大きくなっていますか?
今は85.5kgや、86.0kgに行く時もあります。
――フィット感はどうですか?
体も大きくなりましたし、体が絞れました。怪我のリハビリ期間中に意識をして体を変えていこうと思い、体が絞り体重もキープできました。リハビリ期間中に良い体が出来たと思います。
――どこを強化したんですか?
足周りです。疲労によって怪我をしたので、足回りを鍛えました。
――お尻は目指すところまで強化できましたか?
お尻はまだまだですね。まだ伸びますよ。
――走りのポイントはお尻なんですか?
そうですね。
――いつからお尻を意識しているんですか?
大学の時くらいからです。まだまだ全然です。お尻が負けてしまうと足が落ちます。お尻で耐えられると足首も固定され、ポンポンポンといきます。お尻が弱いと下がるので、上手く耐えられません。
――なぜお尻が大事だと思ったんですか?
走っている時に、自分でも今お尻が抜けているなと思うと沈みます。パワーも全然来ないな、と走っていてわかりました。
◆腸腰筋が筋肉痛
――自分が上手くかないことがあるとサーチする感じですか?
はい。「違うな」と思ったら「どこを鍛えよう」って考えるようにしています。
――動かしながら「どこだろう」って探索する感じでしょうか?
そうですね。
――他の部分もありますか?
あとは腸腰筋です。
――腸腰筋が疲れるということがあるんですか?
腸腰筋を使っていたら、あると思います。僕は筋肉痛になります。走ったり、ちゃんとした姿勢で腿上げなどしているだけでも、腸腰筋が筋肉痛になります。
――ちゃんと腸腰筋を使っているということですね
お腹をしめて、骨盤を立てて、腿上げをすると腸腰筋が使えます。
――腸腰筋が大切だと気がついたのはいつですか?
サンゴリアスに入って、S&Cの方たちと話をしてからです。「腹が抜けている」って昨年くらいから言われて、お腹を意識するようになりました。体の使い方を体に染み込ませなくてはいけません。
――どうやって体に染み込ませるんですか?
最近始めたのはボクシングです。捻る動作や、ボクシングの動作は、お腹に力を入れて連動する動作にも繋がってきます。ですのでボクシングは最近やるようにしています。あとはビルディング・ブロックをやっています。
――ビルディング・ブロックとは?
アクアバックなどを使っての、体の動きやお尻のトレーニングです。ウエイトトレーニングとは違い、重りを使わずに体をきちんと動かすトレーニングです。
◆やればやるほど身につく
――そうやって自分で感触を確かめて考えて鍛えて、というやり方は昔からですか?
学生の時はそんなに考えていなかったです。サンゴリアスにきて、そこまで考えてやらないと戦えないなと感じました。大学だと僕の頃はコーチが少なくて見てくれる人も少なかったので、いろいろなアドバイスをもらえる環境ではなかったです。今はいろんなスタッフがいて、トレーナーの方もいて、レベルが高い選手もいてという環境なので、いろんな方に聞きながらいろんな情報を得て、教えてもらって、ということが出来ます。そういった環境にも左右されますよね。
――S&Cになれるのではないですか?
なれますか(笑)?でも「舐めんなよ」とかコーチの方々に言われそうです(笑)。
――そうやって「自分で考えて自分でやる」というのが好きなんですね?
やればやるほど身につくなという感覚があります。それが面白いなと思います。
――最終的には速さと強さを求めてやっているんですね?
そうですね、最終的にはそこです。やはりグラウンドや試合でパフォーマンスを出すためにやっているので、ただ単に足が速くても意味がないです。フィットネスもそうですが、1回だけ速いスピードで走れても意味がないので、何回も同じスピードでは走れるようにしたいですね。あとはどれだけステップなどで相手の裏に出られるかというところが、肝になってくると思います。そういったところに繋がるようなトレーニングが大事だなと思います。
◆やればやるほど身につく
――他に強化したいところは?
ハイボールです。ハイボールキャッチは、自分の強みにしたいなと思っています。あとはボールのもらい方です。今だとニュージーランドのウィル・ジョーダンは、試合を見ていて素晴らしいなと思います。あのようなボールのもらい方をしたいなと、初めて思ったかもしれないです。
――どこが気に入ったんですか?
チャンスと思った時に、スタンドからではなくハーフからボールを直でもらって、スピードで切り裂いていく。確実に相手の裏に出ていますし、絶対にトライもとっています。ボールを呼ぶ力もあるのかなと思います。ポジショニングもそうですが、ゴールまで持っていく力もあります。
――ハーフから直接もらうウイングってそんなにいないですよね
いないですね。しかも走り込んでもらうのが印象的です。ハーフがいて少し横にもらうのではなく、2次、3次目くらいからボールをもぎ取っていくかのようなプレーです。
――あとハイボールキャッチは怖いもの知らず的なマインドがないとと思いますが?
怖いとか言っていたら何もならないので、やはり技術が1番だと思います。どんなボールでもそうですが、このタイミングだったら確実に取れるという動きを覚えていかないと取れないです。あとはジャンプ力も関係してくると思います。
――こちらはお手本はあるんですか?
ニュージーランドや南アフリカなど代表選手を映像で見て、取り方などは真似するようにしています。
――いろいろ課題があって面白そうですね
伸び盛りですね!
◆やればやるほど身につく
――次のシーズンの目標をお願いします
次のシーズンの目標は、試合にたくさん出ることです。そして出た試合は毎回トライをします。練習、試合で安定したプレーを、一貫性を持って出すということを目標にしてやっていきたいです。
――その一貫性というのは安定しているということですか?
波がないということです。常に高いスタンダードでやるということです。トレーニングをサボって今日はやらない、などは一貫性がないなと僕は思います。やると決めた日はしっかりやって、しっかりパフォーマンスを出す、というところの一貫性を持ってやりたいなと思います。
――体も技術も大事ですが、ハートが大事ですね?
そうですね、昨年は出場3試合なので、「誰にも負けない」という気持ちを持ってやっていかないといけないと思います。まずはメンタル面から強い意志を持ってやりたいなと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]