2023年7月21日
#859 相良 昌彦 『最後まで100%やり切る』
2023年春入団の新人選手インタビューシリーズ第一弾。早大で主将も務めた相良選手に、1年目の体験と目指すラグビーを訊きました。(取材日:2023年7月上旬)
◆コミュニケーションのレベル
――社会人初のシーズンはどうでしたか?
大学時代と強度がぜんぜん違いました。それに慣れるために当初1ヶ月はチームの練習には参加せずに、ウエイトトレーニングやフィットネストレーニングをS&Cコーチとずっとしていました。1ヶ月経って練習に参加しましたが、やはりレベルがとても高かったです。スキルの部分もそうですが、コミュニケーションのレベルがとても高くて、まずそこが3月から4月に結構苦労をしたところです。
――コミュニケーションのレベルが高いというのは、覚えることが多いということですか?
そうですね。ラインアウトは覚えることがとても多いですし、ストラクチャーも毎週対戦相手によって変わります。対戦相手のストラクチャーと、自分たちのチームのストラクチャーの両方を、メンバーに入っていない選手は、僕もそっち側ですが、セットプレーでその両方をやらないといけないということが、大学時代と違って大変でした。
――それをやってみて自分では身についてきているという手応えはあるんですか?
そうですね。ラインアウトに関しては、最初はサントリーのサインですらわからないのに、違うチームのサインも入ってきて大変でした。途中からサントリーのサインは少しずつ覚えてきて、そっちの覚えることが少し減ってきたお陰で相手チームのサインを覚えることが出来てきました。時間が経つにつれて、基本的なことを覚えていって楽にはなりました。
◆運動量
――プロフィールに計算が速いと書いてありますが、それは活かせましたか?
ぜんぜんです。算数が得意なだけです。(笑)
――入団前の元早大監督のお父さんからの「フィジカルを鍛えて欲しい」というコメントを読みましたが、その辺りは?
フィジカルのところは最初通用しない部分がありましたが、少しずつ慣れてきたと思います。練習試合に3試合出させていただいて、そこでも最初は少し通用しなかった部分もあったのですが、最後のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦では自分としてもかなり良かったので、試合を重ねるにつれて慣れていきました。
――そういう中で今、売り物にしたいプレーは何ですか?
運動量のところです。サントリーの選手は全員、運動量が高いと思いますが、自分はトライするまで最後までサポートをしたり、トライされるまで最後まで追ったり、そういうところを必ずやるようにしているので、そこの意識があるというのは自分の武器なのかなと思います。
――それは心の持ちようによっても変わりますよね?
そうですね。100%トライされるだろうというトライでも諦めずに追うことによって、何か起こるかもしれませんし、トライするだろうというところでも何があるかわからないので、最後までサポートをしてトライするまで100%やり切るところは、大事なのかなと思います。
◆ひとつ磨いて突き抜けさせる
――自分が今思っている課題は何ですか?
課題は、目に見えた武器がないことです。自分の思っている強みは、とても地味な部分だと思うので、目に見えた強みがないと評価されにくいと思います。山本凱さんだったらタックル、下川甲嗣さんだったら運動量とフットワークの部分、リュウガさん(箸本)だったらブレイクダウンが強みだと思いますが、自分は突き抜けてそういう強みがないので、アタック、ディフェンス、ブレイクダウン、どれかひとつでも磨いて突き抜けさせるというのが今の課題なのかなと思います。
――例えばその3つをそれぞれレベルアップさせてこれだというのを見つけるのでしょうか?あるいはある程度ターゲットを絞るのでしょうか?
自分としては、ぜんぶ高めていきたいですが、それだと他の選手と差が出ないので、自分が今思っているのはブレイクダウンのところを強化していきたいなと思っています。
――ジャッカルを狙う?
そうですね、ジャッカルは今ルール的に難しくなっていると思います。小澤さんはとてもジャッカルが得意な選手だったと思いますが、小澤さんから聞くには、2年前のシーズンまでは1試合3回くらい出来ていたけれど、今年は1回くらいだったと話していました。難易度がとても高くなっていると思います。より技術を磨いていく必要があると思いました。
――色々課題がありますが、その課題に向かっていくところは楽しそうですね
とても楽しいです。自分をどうやってレベルアップさせていくのか、というのを考えて出来るので。そしてまだまだ出来ると思うので、そこを本当に伸ばしていきたいです。
◆まだやれる
――もともとラグビー一家で、自然とラグビーをやり始めた感じですか?
身近にラグビーがありました。やれって言われたわけではありませんが、自分が小学1年生くらいまで父が三菱重工相模原で監督をしていたので、自然にそういう流れになったのかなと思います。
――試合を観に行ったり、練習を見に行ったりですか?
そうですね。試合を観に行ったり、ですかね。覚えていないです(笑)。
――どの辺でラグビーを仕事にしようと思いましたか?
大学3年生の時です。当時トップリーグのチームの練習に参加させてもらったことが大きいです。正直僕はもうラグビーを辞めようかな、大学まででいいかなと大学時代ずっと思っていました。でもまだやれるなと。
――その時「やれるな」と思ったのは?
少し気持ちがふわふわしていました。自分やるのかな、就活するのかな、どうなるのかなと思っていました。実際に数チームからお誘いを頂いたので、やろうかな!やっぱりやろう!と。これまでやってきたので、ここで辞めるのは勿体無いとも思いました。
◆かっこ良い
――最初にラグビーを観に行っていた頃からラグビーは面白いなと思っていたんですか?
最初はラグビー自体が面白いというより、ラグビーの友だちに会うのが楽しいという感じで、ラグビーをずっとやっていました。中学生の頃、全国大会などに出場してラグビーの楽しさを知り、高校でも続けようという気持ちになりました。そのときに、大学は早稲田でやりたいという気持ちがあったので、早稲実業高校に進学しました。早稲田大学でラグビーをするというのが最初のゴールで、それ以降のことを考えていなかったので、大学生の時は明確なビジョンがなくふわふわしていました。
――早稲田大学を目指したのでお父さんの影響ですか?
そうですね。やるなら絶対に早稲田だなと思っていました。父の影響というより、僕が中学1、2年生の時に早稲田大学がとても強かったんです。当時、垣永さん(真之介)がキャプテンでしたが、その時に決勝戦で帝京大学ととても良い試合をしていました。結果は負けてしまいましたが、かっこ良いなと思って、そこから早稲田大学を目指しました。
――垣永選手は影響力ありますね
垣永さんもそうですし、当時はスクールの先輩が小倉順平さん(横浜キヤノンイーグルス)で、その影響で早稲大学のラグビーを観ていたので、小倉順平さんの影響力も本当に大きいと思います。
――サントリーサンゴリアスを選んだ理由は?
ひとつは、小学生の時に毎週トップリーグの試合を父に観に行かせてもらっていて、特にサントリーの試合が昔から好きでした。あとは本当に良い選手が揃っているチームで、若手の選手で出ている選手が多く、また大学時代一緒にやっていた選手も多いので、その選手たちと競ってやりたいという気持ちがあり、レベルの高い競争が出来て自分も成長出来ると思い、サントリーへ行きたいと思いました。
――サントリーが好きだったのは?
とにかく強くて面白いラグビーをしていたという記憶があるからです。
◆短所を消す
――実際にサントリーに入ってみても最初の印象はあまり変わらないですか?
そうですね。やはりとても良いチームです。14人でも勝負になるチームです。昔から印象があった通り、展開するし、とにかくスタミナがあり、走り勝つ。そういう良いチームです。
――次のシーズンに向けての目標は何ですか?
レギュラー獲得です。
――大変なポジションですが、自信の程は?
スキル、運動能力、運動量、とにかくいろいろなものが求められているポジションだと思うので、まずは自分の短所を消すことです。例えばラインアウトで使えないから出さないとならないよう、そういう自分の短所を無くすことです。あとは、ブレイクダウンのところを伸ばして、評価をしてもらえるようにしたいです。
――ラインアウトの課題は何ですか?
高さの部分です。そこをスキルでカバー出来るように、磨いていきたいなと思っています。
――レギュラー獲得への自信は?
自信はあります。
――将来、リーダーシップも求められると思いますが、その辺はいかがですか?
そこに関しては、あまり考えてはいないです。大学時代はプレーで示すというのがあり、最後は結構喋れるようになったと思いますが、自分のリーダーシップ的にはプレーで示すというのがいちばんだと思っています。とにかくがむしゃらに体を張り続けたいなと思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]