SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2023年7月14日

#858 細木 康太郎 『ゲームで苦しくなってくるとワクワクする』

リーグ戦終盤にリーグワン・デビューを果たし、ファイナルラグビーで激しいプレーを見せた細木選手。何をどう掴んだのか?そして来シーズンをどのように見据えているのでしょうか? (取材日:2023年6月下旬)

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◆めちゃくちゃ楽しかった

――ファイナルラグビーでのプレー、アピールしましたね?

最初は結構緊張しましたし、自分が100%の力を出せるか、チームの勝利に貢献出来るプレーが出来るか、そう言うことに対して心配をしていました。出来ることはやってやろうと思いつつも、とてもマイナスでネガティブな気持ちがありながら臨んだ試合ではあったんです。いざ試合になればそんな気持ちもなくなり、本当に思い切り自分の出来ることをやってやろうという思いでやれました。試合中には雑念ではなく、いろいろな「頑張ろう」という思いがあって、今シーズンいちばん良いパフォーマンスが出来たと思います。タックルやスクラムなども感覚的にではなく、成功率という数字としても良いプレーが出せたかなと感じます。

――以前も緊張したけれど試合になったら楽しかったと言っていましたが、今回も楽しかったですか?

そうですね。めちゃくちゃ楽しかったです。

――楽しいのはどういうところですか?

今シーズン、試合で苦しい場面ではなくて、練習で苦しい場面がとても多くて、ですけれどやはりゲームで苦しくなってくると少しワクワクするというか、息が苦しかったり、体がキツかったりもありますが、その苦しさが、「やっているな!」という感覚になります。自分の本能が掻き立てられるような状態になります。その状況が練習ではなくて、本当に倒したい相手が目の前にいたり、自分の良いプレーを見てほしい人たちが会場にいることで、興奮するというか、そういう気持ちになります。

――そういう気持ちになると「100%出せる」という感じですか?

そうですね。それが完全にマッチすると、100%以上出ているのかなという感じがします。

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◆噛みつけてないところの心残り

――勇退した小澤選手は、「チャンスが来たら絶対にそれを逃すべきではない。チャンスを逃さないというのは、ただ噛み付くのではなくてチャンスを食いちぎれ」、そのくらいやらないとせっかくのチャンスがどこかへ行ってしまうという話をしていましたが、まさに食いちぎっている感じでしたね

僕の感覚としては、まだまだ噛み切れていないなという感覚です。まだ、少し噛みついて、跡がついたくらいかなと思っています。準決勝のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦では、僕の迷う気持ちとか怖い気持ちとかが大きかったんです。3位決定戦ではそういう気持ちはなかったんですが、ナイトゲームということや、前回の試合よりはリラックス出来ていましたけれどもそのリラックスが行き過ぎたリラックスだったりしました。両方の試合で、僕の中で納得するプレーがありながらも納得できないプレーがあって、それは自分がコントロール出来るところだったなと思うので、その噛みつけた、噛みつけてないというところの心残りがある感じです。そこが100%だったらもっと食いちぎれていたなと思います。

――自分が100%出し切れるという日は、そうそうないですよね?

そうでうね。そうないですね。僕の人生の中でも数少ないかもしれないです。

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――ただ、そのためには、あとどこに気をつければ良いですか?

正直、人生で初めてのナイトゲームだったり、人生初めてのリーグワンのあの大舞台だったりで、少し経験不足のところがありました。そこは今年経験出来たので、あの2試合にリーグワンの全てが詰まっているかなと自分は思っています。なので、そこには自分なりに改善出来るところ、僕の中で覚悟して出来ていく部分が、あるのかなと思います。

――試合の時の心の持っていき方ですか?

心の持っていき方も、ナイトゲームの時はありました。あとは、心の部分は時間が解決してくれると思っています。どんなメンタル状態でも、ゲームが始まれば僕は目の前のことに集中できるタイプなので、そんなに心配していないです。睡眠や、準備、試合に向けて心拍数を上げたりなどの体の起こし方、食事などが、僕の中でうまく行ったなという感覚がなくて、そこは勉強になりました。

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◆よく耐えきった

――シーズン全体の結果に対しての自分自身の評価は?

点数ではつけづらいですが、よく耐えたなという感じです。練習もそうですし、自分のメンタル状態に対してもです。最初怪我もあり、全く試合に出られず、途中のNECグリーンロケッツ東葛戦に出場して、その後またメンバーから落ちてしまって、かなりメンタル的に波がありました。調子が良いのに試合に出られなかったりもして、先輩達のパフォーマンスが良いというのを理解しながらも、自分の中で試合に出られないという現状がかなり苦しくて。

ですけれど最後なんとか食らいついて、ギリギリのところにパフォーマンスを持っていけたから、耐えればどうこうではなくて、パフォーマンスを保つことが出来たから、最後チャンスを頂いて、そこで僕の中で合格点のプレーが出来たのかなと思います。あそこで、試合に出られないからと今シーズン諦めて、練習の態度などが悪くなって印象も悪くなって、チャンスがない、となるのではなく、自分自身メンタルも体も耐え抜いて、そういうところにいられたということが、僕の中で、よく耐えきったなというところです。

――初出場のNECグリーンロケッツ東葛戦では爆発していませんでしたが、この試合の経験も大切だったんですね?

あのジャージを着て、公式戦に向けての1日や、スケジューリングの部分をはじめ、フィジカル的な部分でも練習試合はありましたがサンゴリアス以外の選手とやることはなかなかなく、公式戦で発揮してくるパフォーマンスは、他のチームの選手も違うと思うので、それらを経験出来たと思います。

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◆誰にも邪魔されない場所

――そうやって一歩ずつ掴んでいくラグビーの楽しさはどこにありますか?

ラグビーの楽しさは、やはり人とのコンタクトのところ、僕はそこがラグビーの魅力だと思います。あとは、やはりグラウンドの中だったら自由というか、嬉しかったら喜ぶし、悔しかったら相手に思い切りタックルに行くし、自分の思うがままにプレー出来るというか。戦術がありながらも最後は自分の意思決定で好きなことが出来る。プレーもそうですし、誰にも邪魔されない場所かなと思います。

――来シーズンに向けての自信は?

自信はずっと持っています。相手もいますし、仲間のライバルもいますし、パフォーマンスを評価して試合のメンバーを決めるのは監督、コーチ陣なので、なんとも言えないところですが、今シーズンは僕が思っていた以上の経験が出来たので、周りの選手よりそれはアドバンテージだと思っています。そこを存分に生かして、技術もそうですが、あそこで戦った時間を武器にして、アピールして行きたいと思っています。

――チームの4位という結果については?

最後若手の選手が中心になっていましたし、シーズンを通しても小林賢太をはじめ、僕の同期の選手もずっと出ていました。退団する選手が多くて、一新するのでサンゴリアスが進化していくんじゃないかなと、僕の中でとてもワクワク感があります。しっかりと軸の選手、中堅の選手達が引き続きサンゴリアスにいるので、全く違うサンゴリアスというよりか、ちゃんとした柱がありながらも若い選手が活躍していくんじゃないかなという思いがあります。

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◆スクラムでペナルティーを取って仲間と喜ぶ姿

――来シーズンへの目標は?

昨年も同じことを言っていたと思いますが、開幕から3番をつけて全試合に出場することを目標にしています。

――昨年言っていた時の心境とはまた違うのでは?

そうですね。そこはかなり違いますね。試合に出させていただいたことが、自信にもなっていますし、どうしたら自分が試合に出られるかというところも掴めました。あとは怪我をしないということが勉強になりました。自分が言ったことが出来るんじゃないかという可能性が高くなっていますし、自分の中でもやり方がわかっているので、やりやすいです。

――「どうしたら試合に出られるか」というのは、どうしたら出られると、いま考えていますか?

まずは練習でパフォーマンスを出すこと。勝つためには、コンディションもそうですし、パワーアップもそうですし、全部100%でやっていくということが僕の中でルーティーン化してきたので、試合に出るためには、練習でパフォーマンスを良くし、パファーマンスを良くするためには、練習の後のケアをする、練習の後にタックルの練習をするなど、細分化していろんなことが出来るようになりました。

その方法もS&Cのスタッフやトレーナーさん、そしてコーチの方々のアドバイスがあって、そこにどうやってアプローチしていくかということもこの1年でわかったし、人間の関係性として話しやすくなりました。手探りではなくてナチュラルに「ここどうしたら良いですか」って質問出来るようになったので、そこは本当にやり方が明確になって、自分の思っている通りになっていくかなと思っています。

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――1年目にとても良い経験をし、2年目はマイペースでいけるという感じですか?

本当にそんな感じです。昨年は手探りで、何でもかんでもいけるという人間の関係性ではなかったので、自分でよく考えてやっていました。今もそうですが、練習するにしても手探りだし、人に聞こうとしてもなかなか上手く声をかけられなかったり、「どうしよう、ああしようかな、けどこれはな」みたいな考えがありました。今年はわからなかったら聞く、これは昨年やったから出来る、など明確な判断基準があるので、自分のペースで、自分の思った通りに出来るかなと思います。

――こちらもワクワクしてきますが、ファンの皆さんにここを見ていて欲しいというところは?

今年、最後の試合でしかスクラムを発揮できなかったので、僕が出場している試合は全部スクラムでペナルティーを取って、仲間と喜ぶ姿を見て欲しいです。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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