2023年6月30日
#856 祝原 涼介 『勝つ文化、勝つ使命』
サンゴリアスを勇退し他チームへ移籍する選手へのラスト・インタビュー・シリーズ第4弾をお届けします。
[イワイハラ リョウスケ・1996年10月6日生・明治大学卒・ポジションPR ・2019年~4シーズン在籍]
(取材日:2023年6月上旬)
◆飛躍した年
――今シーズンを振り返ってどうでしたか?
怪我からのスタートでした。プレシーズンにあまりトレーニングが出来なくて、いつもと違ったプレシーズンを経て、首の大怪我から復帰しました。順調に2節目でいきなりチャンスをもらえて、しっかりパフォーマンスを出すことが出来ました。そこからシーズンは14試合出場して、飛躍した年になりました。個人的にパフォーマンスは平均的に出せたなという手応えもあり、成長出来たシーズンになりました。
――14試合出ることが出来た要因は?
自分で考え、役割を自分の中でしっかり決めて、リザーブでの出場が多かったですが、サンゴリアスは最後30分での得点能力が高く、良い選手が揃っているので、その中でスクラムをしっかり安定させること、モールでしっかり自分の強みを発揮すること、ボールキャリーでチームに勢いをもたらすことを意識して試合に臨みました。それらをしっかり出すことが出来て、リザーブのインパクトプレーヤーとしてアピール出来て、試合数が伸びたのかなと思います。
――不本意なオフシーズンを過ごしつつ成果が出たのは、どこが良かったんでしょうか?
リハビリをしっかり出来たことと、フィットネスの面でも、スタッフとずっと一緒にフィットネスをやってきて、自分の中でフィットネスは全く問題がなく、ウエイトも一緒にサポートしてもらいながら、ボールを触ったり自主練をしたりもして、いろんな方に支えてもらいました。ベースが出来た中で復帰してチャンスを掴めたことは、本当にいろんな人にサポートしてもらったからだと改めて感謝しています。
――自分が目指す体が出来たということですね?
はい。何事もなく、怪我から順調に予定通り復帰出来ました。またスクラムも問題なく出来て、シーズンを通して戦えたので、しっかりと体を作ってこれたな、という印象です。
◆自分たちの規律の部分
――今年は最後まで競う試合が多かったですが、チームの一選手としての手応えはどうでしたか?
今年は競った試合も多かったですし、雨の試合も多かったですが、ミスが増えている中でも勝てるという感じでプレーをしていました。ですので僅差の試合でも、自分の中では大丈夫だろうなと思いながらやっていましたし、自信はありました。
――最終的な4位という結果については?
難しいところですが、しっかり僕らがクリアにトライ出来ていなかったり、少しの油断や、ひとつのミスでトライをされてしまったりしました。明らかに崩されてのトライは少なくて、自分たちのペナルティでミスをして、そこからボンと点を取られたり、準決勝もペナルティで自分たちで苦しんだなという印象だったので、優勝できる力は絶対にチームにあったと思います。自分たちの規律の部分であったり、クリアにレフリーに見せるということが、大事だったのかなと思います。在籍中に優勝を経験出来なかったことは、とても残念というか、自分の中で悔しいなという感じです。
◆人生変わった
――サンゴリアスでプレーして最も印象に残っていることは何ですか?
やはりリコーブラックラムズ東京戦ですかね。
――チャージして伸ばした手の中にボールがおさまりそのままトライしたプレーですね
あれで「人生変わった」という言い方は少し大袈裟かもしれませんが、未だにプレーのことを言ってくださるファンの方も多いです。やはり1発の印象というのが、ニュース番組でも取り上げてもらったり、個人としてはあれ以上のことはなかったのかなと思います。
――当時は「たまたまです」と言っていましたが、時間が経つと、価値が出てきたということですか?
昨シーズンのことなのに、それを未だに言われるということはなかなかないことです。自分のラグビー人生でも、あのプレー素晴らしかったよねって言われることはそんなにありません。一瞬のプレーのことだけをずっと言われることはあまりないので、本当にありがたいことです。
――あれは初めて見てびっくりしたプレーでした
自分でもびっくりしました。印象に残るプレーが出来たということで、自分でもトライ取って良かったなという感じで残っていますね。プロップですし、あまりトライを取るキャラでもないのでトライを取った試合は少ないですが、そのうちの1個です。価値があります。
――2回目は狙わないんですか?
中村駿太さんは結構キックチャージに行ってますし、僕も何だかんだで行っていますが、ボールが全く手に当たらないですね(笑)。あの時はよく当たったなという感じです。チームのためにチャージしに行っていますが、全く手にかすりもしないです。
◆サンゴリアスは強くあってほしい
――サンゴリアスのメンバーにメッセージをお願いします
やはりサンゴリアスは準優勝ではダメなチームですし、強く、愛されるチームを目指しているので、絶対に勝って愛されるチームでなければいけないと思います。優勝を求められている分、難しいチームだと思いますし、他のチームが今年勝ったとして、来年また他のチームはチャレンジャーとしてサンゴリアスに挑んでくると思います。チームを出ていく立場ですが、サンゴリアスは強くあってほしいと思います。来年サンゴリアスと戦えるのがとても楽しみですし、決勝で戦えたら嬉しいですね。
――サンゴリアスのスピリットって何だと思いますか?
勝つ文化があることじゃないですか?優勝は出来ていませんが、勝たなくてはいけないというマインドを持って、選手が全員取り組んでいるので、日々の練習でもコンペティションがありますし、それはチーム内コンペティションであったり、試合のことでもあったり、何でも勝たなくてはいけないという、勝つ使命みたいなのがあると思います。それがチームのカルチャーとして絶対に残っているし、今でもあり続けてると思っているので、それがチームの良さだと思います。
――ファンにメッセージをお願いします。
今まで4シーズン応援していただき、本当にありがとうございます。ラグビー中だけでなく、出社した時も声をかけていただいたり、会社員として府中を回っている時もお店の方やファンの方が声をかけてくださいました。いろいろなところでサポートして頂き、それを励みにシーズンを戦い抜くことが出来ました。これからは違ったチームになるので、サンゴリアスを第一に応援するのはもちろんですが、また個人的に応援していただけたらと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]