SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2023年6月27日

#855 須藤 元樹 『タフチョイス』

サンゴリアスを勇退し他チームへ移籍する選手へのラスト・インタビュー・シリーズ第3弾をお届けします。

[スドウ ゲンキ・1994年1月28日生・明治大学卒・ポジションPR ・2016年~7シーズン在籍]

(取材日:2023年6月上旬)

Sudo_01.jpg

◆プレーヤーとしてグラウンドに立ち続けることが出来た

――今シーズンを振り返ってどうでしたか?

僕個人としては、昨年のアキレス腱断裂から始まり、時間をかけて復帰出来て、そこからはほぼ怪我はなくずっとグラウンドに立ち続けることが出来ました。2年目の時からちょくちょく怪我をしていたので、それを考えると今年は試合に出られる機会はあまりありませんでしたが、プレーヤーとしてグラウンドに立ち続けることが出来たのかなと思っています。

――そういう中で、まだ試合に出続けることころまでは上がって来なかったのでしょうか?

そうですね。自分としてのパフォーマンスは、自分の中ではだいぶ少しずつ調子が上がってきていましたが、試合出るところまでは上がりきらなかったかなということはあります。

――怪我をした後にレベルアップしたという話はよく聞きますが、須藤さんの場合はどうですか?

僕も、試合に出ていた1、2年目の時よりも、今の方が全然パフォーマンスが上の自信はあります。でも今年は3番だけでいうと、カッキー(垣永)も細木も、カン(中野)も、イワ(祝原)も、皆パフォーマンスが良かったので、その中で自分のパフォーマンスが上がったとは言え、この4人のレベル以上には行けていなかったのかなと思います。

Sudo_02.jpg

――その状態から見ていて今年のチームはどうでしたか?

結果だけ見ると今シーズン6敗していますし、最後も横浜キヤノンイーグルスに負けて4位になってしまいました。

今年優勝する力はあったと思います。優勝できるメンバーも揃っていたと思います。もう1回サントリーがやるべきラグビーを追求していくことかと思います。根底的にはアグレッシブ・アタッキング・ラグビーがあると思いますが、それをただひたすらアタックするとか、ボールを蹴らずにずっと持ってアタックするとか、やはり現代的ではないと思います。その中で上手くキックを織り交ぜたり、スクラムやラインアウトモールでプレッシャーをかけてペナルティを取ってなど、そういう部分を上手く混ぜ合わせながらやっていくのが良いのだと思います。

――今年はフォワードのセットプレーが良かったですね

今年はモールもそうですし、スクラムも例年に比べるととても武器になっていたかなと思います。やはりサントリーのアタックの基盤は、フォワードから始まります。そこで負けてしまうと、どんなにアタックプランを持ってきても機能しなくなるので、どんなラグビーをやるにしてもフォワードの力というのは絶対に必要だと思います。

Sudo_03.jpg

◆やってみなはれ

――サンゴリアスのスピリットって何だと思いますか?

今、パッと思い浮かんだのが、沢木敬介さんがずっと言っていたんですが、「タフチョイス」っていう言葉。僕も何か迷った時には、楽な方ではなくてタフな方を選択するのを心がけるようにしています。人って甘える動物だから、どうしても楽な方や簡単な方へ逃げようとするんですが、そうではなくて敢えて困難や難しい方を選択することによって、自分が成長するというのでしょうか。
サントリーは1980年に創部して、まだ40年ちょっとの短いクラブですが、会社には「やってみなはれ」という精神があって、「どんなことにも果敢に挑戦し諦めずにやる」という伝統があるので、それに紐付いてもいると思いますが、僕は「タフチョイス」が良いなと思っています。

Sudo_04.jpg

――サンゴリアスでいちばん印象に残っていることは?

チームとして思い出に残っているのは、やはり勝った時です。勝った時というのは、今でも鮮明に覚えています。ルーキーの1年目の時と2年目の時です。グラウンドに僕は立っていましたし、優勝の喜びというのをそこで感じることが出来ました。中学から今までラグビーをやっていますけれど、高校、大学で優勝をした経験がなかったので、社会人1年目で達成でき、勝つ喜びを知ることが出来たのは本当に良い思い出ですし、良い財産になっています。

――日本一の喜びって表現するとどんな喜びですか?

みんなそこを目指してやっているじゃないですか。どのチームもどのスポーツもそうだと思いますが、優勝するため、1位になるため、金メダルを取るためにみんな必死にやっていると思いますが、なれるのは1人、1チームだけです。そこの喜びは一瞬ですが、そこに至るまでは苦しい辛い困難なことばかりで、それを乗り越えて目標としていた優勝を掴み取ることが出来た時は、言葉にするのはとても難しいのですが、「ラグビーやっていて良かったな」「報われたな」って思う瞬間です。

Sudo_05.jpg

◆チームが変わってもサンゴリアスのことを応援しています

――サンゴリアスのメンバーにメッセージをお願いします

サンゴリアスは本当に良いチームだなと思います。チームのスローガンにもあるように、強いだけでなく愛されるチームになるというのが今年ありましたが、本当にまさにその通りです。昔からサンゴリアスって試合後はリカバリーファーストみたいな風潮があって、なかなかファンサービスが出来ず、ファンと接する時間が他のチームに比べると短いなというのを感じています。そこはリーグワンとして、プロとしてやっている以上、大変だと思いますが、まずはファンとの時間や写真撮影やサインを書く時間など、チームが準備する時間だけでなく、選手としても積極的に時間を増やすことが大事だと思います。またサンゴリアスは勝ち続ける、優勝するチームだと思うので、僕はチームが変わってもサンゴリアスのことを応援しています。僕がそこに立っている過去はずっと誇りに思って、次のチームでもやっていきたいと思います。

――ファンに対してメッセージをお願いします

僕がラグビーをやっている理由が、応援してくれる方や、支えてくれる方のためにやっているのが多いです。もちろん自分自身が好きだからやっているというのもありますが、それ以上にやはり、観てくださっている方や応援してくださる方に対して勝ってプレーで恩返しをするというのを意識しながらずっとラグビーをやっています。会場に足を運んでくれたり、テレビの前で応援してくれたり、SNSでメッセージをくださったこともたくさんあり、それが本当に嬉しかったですし、ファンの方たちのために頑張ろうって思いました。引き続きサンゴリアスも応援して頂いて、余裕があれば僕の新しいチームも応援していただけたら嬉しいです。

Sudo_06.jpg

――ファンの応援や支えが、苦しい時のモチベーションにもなるということですか?

なります。僕は怪我が多かったので、なかなかグラウンドに立てない時やリハビリ期間中も励ましのメッセージをくださる方がたくさんいて、そういうことで本当に救われました。いちばんは昨年アキレス腱を切った時、結構落ち込んでいて、精神的にもかなりきついところまで追い込まれていました。調子が良い時に起きた大怪我だったんですが、そんな時にたくさんの方に声をかけていただき、会場でも直接「大丈夫ですか?またグラウンドに立つ姿を待っています」などと声をかけてもらい、本当に改めていろいろな方に支えられてラグビーが出来ているなと思いました。その方たちのために、何がいちばん恩返しかなって考えた時に、やはり優勝すること、勝つこと、ファンの方たちとの時間をつくる事が大事だなと思いました。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ