2023年6月23日
#854 田村 煕 『もっと出来る・負けたくない という気持ち』
サンゴリアスを勇退し他チームへ移籍する選手へのラスト・インタビュー・シリーズ第2弾をお届けします。
[タムラ ヒカル・1993年9月12日生・明治大学卒・ポジションSO ・2017年~6シーズン在籍]
(取材日:2023年5月下旬)
◆成長できた年
――今シーズンの出来はどうでしたか?
プレシーズンからいろいろなことをチームとしてやってきましたが、最初に負けてしまい、負けから入ったので難しいメンタルの時もありましたし、そこから怪我もしたり、なかなか難しい気持ちのシーズンではありました。また最後も勝てなかったので、スッキリしないのが正直なところです。
――昨年はとても良い流れで来ていましたが、今年その流れで入っていけなかったのは怪我の影響ですか?
怪我の要素もあると思いますし、新しい体制になってリーダーも変わり、昨年と変わったところもたくさんありました。その中でやはり自分が中心でという意味では、なかなか昨年ほどコントロールしきれていなかったのかなと思います。こうした方がいいな、こうするべきじゃないかなと思いながらやるというのは、改めて良くないなと思いながらも、シーズンに入ってしまったりしましたが、チームのやってきたこととのバランスは考えなきゃなと思いながらやっていたので、後悔はありません。いつも思うのは、自分が思う形とか思うことというのは、自分のやり易いようにやらないとダメだなというのはあります。
――自分自身のプレー自体の手応えは?
めちゃくちゃ自分では成長していると思っています。なかなか上手くいかないシーズンだったけれど、サンゴリアスにきて毎年いろんな学びがあるので、今年は今年でとても成長できた年だったと思います。出場時間という意味で、それが結果としてついて来ませんでした。チームの勝ちにつながっていないのは、なかなか残念ですが、成長はしたと思います。
◆もっと出来る
――田村選手にとってサンゴリアスが2チーム目ですが、サンゴリアスへの思い入れは強いですか?
それは強いです。社会人1年目で前のチームのことがあったからこそ、思い入れが強いのもあります。あの23歳の時に成長したいという意欲を持っていたので、今このようなところまで来れていると思います。だからもちろん年数を考えても内容を考えても、基本僕はサンゴリアスでずっとという印象が強いです。
――さらに成長を目指しているわけですが、どんなところまで行ってみたいですか?
もっと出来ると思っているので、まだ全然出しきれていないなというのが正直なところです。そんな中でも学んだことがあって、今年上手くいかなかったことも、サンゴリアスにきてとても成長した部分も、もっと出したいというのが正直なところです。それは上手くいかない瞬間も含めてです。まだ半分もやりきれていないので、もっともっと成長できる感覚しかないです。
――サンゴリアスで得たことは何ですか?
試合に出るために、まずグラウンドでどういうプレーをしなくてはいけないのか、そのために必要なS&C(ストレングス&コンディショニング)を行う、というところは、来てすぐの段階ですぐ学んだところです。やはりここがベースになっているからそこは学べました。その次は、試合に出るためにグラウンド外でどうやってコミュニケーションを取るか、それがグラウンドに直結することも学びました。
そのようなことが折り重なった中に、自分がいかにどうやりたいかということを、周りとコミュニケーションを取るか。そこがどんどん深まってきているので、自分の強みを持って、自信を持って、サンゴリアスのプレーヤーとしての技術やS&Cのベース、準備やリカバリーなど、自分の形が出来ました。
コミュニケーションも、オンフィールド、オフフィールドともにとても出来てきていると思うので、ここからは試合に自信を持って出ながら、グラウンドである程度の時間を自分で確保しに行く、出続けながら自分で手応えをもっと感じて、ずっとグラウンドに立ちたいというのが正直なところです。
◆嫌なプレーヤーになれるように
――サンゴリアスでのいちばんの思い出は何ですか?
僕は他の選手よりもいろんな選手とプレーしています。もう2度とやれないであろう選手たちと、ラグビーをやれた以上に、ラグビー以外の良き時間を一緒に過ごせたのが思い出です。今もそしてこれからも続くであろうその関係性を、大事にしたいことだなと思っています。
――サンゴリアスのスピリットって何だと思いますか?
サンゴリアスのスピリッツとは...。僕個人のことでもあるので「サンゴリアスらしく」と言ってきましたが、結局自分が負けたくないとか、自分が元々持っている「もっと出来る」「負けたくない」という気持ちがイコール、サンゴリアスのスピリットとなっていると思います。競争をする、というところだと思います。
――サンゴリアスのメンバーにメッセージお願いします
1つ目は、申し訳ない気持ちが強いです。「ずっと一緒にやりたかった」という思いがいちばんの気持ちです。いつかは引退や移籍をするのも仕方がないことですが、本当はもっと一緒にやりたかったです。自分が決断したことですが、関係が長い選手もたくさんいるので、最後まで一緒に出来なかったというのが残念な気持ちです。
選手には感謝しかないですし、何かを残せたかはわかりませんが、入る前のことを考えると、サンゴリアスに入ってきてここまでクラブのことを好きになるとは思わなかったし、選手ともここまでコネクションが持てるとは思っていませんでした。それだけ繋がるカルチャーもありますし、お酒の会社だけあって飲んだりすることも多いですし、思い出もたくさんあるので、選手とは楽しい時間を過ごせたなと思います。来年、僕がいなくなった後も本当に見守っていますし、グラウンドでちゃんと皆へそしてクラブへの愛を持って、しっかり嫌なプレーヤーになれるようになりたいです。
――ファンに向けてメッセージをお願いします
本当に長い間サポートをしてもらったので、チームメートとしてファンの前でプレーが出来ないのがとても辛いですが、サポートには心より感謝しています。また別のところに行った時も、ぜひ応援してもらえたら嬉しいです。サンゴリアスへのサポート、本当にありがとうございました。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]