SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2023年6月16日

#852 塚本 健太 『ハードワーク、それがサンゴリアス』

サンゴリアス10年の経験を、ソフトに、明るく語ってくれた塚本選手。勇退するからこその話を聞きました。(取材日:2023年6月上旬)

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◆悔しさが沸いて来なかった

――出場機会に恵まれなかった昨シーズンそして今シーズンについてどうでしたか?

出たいとは思っていましたが、あまり出られるとも思っていませんでした。自分のパフォーマンスを見ても突き抜けているものがあるわけでもなかったので、正直、何試合かは出たいなという気持ちで、チャンスが来た時に万全なコンディションで挑めるように毎日やっていました。

――いざという時に出られるように、という感じでしょうか?

そのようなマインドになっていました。選手としてそう思うということは、引き際かなというのはありました。普段、ぜんぜん考えてはいなかったんですが、ふと、そう思う時があって、チームとしてはチームのためにやるというのはあるかもしれませんが、個人一選手としてこのような気持ちになるというのは、これは選手としてはもう終わりなのかな、終わった方がいいのかなと、そういう気持ちになりました。

――何かきっかけはあったんですか?

そうですね。今年、昨年とかですかね。それまではリザーブで入っていたので。入れなくなった時に、メンバー発表があったとしても、何か昔みたいな悔しさがあまり沸いて来なかったんです。昔だったら「俺を使え」とか「なんで他の選手を使うんだ」など思っていましたが、それも思わなくなっているなと思いました。

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◆元々なかったんや

――最後の試合は?

昨年のドコモ戦が公式戦の最後です。

――その試合での思い出はありますか?

その前のリコーブラックラムズ東京戦で、コロナで多くの選手が出られなくなって、それで僕が出ました。そのとき良いパフォーマンスだったので、次のドコモ戦も使ってもらえることになりました。

――準備をしていても、いざ出番が来た時に良いパフォーマンスをすることはなかなか難しいと思いますが、どのような準備や心構えだったんですか?

体の準備はできている状態だったので、メンタル的には、僕の場合「元々なかったんや」と思って、挑むようにしていました。ここで変に上手くやろうとして、「上手くやったら次ももしかしたら出られるかもしれない」と思ってやると、逆に上手くいかない。「この試合だけ、後は別にどうなっても良い!」というメンタルでやっていました。

――そのような心境を手に入れるまで葛藤したんじゃないですか?

しました。それが出来るようになったのは、今までの経験値があるかもしれないですね。

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◆怖いもの知らず

――サンゴリアスでの出だし、日本を代表するウイングだった小野澤選手からポジションを奪いましたよね

はい、1年目ですね。あの時は怖いもの知らずでした。何も考えず、ただがむしゃらに、絶対に試合に出てやろうという気持ちでした。

――その後はどうでしたか?

そのシーズンが終わってすぐにセブンズの代表の候補に上がって合宿に行った際に、腕の骨折をし、プレートを入れる手術をしました。練習で仲間とぶつかっての怪我でしたが、そこから半年ほどは何も出来ない状況でした。結局セブンズのキャップは取れなかったです。

――そこから復活した訳ですね

復活と言っても、復活した!というのも無いまま、ずるずると10年間やっていました。

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――怪我のダメージがあったんですか?

怪我は完全に治りました。ですけれど何か上手くいかなかったです。幸太朗(松島)とかも入ってきましたし、あとはヅル(中靍)や江見も来ましたし、ヤスさん(長友)もいましたし、なかなかそこで前のようにポジションを勝ち取ることは出来ませんでした。

――セブンズ合宿に行かない方が良かったですか?

いや、それは思わなかったです。みんなからよく"1年目がピークの奴"って言われますけど、そうかもしれないです(笑)。

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◆一貫性は大事

――2年目以降も、出たい気持ちは変わらなかったと思いますが、今後同じような選手がいたとしたらどんなアドバイスをしますか?

「一貫性を持つことは大事」と思っています。よく「練習から一貫性を持っていれば調子の波も無くなる」と言いますが、僕は波が大きかったので、普段の練習からやっておかないと、癖がついてしまうんですよ。

――常に75点ぐらいでということですか?

もちろん100点行くのがいいですが、75〜80点くらいでも、練習中に気持ちが入らない時にこれ以下にならないように練習をしていくことです。

――練習中に気持ちが入らないのは、体が疲れている時、上手く行かないことが重なる時などあると思いますが、そういう時はどうすればいいのでしょうか?

これをすれば、というものは無いです。自分で自分のモチベーションを保つ方法を見つけて欲しいです。僕の場合、ストイックにやり過ぎて、私生活でも食事制限や、休みの日にトレーニングをしたりしていると、いざ練習でやらないといけない時に、疲れていたりしちゃうんです。なので、練習以外は好きなことをして過ごしていました。その方法が自分には合っているなと思いました。でもヅルみたいに休みの日にもトレーニングしたり、食事も節制してというのが合っている選手もいるので、それだけが正解では無いなと思ったりもします。何が正解かを自分で見つけて欲しいです。

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◆練習がハードワーク

――10年間、サンゴリアスでラグビーをやっていて、いちばん印象に残っていることは何ですか?

試合で言えば、クリスマスにやったヤマハ発動機ジュビロ戦での全勝対決です。これまでに無い全勝対決で、ここで負けたら優勝が無くなるという試合で、めちゃくちゃ緊張しました。結果試合は勝って、優勝がほぼ決まったとなった試合が、いちばん嬉しかったです。色々ミスもしましたが、トライも取りました。

――いろいろな意味で激しい試合だったんですね

そうですね。メンタル的にもです。緊張具合もマックスの状況で、「ここでやらないと!」という気持ちで挑みました。風も強く自分が嫌いな天候でしたが、それを乗り越えたら自信にもなりました。

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――サンゴリアス・スピリットとは何だと思いますか?

ハードワークです。サンゴリアスと言えばハードワークです。もちろん"アグレッシブ・アタッキング・ラグビー"もありますが、イメージはハードワークでしたね。若い時のイメージですが、練習がハードワークです。なので練習が嫌でした。でもやる。100%やる。それをやったからこそ自信に繋がるということがあると思います。それがサンゴリアスだなという感じがします。

――ということは、練習は嫌だなという感じでした?

嫌でした。もちろん。でもやる。やらされてでもやる。100%そこでやる。ヘトヘトでした。それをやったからこそ、自信につながるとかもあると思います。昔はそのハードワークが毎日だったので。それがサンゴリアスだなって、僕は思います。

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◆ハングリーな気持ち

――サンゴリアスのメンバーにメッセージをお願いします

今の選手たちは技術やフィットネスなど、身体能力はもちろん高いと思うので、ハングリーな気持ちを忘れずにやっていれば、自然と努力もすると思うので、その気持ちを大事にして欲しいです。僕はその気持ちを最後まで持ち続けることが出来ませんでした。

――ハングリーな気持ちを持ち続けるには?

難しいな。どうすれば良かったですかね・・・。

――ではファンに向けてのメッセージをお願いします

今年は悔しい結果でしたが、勝っている時のサンゴリアスではなくて、負けていてもがむしゃらに戦っている時のサンゴリアスを応援して欲しいですし、サポートして頂けたら嬉しいです。みんなもハングリーになるモチベーションのひとつとして、ファンの方に喜んでいただくということがあると思うので、引き続き応援よろしくお願いいたします。

――自分自身については?

これから社業に専念しますので、もし会場で見かけたら、声をかけてください。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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