SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2023年5月29日

#849 堀越 康介 『もう1回強いサンゴリアスをつくって優勝する』

望んでいたキャプテンとして初めてのシーズンを終えた堀越選手。チームの戦い、個人としての挑戦、そしてキャプテンとしての学びについて聞きました。(取材日:2023年5月下旬)


Hori_01.jpg

◆最後まで絶対諦めずに戦い抜く

――シーズンが終わり、結果が出ましたが、まずプレーオフトーナメントでの戦いはどうでしたか?

クボタスピアーズ船橋・東京ベイとの準決勝に関しては、僕たちらしい戦いというか、みんなが泥臭く、ハードワークをして、そして最後まで絶対諦めずに戦い抜くという姿は、見せることが出来たと思います。

――結果はどうあれ、最後には手応えがあったんですね?

うーん、そうですね。ただ結果が出ていませんし、強いチームはあのような展開に持ち込ませずに勝負どころで決めて、ちゃんと勝ちに持っていくというチームだと思います。やはりあのような展開に持ち込んでしまったのは、僕たちのちょっとした甘さやミスなど、そういうところが少しだけ負けていて、あのような結果になったんだと思います。

――まだまだ課題があるということですか?

そうですね。こういうシーズンもあるな、という感じですね。

――同じチームに3回負けるということも含めてですか?

そうです。サンゴリアスはこんなに負けたシーズンは、あまりないと思います。

Hori_02.jpg

――そういう意味ではシーズン最初に思っていたイメージとはだいぶ違いましたか?

もちろん違いますね。

――尻上がりにチームの状態は良くなっていたんじゃいかなと思いますがどうですか?

良くなってはいたと思います。よりチームっぽくなってきたかなと思います。チームっぽくと言うか、最初からやろうとしていたこと、プレシーズンからずっと「みんな今年はこれを強みにしてやろう!」ということをずっとやってきましたが、雨の試合も多くあって、戦術を変えないといけない部分もありました。プレシーズンからずっとやってきたことと、少し違う部分も最後はありましたが、でもそれは仕方がないことであって、それに対してみんなが本気でやってきたことで、「自信を持って勝つんだ」というところは最後に湧き上がっていたので、そういうところで「チーム」になっていったんじゃないかなと思います。

Hori_03.jpg

◆良い学びになった2試合

――その後の3位決定戦はどうでしたか?

うーん、勝ちきれなかったので、良いとは言えません。でも来年に繋がる試合になったと思います。

――具体的には?

リーグワンのチームはどこも拮抗してきているので、自分たちで自滅するペナルティーや、ミスで一気に流れが相手にいってしまいます。特にファイナルラグビーなので、ひとつのミスが命取りになりますし、例えばディフェンスで同じ人を見ていてトライを取られたりとか、そういうところだと思いました。

試合が中4日で1回しか練習も出来ずに詰めきれなかったということもありますが、そういう状況は言い訳にしかならないので、本当に来シーズンに向けての良い学びになった2試合だったかなと思います。

ただし、やはり負けは絶対に許されないと思いますし、そういうプレッシャーの中で、みんなやっていると思いますが、そしてサンゴリアスは最後のクボタ戦みたいに、どこか華やかに見えるチームだと思いますが、ラグビーを見たら死ぬほど泥臭くやって、みんなでハードワークして、最後の最後まで15人が絶対にグラウンドに立っているというチームだと思うので、来年は毎試合そういうチームに出来れば良いなと思います。

Hori_04.jpg

◆70点くらい

――今シーズンの自分自身についてはどうでしたか?

プレーヤーとして、今年は始まる前から「フォワードパックを強くしよう」と常に言っていました。スクラム、ラインアウト、モール、ここを絶対に強みにしていくと言ってやっていましたが、それに対しては僕も中心になって引っ張っていけたので、かなりチームの強みになったんじゃないかなと思います。

――個人的なパフォーマンスとしてはどうでしたか?

ラインアウトスローの部分は昨シーズンに比べたらだいぶ成功率も上がっていますし、ボールタッチの回数やタックルの回数も僕は意識していたので、そういう部分は良かったと思います。ですけれど、シーズンを通しての僕の点数をつけるとしたら、70点くらいかなと思っています。

――それはシーズン序盤に試合に出ていない時期があったことでのマイナスですか?

それもありますし、プレーの中で自分が行くだけではなくて、もっと周りとコネクトして良いアタックが出来る時もあったと思います。また、もっと良いディフェンスが出来る時も多々あったので、そういうところを含めてです。

――周りとのコネクトは、フォワードとのコネクトということですか?

全員です。バックスも含めてです。

Hori_05.jpg

◆コンビネーションをもっと広げていけたら良い

――選手として来シーズンへの課題は?

細かいことになりますが、いちばんはコンタクトエリアのところ、ラックなどでカオスを作ることです。あとはピック&ゴーのチャンスがあれば、自分のプレーの幅を広げる選択肢として、どんどん狙っていきたいです。そして、もっといろんな選手と、どのタイミングで欲しいとか、もっと仕掛けて欲しいとか、そういうコンビネーションをもっと広げていけたら良いなと思っています。僕だけではなく、フォワード全体として、チーム全体として、そう思っています。そういうところが大事かなと思います。

――代表としてこのあとワールドカップへ向かって行きますが、自分自身への期待は?

ワールドカップのメンバーに選ばれて、しっかり試合に出て活躍することが、今のいちばんの目標です。

――ワールドカップに対する課題、日本代表選手としての課題は何ですか?

ハイプレッシャーの中で、スキルをどれだけ一貫性を持って発揮出来るかどうかです。あとは本当にワンミスで一気にトライに持って行かれてしまうので、そういうところをなくしていくことだと思います。

――日本代表でも自分がリーダー役を担ってみたい気持ちはありますか?

特にないです。そんなこと気にしている余裕もないと思います。国と国のテストマッチなので、正直全然違います。いちばんは自分のパフォーマンスだと思います。

Hori_06.jpg

◆同じことを言い続けて良かった

――サンゴリアスのキャプテンとしての今シーズンどうでしたか?

大変でした。怪我があり、シーズン最初はとてももどかしい気持ちもあったので、チームに対しても少し遠慮している部分もありました。復帰してからも少し遠慮している部分がありましたが、シーズン残り2ヶ月くらいから、やっと自分の気持ちというか、自分の言葉で言えるようになってきたので、そこは自分の中でも少し成長したかなと思います。ですけれど、「今この発言をして良いのか」とか、「みんなにちゃんと届いているのか」とか、負けも多いシーズンだったので、そういうところで気になるところが沢山ありました。

――話を聞こうとすると「僕はいいです」とよく言っていましたよね

別に僕の話なんかいいかなと(笑)。これまでも沢山インタビューをやりましたし、新人選手も沢山活躍していますし、もっといろんな選手の声をファンの皆さんに送って欲しいなと思ってもいました。

――辛い最初の頃を乗り越えたら、本来の自分のやり方に戻ってきたという感じですか?

それが正解かはわからないですが、思ったことは言うようにしました。チームって生き物だと今年は強く感じて、毎日一喜一憂がありましたが、リーダーというのは常に一貫した心で、高いスタンダードでやらなければいけないので、そういうところに関してみんなに厳しく言ったところもありました。でもそれが正しかったのか正しくなかったのか、まだわかりません。でも今は、言って良かったなと思っています。

――そう思った理由は?

常に同じことを口酸っぱく言い続けたので、最後はそれをしっかりやろうというのがチーム全体に浸透していたのがわかったことで、同じことを言い続けて良かったなと思った部分です。

Hori_07.jpg

◆今シーズンやってきたことを活かしながらやっていきたい

――サンゴリアスには才能あふれる選手が沢山いますが、1つのチームにしていくことの苦労はありましたか?

僕1人では絶対に無理ですが、練習で最後までやり合ってメンバーにプレッシャーをかけることは大事だと思うので、シーズンの最後にはノンメンバーのベテラン選手、小澤さんや健太さん(塚本)に、「みんなのモチベーションもしっかり上げていけるようにお願いします」と言ったり、あとは流さんとか亮土(中村)さんとかヘンディ(ツイ)とかにも、ちょこちょこコミュニケーションを取りながらやっていたので、そこはみんなが1つの絵を見られるように、僕は気は使っていました。

――キャプテンとしてスタッフとのやりとりはどうでしたか?

特に問題ないですし、僕はやりやすかったです。毎週、週初めにミーティングをしていました。キヨさん(田中監督)が必要だという時は、練習後にグラウンドの中でショートミーティングをしたりしました。ですからスタッフが思っていることと選手が思っていることのギャップは、あまりなかったと思います。

――"2人キャプテン"はどうでしたか?

お互いぜんぜん違うタイプの選手だと思いますし、お互いの視点で、且つチームがやろうとしていることから絶対外さないように、「これだけは全員でやり切ろう」ということを、2人で話し合いながら練習が出来ていたので、そういうところは良かったなと思います。

Hori_08.jpg

――シーズンが進むにつれて2人のコンビネーションは深まっていくものですか?

そうですね。直人(齋藤)自身もとても変わったと思います。バックスの選手から話を聞くと、今までは優しい口調で話をしていたのが、厳しく怒ったりとか、「自分はこう思うからこうやろう」とか、意思表示が多くなったということです。直人は細かいところをずっと見ていてくれているし、そこを意識してやってくれていたので、そういうところのこだわりというのは、意外な一面でしたし、良いなと思いました。

――来シーズンに向けてのテーマは?

来年もキャプテンをやるかはまだわかりませんが、もう1回強いサンゴリアスをつくって優勝することです。今シーズンが絶対に来シーズンへのステップアップになると思うので、必ず今シーズンやってきたことを活かしながらやっていきたいです。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ