2023年4月28日
#846 尾﨑 泰雅 『誰も想像しないプレー』
先発してトライを決めた最終戦を含めて、リーグ戦16試合中10試合に出場した尾﨑泰雅選手。最多トライゲッターとなったお兄さん、尾﨑晟也選手のスペシャルコメントを含めてお届けします。 (取材日:2023年4月下旬)
◆リーグワンに慣れてきた
――現在の自分自身のプレーの手応えは?
手応えは結構あります。アタックの部分でもディフェンスの部分でも、リーグワンに慣れてきたというのがあります。
――慣れるのには時間がかかりましたか?
そうですね。自分に自信がつくのが少し遅れたかなと思います。自信があまり出来ていなかったので。
――特にディフェンスですか?
そうですね。ディフェンスは少し苦手な部分だったので、そこが修正で出来てきて、調子がどんどん上がってきました。
――ではもう「タックルは得意です」という感じですか?
はい、むしろ今はタックルの方が好きです。
――それはなぜ?
相当練習をしました。中村亮土さんと練習をして、いろいろと教えてもらいました。亮土さんを見て「あのようにタックルに入っているんや」と学んだり、亮土さんから直接教えてもらっています。タックルへの入り方をはじめとして、亮土さんを参考にさせてもらっています。
――どうやって入ったら良いタックルが出来るんですか?
ギリギリまで姿勢を高くしておいて、一瞬だけ下がってというタックルです。それが出来るようになって頭も下がらなくなったので、その部分です。
――頭が下がらなくなると的確に行けるのでしょうか?
そうですね、頭が下がってしまうとやはり相手も見えないし、相手より少し遠くなってしまうので、しっかりギリギリまで見て、しっかり相手の懐に入るようにします。
――ギリギリまで見過ぎて遅くいみたいなこともあり、そのタイミングが難しそうですね
感覚ですね、難しいですが。
――その感覚が掴めてきたということですか?
そうですね。あとはフィジカルアップで、体もしっかり大きくなってきて、その部分で成長しているところがあるので、それが自信に繋がってきているなというのはあります。大事なのは気持ちで、あとは出場時間が短い中でどれだけアピールできるかです。余力を残さず常に120%で行くという感じです。
――そうするとスタメンの時はいかがでしょう?
その時も、自分が出来ることを頭で考えて、あとは目の前のことを全力でやります。常に120%です。
◆常に120%
――次にオフェンスですが、認定トライもありましたし、かなり効果的な走りとキックをしていたと思いますが、どうですか?
認定トライになりましたが、取ってもトライまでは多分いけました。
――あのプレーではキックが真っ直ぐに蹴られていましたね
あれは練習ですかね、自信もあります。
――コーナーフラッグに当たるか当たらないかという狭いシーンが多いですね
それは左ウイングの時ですけれど、左利きの良いところかなと思います。僕は左利きなので、左だから出来たプレーかなと思います。
◆一貫性も出てきた
――今年リーグ戦が16試合あって10試合出場していますが、自分ではこのペースはどうですか?
開幕してから初めは、あまり出られませんでした。自分の理想と言うか目標は「1試合目から出場する」ことだったので、まだまだかなというふうに思っています。
――今は何が課題ですか?
今は課題が改善されてきています。一貫性も出てきたので、これからはもっとチームを引っ張っていける存在になれたらなと思っています。
――一貫性とは?
良い時は良い、ですけれど悪い時もあったりという感じで、ずっと浮き沈みが激しく波があったので、そういう部分が徐々になくなってきました。大学時代にも波があって、めちゃくちゃ怒られていました。その当時はもういいやってなっていました。そこがダメでした。
――どうして良くなってきたんですか?
小さなことですが、練習前に毎回一緒に中村亮土さんとパスとかをしたり、無駄な時間をなくしたり、やはり泥臭いプレー、セービングであったり、抜かれても必死に追いかけるなど、そういうことをして行くうちに、一貫性が出てきました。
――抜くことが無いということですよね?
はい、今まで練習でも試合でもフッと抜いていたところがあったけれど、今は常に全力で集中してやっています。
――それはいつ頃気がついたんですか?
今年のルーキー合宿くらいからです。「ラグビーに対して必死にやらないといけない」と思うようになりました。
◆試合に出たいという気持ち
――それは下からの突き上げもあるということですか?
そうですね、それもありますし「試合に出たい」という気持ちが一番です。あとは「チームに貢献したい」というのもあります。試合に出ていないということの原因は、絶対に自分にあると思います。ですので試合に出られないからと言って適当にやってしまう等、大学時代にあったんですが、相当怒られましたし、それをやってしまうと成長につながらないし、なんぼ言っても試合には出られないと思うので、そういうところで練習から常に対面の将伍さん(中野)にはバチバチ行ったり、相手チームに遠慮なく行くということを僕は今年やっています。
――先ほどから聞いていると、中村亮土さんがコーチのように教えてくれていますね
そうですね、いろいろと教えてくれました。特にタックルの部分です。他はお互いに教えあったり、良いところを盗み合ったりという感じです。
――他にも教え合っている先輩はいますか?
よく一緒に1対1をするのは、テビタ・リーです。1対1をやりながら「今のはこうの方が良い」とか、「もう少し早く行った方が良いな」とか、ディフェンスの部分を教えてもらったりしています。その時は、日本語と英語です。
――テビタ・リーで一番参考になるところは?
スピードチェンジの部分です。もちろん体も強くて、体の部分ではテビタ選手のようにはなれませんが、その一瞬のスピードのところは本当に素晴らしく、僕もそれは身につけたいところです。
――そのためのトレーニングは?
S&C(ストレングス&コンディショニング・スタッフ)にお願いして、スピードのバネをいま鍛えています。
――トレーニングの手応えはどうですか?
徐々に良くなっています。
――まだパワーアップする感じですか?
はい、まだまだします。今まだ成長段階です。
――お兄さん(尾﨑晟也)が、トライ王を獲りましたが、おめでとうを言いましたか?
言いました。けれど「ありがとう」しか返ってきませんでした。(笑) 18トライも素晴らしいですが、21トライして記録を塗り変えて欲しかったです。
――21トライに行けなかったのはなぜだと思いますか?
天候でしょうか。雨であまりバックスに回ってくるシーンが少なかったので、雨でなかったら21トライは余裕で行けていたんじゃないかと思います。
――家族はみんな喜んでいましたか?
そうですね、めちゃくちゃ喜んでいました。いつも喜んでくれます。
【尾﨑 晟也 選手 スペシャルコメント】
最後の4試合はトライをととれずに悔しい思いをしましたが、トライ数でいちばんになって、結果として良かったかなと思います。リーグ戦の最後の方の試合ではトライのチャンスが減リましたが、その中でもチャンスメイクしたり得点に絡むことが出来たので、プレー自体には納得していますし、良かったと思います。シーズンを通して皆がパスをくれましたし、チャンスをいっぱい作れたと思います。トライ数18という数字は素直に嬉しいかったですし、新記録の21に届かなかったのは、運ですね。最終戦で直接対決した木田くん(久保田スピアーズ)は良い選手ですが、トライ数が迫って来ていることに対する焦りはなく、マッチアップする上でしっかり止めたいなという気持ちがあリました。シーズンを通して調子が良かったですし、体の調子もラグビーのプレーの質も全体的に良かったと納得しています。弟は今のサンゴリアスは先発の15人だけでなく、試合メンバーの23人に入ることが難しいので、そこの競争に勝って選ばれているということは、泰雅にとってとても良いことだと思いますし、「試合に出れば何かする」という期待感あるので、そこは良かったんじゃないかなと思います。ありがとうございます。
◆デイフェンス成功率100%
――さらに良くしていきたいプレーは?
全体的にもそうですが、まだまだデイフェンスの部分は試合を通しての成功率を100%にしたいので、その部分は引き続き努力して取り組んでいきたいなと思っています。もう1つが、裏のスペースであったり、周りを見て周りを動かすようなプレーが出来たらもっと幅が広がるんじゃないかなと思っています。
――そこはリーダーシップとも繋がっているんですか?
そうですね、リーダーシップの部分とも繋がってくると思います。
――みんなから可愛がられている弟キャラでと、リーダーシップのキャラとの違いは?
ラグビー中はしっかり引っ張っていける存在になりたいです。ラグビー以外はまだ甘えさせてもらいますが(笑)。ラグビーのプレーでは、誰も想像しないプレーをして楽しませられるようなプレーが出来るかなと。例えば、オフロードで「そこ放れる?」というような場面で放ったり、「どこから放ったん?」というようなプレーです。オフロードが好きなので。
――後ろから来る選手の足音を感じているんですか?
そうですね、感覚と、あと少し見た時に「いるな」って、「放れるな」って、感じます。やはり感覚ですかね。「そこに走ってきてくれよ」って感じで放っています。それが大体、成功しています。
◆めちゃくちゃ良いシチュエーション
――ラグビーの良さはどこにありますか?
"仲間の為に身体を張る"ところじゃないですか。
――痛いのが好きなんですよね?
はい、痛いのは好きです。僕は3人兄弟の末っ子なので、小さい頃の兄弟げんかでも痛い思いはしてきたので、痛みに強く育ったのかなと思っています。あと、負けるのが嫌いなので、チームや自分の仲間がやられたりとかが僕は嫌いなんです。仲間思いの人たちが多いっていうところが、ラグビーの良いところじゃないですかね。「仲間のためにやる!」っていう。
タックルの部分であったり、タックル止めたり、トライを取った時のみんなの喜んでいるところとかがたまらないです。個人のスポーツではないので、個人個人で素晴らしい選手はいますが、やっぱり1人ではラグビーは出来ないと思うので、ノンメンバー合わせて23人全員で戦っているスポーツなんです。そういうところがラグビーの良さなのかなって思います。
――ファイナルラグビーでは2連敗している相手に準決勝でもう一度当たります
もう2連敗しているので、負けられないという気持ちがあります。また、めちゃくちゃ良いシチュエーションかなとも思います。
――自分にとってですか?
自分にとっても、チームにとっても、です。僕はそう捉えています。いちばん面白い展開になっているんじゃないかなって。
――自信の程はどうですか?
めちゃくちゃあります。
――過去2戦とどこが変わってくるんですか?
この前の試合でも、自分自身の感覚ですが、フィジカルの部分でも自分たちが我慢してディフェンスしていれば、相手がミスをしてくれたり、自分たちがターンオーバーしたりという展開が起きてくるので、それほど怖くなかったです。あとはサンゴリアスのラグビー、アタックをしていれば、必ずトライが取れると思います。この前の試合で僕自身、自信がつきました。
――勝てますか?
はい、勝てます。必ず勝ちます。
――勝つシーンを想像して、自分のどんな姿が見えていますか?
「試合に出る」というのがまず目標で、出てトライもしっかり取って、自分がやれることを全力でやって、笑顔でめちゃくちゃ喜んでいる姿を想像しています。
――最後に一言ありますか?
優勝します!
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]