2023年3月31日
#842 中村 亮土 『もっと出来る』
目に見えて身体が大きくなって、今シーズンは特にラグビーを楽しんでいるように見える中村選手。リーグ戦終盤へ向けての思いを聞きました。 (取材日:2023年3月下旬)
◆ピーキング
――前試合を含めて良さそうですがいかがですか?
NECグリーンロケッツ東葛戦は雨の中の試合でしたが、チームで決めたプランを遂行出来た試合でした。個人的にもパフォーマンスが徐々に調子が上がってきて、体も良い状態になってきているなと感じています。
――シーズン中にも上がってくるものですか?
上がってきますね。
――それは試合に出てこそ掴めるものがあるからですか?
それもありますし、ピーキングと言うか、コンディションの持っていき方というのが自分なりにあります。そしてシーズン中でも上手く成長できる部分を、スタッフに助けてもらいながらやってきているので、体の動きがとても良くなってきている感じです。簡単に言うと、フットワークやムーブメント(動き方)です。
――それは最近取り入れたことですか?
毎年やっています。今シーズンの前半はなかなか出来なかったんですが、後半戦入るくらいのタイミングで、もう1回取り入れようということになりました。
――なぜ前半は出来なかったんですか?
状態はそんなに悪くなくて、やらなくても上手く試合に臨めていたこともありました。ここへ来て、もっとより良くしたいという気持ちがあったので、もう1回新たに始めました。
◆プレッシャーをプラスアルファ
――今シーズンの中村選手を見ていると、とても楽しんでいて、やりたい時にやりたいプレーをやっているように見えますが、自分ではどうですか?
そうですね、だいぶ試合の中で余裕を持ってプレーが出来ています。その時間帯や、状況、天候などを把握しながら状況判断が出来ているので、今までより少しラグビーを理解出来てきたのかなと思いますね。
――思い切ってチャレンジするダイナミックなプレーが多く、成功も失敗も印象に残りますが、チャレンジしなかったら成長もない訳で、そこは自由に思い切ってやっているんでしょうか?
それはありますね。そうですね、失敗を恐れてプレーをするほどもったいないことはないので、練習中もそうですが、ミスは結構あります。ただ自分に課題を設定してのミスが結構多いと思いますが、自分で自分にプレッシャーをプラスアルファしながらやっているところはあるかもしれないです。
――中村選手を含め、バックス陣の良いキックがプレー中に多いと思いますがいかがでしょう?
今シーズンは、キックを上手くアタックの中に混ぜ込みながら、9番、10番の選手だけでなく、外側の選手もキックのオプションを持ちながらアタックするということを意識しています。特に僕なんかはキックも得意にしているタイプなので、上手くサンゴリアスのラグビーにアジャストしながら使いたいなとは思っていて、それが今の戦術にとてもマッチしていて、良いところでキックの好判断が出来ているのかなと思います。バックス陣もみんな誰に預けても打開してくれますし、外側にそういう選手がいると内側はとてもやり易いです。迷った時は先にボールを渡す、という判断もしています。
――キッキングに関しても良いコーチングを受けているんですね
そうですね、ひとつのオプションとして、僕のキックのオプションを取り入れてくれているというのはあるかもしれないです。だからやりやすく、チャレンジしやすい環境ではあります。そしてもちろん、キッキングはディーン・カミンズ(キッキング・コーチ)がコーチングをしてくれるので、スキルや状況判断も含めて、やり易い環境ではあります。
◆バランス
――キャプテンから一選手に戻りましたが、自分のプレーに影響はありますか?
影響しないようにと思いながら、キャプテン時代やっていましたが、煩雑な仕事がなくなった分、自分のプレーに集中出来ています。ただ、リーダーシップを取るのはキャプテンの役目としてではなくて、もともと僕のプレーの範囲のひとつなので、あまり変わらないかもしれないです。
――今シーズンのチームの状況はどうですか?
全員がサンゴリアスのラグビーをしようとする意思が見られるので、とても良いと思います。これがサンゴリアスのラグビーだというものが今シーズンはちゃんと明確に出来たので、それをやり抜こうという選手たちの意思のもと、同じ絵を見ることが出来ているということはあります。
――自分たちで考えることと、スタッフがある程度方向性を出すことと、両方がいま良い塩梅で進んでいるということでしょうか?
そうですね、良いと思います。僕はリーダー陣に入っていないので、どこまでリーダー陣が関わっているかはわかりませんが、良いと思います。大きな答えはスタッフが提示していて、その後に自分たちでゲームを作っていくという動きが出来ているので、とても良い状態だなと思います。
――ここからさらにファイナルに向けてチームが作られていく感じですか?
はい、それはあります。サンゴリアスのゲームのバランスは、これからの3試合の中で作られていくと思います。今まで、80分間常に100%、というところで勝負をしていましたが、最後に大きな試合で勝ち切るためにはバランスが大事になってくるので、そこはこれからの試合で意識しながらやっていくところだと思います。
◆ベースのハードワークやフィジカル
――中村選手が考える今のサンゴリアスの1番の強みは何ですか?
やはりオブザボールのワークレートが、サンゴリアスの良さだと思っています。
――それは意識ですか?それとも練習で得るものですか?
うーん、なんだろう。プライドです。そこで負けたらダメだ、というプライドです。そこにフォーカスを当てて、キヨさん(田中監督)をはじめチームとして大事にしていて、コーチ陣が求めているところなので、そこは選手として貪欲に、皆それぞれが他の選手よりもハードワークしないといけないところだと思います。
――今年はタックルだけではなくて、それこそトライもあれば、スタンドオフに回ってのキックもあり、いろいろなプレーが目立ってきていますね
タックルはボチボチですが、いろいろなことを任されるので、とても楽しいです。そういう反面、やはり自分のベースの部分であるハードワークやフィジカルの部分は、必ず毎試合念頭に置いてやろうと思っています。
――試合ではほぼやり切りますか?
やり切りますね。あまり後悔したことないですね。
――フィジカルという意味では、筋肉がついてきたのに柔らかいですよね
S&C(ストレングス&コンディショニング)のおかげで、大きなパワーをつけつつ、ムーブメントも徐々に良くなってきています。今、本当に怪我をしない状態に入っています。そういうコンディションも含めて良い状態です。
――まさに強い体を作っているという感じですが、もっと強くしたいですか?それとももう理想に近づいていますか?
もっと強くしたいです、もっと。ただ今がダメかと言われたらそんなことはなくて、もっと出来るなと思います。向上心はまだまだあります。
――今回のワールドカップはもちろん、さらにその次もその調子だと行けますね
一応終わろうかなとは思っています。やはりバックスは若い方がいいですから。
◆全体的なベストパフォーマンスを出す!
――ファイナルに向けての自信は?
それはこれからです。これから最後は「絶対に勝てる」というくらいの自信をつけられる3試合にしていきたいなと思います。サンゴリアスのラグビーをおおまかに言ったら「やり切る」なんですが、最後に勝つようなサンゴリアスのラグビーをしたいなと思います。
――そのためのキーポイントは何ですか?
いっぱいありますが、やはりオフザボールのところはリーグワンの中でいちばんハードワークをしないといけないし、賢くやらないといけないと思います。そこは間違いなく、譲ってはいけないところだと思います。
――リーグ戦1位の埼玉パナソニックワイルドナイツと比べてどうですか?
ワイルドナイツも素晴らしいですね。ワイルドナイツはどちらかと言うとゲームの理解力が高いチームで、自分たちの戦い方を80分間通してやっているチームだと思います。
――3試合次第だと思いますが、どういう流れで来たらファイナルに勝てますか?
間違いなく自信をつけるには結果が大事なので、3試合全勝した方が間違いなく良いと思います。
――個人的には、これはやり切りたいということはありますか?
僕の場合は1個のことじゃないので難しいのですが、やはりベストパフォーマンスを毎試合したいですね。ひとつのプレー、フィジカルに戦うとかゲームコントロールするというのが、僕の全てではないので、僕の全体的なベストパフォーマンスを出す!という感じです。
――その自信は?
あります!準備は出来ています。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]