SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2023年3月10日

#839 尾﨑 晟也 『伝染させる・火をつける』

トライ王に向けて加速中の尾﨑晟也選手。ファンを魅了するさまざまなプレーは、どうやってそしてどんな感覚のもと生み出されてきているのでしょうか。 (取材日:2023年3月上旬)

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◆自分たちはチャレンジャー

――シーズン2敗目を喫した直後ですがいかがでしょうか?

望む結果ではなかったのですが、自分たちが自分たちのスタンダードでプレーが出来なかったというのが敗因の1つだと思うので、相手がどうとかではなくて、自分たちがもう一回ラグビーを見つめ直す良い学びにはなったのかなと思います。

――勝利への意欲はどうでしたか?

こちらに勝ちたい気持ちがなかった訳ではないですが、でもそれ以上に相手の方が上回っていました。ひとつひとつのプレーに対してのハングリーさというのは、この間の試合はトヨタヴェルブリッツの方が上だったのかなと思います。

――次の試合は埼玉パナソニックワイルドナイツ戦ですが、いま何を意識していますか?

自分たちはチャレンジャーということを見つめ直して、今シーズン1回も負けていないワイルドナイツに対して、どう挑んでいくか。もうチーム全員それを理解していると思いますし、1人1人のハードワーク、そしてチームでしっかりまとまってワイルドナイツに向かって行くということが、今週の準備で非常に大事になってくると思います。

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実際には今週はショートウィークで、まずは相手に対してどうアタックしていくかというクラリティ(クリアにすること)の部分を明確にして、雰囲気としても下を向いていることは全くなく、しっかりと全員が前を向いてひとつになってやって行っています。

――尾﨑選手自身のプレーが、今シーズン特に前を向いてポジティブなプレーに見えますが、自分の意識としてはどうですか?

自分は毎試合ひとつひとつのプレーで、質の高いプレーを出すということを心掛けています。前回の試合でも、ピンチの場面で自分がチャンスを作ってトライまで持って行けたらなと常に思っていたので、そういったところは自分としてもポジティブにプレーをしていると思います。

――トライを決められそうな時にタックルして防いだ場面がありました

そうですね、やはりそういうところもあのようなゲームでは大事になってきますし、それを周りにどうやって伝染させるかとか、火をつけるかということも、これからもっと大事になってくると思います。そういったところも意識しながら自分1人でやるのではなくて、どんどんみんなに伝染していくようなプレーをしていきたいです。

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◆練習で100%やってきている

――自分のことだけをやるというのではなくて、そうやって意識する元はなんですか?

基本的にはひとりひとりが自分の役割を果たしているチームだと思いますし、それぞれの能力ももちろん高いのですが、やはり長いシーズンの中ではばらつきがあったり、チームとしてのムラも多少あると思います。そういった中で、自分は波がなく高いスタンダードでプレーするということを常に心掛けてやっていますし、それが出来ていない選手や周りの選手に対しての影響力ということは常に考えています。

――高いレベルで安定することは、みんなやりたいことですが、なかなか出来ないことですよね

精神的には、だいぶ安定したなと自分で感じています。

――精神が安定しているのは、なぜですか?

練習中でも常に高いパフォーマンスを出すということをプレシーズンからずっとやってきたので、練習で100%やってきているからゲームでもそのまま発揮されている、という感じです。

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――相当実力がないと出来ないことだと思いますが

自分のスキルなどランニングの部分もそうですが、プレシーズンから長い時間をかけてやってきて自信を持ってプレー出来ていると思うので、そこが精神的な安定に繋がっているのだと思います。

――やり方がわかった、つかんだ、というところはあるんですか?

どうですかね。キックやランの判断で迷う部分が昨シーズンまではありましたが、今シーズンはしっかり分析をして、そのプレッシャーの中で練習することによって、良い判断が毎回出来るようになりました。そこでの判断が良くなったことで、プレーに余裕が生まれていると自分の中では感じます。

――この間の試合ではチップキック(自分でキックして自分でキャッチ)もありましたが、練習を重ねてしかも周りが見えていないと出来ないプレーなのでは?

もちろんベーシックなキックのスキル練習はやっていますし、そこのスキルの部分は自分の中でも上達してきたなと感じています。自信を持ってやるということに加えて、ゲーム中の判断、そして周りのスペースをちゃんと見ることが出来ているということが、あのようなキックに繋がっていると思います。

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◆これがベストではない

――自分の中でも今、ベストな状態なのではないですか?

そうですね、調子はメチャクチャ良いと思いますし、感覚的にもとても良いと思いますが、これがベストではないと思います。もっともっと成長しないといけないと思いますし、これがベストと言ってしまうと止まってしまう気がします。ただ、調子が良いのは事実です。ここから更に調子を上げられるようにしたいと思います。

――前回5試合終わってインタビュー、今回更に5試合終わってインタビュー、どちらのインタビューでも調子が良いと言っていますが、その秘訣はなんですか?

うーん、なんですかね。周りからも調子が良いと言ってもらえていますが、やっているプレー自体は自分の中では昨年よりメチャクチャ変わったという感じはあまりないです。ただ、精神的に余裕が出来たということは今シーズンかなりあると思います。

――余裕が出来たのはなぜですか?

自分のスキルや自分のランニングなどが上達したからです。だから自信を持ってプレーが出来ている、だから判断も早くなってスペースもよく見えている、ということに繋がっているんだと思っています。

――スキルアップの目標の立て方、更にそこに向けての練習方法、その両方が良いということですか?

プレシーズンの準備が、今シーズンはとても上手くいったと思います。

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――もっと成長するための課題は何ですか?

課題は、ゲーム中の空中戦のところや、あとはディフェンスのタックルの部分です。それらは今もメチャクチャ悪いわけではないですが、アタック以外のところでもっと仕事が出来たらなと思っています。

――空中戦はボールを取るということですか?

そうですね、ハイパントの獲得や蹴ったところに対してのプレッシャーをもっともっと上げていかないといけないと思っています。

――その課題に対してはスキルアップ練習を重ねているんですか?

ハイボールに対しての練習は年間を通してずっとやっていますし、単純にキャッチだけではなくて、そのタイミングや、対戦相手の弱点などを知る、ということも試合の中でパフォーマンス発揮するには重要になってくるので、自分のスキルにプラスして、そのような分析ですね。ゲームでは対戦相手によって変わってくる部分なので、そこをしっかりと見ていかないといけないなと思います。

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◆ラグビー観や感覚が近い

――15番の松島幸太朗選手とのコンビがとても良いですね

非常に良いと思います。やはりお互いが持っているラグビー観や感覚が近いものがあると思うので、そういったところでの感覚的な部分と、実際にコミュニケーションをとる部分、両方とも良いと思うので、良いコンビネーションに繋がっているんだと思います。

――いろいろな場面でどちらがトライしてもおかしくない場面がありますね

幸太朗さんは、トライに行ける力を持っていると思うので、だからこそ相手が集まると思いますし、そこで作ってくれたチャンスを取り切るということを、今シーズンはやってきました。幸太朗さんも、僕に任せてボールを放ってくれているのだと思います。僕がいっぱいトライ取っていますが、周りのトライだと思うトライもいっぱいあります。

――今10試合で15トライ、あと6試合ありますがもっともっとトライを量産したいですか?

そうですね、もちろんトライ王も狙っていますし、今までの歴代のトップのトライ記録は20トライだと思うので、それを超えるように目指していきたいなと思っています。

――それを実現するために大切なことはなんですか?

毎試合トライをすることが目標です。けれど自分がやらないといけないという部分をプレーに出し過ぎると良くないので、やはりそこはチームの動きが優先で、その中でどうチャンスをつかむかということを考えながらプレーしています。

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◆今まで出してきたパフォーマンスを超えるパフォーマンスを出す

――あと6試合、大変な試合が続くと思いますが、その中で自分はどうして行こうと思っていますか?

自分はいま出しているパフォーマンスを継続して、それを毎試合に出すということが、いちばんベストなことだと思います。更にアタックの部分だけでなくて、ディフェンスの部分でももっともっと出来ると思うので、毎試合インパクトを残して、それが普通だなと思えるくらいまで自分を出していきたいと思います。今まで出してきたパフォーマンスを超えるパフォーマンスを出すことを目標にやります。

――それは楽しみですし、プレーしている本人も楽しいでしょうね

そうですね、毎試合本当に、早く試合したいなと思います。自分がゲームで出すパフォーマンスを、自分でも期待していますしワクワクしているという気持ちはあります。

――トライを取ろうが取るまいが、楽しんでますね

はい!本当にそうです。トライは結果として取れて良かったなということなので、それ以外のチャンスをつくることも楽しいですし、実際トライのアシストも今シーズンは多く出来ていると思います。やはりウイングとしての仕事であるチャンスメイクだったり、取り切るというところは、今シーズンは非常に良いのかなと思います。

――ウイングは天職ですか?

もともとウイングは多くやってきています。大学1、2年生の時もウイングですし、高校の時もずっとウイングをやってきたので、どちらかと言うと15番の方が少ない経歴だと思います。やはり良い15番がチームにはいますし、そういった選手とアジャストしながらやっていくということが楽しいです。

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◆どこでチャンスが生まれるか、理解しています

――楽しさが動きに出ていますよね

本当に、今シーズンはみんなが良いボールを繋いでくれます。

――客観的に自分を見ていて楽しいなと思うのではないですか?

自分が今どこにどう動いたら良いかとか、感覚的なものですが、どこでチャンスが生まれるかということを、今シーズンは自分の中でかなり理解しています。全体が見えるようになってきて、そこに走り込んだりという動きが自分のビジョンとして明確に見えることが、いま楽しいです。

――後半戦の目標は?

目標は、チームとして最後にプレーオフに進出して優勝することがいちばんの目標です。個人的にはワールドカップまで半年を切っているので、毎試合質の高いパフォーマンスをしてアピールして代表に入り、そしてワールドカップに出場ということは、変わらない目標です。

――ファンにここを見ていて欲しいというところは?

見て欲しいプレーは、"ワークレート"、"運動量"、これらに注目して頂ければなと思います。結果としてトライをたくさん取れていますが、トライが生まれるまでの動きや、自分がどこに走り込んでチャンスを作っているかなど、ボールを持っていない時の動きも見て注目してもらえたらと思います。

――ラグビーって全体を観るのはもちろんですが、ひとりの選手を中心にして観ていると逆に全体が解ったりしますよね。尾﨑選手を中心に試合を見てくださいって感じですか?

そこまでは言っていませんが(笑)、そうですね!

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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