2023年2月24日
#837 中野 将伍 『オフロードでボールを繋いでトライ』
力強さが増した中野将伍選手。言葉少ない自分を自覚しながらも、現状や課題そして目標を、誠意を持って語ってくれました。(取材日:2023年2月下旬)
◆フィジカルコンタクト、スピードパワー
――今シーズン、パワーアップしていますね
そうですね。センターでのプレーを多くの時間、出来ているというのもあります。そしてその中でもフィジカルコンタクトの部分で、アタック、ディフェンスともにチームの勢いをつけるために、自分から勢いをつけていかないといけないという意識を持って取り組んでいます。
――ウイングでなくセンターだとトライの機会は減りますが、そこにストレスはないですか?
個人でトライを取りたいという思いを持ちながらやっているというよりは、自分が起点になったり、自分が勢いをつけてオフロードなどで味方のトライに繋がればいちばん良いと思ってやっているので、トライが取れていないからストレスに感じるということは全く無いです。
――良い守りも目につきますが自分ではどうですか?
そうですね、サントリーに入って13番をやって、最初は内も外も見るという判断や駆け引きが難しいところもありましたし、日本代表では12番が多かったです。今はセンターとして相手を見て、2枚のアタッカーがいたらどっちにパスをするかを見ての動きだったり、相手の立ち位置を見て読んでディフェンスに入ったり、相手に反応をしてタックルしたりという面では、良い感じに出来ているんじゃないかなと思います。
――瞬間的なスピードも速さが増しましたか?
そうですね、短い距離のスピードパワーというものをもっと上げていかないとと思い、S&C (ストレングス&コンディショニング) の部分でサポートしてもらいながらトレーニングしています。もっともっと良くしていきたいなと思っています。
――日々良くなっているなという手応えを感じながら練習しているんですね
練習で感じる部分もありますし、周りからそういうところが「速くなって違ってきた」「昨年より速くなったね」と言われた時に、「あ、ちょっと変わってきているんだ」とに実感しました。
◆12番、13番両方やるつもり
――チーム内でのライバルのサム・ケレビが怪我という状況ですが、やるべきことに変わリはないですか?
全然変わりはないです。もちろん12番、13番両方やるつもりでやっていますし、今13番を主にやっていますが、その中でサムと競争をするのも良いことですし、「今はサムがいないから」と言われたくないので、そういう意味ではサムはいないですが、意識しながらはやっています。
――12番と13番の最大の違いは何ですか?
サントリーの戦術で言うと、12番はスタンドオフ的な要素、例えばスペースを見てゲームをコントロールしたり、スペース見てボールを動かすということが、重要だと思います。13番はバックスの中ではボールキャリーの回数が多いですし、その中で攻撃の起点となることが多いと思います。
――13番ならではの楽しさや面白いプレーはありますか?
やはり自分の持ち味や得意にしているオフロードですね。ボールをもらって仕掛けてオフロードでウイングの選手や他の選手にボールを繋いで、それがトライになればいちばん楽しいです。
――今は13番に徹しようという感じですか?
いや、この前の試合もスタンドオフの森谷圭介さんが交代して亮土さん(中村)がスタンドオフに上がり、僕が12番に入ってという形になりました。練習でもそういうコンビネーションやっていますし、代表でも12番で試合に出たこともあるので、そういう意味ではどちらでも出られる準備は出来ています。
――12番の面白さは何ですか?
内側の部分でボールをもらう回数が多くなると思いますし、キャリーもありますし、あと楽しいのは外側のスペースを見て、そこにボールを運んでチームとしてスペースに進めるというところです。12番は重要な立ち位置だと感じながら、12番をやる時はそこを意識してやっています。
◆強く速く上手く
――ポジション的にかなり体を使い、それに対応するためにどんどん体が大きくなっていると思いますが、大きくしようという目標はありますか?
自分自身、まだまだもっと強くなりたいというのと、やはり強くなるだけではなくて、もっと速くもならないといけないし、スキルも使っていかないといけないと思っています。そういう意味ではまだまだなところがあるので、大きくしようというよりは、強く速く上手くなりたいと思いながらやっています。自分では大きくなったなとは感じていないです。
――強くというのは具体的にどういうことですか?
試合の中でいうと、目の前の相手には絶対に負けたくないという感じです。その時の前の選手が、バックスの選手かフォワードの選手か分からないですが、アタックする時はタックルしてくる選手に絶対に負けないという思いと、デフェンスする時は絶対ボールキャリーしてくる選手に負けないという意識を持ってやっています。あと自分のオフロードをもっと活かしてくためにも、やはりオフロードはコンタクトに勝たないと繋ぐのが難しくなるので、その中でもコンタクトの速さだったり、強さだったり、オフロードするためにはフットワークだったりスキルも大事になってくるので、そういうところの強さです。
――そうするとオフロードの態勢まで行かない時はコンタクトで負けている時ですか?
毎回無理にオフロードをするわけではないですが、やはり負けていると出来ていないですし、チームとしても良い勢いが作れていないということです。
――強さがもっと欲しいということは、まだもっとコンタクトで勝たないとダメだという意識なんですか?
そうですね、もちろんコンタクトで勝つのもそうですが、フットワークももっとコンタクトエリアで良くすることも課題ですし、その中でその瞬間的なスピードも、強さと同じくらい大事になってくると思います。
――フットワークということはまともに当たらないようにするということ?これは瞬間の判断ですか?
もちろん当たる時もありますし、強いところに行くとその分相手も強いので、いかに相手の裏に出られるようなところをランニングするかも課題です。それを今、意識しながらやっています。
――上半身の使い方も大切なのでは?
やはり上半身の高さや、上手くずらすということも大事ですが、特にこうしようという意識持ちながらやっているわけではありません。感覚でやっている部分はあります。
◆絶対にゲインラインを越える
――今シーズンは全体的に調子が良いですか?
いや、まだまだパフォーマンスを上げて行かないと、という感じです。まだまだやれますし、やらないといけないです。
――いま頭に浮かぶ課題は何ですか?
ボールキャリーの回数やコンタクトの回数も多い分、そこでミスをしないことです。フットワークやキャリーの姿勢が悪くて押し返されてしまうと、チームとしてもアタックで勢いに乗ることが出来ないですし、デフェンスでも行かれてしまうと相手に勢いを与えてしまいますし、そういう面では常にその精度を上げて行くというところです。
――それらの練習方法は?
試合形式の練習で、とにかく意識してやります。相手がプレッシャーをかけてくる中で出来るかというところがポイントです。そういう中でもミスをする時もあるので、ビデオを見ながら改善して行きます。
――いま言った課題が良くなっていき、どんなプレーが出来るようになると良いですか?
ディフェンスを100%決めることが出来て、ボールを取り返すようなプレーが出来れば理想的です。アタックでは、僕がボールを持っていれば絶対にゲインラインを越えるというようなことだったり、オフロードでチャンスが作れる状況が常に起きるにようにしたいです。
――ディフェンスの時も、攻めの時もそうですが、どちらも相手の何を見ているんですか?
アタックでは「空いている」と思っているところを見ていますが、結構ランニングコースの選択は感覚でやっていますし、それで上手くいっています。考え過ぎるとあまり上手く行かないことがあるんです。もちろんディフェンスは相手の状況を考えますが、無理に考え過ぎないようにしています。思い切りが大事です。
◆一緒に活躍したい
――今のチームの雰囲気はどうですか?
チームの雰囲気も良いと思います。
――注目選手は石原慎太郎とのことですが、なぜですか?
家が近いのもあって、一緒にいる時間も長いので仲が良いです。一緒にご飯を食べることも多いですし、トレーニングも一緒に行く時もありますし、一緒に活躍したいなと思っています。
――2人のそういった組み合わせは想像できませんでしたが、どんな共通点があるんですか?
家が近いところから始まりました(笑)。練習に行く時もどちらかの車で行ったり、ご飯に連れて行ってもらったりしています。
――相性はどうですか?
慎太郎さんは誰にでもめちゃくちゃ話しかけてくれる感じなので、僕が最初チーム内であまり話せなかった頃から仲良くしてくれました。
――彼を見ていて良いな、面白いなと思うところはどこですか?
とてつもなく永遠に喋っているので、面白いなと思います。ですけれど、家に帰ると意外に静かですよ。
◆起点となってチームに勢いをつける
――ワールドカップイヤーですが、日本代表については?
もちろん、「絶対にワールドカップに出たい」という気持ちがあります。そのためには今のリーグワンでのパフォーマンスが重要だと思いながら、1試合1試合臨んでいます。
――ただしその手応えはまだまだということですか?
そうですね。いかに自分らしいプレーをするかですけれど、ボールを失うプレーなどのミスを無くすということはテストマッチで重要ですし、前回の遠征でも課題でした。そこの精度をもっと上げて、リーグワンのレベルではミスをしないくらいでやらないと、いけないと思っています。
――ほぼシーズンの半分を終えましたが、この後の目標と課題は何ですか?
まずチームとして、1試合1試合勝つことが大事です。その中で、自分がアタックでもディフェンスでも起点となってチームに勢いをつけるというところが、毎試合大事だと思います。センターとしてスペースがあったらたくさん走って、ハードワークをして、動いてボールをもらわないといけないと思います。そう言う意味でも、いちばんハードワークして、激しくプレーして、チームのモメンタムを作りたいと思っています。
――そこは喋って鼓舞するとかでなく、プレーで引っ張る?
プレーで行きたいです!
――ファンにここを見ていてほしいというところは?
激しいプレーをしてチームを前に出すところや、今シーズンあまり多くは出来ていませんがオフロードを見て欲しいです。
――オフロードは両方の手で出来るんですか?
左はまだ練習しています。右は自然に出来るので、反対側も練習している感じです。
――左のオフロードはいつ頃試合で出来そうですか?
咄嗟に使えたら使いたいです。状況次第です。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]