SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2023年2月10日

#835 山本 凱 『タックルに行きたい・タックルで倒したい』

タックルが決まる度にファンから歓声が上がる山本選手。何を思い、どんなやり方で、迫力あるタックルをしているのでしょうか。山本選手のタックルに迫ってみました。(取材日:2023年2月上旬)

◆外されないように思い切り行く

――7戦が終わって、しっかりと7番に定着していますが、自分自身の手応えは?

そうですね、今のところ結構スタメンで出られる機会も増えてきたので、1戦1戦自分の中で大事にして、良いパフォーマンスをして、自信にもつながるようにやっています。

――試合ごとに反省をしたり課題を抽出したりしているんですか?

はい、例えばアタックのキャリーでもっと有効的にキャリー出来そうな場面や、当たった後にしっかりラックでボールを出す動きだったり、あとはタックルミスのところを振り返っています。毎週少しずつ良くしていって、別の課題が出てきたら、そこを練習していくという感じです。

――タックルは更に良くなっている感じですか?

やはり大学時代からタックルは得意なプレーではあったので、相手のレベルが上がっても対応が出来るようになってきました。

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――歓声で聞こえませんけれど、見ているとバチーンと音が聞こえてきそうに当たっていますが、実際どうですか?

音がしているかは、ちょっとわからないですが、上手く入れた時はそうだと思います。

――どうやれば上手く入れるんですか?

思い切りよく行きます。

――思い切りよく行けば行くほど外れるケースもあると思いますが、そこはどんな対応を?

思い切りよく行くと外されてしまうリスクも高いのですが、外されないように思い切り行くようにしています。

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◆"当て感"がついた

――こちらから蹴ったハイパントをキャッチする相手に向かって行く時には、どんなことに気をつけていますか?

キックが良いところに上がれば自分の走るスピードを調整して、キャッチする相手が足を着いたタイミングで思い切り入るだけです。三菱重工相模原ダイナボアーズ戦では入るタイミングが早くてミスをしてしまいましたが、基本的にはそのような感じです。相手はボールを取る時は動けないので、キックをチェイスしてタックルする方が簡単だと思います。

――相手が連続攻撃してきている時のタックルでは、どんなことを意識していますか?

ゲインラインを割らせないために、しっかりと前に出て自分の前で止めて、ブレイクダウンにプレッシャーをかけたいと思ってやっています。自分が1人目で、良いタックルで相手を倒せば2人目も入りやすいですし、自分がそのまま行ける場合もあります。

――どうしたら良いタックルが出来るんですか?

中学生の時からタックルは得意でした。その時からゲームで良いタックルが出来る機会が多くありました。中学生の時に"当て感"がついたのかもしれないです。

――当てる感覚というのはタイミングや距離や姿勢等、いろいろあると思いますが、自然と身についたのですか?

そうですね、練習をして「タックルが得意だな」と、自分で思っていた記憶が薄らとありますね。

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◆良いタックルは気持ちが良い

――タックルが得意なのは、格闘技好きと関係がありますか?

関係ないかもしれないですけれど、格闘技は高校生の時からずっと見ていて好きです。レスリングのタックルを学んでラグビーに生かそうという意識ではなくて、僕は単純に格闘技を見ていて面白いですし、戦うモチベーションになりました。好きな格闘家の動画を見ると楽しいです。いろいろ好きな選手はいますが、最近は総合格闘技のカムザット・チマエフという選手をよく見ています。

――ラグビー選手になっていなかったら格闘家になっていましたか?

いや、全然わからないです。パンチとかは怖いですが、やってみたい気持ちがなくはないです。

――中学生の時にタックルが上手くいった時は、どんな感覚でしたか?

強いタックルの動画を見て「カッコ良いな」という気持ちがあったので、動画サイトでタックル集を見て好きになって、そのようなタックルをしたいなと思っていました。それに近いタックルが出来た時に嬉しかったというのはあります。

――タックルのカッコ良さとは?

良いタックルは見ていてカッコ良いです。気持ちが良いです。タックル自体、僕は見ていて好きです。タックルが良い選手が好きです。

――タックルを良くするために練習で意識的にやっていることはありますか?

練習中、フルコンタクトの日などの強度が高い日は、しっかり体を当てるようにしています。でもチームでのディフェンスですから、チームのデイフェンスの壁は破らないようにして、その中で自分の良いタックルが出来るように練習では意識しています。個人練習では、右タックルに比べて左タックルが苦手なので、左タックルの練習を重点的にやっています。右タックルになるか左タックルになるかは相手の出方によって変わりますが、結構、いま右で行っています。

――当てるコツというのはありますか?

基本的には「肩と足は同時」と言いますが、そうならない時もあります。上手く勢いを相手に伝えるという感じです。しっかり相手のことも掴みます。

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◆熱意と意欲

――メンタルが整っていないと思い切り行けないとのことですが、メンタルはどのようにして整えていますか?

タックルが怖いという気持ちよりも、「タックルに行きたい」「タックルで倒したい」という気持ちを持てるかどうかです。

――それは自分の心の中で戦っているんですか?

前向きな気持ちを持ってやるようにしています。

――Enthusiasm (エンスージアズム=熱意)という言葉も前回のインタビューでありましたが、この言葉はどこから?

大学生の時に栗原監督 (徹/慶應大学前監督/サンゴリアスOB)が言っていて、それが頭の中にあるんだと思います。

――栗原監督はみんなにどのように話していたのですか?

タックルの回数やボールキャリーの回数で、どれだけ意欲を持って臨めたかということです。例えばタックルに数回行って成功率100%よりも、何十回と行って成功率が低い方が価値がある、という話です。それを支えるのが、熱意とか意欲とかだと思います。

――意欲が持てていない時もたまにあると思いますが、その時は自分をどうやって盛り上げるのでしょうか?

1回良い形でコンタクト出来たら、波に乗れる感じがします。

――なかなか良いコンタクトが出来ない時には?

1回タックルに思い切り入ったり、タックル以外のボールキャリーで、そういうところを意識してやっていく感じです。どんどんボールキャリーをするとか。

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――今までタックルで悩んだことかありますか?

そんなに無いです。

――例えば相手が小さいと大きいとではどちらがやり易いですか?

ロックの背が高い選手は、懐が広い感じがして、タックルがやり易い気がします。足も長いですし、ロックの人には入り易い感じがします。

――バックスに対してはどうですか?

バックスに対しては、内から追って行って1対1になった時、横浜キヤノンイーグルス戦でも外されてしまいました。足が速い人にしっかりとついて行ってハンドオフに対応してタックルをするとか、そういうところをもっと上手くなりたいというのが、今の自分の課題です。

――それはテクニック面ということですか?

テクニックだと思います。やはり、大学の時よりも速くて大きくて強いバックスの相手を止められるようにするためのテクニックです。

――大きい選手に対してタックルする時の恐怖心はありますか?

あったり、なかったりしますが、そんなに無い方だと思います。

――自分の体は強いという自信がありますか?

慣れだと思います。リーグワンでも試合を重ねてきたので、そういうところの慣れもあると思います。

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◆ボールという意識で入る

――ジャッカルの上達の手応えは?

プレシーズンマッチで結構ジャッカルすることが出来て、この前のコベルコ神戸スティ―ラーズ戦でリーグワンで初めてジャッカルが出来て、今回の東芝ブレイブルーパス東京戦でも出来ました。自分の中では最初からジャッカルを狙うのではなくて、まずは自分がしっかりタックルしてデフェンスの良いフィジカルバトルの流れを作って、数回しかないジャッカルのチャンスをいかにものに出来るか、という意識でやっています。

――ジャッカルは特別に練習していますか?

小澤さん(直輝)と練習終わりに結構練習しました。

――どんなことを教えてくれるんですか?

まずはボールに絡む、ということころがしっくりきている考え方です。やはりボールを持っていないとすぐに剥がされてしまうので、ボールさえしっかり持っていれば体勢が悪くても耐えられることが多いなと思っています。ボール、ボール、という意識で入るようにしています。

――ボールに絡む時に重要なことは?

相手が寝てからリリースするのにもいろいろな体勢や速さがあると思うので、結構やっていて難しいですが、相手の体に隠れていたりもするので、それをしっかり見つけて、上手く相手の体ごと奪ったり、ボールが見えている時はボールを上手く掴むという感じです。

――ボールを掴むというのはパワーで掴むという感じですか?

パワーはそんなに無いです。体重もそんなに無いですし、パワフルというよりはボールの真上に立ってという感じです。上手くボールを持っていたら耐えられます。

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◆決勝まで続けたい

――自分の実感として今シーズンのこれまでの出来は良いですか?

タックルを初めコンタクトエリアやブレイクダウンでアピールしていくというのが自分の持ち味なので、そういうところでは出来ていると思いますが、改善点もいろいろあります。もっと安定感を持って、80分間良いタックルをし続けて、他のプレーも安定してミスなく、という感じでやりたいと思います。

――タックルは回数を重ねるとやはり体力は消耗するんですか?

そうですね、やはり試合の最後の方は、最初と同じ気持ちでは入れなかったりもします。

――Enthusiasmを意識して常にメンタルが整っているように感じますが

整っている状態の方が多いと思います。タックルに関するメンタルですね。

――試合に出続けて自分が目指していた本物に近づいていると思いますが、この先は見えてきていますか?

ずっと出続けて安定感のあるプレーをして、サントリーで活躍し続けたいです。そしていつかは代表の合宿に呼ばれるよう、今はしっかりサントリーでやるという感じです。

――今年のワールドカップに関してはどうですか?

2023年は、ワンチャンスというかチャンスは少ないかもしれませんが、2027年は絶対に獲るという意識で行かないとと思います。

――シーズン中盤、現時点での目標は?

ずっと7番で80分間出続けて、安定して良いタックルをし続けて、ブレイクダウンもボールキャリーも良い働きをして、それを決勝まで続けたいです。そして決勝でも7番で出て、優勝出来たら良いですね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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