SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2023年2月 3日

#834 小林 賢太 『毎日ひたすらやり続ける』

今シーズン、サンゴリアス初キャップを獲得し、出場4試合目に初先発。その試合で初トライも決めた小林賢太選手に、現在の心境を聞きました。(取材日:2023年1月下旬)

◆毎日が学び

――いま一番勢いがあると言われている小林選手、自分自身ではどうですか?

開幕6試合のうち4試合に出場しましたが、まずシーズン始まってファーストキャップを取ることが出来て、そこから徐々にプレータイムをいただけるようになり、結果的に先週の試合では初めてスタートで起用していただきました。「開幕でスタメンになりたい」という大きな目標がありましたが、自分が思い描いていたように選ばれなかった結果、自分の課題を見つめ直して取り組んできました。その結果がしっかり出て、良かったなと思います。

――試合出場そしてスタメンは皆が掲げる目標ですが、実際にそれを実現してみて、自分自身、成長の手応えを感じていますか?

そうですね、シーズン前から自分の課題はスクラムにあると思い、プレシーズンからそこに取り組んできました。でも開幕の時点では「戦えるレベルまで達していない」という評価だったことは、自分の中でも納得出来ていました。そこを強化しないと自分は試合に出られないし、まず前提としてそこが強くないと"戦えるプレーヤー"ではないと僕自身も感じていました。試合ごとに相手は違いますが、試合に出る度に自分自身のレベルが徐々にアップしているのかなと感じています。

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――元々スクラムには自信があったんですか?

1番というポジションに取り組み始めたのが大学4年生の時で、それもリーグワンに進んで1番をやるという目標を持って始めました。得意不得意というよりは元々3番をやっていたので、1番は本当にやってみないとわからないと思っていましたし、やってみるとやはり3番と1番は全然違います。同じプロップではありますが、3番は相手に挟まれていてバランスが担保されています。1番はアンバランスなポジションで、最初は右も左もわからない中でのスクラムでした。自信というよりは"毎日が学び"という感じです。

――1番と3番の大きな違いはどこにありますか?

いま言ったようなバランスが取れるかどうかというところが、いちばん違うところです。

――バランスを取るのが難しい?

そうですね、3番だとそれこそバランスが保たれているというところと、2人の相手からプレッシャーを受けるという一方で、1番は片方にしか相手がいないので、楽な方に逃げようと思えば逃げられます。押し方としては絶対に良くない押し方ですが、楽な方に行こうと思えば行けるというポジションです。

――自分が楽な方に行った分、味方が苦労するわけですよね?

はい、そうです。自分が楽なことをすることで、周りのプレーヤーに迷惑をかけてしまったり、自分たちのやりたいことが出来なくなるということがあるので、そういうところがアンバランスという部分では難しいと思います。

――そこはもう自分ではある程度納得する形でやれるようになったんですか?

そこはまだコンスタントに出せていないのが自分の課題ではありますが、その感覚というのは徐々に掴めてきていると思います。そういう形で組むスクラムも増えてきているので、そこにはとても前向きに取り組めています。

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◆挑戦してみたいという気持ち

――3番から1番に変わったのはどのような理由からですか?

高校1年生の時から大学3年生まで3番をやってきたので、1番でスクラムすることで苦労することは自分でも理解はしていましたが、それでも自分が挑戦出来る環境があるならやってみようかなと思いました。そこにチャンスがあるならチャレンジするのがいちばん良いと思いました。上手く行くかはわからなかったですけれど、まずは挑戦してみたいなという気持ちが強かったです。

――サントリーでは最初から1番ですね

サントリーでも1番にと言われましたし、会社の社風や、アタックを掲げるチームのプレースタイルなど、自分に合っているなと思いました。それこそ"やってみなはれ"という言葉を聞いて、自分がサンゴリアスに入って1番でプレーをするということや、社業とラグビーを両立することに挑戦することがマッチしました。

――話しながら思い描いているイメージが光り輝いているように感じますね

そうですね。今こうやって試合に出させていただいて結果として形になっているというのは、輝いているように見えている理由だと思います。ですけれど正直、葛藤もありましたし、挑戦してみたいという気持ちがあったものの、やはりやってみたことのない不安も大学生当時からありました。

――性格的には元々チャレンジャーではなく安定型ですか?

性格で言うと、安定型だと思います。ただラグビーの面では挑戦型で、今まで高校や大学の進路を選ぶ時にも、高校は地元の兵庫を離れて東福岡に行ったり、大学は早稲田で挑戦したりしました。そういうところで言うと、自分が思っている自分の性格と違い、ラグビーに関しては「やれるところまでやりたい」という気持ちがあって、そこは挑戦的なのかなと思います。そこがラグビーの魅力でもあるかもしれません。

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◆ラグビーを見るのが本当に好き

――元々ずっと3番だったということですが、3番をやるようになった経緯は?

これが3番になった理由だというのは、自分でもあまり記憶にはありません。東福岡高校に入って1年生の時に、リザーブでメンバーに入れていただいた時から3番のリザーブです。そこからずっと3番で、大学でも体が大きかったというのもあると思いますが、ずっと3番をやっていました。

ですので、これといった理由は思い当たりません。「3番をやりたい」という意思を持って始めたというより、自分の身体的には「プロップをやるんだろうな」というのもありましたし、自分の適正というところでは3番、1番のどちらかということになるんだと思いますが、3番が合っていると確信したということもなかったです。

――第1列であったり、そもそもフォワードをやるということは選択したんですか?

中学2年生の時には体重が100kgあったので、体の大きさ的には確実にフォワードだろういうことで、その辺りからプロップなんだろうなと思っていました。

――さらに他のスポーツではなくラグビーを選んだのは?

ラグビーを始めたのが5歳の時で、その頃から体が大きくて、体が大きいのが理由でラグビーに誘ってもらって始めました。他のスポーツにというよりは練習がきつかったりするのが嫌で、ラグビーを辞めたいという時期もありましたが、そういう時でもラグビーを見るのはとても好きでした。

小学生の頃、花園を見に行ったり、スーパーラグビーを見たり、自分の中ではそれが当たり前というか、ラグビーを見るのが本当に好きだったので、それでラグビーを続けていました。高校も大学も憧れていたチームに行くことが出来て、ラグビーをやるのが嫌いな時期もありましたが、ずっとラグビー自体は好きだったので、他のスポーツに移ろうという気持ちはなかったです。

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――ラグビーがなぜ好きなんですか?

うーん、何でですかね。小学生の頃、地元が兵庫だったので、花園にラグビーを見に行ったりして、シンプルに「かっこいいな」って思ったんです。その当時だと、垣永選手が花園で優勝していた時代で......うーん、どの辺が好きだったんだろう...?

――かっこいいと思ったポイントは?

その時の東福岡が圧倒的に強くて、オーラがあるというか、「かっこいいお兄さんたちだな」って思いました。

――力強さや強さでしょうか?

そうですね、力強くて強くて他を寄せつけない、そういうところが格好いいなと思ったのが、花園で生で試合を観た感想です。それ以外にもスーパーラグビーなどのレベルになると、日本のリーグでは見ることが出来なかったいわゆる上手いプレーを見ることが出来て、それが面白いと感じました。「こんなことが出来る人たちが世界にはいるんだ!」みたいな感じです。そこで面白いという感覚を覚えました。

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◆おやつがカレーライス

――今は体重どのくらいありますか?

今は116kgです。

――中学生の頃と16kgしか変わらない?

そうですね、その当時から大きかったですが、あまり変わっていないですね。けれど16kgは結構変わっているかもしれないです。

――中学生の時にそれだけ大きかった理由は?

生まれた時は2,600gくらいで小さかったそうですが、体を大きくするために、母親がご飯をたくさん食べさせてくれました。いま思えば自分でもよく食べていたなと思います。おやつがカレーライスでした。中学生時代、ラグビースクールの練習が夜の時には、練習に行く前に少しご飯を食べて、練習後にまたご飯を食べていました。

――生まれとき小さかったから、大きくなるようにというお母さんの思いですね?

そうですね。ラグビーをしているということもあって、大きくなるなら小さいよりは絶対に大きくなった方が良いというのもあって、体を大きくするためにたくさん料理を作ってくれました。

――その結果、日本のトップでラグビーをやるようになって、良かったと思いますか?

体が大きくなることが出来て良かったなと思います。

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◆ボールを触っている時

――先週の試合では初トライ、どんな気分でしたか?

嬉しかったです。あのトライの5分くらい前に、リスタートのキックから自分がキャリーしてペナルティーを取られて3点取られたということもあったので、何とかして取り返したいという気持ちがありました。その後のスクラムや一連の流れの中で、そのチャンスが来たという感じです。

――あの勢いで毎試合トライを取って欲しいなと思います

トライを取りたいという感覚よりは、チームに勢いをもたらしたいという感覚の方が大きいです。プロップというポジション柄、その勢いをチームにもたらすプレーはたくさんあると思うので、トライだけに限らず、フィールドプレーだったり、セットプレーだったり、トライにこだわらずに自分の出来るプレーで、ワンチャンスを逃さないようにやっていけるようにしたいなと思います。

――以前セットピースが課題と言っていましたが、6試合中4試合出てみて、今の課題は何ですか?

そこはやはり変わらず、セットピースのところです。まだまだ自分の形が確立出来ていないと思うので、そこの一貫性をしっかり出していけるようにしたいです。

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――今ラグビーをやっていて楽しいと思いますが、どの辺が面白いですか?

やはりボールキャリーです。「ボールを触ってプレーしている時がいちばん楽しいな」って、自分の中では思います。それが自分の強みだと思いますし、自分がプレーしている中ではいちばん楽しいと思う瞬間でもあります。

逆に先ほど課題に出したスクラムの部分で上手くいった時、一喜一憂しないということが必要だと思いますが、その1本のスクラムでペナルティを取って、チームのために何かプラスに出来た時は楽しいですし、自分は貢献出来ているなと思う瞬間でもあります。

――ボールキャリーでの面白さはどこにあるんですか?

自分でキャリーしたり、そこからパスをしたり、やはり球技をやっていますし、僕にとってのスポーツは球技なので、ボールを触っている時が「いちばん楽しいな」と思っています。スクラムにももちろん面白みがありますが、球技なのでやはりボールを触ってなんぼだと思います。

――これからの試合へ向けての目標をお願いします

しっかり試合に出続けて、チームの優勝のために自分が出来ることを、ただ毎日ひたすらやり続けるだけです。チームの優勝のために貢献出来たらと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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