2023年1月27日
#833 尾﨑 晟也 『もっともっと出来る』
開幕から5試合連続の合計10トライを挙げている尾﨑晟也選手。毎年バージョンアップして、今シーズンさらに絶好調の尾﨑選手が目指すラグビーを聞きました。 (取材日:2023年1月下旬)
◆走り方に力強さが出た
――5戦終えて安定して好調ですね?
そうですね、トライもよく取れていて、自分自身も好調だなと感じています。
――好調の原因は何ですか?
プレシーズンにしっかり準備してきたことが活きています。そして今シーズンやっているラグビーが自分にとってもハマっていて、さらに周りとの連携やコミュニケーションの部分も上手くいっていると思います。
――その「準備」の部分で新しく取り入れたことはありますか?
毎年プレシーズンにスピードやアジリティの部分を強化してきましたが、今年はウエイトのやり方とか、そういう細かいところも結構変化させてやってきました。S&C(ストレングス&コンディショニング・コーチ)と話し合って、自分の体の弱点の部分もしっかりと改善できたというのは、今シーズンの好調の1つの要因だと思います。
――その弱点とは何ですか?
筋力だけではなくて走る上で足首の強さが、今まで自分は弱かったんですが、プレシーズンのトレーニングの中で、足首の反発や細かい部分の蹴る力や、それらを使ってのパワーの出し方をトレーニングに入れてやってきたことによって、走り方に力強さが出たと自分の中で感じています。これまでは足首に不安定な部分がありって、毎年1回は捻挫をするという捻挫癖がありましたが、それも今は一切なくて、非常に良い状態だと思います。
――足首を強くするための鍛え方は?
足首以外の部分で言うと、まずお尻を鍛えるなどの根本的なところもありますが、ランニングの時に足首が弱いと、ベタっと足首が潰れているんです。それではパワーがなかなか出ません。そこで踵をしっかり上げて蹴ることを意識したウエイトトレーニングを、S&Cと一緒にやっているところです。
トレーニングの仕方を説明するのは難しいのですが、単純に今まではスクワットして下半身を鍛えていたとすると、より特化したトレーニングに変えました。J P (ジョン・プライヤー/S&Cアドバイザー) も、自分はどこが弱いのかということを、一緒に試合の映像を見ながら解析して説明してくれたりしました。そういうところで、皆にいろいろとサポートしてもらっています。
◆ハマっている
――「自分にハマっている」というのは具体的にどういうことですか?
今年の試合を見てもらってわかるように、例年以上によくボールを持ってアタックしているイメージだと思います。どんなところにも顔を出せるというか、フェーズアタックの中で自分がチャンスだと思ったところに顔をどんどん出して行けるというのは、自分自身の感覚的にも、とても良いところだと感じています。あとはプレーしていてスペースが良く見えるところが、「ハマっている」のかなと思います。
――「良く見える」というのは少し前にも言っていましたよね?それが継続していて、足の不安もなくなって、どこにでも行けるという感覚なんですか?
そうですね、足の不安があったから行けなかったということではありませんが、今のラグビーが自分としては良いハマり方をしているなと思います。
――「コミュニケーションの部分」というのは?
これは毎年やっていない訳ではないんですが、練習中からのコミュニケーションの質とか、プレシーズンにずっと一緒にやってきたメンバーだけではなくて、代表のメンバーも帰ってきて、オンフィールドとオフフィールドでのコミュニケーションがしっかり取れているというところです。映像を見ながら、スペースの共有やイメージの共有をしっかりと出来ていると思います。
練習が終わってからも、ゲームの映像を見ている時も、自然と「ここが空いていたよね」という話が多く出るようになってきたので、去年よりもさらに良いコミュニケーションが取れていると思います。全体的にみんなの意識がとても高いですし、より良くしていこうという気持ちが強いと思います。
◆より良いラグビーが出来ている
――これも以前言っていた「1試合1個ずつトライ取っていきましょう」って話が、いま実現していますね
そうですね、毎試合トライ出来ています。
――これはトライを取ろうという意欲が強く、その結果が出ているということですか?
そうですね、結果としてみんなが繋いでくれたり、トライが出来るポジションにいたということもあります。そしてシーズンが始まる前にサンゴリアス公式のYouTubeでも、「今年は個人タイトルやトライ王も狙っていけたら良いですね」ってコメントしました。そういう意味で、例年よりも「今シーズンは絶対にトライを取る」という気持ちは強いです。それが結果に出て、毎回自信に繋がっているなと思います。
――トライを取るごとに自信が大きくなった感じですか?
そうですね、自信がない訳ではありませんが、より良いラグビーが出来ているんじゃないかなと思います。
――自分でトライを取るだけでなく、ラストパスもありますね
はい、どちらかと言うと、自分はあまり個人技でトライを取っていく選手ではないと思います。周りと上手く連携しながら出来ているので、そこも良いかなと思っています。
◆ブレイクダウンが生命線になる
――チームは1敗のあと4連勝、今のチームの状態はどうですか?
開幕戦に負けましたが、そこからはみんな非常にポジティブにやろうとしていますし、本当に自分たちが実現させたいラグビーに必要なことを、毎回の試合で意識して出来ていると思うので、チームの状態としてはいま非常に良い雰囲気であり、向上心を持って出来ていると思います。
――その目指しているラグビーは完璧に近づいて来ていますか?
まだまだ完璧ではないと思います。毎試合ムラがあったり、例えばブレイクダウンの部分で反則を取られたり、ペナルティが多かったり。そういったところは、まだまだ今後の課題だと思います。「ブレイクダウンが生命線になる」ということはチーム全員が理解しているので、そこはまだまだ完成していないと思います。
――みんなボールへの反応が速いですよね?
はい、毎回の練習のスタートにブレイクダウンを意識したコンディショニングゲームをやるんですが、それが本当にみんなの意識を高めていると思います。練習のスタートにそれをやることによってみんなのスイッチが一気に入って、それがゲームのリアクションの部分であったり、ルーズボールであったり、そういう反応の速さに繋がっていると思います。
――では試合開始時のスイッチの入れ方は?
個人的には試合のアップまではリラックスして、頭の中を整理して、アップで徐々にスイッチを入れていくというイメージです。
――「頭の中を整理している」というのは、やることをシンプル化しているんですか?
はい、自分の役割とチームのゲームのテーマを自分の中でしっかり理解して、あとはそれをやるだけという感じです。
◆ワクワクした気持ち
――調子が良い中で、自分自身の課題は何ですか?
攻撃面で言えば、ボールにもよく触われているし、トライにも結果として繋がっていますが、毎年言っている課題のディフェンスはもっと上げていけるかなと思うので、ディフェンスの精度であったり、あとは個人的にブレイクダウンでプレッシャーをかけたり、ターンオーバーを狙ったり、まだまだ伸びしろがあるんじゃないかなと思っています。
――キッキングについてはどうですか?
キックに関しては、蹴り合いの部分で言うとキックの精度も高まってきていると思いますし、インプレー中のウイングとしてのキックも自信は結構あります。今はまだそれを使うシーンがあまりないので、そのチャンスがあればどんどん使っていきたいと思っています。
――あと、10番的なコントロールするプレーも課題に挙げていましたがそこはどうですか?
そうですね、今シーズンは15番に入ることはあまり無くてウイングの試合が多いので、コントロールをするという部分では去年より自分の役割は少ないです。ですが全体としてどう動けば良いか、また全体としてこうアタックすべきだというところは、外から見た視点を10番に伝えてあげるのが大事なので、そういった部分でゲーム中に手助けが出来たらと思っています。
――現状、楽しくて仕方がないですか?
そうですね。毎試合毎試合、楽しみですね。
――「もっとトライ取ってやるぞ」という感じですか?
はい、やる気には満ち溢れています。
――心配事は無いですか?
そうですね。心配事はいま無いですね。失敗してもどんどんどんどん、次に繋げていけたらと思っていますし、本当に「ポジティブにどんどん試したい」「もっともっと自分は出来る」というふうに、ワクワクした気持ちでいっぱいです。
――そうすると今シーズンは14番を極めたいですか?
そうですね、今14番の方が、調子が良いです。もちろん15番に入ることもあると思いますが、幸太朗さん(松島)もいますし、どこのポジションでも極めたい気持ちはあります。
◆もっと出来ます
――日本代表に関してはどうですか?
もう2023年のワールドカップの年に入りましたし、自分にとってアピール出来る最後の場所がリーグワンだと思うので、まずはここで結果をしっかり出すということが、代表にいちばん繋がっていくと思います。そういう思いで毎試合毎試合、1つ1つのプレーを全力でやっているという感じです。そこを評価してもらえれば、代表には繋がると思います。まずはリーグワンで結果を残すことを重点的にやっています。
――リーダーシップについてはどうですか?
練習の全体のポイントなどはキャプテン、バイスキャプテンがいるので、そういうところはリードしてもらっています。自分が思ったことを伝えたり、若手を引き上げたりするのが、自分が出来るリーダーシップなので、そういうところはどんどん発揮していきたいなと思っています。
――注目選手は河瀬選手とのことですね
本当にポテンシャルが高いですし、持っている男ですし、顔もイケメンです。
――初出場のファーストタッチでトライは、なかなか出来ないですよね?
そうですね、本当にボールをもらいたくて仕方がなかったんでしょうね。やはりあそこへ行くのも彼の実力ですし、あそこへ走っていく嗅覚とか、そういったところは素晴らしいなと思います。
――今回、インタビューする選手を選ぶ時、河瀬選手か尾崎選手か迷いました
僕は結構、インタビューしてもらっているイメージがあります。
――今シーズンのスピリッツは土曜、日曜の試合で活躍した選手にインタビューして金曜日に掲載していますが、今後もっと行けそうですか?
もっと出来ます。次にインタビューしてもらうのは、優勝してトライ王でベストフィフティーンとか、ぜんぶ終わった後にインタビューしてもらえたらと思います!すみません、少し調子に乗りました(笑)。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]