2022年12月27日
#828 田村 煕 『けれども、ラグビーの試合は楽しい』
開幕戦2日後のクラブハウスで多くのミーティングを重ねていた田村選手。司令塔としての自覚と責任感をベースに、 次への展望を語ってくれました。(取材日:2022年12月下旬)
◆勇気を持ってやり切る
――開幕戦の戦いは?
相手がしっかりと相手らしいスタイルでやってきたところに対して、僕がサントリーらしさを出せなかったところが自分の至らなかった点かなと思います。
――サントリーらしさを出せなかった原因はなんですか?
いろんなメンバーが帰ってきている中で、いろいろ考えすぎてしまった。相手のプレッシャーがかかった時に、やってきたことを勇気を持ってやり切ることが、できていなかったと思います。
――なかなか相手を突破できなかったように見えましたが
あれくらい空かないのは分かっていたんですが、自分が思っていたこととチームがここをやり切ってほしいというところとのバランスを考えた時に、相手の状況もあって相手に勢いがある中で、押しきれなかったというのが全てかなと思います。
――次戦への改善策はもう見えていますか?
相手によってやることは違うので一概には言えませんが、改善点を出るメンバーでクリアにして次にポジティブに向かうのはもちろんですが、それだけではダメで、この試合でどう思ったとか、どういう風に見えていたかとか、僕はこう思ったとか、人によって違うところが絶対あると思います。
まずはチームとしてこういう時に何をするか、こんな場合にはどうするっていうのは、今回相手側は明確だったと思うし、自分のチームも明確だったと思います。ただ試合の中で判断していく時に、少し動きが違うところが人によってあったと思います。これはスタンドの上から見ていてもそう思ったと思うので、そこをもう1回徹底したいです。
1シーズンかかって、どこかで手応えがある試合が出てくると思います。ただ今回はこの状況でも、勝たなきゃ行けなかったので、少し厳しいレッスンでした。最終節にまたクボタとあるので、僕もしっかり毎日成長して、最後に良い結果が出れば、その後のトーナメントにつながると思います。
――1回シーズンで負けるとしたら初めに負けるというのは考えようによっては良かったかもしれないですね?
サッカーのアルゼンチンもそうですが...、でも負けないことが一番なので、こういう時にこそまとまれるように、今しっかりどうしたら良いかを考えながらやっていこうという感じです。
◆チャレンジするラグビー
――今年も新しいチームになりましたが慣れましたか?
慣れなさは全然ないです。ちょっとなんか全然違うなとか、新しくなって難しいなとかは、皆ないと思います。ただ、僕も含め全員の、この時間帯、この状況、こういう時にこうするっていうのは、まとめていかなくちゃと思います。プレシーズンで時間をかけてやってきたものをベースに、新しいメンバーが入った時には何試合かかけて成長していきながら、フィットしていかないといけないなと思います。
――そうするとこれは毎年通らなきゃいけないという道ですか?
過去3シーズンとかはヘッドコーチもずっと一緒だったし、やるラグビーも変わってないし、サントリーらしいところもあったけれど、ある程度入ってきやすいような状況でした。ただ今年はやっぱりサンゴリアスが"チャレンジするラグビー"っていうのをやりたいという上で言うと、ある程度は時間がかかるのかなと思います。
――ギリギリ勝つよりも負けたことで、よりちゃんと見直すみたいなことはありますか?
最後は勝たなくちゃいけないので、ちょっとの「思ってたんだよな」とか、「こっちの方がいいと思うんだけどな」っていうのは、こういう負けから断ち切っていって、本当の意味で全員クリアにならないといけないと思います。
これがクリアになったら、みんな同じ方向を向いているので、たぶん大きな強みが出ると思うし、他のチームから見たら「ん?」って思うところも、自分たちのスタイルがあればいいと思うので、いまを大事にやっていかないとダメだなと思います。
◆100点満点中5点
――さらにキックの精度が上がったと思いますがどうですか?
いや〜、どのキックですか? 良いところもありましたがあんまりですね。判断とか精度も含めて...。
――司令塔としての反省はたくさんあるとは思いますが、1プレーヤーとしてはどうですか?
プレシーズンからトレーニングを積み重ねてきて、体だったり自信を持てるところはたくさんありますけれど、1プレーヤーとして見る上では、やっぱりある程度試合をクリアにトライブできるところもプレーヤーとしての判断基準になってくるので、まだ100点満点中5点くらいじゃないですかね。
――そういう時は自分に対して悔しいんですか?どのような感じですか?
まず、やってきたことが間違いだったとは全く思っていなくて、それを出しきれていないということです。出しきるために、自分だけでは出しきれないので、自分のプレーがクリアになるためにも、最初から完璧は無理ですが、チームとの中でのオーガナイズができてないというのが、自分のことになっていく前の話なんです。新しいことをやっているのでしょうがないですけど、そこをいま勉強中です。
◆自分の強みを出す
――シーズンを通して自分がイメージしていることはありますか?
自分の強みをしっかり出す、というところです。走るところもそうだし、キックもそうだし、アタックに関しては全般ですけど、そこはやり続けたいなというのはあります。ゲームドライブのところは、コーチが思っているところと自分が思っているところとをシャープにしていって、最後はチームの中でシステムで動いて、自分の強みをしっかりと色として出せるようにしたいなと、シーズンを通しては思っています。
ですが今はチームの中のコミュニケーションを取らないと、全部が悪いと思わないけれど、全員が同じこと考えていなくちゃいけないと思うので、今回に関しては相手がそこについては出来上がっていて、サントリーはこれからだったということだと思います。そうではあっても、勝ちたかったなというのはあります。
――自分自身でもっと行く、という部分はどうですか?
わりと出来てきていると思います。ただ、シンプルにいきたい時に前が見えて行っているというシーンが何回かあったけど、それ以外は行くしかなくて行っちゃってる、行きたくて行っているというよりは、チャンスがないし放れないから行こう、で行っちゃってるところがありました。そうではなくて、そういうシーンもあるけれど、なるべく自分で意思を持って走りに行くシーンを増やしたいなというのはあります。
◆サントリーらしさが出せるシーズン
――プレシーズンはかなり厳しいトレーニングでしたか?
毎年きついので覚えていないですけど、キツかったことはキツかったです。キヨさん(田中監督)が良いトレーニングをしてくれました。
――公式戦を1試合やってみて、改めてチームとしてはどうですか?
今とても皆ハングリーだし、それはキヨさんが監督になって、もう1回サントリーに備わったところで、とても良い状態だと思います。この先は誰もわからないけれど、ただ全員が同じ絵を見ることが出来さえすれば、そして「とても良いラグビーしたね」って、1回でもどこかでそうやって勝った時には、ポンって伸びるとも思います。
それぞれみんな個性があるし、良い選手が15人揃って、サントリーらしさが出せるシーズンになると思います。そのためにはコミュニケーションが大事だと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]