2022年12月16日
#827 齋藤 直人 『全員が泥臭くハードワークし続ける』
先週登場した堀越選手との共同キャプテンとなった齋藤選手。選手としてそしてキャプテンとしての、開幕直前の心境を聞きました。(取材日:2022年12月上旬)
◆驚き
――日本代表の活動での手応えはどうでしたか?
結果は出ませんでしたが、リザーブ2試合、先発1試合に出場させてもらい、その場に立てたことで経験させてもらったこと、あの空気とかを経験できたことは自分にとって大きかったと思います。
――実際にワールドカップが行われるスタジアムにも立ちましたね
そうですね。ただ、スタジアムがどうとかよりも、1試合でも多く、あのような高いレベルのチームと試合をすることで、目も慣れることを去年、今年と実感して、そういう意味でもあの場に立たせてもらったことが大きな経験になったと思います。
――目が慣れるとは、具体的に何に慣れるんですか?
スピードやフィジカルのところですね。自分も相手にぶつかったりもしますが、あれを初めて見たらビックリすると思います。大学からリーグワンに上がった時にもそうでしたが、それを経験しているかどうか、1度見ているかどうかによって、差が出ると思います。
――最初に見た時は、まだ対応が出来なかった?
去年、初めて代表に入って、その時はそんなことも思わずにガムシャラにやっていましたが、今よりもそう感じた部分はあったと思います。
――スピードは齋藤選手の強みでもあると思いますが、通用すると感じましたか?
テンポの部分を出していかないと、僕も日本代表も戦えないと思います。目が慣れた部分として、スピードもそうですが、単純に相手の身体の大きさに対してもあります。
――国内でプレーしている時よりも相手が大きいということですね
間違いなくそうだと思います。
――相手が大きいと、予想していたよりも早く近づいてくる感覚とかあるんですか?
それは分からないですが、試合の入場の前に並んだ時ですね。特に僕は日本でも小さいほうなのに、日本でプレーする時よりも、明らかに相手が大きいと感じます。最初はそれで驚いていましたね、そう思うと、U20日本代表の時には、そこでかなり驚きましたし、怖いという感覚もあったことをよく覚えています。
――それを経験することで、怖くないと感じるようになったんですね
毎回、大きいとは思いますが、怖さはあまりなくなりましたね。経験をしたことで、「やれる」と思えるようになったと思います。
◆自分の強み
――今回の3試合、選手たちはみな勝つつもりで試合に臨んでいたと思いますが、やりようによっては勝てるという感覚は掴めましたか?
こうやったら勝てるというところは分からないですが、手も足も出ないという感覚は一度もありませんでした。
――手も足も出せるヒントのようなものはありましたか?
やはりアタックは日本代表の強みだと思うんですが、サインプレーもそうですが、自分たちがやろうとしたことが出来た時には、そう感じましたね。
――それには、齋藤選手のスピードが貢献していましたか?
スピードだけではありませんが、まあ大事だと思います。
――トライについてはどうですか?
どちらもサポートしてもらったので、あのトライは自分の強みでもありますし、9番の役割でもあったと思います。
――流大選手もトライをしましたし、9番のトライが目立ちましたね
そうですね。
――日本代表でもリーダーグループに入っているんですか?
入っています。
――リーダーとして日本代表で気をつけていることは?
ミーティングなどで言われたことは、まずリーダーがパフォーマンスで示すということを口酸っぱく言われました。そこは学びでもあって、今シーズン、サンゴリアスでキャプテンをやる上で、自分も大切にしたいと思うことのひとつですね。
――伸びる要素が増えましたね
まあ、でもキャプテンなので、自分のことだけではいけないと思います。ただ、まずはそこを大切にしないと、何も始まらないと感じました。
◆スピードと仕掛け
――日本代表でもサンゴリアスでも共通しますが、9番争いについては、実際にやっている本人は楽しんでますか?
争いが楽しみというよりは、サンゴリアスとしてラグビーをプレーすることが楽しいです。もちろん勝ちたいですし、9番のジャージを着たいですが、そこに対してストレスは、今は無いですね。
――お互いに高め合っている感じですか?
僕はそうだと思います。前までは全部を真似しようと思っていましたが、今は自分は自分と思っています。もちろん良いところは真似したいんですが、強みも違いますし、伸ばさなければいけない部分もありますが、自分のスタイルを大事にプレーしたいと思っています。
ユタカさん(流大)がこうだから、自分はこうならなければいけないという気持ちは、今はありません。そこは日本代表に行ってコーチから言われて、気づけた部分でもあると思います。
――自分の強みはどこだと自覚していますか?
先ほども話に出たスピードとか仕掛けは、自分の強みのひとつだと思っています。
――サンゴリアスでプレーすることが楽しいところは、アグレッシブ・アタッキング・ラグビーというスタイルですか?
そうですね。見てもらえれば分かると思いますが、昨シーズンとは明らかにラグビーが変わっていて、アタックにおいてもっと9番が重要な役割を担うと思うので、そこはとても楽しみです。
◆仕掛け
――今の課題、テーマは何ですか?
課題というか伸ばしたい部分としては、仕掛けのところとハイパントキックだと思います。
――どちらも相手がよく見えてないと出来ないプレーですね
そうですね。特に仕掛けの部分はそうだと思います。
――その部分は極端に言えば、360度見えるという状態ですか?
いま、結構いい感覚は掴めてきていると思います。まだすべて見えてはいませんが、前まではクリーンブレイク、自分が抜くことを狙っていました。日本代表期間を経て、自分が少しでも相手のギャップを突いて、捕まりながらも味方にパスして、結果としてラインブレイクに繋がるようなプレー、ゲインラインを切れるプレーの感覚が掴めてきています。
今は自分がクリーンブレイクすることよりも、味方がゲインラインを切ること、自分の動きによってチームが前に出られることがターゲットと思えるようになって、仕掛けやすくなったと思います。
これまでは自分で100点を狙いに行こうとしていましたが、その100点を自分がクリーンブレイクすることと置いてしまっていました。そのターゲットをチームが前に出ることに置いてからは、積極的に仕掛けられるようになったと思います。
――相手に自分が捕まることで空いたところを、チームとして狙いに行くというような感覚ですか?
それはどっちもですね。空いていれば自分が走らなければいけませんし、そこはどっちもだと思います。
――おとりになりながらも、その次のプレーのために味方について行くという動きは大変ですよね
そうですね。ただ、今シーズンやっているラグビーとしては、そういうシーンがちょっとずつ増えてくると思います。そういうシーンを作りやすくなっていると思うので、そこはひとつ成長できるところかなと思います。
――それが上手くいけば、トライ王も狙えそうですね
いやいや(笑)。それでチームが勝てば、そうですね。
◆やるべきことは変わらない
――今シーズンは堀越選手との共同キャプテンになりますが、堀越選手のどこが面白いですか?
ああ見えて変なことをします(笑)。周りからいじられたら、その期待に応えるようなことをします(笑)。
――その面白さを引き出すのも、もう片方のキャプテンとしての役割かもしれませんね
周りが自然とやるので、意図してはやらないと思います(笑)。
――キャプテンが2人ですが、その中でも自分の役割は大きいと思いますか?
キャプテンである以上は、そうですね。
――キャプテンに向いていると思いますか?
いや、どうですかね。キャプテンとしてもキャプテンじゃないとしても、あまりやるべきことは変わらないんじゃないかと思いますね。逆にこれまでやってきたことを見てもらって、キャプテンに選んでもらったと思っていますが、周りに影響を及ぼそうと思ってやってきたわけではありませんし、そこは変わらずにこれまでと同じようにやっていきたいと思います。
――今シーズンの目標は?
チームとしてはやはり優勝です。ミーティングでキヨさん(田中澄憲監督)が言っていましたが、"SUNGOLIATH PRIDE" というスローガンがあって、色々な意味が込められています。サンゴリアス"らしさ"という部分では、例えば泥臭さだったり、ハードワークが求められると思います。
外からサンゴリアスを見たら、良い選手がいてタレントが揃っていて、華があるチームと感じるかもしれませんが、サンゴリアスらしさはそうじゃないんです。全員が泥臭くハードワークし続けることが大事だと思います。サンゴリアスに合流して、ミーティングに出て感じましたが、他のメンバーはずっと言われてきたと思うので、そういったところを大事にして優勝したいですね。
――元スクラムハーフの監督だから、言われていることが分かりやすいなどはありますか?
キヨさんがスクラムハーフだったからと感じたことはありませんが、キヨさんが大事にしていることとかは、とてもよく分かります。
――個人としての目標は?
これというものはありませんが、成長し続けたいですね。もちろん試合にも出たいですし、成長し続けたいです。
――今の時点では自分の成長に満足していないということですね
もちろん、ぜんぜん。限界はないと思っているので、どんどん課題は出てくると思いますし、逆に見つけていかなければいけないと思うので、そういうシーズンにしたいですね。
――このインタビューは開幕戦前日に掲載されますが、開幕戦前日はどう迎えたいですか?
やはり自信を持って、必ず明日の試合に勝てると全員が思って、開幕戦に臨みたいですね。気持ちの面もそうですし、戦術としても全員が自信を持って、このエリアでこういうことが起きたら、こういう選択をするという、そういうことを理解した状態で試合に臨めれば、自信を持って臨めると思います。そういった準備をして臨みたいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]