2022年11月25日
#824 森谷 圭介 『強みを見つめ直して磨き直す』
移籍2年目にしてバイスキャプテンとなった森谷圭介選手。その役割について、そして自身のプレーについて、さらにその性格についてなど、多方面から聞いてみました。 (取材日:2022年11月上旬)
◆意見を求められる
――今シーズンからバイスキャプテンになりましたが、バイスキャプテンの話が来た時に思ったことは?
想像もしていませんでした。もちろんその話をもらった時は嬉しかったです。
――学生時代も含め、これまでキャプテンやバイスキャプテンの経験はありましたか?
高校の時とサンウルブズでキャプテンを務めました。
――自分自身のリーダーシップについてはどう思っていますか?
特にないと思っています(笑)。これまでチーム全体を見るということをあまりしてきませんでした。違うことに集中していたり、周りのことを見ている時に自分のパフォーマンスが落ちたりするので、ここ最近はあまり考えないように、わざと見ないようにする気持ちでやっていました。
――そんな状況の中、バイスキャプテンに指名されたというのは、どんな役割だと思っていますか?
キヨさん(田中澄憲監督)からは、「バイスキャプテンになったからといって変わって欲しくない」と言われましたし、昨シーズンのことを評価してもらって任命されたと思っています。「大きく変わって欲しくない」と言われましたし、自分自身、大きく変わるつもりもなくて、そういう考えで動いています。
――昨シーズン評価された部分はどこだと思っていますか?
昨シーズン、サンゴリアスに移籍をしてきて、意見を求められることが多かったんです。やっぱり外から入ってきて、客観的に見ることができたり、それまでいたワイルドナイツは違う雰囲気のチームなので、良いところを真似しようという考えもあると思います。また外から見たサンゴリアスについて、意見を求められたりしました。
◆ずっとボールを持ってアタックする
――外から見たサンゴリアスについて伝えた時、チームはどんなリアクションでしたか?
いや、あまりギャップは無かったと思います。外から見ていたサンゴリアスの強みと、サンゴリアスの中の人たちが思っている強みで、ギャップはそんなになかったですね。
――具体的に、外から見ていた時のサンゴリアスの強みはどこでしたか?
ラグビーのことで言えば、アタックの部分です。サンゴリアスが優勝していた頃は、アタックにはこだわりを持って、されたら嫌なこと、例えばずっとボールを持ってアタックするというのは、相手からしたら嫌な部分ですね。その部分は、サンゴリアスにいる人たちも同じ意見を持っていますし、やられて嫌な部分でした。
――サンゴリアスが気づいていない弱みはありましたか?
ワイルドナイツは選手が主体的で、選手がこうしたい、ああしたいということをコーチと一緒に作っていました。それとは逆で、良くも悪くもトップダウンのチームだったと思います。昨シーズン、サンゴリアスに加わって、ミルトン(ヘイグ/前監督)は「主体性を出して欲しい」という感じだったので、そこで選手が作っていく経験値の少なさは感じました。
――そういうところで発言の機会も多かったんですか?
ワイルドナイツがそういうチームで、そういう環境の中にいたので、サンゴリアスもそういう感じでチームを進めるんだなと、あまりストレスは無かったですね。強かった時のサンゴリアスは、スタッフがラグビーを作ってくれて、選手はそれを120%やるという文化のチームだったの思うので、そこの違いは感じましたね。
◆もっと上手くいくための決まり事
――選手が主体性をもってやるという部分は、1シーズンやると出来るようになるものですか?
もちろん能力が高いですし、ラグビーIQが高い選手がたくさんいるので、出来ると思いますし、出来ていた部分もたくさんあったと思います。それによって、絶対的な強みは少し薄れたかもしれません。まだ1シーズンしかいないですが、そういう部分は少し無くなったのかなと感じます。
――その部分は、今後、どうなっていくと思いますか?
今までやってきたことだと思うので、もう一度戻すじゃないですけど、もう一度強みを見つめ直して、再度磨き直すというシーズンになると思います。
――ワイルドナイツには追いつくには、その上で更に伸びていく部分が必要でしょうか
ただ、僕がワイルドナイツにいた最初の2シーズンはサンゴリアスが優勝していて、ここ2シーズンはワイルドナイツが優勝しているので、地力であったり文化であったり、そういうところで引けを取っていることは無いと思っています。チームがひとつになって、強いラグビーをもう一度作っていければ大丈夫だと思います。
――自分たちがやりたいラグビーは、選手たちはどうやって見つけていくものなんですか?
今はどうか分かりませんが、例えばワイルドナイツにいた時には、イメージは大枠をスタッフが決めてくれて、中の小さい決まり事やもっと上手くいくための決まり事をちょっとずつ選手が作っていきました。
「あれするな」「これするな」ということは特になくて、大枠の大きいルールを決めてもらって、その中でいちばん上手くいくように動けるルール作りや共通認識をプレーしながら作っていっていました。そういう感じで、スタッフと一緒に喋りながら、やりながらちょっとずつ作っていくイメージですね。
――そのやり方と照らし合わせて、昨シーズンのサンゴリアスのやり方はどうでしたか?
作っていく上で上手くコミュニケーションが取れなかったところだったり、そういう作業が遅れてしまったところはあったかもしれないですね。
――そういう物の見方が出来るという部分を、今シーズンはチームから求められているんでしょうね
どうですかね。あまり考えないようにしています(笑)。
◆チームに残っている選手が100%準備しておく
――今シーズンにやるべきことは全員が見えていますか?
そうですね。最初、リーダー陣とキヨさんと話したときに、今シーズンでチームとしてやることを明確にして、日本代表や外国人選手が帰ってきた時に、ずっとサンゴリアスにいる選手がいちばんアドバンテージを持っている状態でスタートすること。その上でコンペティションが出来るように、チームに残っている選手が100%準備しておくことということを話しました。もちろんシーズンに入ってラグビーが変わったりしませんし、いま作っているものを更に磨き上げていくイメージで動いています。
――それに向けて、上手くチームが回り始めていますか?
そうですね。良くなっていると思います。
――キャプテンの2人が日本代表でチームにいない状態ですが、バイスキャプテンとしてリーダーシップを求められていると思いますが、どうですか?
そうですね。でもホッコ(ハリー・ホッキングス)もいるので、最初に言ったように考えないように(笑)。周りに経験豊富な選手がたくさんいるので、もちろん空気が悪かったり、良くない状況の時など、出るべき時には出ると考えてはいますが、今はまだ特に出る必要なあまりないですね。
――バイスキャプテンの中で、フォワードとバックスに役割が分かれていることはあるんですか?
分かれて練習をすることもあるので、役割が分かれている部分もあります。ただ、情報の共有はするようにしています。フォワードがどう思っているのかという部分は、ホッコが周りの選手と話していることを聞いたりしています。
――外国人と日本人という部分もありますか?
ホッコはフレンドリーな性格ですし、僕がそんなに英語を話せないので、細かい部分や外国人選手がプレーして思っていることとかをホッコから聞いたりしています。僕も出来る限り直接聞こうとは思っています。
今シーズンは、色々なところから意見が出るというよりは、やっぱりひとつになるために同じイメージでラグビーすることを意識しています。僕らが聞いた意見やこうしたいという考えを、キヨさんやスタッフと話して、また大枠をミーティングで提示してということを繰り返しています。
――サンゴリアスの場合、キャプテンが2人でバイスキャプテンも2人という体制が初めてになります。その体制についてはどうですか?
どうですかね(笑)。個人的には2シーズン目で、そういう役職を与えられたということは、評価してもらっていると感じますし、もちろん嬉しいですね。キャプテンが僕よりも若くて、ホッコもそうですけど、みんな練習中に態度で示せる選手たちだと思います。ただ、喋るのが上手な選手はあまりいないので、それぞれが上手いこと仕事できれば、補い合えるのかなと思います。
――過去に複数キャプテンを経験した流選手からの共同キャプテンでのアドバイスを話してもらいましたが、遠慮をしないでトコトン話し合えという話をしていました。それはバイスキャプテン同士やキャプテンを入れた4人の中でも、そう感じますか?
選手同士ももちろんそうですが、僕はスタッフとも遠慮をせずに話す必要があると思っていて、それも出来ると思っています。ホリ(堀越康介)や直人(齋藤)からは選手間での遠慮のなさは感じるので、選手同士はもちろん遠慮なしに話せると思います。その間に入れるようにできれば良いなと思っています。
◆やれるという手応え
――昨シーズンのリーグワンでは7試合に出場しましたが、それについてはどんな印象ですか?
もちろんもっと出たかったですけど、その前のシーズンはワイルドナイツで1試合も出場できていなかったので、試合に出られて楽しかったですね。
――出来はどうでしたか?
ラッキーな部分もたくさんあったので、出来自体はボチボチかなと。ただ、やれるという手応えはあったので、もっとチームにフィットして活躍できれば良いなと思っています。
――そのための課題は何だと思っていますか?
自分のプレーを知ってもらうということは結構できたと思うので、あとは他の選手のことをもっと知ることだったり、コミュニケーションの部分だったり。また個人的にスキルやパワーの部分で足りないところがたくさんありますが、そういうところをちょっとずつつけながら出来ているので、楽しみですね。
――スキルとパワーについては、具体的に言うとどういったところですか?
パワーの部分は、亮土(中村)や将伍(中野)だったり、センターの選手が持っているものを持っていないと思っていて、フィジカルの部分で負けていると思っているので、そういったところはしっかりとやろうと考えています。
スキルの部分で勝っている部分はたくさんあると思っているので、その精度だったり、その精度を上げるためのコミュニケーションだったり、こういう場面でこのプレーを選択するかもしれないと思ってもらったり、そういう部分を練習中だったり、練習の映像を見ながら話が出来ればと思っています。
――パワーはついてきましたか?
見た目で分かるようなつき方はしていないですね(笑)。もっとついた方が良いだろうなという思いはありますが、プレーをしていて全く足りないとは感じないので、コツコツできればと思っています。過去に怪我をしたことあって、一気にパワーをつけてしまうと負担がかかる箇所が出てきてしまうので、本当にコツコツやっている感じです。パワーについては、見た目や体重、扱える重さだけじゃないと思っています。上手に身体を使うトレーニングだったり、コンタクトする時の姿勢だったり、そういう部分も含めてやっています。
――やっていて面白いでしょう
面白いですね。今は主にセンターをやっていますが、ボールを動かすチームだと思っていますし、10番だけがコントロールするチームではないと思うので、フィジカルだけの状態にならず、10番でもプレー出来るくらいのスキルを持っておけるようにやっています。
◆選手から積極的に質問が出る
――このインタビューの日程調整などから慎重な感じが伝わってきたんですが、自分の性格はどうですか?
合宿中のスケジュールが読めなさすぎて、前日の夜に次の日の空き時間でのミーティングが入ったりしていたので、空き時間が本当に空き時間になるのかが読めませんでした。慎重というより、予定が分からなかったんです(笑)。
――今回の和歌山合宿は、次に何をやるか分からないような感じにした合宿だったんですか?
チームとして、そういう部分もテーマとしてありました。あとはキヨさんから僕とホッコに、「今度、選手にこういうプレゼンをするけど、選手目線で、疑問や分からないところがあれば教えて欲しい」と言われてミーティングをすることもありました。
――そのプレゼンで分からない部分などもあったりしたんですか?
いや、そんなになかったですね。「これについてアナウンスしますか?」とか、「こういう時にはどうするんですか?」とか、そういうことはもしかしたら質問で出るかもしれませんと話をさせてもらいました。
――実際に選手からも同じような質問が出たりするんですか?
キヨさんだけじゃなく、他のスタッフも、質問が出ることを予想して答えを用意していることが多いですね。選手からも積極的に質問が出るので、予想していた質問が出ると、笑っていたりしますね(笑)。いい方向に進んでいると思います。
――田中監督の同期には、大久保直弥さん(静岡ブルーレヴズアシスタントコーチ)、沢木敬介さん(横浜イーグルス監督)いて、3人目の監督ですね
僕がサンウルブズでキャプテンをやってと言われた時が、ヘッドコーチが大久保さん、コーチングコーディネーターが沢木さんでした。
◆自分らしくいさせてくれる
――自分自身の状態はどうですか?
良いとは思います。少し怪我をしていますけど、身体の動きなどは良かったですし、先に戦術やラグビーのことを話す機会が増えたので、昨シーズンよりも頭の中がよりクリアな状態でプレー出来ていると思います。それを選手に伝える役割もあるので、ちょっと役割が多いなと感じる部分はありますけど(笑)。
――移籍してきたという感じではなく、もうサンゴリアスのメンバーになり切っているという感じですか?
そう思っています。まだ2年目かという感じですね(笑)。昨シーズン、「1年目とは思えねーなー」といういじり方をされていました。偉そうだったんですかね(笑)。
――そういう意味では、先ほどこちらが言った慎重派とは違いますね
いや、チームへの入りはだいぶ慎重でしたよ。人見知りでもあるので、1~2ヶ月は慎重でした。周りにいてくれる人たちが良かったと思います。大学の先輩も後輩も含めてですが、自分らしくいさせてくれる人が多いですね。
――今シーズンの目標をお願いします
数シーズン優勝をしていないので、チームとしての目標は優勝することです。あとは、やっぱりサンゴリアスらしさというか、見ていて楽しくて、面白い試合をたくさんすることです。個人としては、そういった試合、決勝などで、グラウンドの上でプレーできるようにすることです。
――そのためにはどういったことに気を付けていきたいですか?
やっぱり信頼されることはとても大事だと思います。同じポジションに亮土さんや将伍の日本代表選手や色々な選手がいるので、自分が良いプレーをすることがいちばん大事で、それに加えて、信頼される行動、言動で、サンゴリアスの中で大事な存在になれるようにしたいと思っています。
――ツイヘンドリック選手も同じ大学で、ワイルドナイツから移籍してきたという共通点がありますが、よく話をしたりしますか?
よく話しますね。大学の先輩で、面倒見がよくて、良くしてくれるので、よく喋ったりします。
――ツイ選手も移籍してきて、なかなか優勝できませんでしたが、ワイルドナイツを破って優勝した時は、本当に嬉しそうでした
僕もそうなれるようにしたいですね。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]