2022年9月30日
#816 河瀬 諒介 『ラグビーは身体の使い方が自由』
父親が日本代表選手だったという河瀬諒介選手。OB有賀剛選手以来の親子二代ジャパンを目指して、いまどんなステージにいるのでしょうか。(取材日:2022年8月下旬)
◆ハイボールキャッチ
――1シーズン目を終えましたがどんなシーズンでしたか?
練習に参加して、率直な感想としては、改めてレベルが高いと感じました。もちろんサンゴリアスで試合に出て日本代表になるという目標を持って入ってきましたが、ここで試合に出ることは、なかなか簡単なことではないなと改めて認識されられました。
次のシーズンに向けてオフシーズン期間中が大事になってくると思うので、今はスキルやフィジカル面を強化していて、次のシーズンで試合に出られるように頑張りたいと思っています。
――周りのレベルの高さを感じてどうなりましたか?
入ったタイミングがシーズン中でしたし、シーズン佳境に入っていく中で、自分がミスすることで練習のクオリティが落ちてしまうんじゃないか、あまり自分が前に出ない方が良いんじゃないかと思ってしまい、なかなか練習で前に出ることは出来なかったと思います。
――あまりガツガツした性格ではありませんか?
最初はガツガツ行こうと思っていたんですが、練習中にミスをしていましたし、だんだん自信が無くなってしまっていったので、そういう気持ちになってしまったのかなと思います。
――その中で、通用すると感じた部分はどこですか?
ほとんどなかったんですが(笑)、大学の時にはハイボールキャッチを強みにしていて、その部分はしっかりと取ることが出来ていたので、通用する部分なんじゃないかなと思っています。
◆フィジカル
――今の課題は何ですか?
まずはフィジカルの部分ですね。やはり大学とはレベルが違うと感じたので、フィジカルは第一に強化しなければいけない部分だと思っています。
――大学時代はフィジカルも長所だったのでは?
そうですね。今までは苦手意識はなかったですね。大学に入ってすぐの時にも、フィジカルが足りないと感じたので、強化してきたつもりでしたが、サンゴリアスに入って更に鍛えなければいけないと感じましたね。
――ステップ、スピードそしてハンドオフが得意であり長所なのでは?
そこに対する自信はありますが、なかなかそういうチャンスは巡ってこないですし、スピードやステップだけじゃ通用しない部分があると感じています。
ハンドオフについては、練習で手が出ない時がまだまだあるので、常に色々なオプションを持ちながら出来たら良いかなと思っています。今まではあまりオフロードを意識していなかったんですが、サンゴリアスに入ってから意識するようになって、相手との距離を作るためのハンドオフなど、まだまだ出来ていないなと感じます。
◆コール
――その他に課題はありますか?
コミュニケーションの量のところで、サンゴリアスには外国人選手もいて、自分がどうして欲しいのかなど、そういうコミュニケーションを取ることが難しいと感じました。
――フルバックとしてのコミュニケーションも必要になりますね
そうですね。大学とは違うコールなどを、まずは覚えなければいけないというところから始まって、サンゴリアスはコールの種類も多いですし、まずはそれを覚えるのが大変でした。そして、それが練習中に咄嗟に出ないということが結構ありました。
――コールについては復習したりするんですか?
コールがまとめられて表を送ってもらって、それを見てしっかり勉強することと、分からないコールがあれば先輩に聞くようにしていました。
――コールについてはもう大丈夫ですか?
そうですね。このオフで忘れている部分もあるかもしれません(笑)。
◆スイミング・野球・バスケットボール・卓球・サッカー...ラグビー
――これまで色々なスポーツをやっていますね。子どもの頃から運動神経が良かったんじゃないかなと思うのですが、どうでしたか?
運動することが大好きでした。僕の記憶が正しいか分かりませんが、水泳は姉2人がやっていて、泳げた方が良いだろうということで親がスイミングスクールに連れて行ってくれたと記憶しています。野球については、いちばん上の姉が好きで、その影響で僕も家で野球を見ることが多かったんです。それで楽しそうだと思いましたし、幼馴染が野球をやっていたので、小学2年から4年まで一緒に野球をやりました。
ボーイズリーグと呼ばれるところに所属しているチームで、硬球のボールだったんですね。打席に入った時にピッチャーのボールが顔面に当たってしまって、もともとそんなに上手ではなかったところにそんなことがあったので、怖くなってしまって野球を辞めました。
野球は土日が練習で1日中練習していたので、その練習が無くなると、土日にやることが無くなってしまって、暇だなと思っていたところに、近くの小学校で土曜日にバスケットボールをやっていることを知って、見学に行きました。それで面白いと思ってバスケットボールをやろうと思ったら、そのバスケットの練習の後に同じところで卓球もやっていて、だったらバスケットと卓球をセットでやろうと思い、どちらも始めました。
――その他に、サッカーもやっていたんですよね?
サッカーは小学6年の時に、友だちに誘われて、その時にはラグビーをやっていたので、「ラグビーが中心になっちゃうけどやるか」って軽い感じで始めました(笑)。
――これだけ色々なスポーツをやっていた、なぜラグビーを始めたんですか?
バスケットを始めるタイミングと同じタイミングでラグビーも始めたんですが、バスケットは土曜日だったので日曜日が空いていて、どうしようかなって考えていたら、父親の知り合いがラグビースクールのコーチをやっていて、見学だけでも行ってみようと思いました。
実際に見学に行ったら、同じ学年の子たちが優しくて、コーチも含めて、初めての僕にラグビーのことを色々と教えてくれて、その雰囲気がとても楽しいと思ったのでラグビーを始めました。
◆フルバック
――本格的にラグビーを続けようと思ったのは?
中学の部活にサッカー部とラグビー部があって、正直、どっちをやろうか迷いました。1週間体験入部が出来る期間があったので、とりあえずサッカーもラグビーもどっちも行ってみようと思って、初日にラグビー部に行って、2日目にサッカー部に行って、サッカー部の部室で着替えていたら、同級生でサッカーをやっていた子に冗談ぽく「ラグビー部は出て行けよ」って言われて。それに腹が立って、それだったらラグビー部に入ろうと思って、ラグビー部に決めました(笑)。
――これからもラグビーを続けていこうと思ったのはいつ頃ですか?
元々、高校生くらいまでは続けようと思っていて、中学は強豪校ではなかったので、大阪でベスト8くらいの高校でラグビーを続けられれば良いかなくらいしか思っていませんでした。中学3年で大阪代表などに選んでもらって、ちょっとずつ自信がついてきて、全国で一番を狙うような高校で自分がどれだけ通用するんだろうかと試したくて、東海大仰星高校に行くことにしました。東海大仰星に行くことを決めた時くらいに、これからもラグビーをやっていこうと決めました。
――ラグビーが自分に合っていたのは、なぜだと思いますか?
身体を動かすことがとても好きで、ラグビーは走っても良いし、身体をぶつけても良いし、ボールを蹴っても良いし、いわば究極のスポーツと思っています。バスケットはぶつかってはいけませんし、サッカーもぶつかったらファールになってしまいますし、ラグビーをやってしまうと、そういうことにフラストレーションを感じるようになりました。そういうところでラグビーは身体の使い方が自由で、そこが自分に合っているのかなと思います。
――ポジションはずっと同じですか?
いや、中学生くらいまでは、スタンドオフやセンターを中心にやっていて、高校に入ってからバックスリー中心になりました。中学の大阪代表の時に初めてフルバックをやって、そこからフルバックが楽しいと思い始めて、高校ではフルバックやウイングをやろうと思いました。
――当時から足は速かったんですが?
速かったと思います。
――フルバックの楽しさはどこに感じましたか?
キックカウンターや常に自由に動けるところが楽しいと思いましたね。
――色々なことを覚えて分かった上じゃないと自由に動けないと思いますが、それが出来るのはいつ頃になりそうですか?
それは出来るだけ早く。チーム全員での練習が始まるころには完ぺきにしたいと思います。
◆常翔学園・明治・東芝・日本代表
――先ほどお姉さんの話がありましたが、スポーツ一家なんですか?
そうですね。全員スポーツをやっていました。他の家族でトップレベルでやっていたのは父親くらいで、父親も元ラグビー選手で、高校は今の常翔学園、大学は明治で、その後は東芝でプレーして、日本代表にも選ばれていました。
――お父さんのポジションは?
No.8でした。
――お父さんの影響でラグビーを始めたということもありますか?
それはほぼないですね。
――お父さんから、今なにか言われたりしますか?
いや、特に。ラグビーに関しては、父親からは何も言われたことはありません。父親は教師や指導の道に進みたいと思っていたみたいで、確か東芝を3年くらいで辞めていたと思います。摂南大学の教授をやりながらラグビー部の監督をやっていたので、教員をやりながら日本代表に行っていたみたいです。
――応援に来てくれますか?
応援はよく来てくれます。予定が合えば、姉たちも来てくれますね。
◆ワールドカップ
――いま感じているラグビーの楽しさは?
ラグビーって何でも出来て、それはラグビーにしかないところだと思いますし、そこにずっと楽しさを感じています。
――次のシーズンの目標は?
レギュラー番号のジャージを着て試合に出ることです。大学の時に、スタンドオフ、センター、ウイング、フルバックをやらせてもらっていて、正直、どのポジションでも出来るという気持ちがあるので、15番までのジャージを着られるなら、あまりこだわりなくやっていこうと思っています。
――その自信は?
今は若手だけで練習していて、まだ何とも言えませんが、昨シーズンはほぼ自信がなく終わってしまったので、全員が揃った練習が始まる時には自信を持ってプレーが出来るように、今はしっかり準備しようと思っています。
――これまで各世代で日本代表に選ばれてきましたが、日本代表は?
それを目標に今までも頑張ってきたので、2023年ラグビーワールドカップは少し厳しいかもしれませんが、その次は絶対に出たいと思っています。
――ワールドカップに日本代表として出られた時には、お父さんに対してどんな顔をしますか?
どうですかね(笑)。あまり変わらず、普通にすると思います。きっと父親もそんな感じだと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]