2022年9月23日
#815 雲山 弘貴 『予測してプレーする』
幼い頃からずっとサンゴリアスを見ていたという雲山弘貴選手。そのチームに入って日々成長している様子がインタビューからも伺えます。(取材日:2022年8月下旬)
◆ずっとサンゴリアスの試合を見てきた
――2022シーズンは社会人になって初めてのシーズン、どんなシーズンでしたか?
最初から想像はしていましたが、レベルが高くて、その中でプレーができて普通に楽しいです。
――周りのレベルが高くくじけたりはしませんか?
いや、僕はくじけないタイプだと思います(笑)。
――通用する部分と課題の部分は?
通用するところは、僕はボールのもらい方を得意としていて、その得意なところ、あとキックは通用すると思います。ただ、フィジカルやスピード、ひとつひとつのスキルは、まだ足りていないと感じています。
――フルバックとしては身長が高い方ですよね
そうですね。大きい方だと思います。けれど、周りのみんなが強いので、もうちょっと強くならないといけないと思っています。
――ライバルが多いポジションですが、その中で東京サンゴリアスに入ることを決めたのは?
幼いころからラグビーを見ていて、ずっとサンゴリアスの試合を見てきていました。憧れていたこともありましたし、あとは強いチームで試合に出ることに価値があると思ったので、サンゴリアスを選びました。
――幼いころから東京サンゴリアスの試合を見てきて、印象に残っている試合や選手はいますか?
2008年のプレーオフ決勝なんですが、三洋電機(現埼玉ワイルドナイツ)との試合を会場で見て、14対10でサンゴリアスが勝った試合が、めちゃくちゃ印象に残っています。小野澤さんや有賀剛さん、平さん、ライアンニコラスさんがいて、田中澄憲さんもまだ現役だった頃ですね。バックスのメンバーがとても豪華で、それに憧れました。
――東京サンゴリアスには今、明治大学出身選手が多いですね?
意識はしていないですけど、同じ大学出身の選手が同じチームにいるということは心強いですね。
◆立ち直る場所を作る
――2年連続決勝で埼玉ワイルドナイツに敗れましたが、チームの内側から見ていてどう見えましたか?
入念な準備をしていたので勝てると思っていましたが、やはりワイルドナイツのディフェンスがとても良くて、もっとキックでエリアを取ったり、違う作戦にした方が良かったのかなど思いました。後付けではありますが、もっと色んなオプションを作ることが大事なのかなって思いました。立ち直る場所を作るというか。
――大学の時には、立ち直る場所がありましたか?
そうですね。その当時は、困ったらボールを散らして、バックスで勝負したり、キックでどんどんエリアを取っていくということをしていました。キックでは負けないという自信があったので、キックで敵陣に入ってから、自分たちの形で勝負するようにしていました。
――田中GMが明大監督の時でしたか?
はい、僕が1年から4年の初めの頃まで監督でした。
――どんな監督でしたか?
怖いですよ(笑)。ただ、いちばん信頼している人なので、また同じチームでやることができて嬉しかったですね。
◆ボールを持って走る
――5歳の時に友だちに誘われてラグビーを始めたそうですが、ラグビーをやってみてどんなことを感じましたか?
その時にたまたま上手くいって、それでラグビーにハマりましたね。その当時はボールを持って走るというだけでしたが、身長は周りよりも大きかったと思います。
――どこがいちばん面白かったですか?
ボールを持って走ることが面白かったですね。その当時はスピードもあり、たくさんトライを取れたので、周りよりも活躍できたことが面白かったんだと思います。
――この先もラグビーを続けると決めたのはいつ頃ですか?
小学3年、4年くらいだと思います。その時はサッカーも並行してやっていて、ラグビーとサッカーでどちらが上に行けるかと考えた時に、ラグビーだと思ったので、それからラグビー1本ですね。
――トップのレベルでも出来ると思ったのはいつ頃ですか?
高校3年くらいだと思います。
――他にやりたいことはありませんでしたか?
小学校の時には魚が好きだったので、漁師になりたかったですね。小学校の卒業する時に書いた作文で、将来は漁師になりたいと書いていました。現実的に考えて漁師は諦めましたが、引退したら漁師になろうかなと思います。嘘ですけど(笑)。
――魚のどこが好きだったんですか?
恥ずかしいんですけど、シャチがめちゃくちゃ好きで、それで漁師になりたいと思いました。シャチは海でいちばん強いと言われていて、強いものに憧れていたということがあったんだと思います。
――ラグビー界のシャチと呼ばれるようになると良いですね
そう呼ばれるようになれば面白いですね(笑)。
◆15人がひとつになる
――ラグビーの魅力は何だと思いますか?
練習で身体をぶつけまくって、そのしんどい練習を乗り越えて試合に勝った時の喜び。選手にとっては、そこがいちばんの魅力だと思います。
――あまり辛い表情などは表に出さないですよね?
そうですね、あまり表情には出さないですね。
――ノーサイドの精神もラグビーの魅力とのことですが、具体的にはどういうところですか?
試合ではバチバチ戦っていたのに、試合が終われば握手をして、試合が終わってからの様子が良いなと思います。
――プレー自体の魅力はどこだと思いますか?
15人がひとつになるところですかね。全員が同じ絵を見て、全員がこうなりたいと思って取り組むことでひとつになれると思います。
――周りとコミュニケーションを多く取るタイプですか?
いや、そこがまだ課題と言われます。大人しいので、周りから余計に言われるのかもしれません。
――先ほど表情に出さないと言っていましたが、自分を出さないということもありますか?
自分を出さないことは無いと思います。表情に出さないという部分は、大学1年の時の早明戦の時に、初めてスタメンで試合に出て、めちゃくちゃ焦った表情を出してしまって、優勝がかかった大事な試合なのに僕のせいで負けてしまいました。その時からどんな悪いプレーをしても、顔には出さないと思いました。
――その表情から狙われたんですか?
焦った表情を出しまくっていたら、相手からめちゃくちゃ狙われて、それで負けてしまいました。その経験から表情に出さないと決めて、やるようにしました。それからはミスをしても、顔に出さないようにしています。
◆良いプレーは真似をする
――注目選手や影響を受けた人物として、齋藤直人選手の名前を挙げていますね
大学2年の時にサンウルブズに参加させてもらい、そこで一緒にプレーしました。部屋も同じで一緒に過ごしたんですが、朝ご飯はいちばんに食べるし、練習が始まるかなり前からストレッチを始めていたり、部屋でもずっとラグビーを見ていたり、常にラグビーを中心に生活されていたので、それらが印象的でした。
――真似している部分はありますか?
1日に1試合は必ず見るようにしていますし、その時から練習前の準備も変えて、結構影響を受けました。
――実際に話をして、ためになったことは?
話をしてというよりは、見てですね。直人さん(齋藤)もそうですが、森谷さんからも影響を受けました。今もよく見るようにしていて、良いプレーは真似をするようにしています。あとから「真似しただろ?」って言われます(笑)。
――今の課題は何ですか?
課題はフィジカル、スピード、ひとつひとつのスキル、挙げたらキリがないんですが、まずはフィジカル、スピード、コミュニケーションですね。
――その課題は少しずつ改善されていますか?
S&Cにオフの日も含めて指導してもらって、徐々に良くなってきています。目指すところにはまだまだです。
◆ボールをもらう時の身体の向き
――ボールのもらい方が得意と言っていましたが、ボールをもらってからの動きもいいのでは?
相手をずらすというところは、得意だと思います。先のことを考えながらプレーしていて、こうボールをもらえばこうなると、イメージしながらプレーすることを意識しています。
――先のことを考えながらプレーするようになったのはなぜですか?
先を読まないと通用しないですし、予測してプレーすることが自分の活躍に繋がるんじゃないかと思って、そういう意識でやっています。それは大学2年の時に、田中澄憲さんに言われました。
――大学と社会人を比べて、そのイメージが違ったりしますか?
大学時代は抜けられたところが、抜けられなかったりします。ボールをもらう前に相手のポジショニングや上がり方を見て、それに合わせたポジショニングを取れば解決できると思っています。
――見る力はフルバックだからこそですか?
そうですね、常に周りを見ています。あと、沢木さん(敬介/現横浜キヤノンイーグルス監督)からボールをもらう時の身体の向きを教えていただいて、そこから周りもボールも見ることが出来るようになったと思います。
――その身体の向きは、具体的にどう違ったんですか?
以前まではボールの方に身体を向けていたんですが、相手と平行になるように立つと前が見えるようになるので、立ち方とボールのもらい方が良くなったと思います。
――そういった発見はこれからもありそうですね
そうですね。分からないことはすぐに先輩やコーチに聞いて、成長していきたいと思っています。
――先輩でよく教えてくれるのは誰ですか?
みんな教えてくれます。特に森谷さんや晟也さん(尾﨑)はよく教えてくれます。全体練習後に先輩を捕まえて、この時はどうすれば良いかなど聞いたりもしています。
――家族でラグビーをやっていた人はいるですか?
父親はサッカーをやっていて、ラグビーは全くしていませんでした。
◆安定した性格
――これから2年目のシーズンになりますが、目標は?
日本代表に選ばれることが目標なので、そうなるためにはまずはサンゴリアスでしっかりと試合に出ないといけないと思っています。
――2023年にはフランスでラグビーワールドカップがありますが、日本代表になるイメージは?
来年、再来年には代表になりたいと思っていますが、自分の実力は理解していて、まだなれるレベルではないと思っています。サンゴリアスで鍛えて、今年の内には課題を克服して、来年くらいには日本代表に選ばれたいですね。
――自分の性格はどんな性格だと思いますか?
負けず嫌いではありますが、安定した性格だと思っています。
――ファンに向けて、注目してもらいたいポイントをお願いします
ボールを持った時と、キックを見て欲しいですね。
――得意なのは具体的にどんなキックですか?
コントロールと飛距離は自信があります。ゴール周りはちょっとダメですが(笑)、コンバージョンとドロップキック以外は得意です。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]