SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2022年9月16日

#814 中野 将伍 『自分らしいフィジカルなプレーをしよう』

得意なプレーと課題あるプレーが明快な中野将伍選手。中でも得意なオフロードパスについて詳しく聞きました。(取材日:2022年8月下旬)

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◆複数ポジションで国際試合の舞台に立てた

――夏の日本代表の活動はどうでしたか?

2回目の日本代表の活動でしたが、初キャップを取った時の代表合宿と比べると、最初の合宿は新しいことばかりだったので、覚えることに必死でした。2回目の合宿は、みんなが初めてやる選手ばかりじゃなかったですし、コミュニケーションの部分や、ラグビーの部分では少し考えながら出来るようになったかなと思います。

――出来としてはどうでしたか?

練習ではずっと13番でやっていたんですが、初戦のウルグアイ代表戦は途中でウイングで出たり、フランス代表戦は12番で出たりして、複数ポジションで国際試合の舞台に立てたことは、自分にとってとてもプラスになりました。自分としては、12番でも13番でも、どちらでもプレーしたいと考えているので、フランス代表戦2試合で12番として先発出場できたことは、良かったと思っています。

――ポジションが変わっても戸惑うことなくプレー出来ますか?

元々センターなので、ウイングでプレーする時にはウイングらしくというよりは、アタックでもディフェンスでも「自分らしいフィジカルなプレーをしよう」と心掛けています。これまではウイングらしいプレーをしようとして上手くいかなかったので(笑)、役割は違いますが、どのポジションで出ても、自分のプレースタイルは変えずにプレーしようと考えています。

――プレースタイルとしては、本来はセンターが合っているんですか?

自分でもそう思っています。やっぱりどのポジションでも試合に出たいという気持ちはありますが、いちばんはセンターで出たいという想いが強いですね。

――日本代表ではセンターですね?

そうですね。練習もセンターでやっています。

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◆細かいコミュニケーション

――日本代表でセンターとして出場して、何か新しい発見はありましたか?

初キャップを取った試合も次の試合も、13番で出場しました。逆に日本代表では、あまりウイングで出場したことがありません。そういう意味では、フランス代表戦は12番で出場して、久しぶりの12番で、13番とは役割が違うので、少しのミスでチャンスを失ったり、逆にチャンスになったりしました。12番として13番や10番とのコミュニケーションは大事だなと、改めて感じました。

――12番の動きによってピンチになる状況とは、どんな状況ですか?

例えば、自分が持ち込んでオフロードしようとした時に繋がらなかったり、チャンスのところでパスが繋がらなかったり、12番というよりはセンターとして個人のところで、あぁいう国際舞台ではひとつのミスが大ごとになるなと感じました。

――そうしないためには、どういうところに気をつけようと思っていますか?

早めにスペースや味方の位置、相手の位置を確認して、その上で内側の選手にいつボールが欲しいとか、細かいコミュニケーションを取るという基本的なところが大事だと思っています。

――日本代表ではこのままセンターで出続けたいですか?

そうですね。このまま出続けたいですね。

――東京サンゴリアスでは、どちらかと言うと出場試合数が少し少ないように感じますが、自分ではどう思っていますか?

そうですね。2022シーズンの出場試合数は、怪我もあり、そんなに多くは無かったですね。2021シーズンに比べて出場試合が少なかったですし、リザーブでの出場が多かったですし、センターでプレーする機会があまり無かったので、正直、日本代表メンバーが発表されるまでは、選ばれるか不安でした。

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――その状況で日本代表に選ばれたのは、どこが良かったと思っていますか?

2022シーズンはあまり満足のいくパフォーマンスではなかったんですが、シーズン終盤でセンターで先発出場する機会が何回かあり、その時には自分らしいパフォーマンスが出せていたんじゃないかなと思っています。センターで出場した時には常に良いパフォーマンスが出せるように準備をしていたので、それが出せたんじゃないかなと思います。

――東京サンゴリアスではウイングで出場する機会が多かったと思いますが、センターの方がより良いと思いますか?

自分の中ではそうですね。同じポジションに日本代表やオーストラリア代表がいて、その状況は自分でも理解しているので、その中で試合に出るために、練習でも試合でも使えるというパフォーマンスを出せていたつもりです。試合のメンバーを選ぶのは監督で、そこは自分ではどうすることも出来ないので、試合に出た時にはやるだけという気持ちで準備をしていました。まあ、決勝でウイングだったので、センターで出られず残念でしたけどね。

――次のシーズンでは、東京サンゴリアスでも12番、13番を目指しますか?

もちろんそのポジションを取るつもりでやっていますし、センターで出るという意識だけ持って練習をやっています。

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◆スキルが必要

――今いちばん強化したいところはどこですか?

シーズンオフ期間は、フィットネスやスピードのトレーニングをやっています。チーム内ではサム(ケレビ)と争わなければいけないので、負けないように身体を強くするためウエイトトレーニングをしたり、基礎的なところに取り組んでいます。

――フィットネス、スピード、身体を強くすることで、タックルなども良くなりますか?

そうですね。フィットネスがあれば、疲れた中でもタックルに行けます。これからラグビーのトレーニングが始まってくれば、スキルの練習も出来るようになるので、まずはこのオフ期間中に基礎的なところのレベルを上げて、それからスキルレベル、ラグビーレベルをどんどん上げていこうと思っています。

――スキルも課題のひとつですか?

アタックでもディフェンスでもミスをしないことが大事なので、もちろんチャレンジするようなプレーはしますが、そこでいかにミスを少なくするかが大事だと思います。そういう部分は相手がいる練習で、どんどんチャレンジしていきたいと思っています。

――ミスを防ぐためには、体力面、技術面、集中力と大事になってくると思いますが、どこがいちばんの課題ですか?

プレー中は、やっぱりスキルのところですかね。アタックではパスなどのスキル、もちろんコミュニケーションがないとミスはします。コミュニケーションが取れた上で、自分の強みであるオフロードで、国際試合と国内試合ではタックルの強度が違って、国内で出来ていたことが国際試合では出来なかったりするので、国際試合でもいかにオフロードが増やせるかというところでは、スキルが必要だと思います。ディフェンスでもスキルが必要ですし、あとは立ち方や相手の追い方、そして隣の選手とのコミュニケーションが大事になってきます。

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◆周りを見て探す

――オフロードパスのスキルで大切にしているところはどこですか?

最初からオフロードをしに行かないことですかね。最初からパスをしようと思って走り込むと、弱く当たってしまって、結局いい形になれません。まずは突破するつもりで、身体や上で裏に出た時に、しっかりとボールを掴んで、パスをするかしないかを判断しています。

――突破できる時とオフロードをする時と、確率的にはどのくらいの割合ですか?

突破することは試合中に滅多に起きるものではないですね。でも、突破したり、完全に突破していなくても相手と相手の間に入って裏に出たり、1対1で前に出られている時は、自然とオフロードパスをする相手を探しているというか、無意識に誰かパス出せる人はいないかと探していますね。この場所だったら周りに誰かいるかなというよりは、突っ込んで行って少し抜けかけた時や掴まれた時に、周りを見て誰か味方がいないかと探すことを、自然と出来ているような気がします。

――オフロードでパスを出す判断は、本当に直前にしているんですね

そうですね、直前の判断です。余裕がある時には、この辺に味方がサポートに来ていると感じて、捕まったり捕まる前にパスをすることもありますが、センターは内側にいて、外側のスペースに余裕がない時があるので、そういう時は咄嗟の判断で出来るようになってきています。

――咄嗟の判断で出来るようになってきている要因は?

サンゴリアスの練習で。常にオフロードを意識しています。オフロードをするために突っ込むわけではありませんが、とにかくボールを持った後は突破を狙いに行って、常にオフロードが選択肢にあるので、その意識だと思います。

あと、チーム練習後もずっとサムと練習をしていたので、どういう時にどういうオフロードパスが出来るかということも分かってきたような気がします。相手のタックルが低い時、高い時、裏に出られた時、出られていない時とか、色々なシチュエーションの練習をしてきて、こういう時にはこうするというイメージがだいぶ出来てきたので、試合でも対応できるようになってきたのかなと思います。

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◆オフロードからトライに繋がるのがいちばん嬉しい

――サム・ケレビ選手から良い部分を盗んでいるんですね

そうですね。盗めるものは。

――オフロードパスをする時に、どうすればいちばん良い位置にいる味方にパスが出来るようになるんですか?

走って行って、捕まってこれ以上進めないという状況になって、倒れかけて振り向いた時に見えた選手にパスをしている感じです。もし自分と味方の間に相手選手がいたらパスはしませんし、見えた味方選手がフリーだったらパスをするというイメージでやっています。

見えて、一瞬で判断しています。ただ、咄嗟の判断になるので、汗をかいていて手が滑ったり、まだパスするタイミングじゃない時にパスしてしまったりすることもあります。そういうミスもまだありますが、徐々にレベルアップ出来ている感覚があります。

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――レベルアップ出来ていて楽しいですよね

そうですね。オフロードでパスが繋がったり、それがトライまでいけば嬉しいですね。

――自分でトライをするよりも嬉しいですか?

自分のオフロードからトライに繋がるのがいちばん嬉しいですね。

――そういうところも含めて、ウイングっぽくはないですね

相手を振り切るほどのスピードがあるわけではないので、自分がチャンスを作ること、相手が寄ってきたところ、自分が倒れかけた時にオフロードパスをして、それがトライになることがいちばん嬉しいです。

――ラグビーをやっていて他に楽しいと思うところは?

最近では、やっぱり試合に出ることが楽しいですね。サンゴリアスでも試合には出ていましたが、思うような出場時間は得られませんでした。もちろん練習でアピールすることが大事ですし、そこで選ばれなければ悔しいですが、メンバーに選ばれて試合に出ることが楽しいので頑張れますね。

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◆毎回勝負し続ける

――新しいシーズンに向けた目標をお願いします

サンゴリアスでは、2年連続決勝で負けているので、まずは自分が試合に出続けて活躍して、チームから「いないといけない」と思われる存在になって、しっかりと優勝することです。

――優勝を決めるトライが、中野将伍選手のオフロードパスからだと最高ですね

それは最高ですね(笑)。

――日本代表ではどうですか?

日本代表でもセンターのポジション争いは激しいので、やれることをやって、自分からジャージを取りに行くということですね。

――2023年のフランスでのラグビーワールドカップは意識していますか?

もちろん意識していますし、もう来年という感覚があるので、あと1年間をそこに向けて取り組もうと思います。ただ、まずは毎試合でポジション争いでアピールし続けないと残れないと思うので、センターで常に良いパフォーマンスが出来れば、ワールドカップの日本代表メンバーに残れると思っています。この1年で、毎回勝負し続けるだけです。

――目標達成への自信は?

自信を持ってやりたいですね。自信を持たずにやって良い結果が出るとは思わないので、もちろん足りない部分はありますが、どんどん自信を持ってプレーしたいと思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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