2022年9月 2日
#812 辻 雄康 『インパクトを与えたい』
課題を語りながらもそこには常に課題解決の答えがある辻選手。課題を乗り越えながら日々進化している様子が、言葉の端々に伺えました。(取材日:2022年8月上旬)
◆初めての日本代表
――夏の日本代表に招集されましたが、日本代表はどうでしたか?
高いレベルでラグビーをやる難しさを感じた時間でした。コンタクトレベルも高くて、周りの緊張感も高くて、その中で自分の精度を出していく、パフォーマンスを変わらず出していくことが、とても難しいんだなと感じました。
自分の中では、パフォーマンスを出せたと思える瞬間がなくて、毎回納得して自信を持ってコンタクト出来ていたかというと、そうではありませんでした。コンタクトに勝てるか勝てないか、迷いなく行けているか行けていないかということが自分の中の基準で、その基準と比べるとぜんぜんダメでした。
世間的には、「フランス戦に出て、日本代表の1キャップ目を獲得した」ということで「ファーストキャップおめでとう」と言っていただけることもとても多かったですし、周りの人は評価されていると感じているかと思うんですが、自分の中ではぜんぜんそうではなくて、不甲斐ないことが多かった初めての日本代表になったかなと思っています。
――こうすれば良くなるというようなヒントはつかめましたか?
メンタル的に不安や緊張を抱えてしまう局面は多いと思うんですが、それによってコンタクトが思い切り行けていない場面とかがありました。サンゴリアスでやっていた時よりも、大きい相手に対してコンタクトに行き続けるという点が、最初に少し面食らった部分でした。1日1日、自分のパフォーマンスを最大限出せるように、コンタクトスピードや基礎的なところを冷静に意識していけるところまでメンタルを整えることが大切ですが、そうするまでに時間がかかってしまいました。
――そこは経験を積むことで改善できそうですか?
経験を積めば改善されるとは思いますが、本当に身体が大きくてスピードもある選手に対してコンタクトすることに慣れない部分が多かったので、ビビるまではいかないですけれど、正直、「敵わないな」と思うシチュエーションが多かったですね。
――良い課題が出来たということですよね
そうですね。日本代表メンバーに入る難しさを感じましたし、その中でキャップを取れたことの喜びも大きかったですね。
――日本代表に呼ばれ続ける、試合に出続ける、ということへの今の気持ちは?
まだ自分に足りないことが多いので、そこをもっと改善して、日本代表の監督にしっかりとアピールしていかなければいけないと思っています。
◆決勝でスタメン
――リーグワン2022シーズンを振り返るとどうでしたか?
コロナで試合数の問題もありましたが、2021シーズンは7試合くらい、2022シーズンは14試合くらい出場できて、試合をする機会が多かったので、嬉しさもありました。力を発揮できるタイミング、アピールできるチャンスが多かったので、自分にとっては貴重なシーズンだったと思います。それが日本代表に繋がったと思います。
――2021シーズンではシーズン終盤に出場機会がなく、2022シーズンは決勝でも後半途中から出場しましたね
2021シーズンの決勝に出場できなくて悔しかったので、2022シーズンでは決勝でもメンバーに選んでもらえるように実力をつけることをターゲットに取り組みました。それについて言えば、良かったなと思います。
逆に今度は、決勝でスタメンに選んでもらえる実力や信頼がないとダメだと思ったので、次はそこを目指していきたいと思っています。2022シーズンでの自分の不甲斐なさ、やり残したことがあるので、そこを意識して取り組みたいと思います。
――2021シーズンと2022シーズンでは出場試合数が倍になったわけですが、自分のどこが伸びたと思いますか?
自分よがりのプレーじゃなくて、チームにコミットし、チームから求められていることを最大限出しながら、自分の強みを出していくところが改善できたかなと思います。
――足りなかった部分、更に伸ばしたい部分はどこですか?
チームにコミットするという部分を更に強化して、安定性のあるプレーヤーを目指さなければいけないと思っていますし、周りから後ろ指をさされるようなプレーヤーになってはいけないと思いました。ディフェンスの時も周りとコミュニケーションを取るとか、変なミスをしないとか。あとはもっとインパクトを与えたいですね。
――自分自身、まだプレーに波があると感じているんですか?
波がある時が多いですね。自分のプレーが出来ている時と出来ていない時の差が結構激しいので、その波を少しでも少なくしていくことが重要です。その部分については、2021シーズンよりも2022シーズンの方が良くなったから結果にも繋がったと思うので、改善していけていると思っています。あとは、もっと周りと話せるようになったり、気を遣えるような選手にならなければいけないなと思っています。
◆自分の迷いを無くす
――プレーの波という部分について、集中力はどうですか?
疲れてきたり、相手からプレッシャーを感じている時でも、パフォーマンスを常に発揮し続けられることが大事なので、そこが他の選手と比べて自分に足りないところかなと思います。
――東京サンゴリアスの中にお手本になる選手はいますか?
サンゴリアスの選手は皆、基本的にそういう選手ですね。全員がお手本になるので、そういう選手たちに自分がもっと近づけるようになることが、ラグビー選手として大きいんじゃないかなと思っています。
――伸びたところや課題が見つかり、いまラグビーをやっていて楽しいんじゃないですか?
結果が出た時は楽しいですし、結果が出なかった時には悔しいですし、そこに関しては両極端ですけれど、評価をもらえることへの感謝は色々な人にしていかなければいけないと思っています。
――普段の練習で気をつけているところ、これから気をつけたいところはどこですか?
技術的なところで言うと多くありますけど、メンタル的なところで言うと、自分の迷いを無くすところかなと思います。常に「自分は行ける」と思えるようなコンディショニングを整えていくところ、それが例え自分の準備があまり出来ていない時でも、そういうメンタリティーに近づけて発揮していくところかなと思います。
例えば、自分の体調が少し悪いな、コンディションがあまり良くないなと思う時はありますけど、そういう思いに自分のプレーが左右されることが多いので、そこを改善していきたいと思います。完璧な状態は無いと思うので、そういう状況でもパフォーマンスを出していくことだと思います。
――身体はチームの中でも強いと思いますが、身体についてはどうですか?
まだ上半身のフィジカルは弱いと思っています。それがセットプレーの時に感じることが多くて、全身の力を使えない状況の時、上半身だけでフィジカル勝負をする時に、自分の弱さを感じます。あと、コンタクト強度が高ければ高いほど怪我のリスクがあって、それが自分の上半身のフィジカルの弱さからくることなので、そこは改善したいですね。上半身を鍛え、コンディションを整えていくことが大事だと思います。下半身の強さは自信があります。
◆技術的なことこそ全部課題
――技術的な課題は?
技術的なことこそ、めちゃくちゃあります(笑)。タックルテクニック、周りとのコミュニケーション、アタック、ディフェンスでのブレイクダウン、パススキルもそうですし、全部課題になってしまいます(笑)。
――たくさん課題があって、やりがいがありますね
はい、あります。その中で、特に伸ばしていきたい部分はタックルですね。自分に足りないいちばんの部分は、タックルとブレイクダウンのスキルなので、そこを伸ばしたいですね。アタックでのブレイクダウンをもっと上手くなりたいですし、ディフェンスのタックルでもっと相手にインパクトを伝えたいと思っています。
――次のシーズンの目標は?
決勝でスタメンを掴み取って、サンゴリアスで優勝したいです。その上で、日本代表に選出されるような実力を持ってアピールしていきたいと思っています。
――2023年ラグビーワールドカップについてはどうですか?
もちろん狙いたいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]