2022年8月19日
#810 齋藤 直人 『成長し続けたい』
順調に成長を続けているように見える齋藤直人選手。本人はその成長過程と状況を、どう捉え、どう思っているのでしょうか。現状の過ごし方も含め、齋藤選手に聞きました。 (取材日:2022年7月下旬)
◆シーズン中とあまり変わらない
――6月の日本代表の活動が終わり、少しはゆっくり出来ていますか?
がっつり動かないで休むということはなくて、1週間の中で少し休みを多くしたりしています。オフはとらず、日本代表の最後の試合の2日後には動いていたと思います。だから、コンディションはシーズン中とあまり変わらないと思います。
――この時期にはどういうところをポイントにトレーニングしているんですか?
スピードトレーニングをやっています。そして日本代表の合宿で少し体重が落ちてしまったので、ウエイトトレーニングは少し多めにやっています。
――スピードと筋力を上げることは、この時期じゃないと取り組めないところですか?
シーズン中にも取り組めますが、日本代表に行くとウエイトトレーニングの時間が限られてきます。秋の日本代表に呼ばれたら、その後すぐにリーグワンの開幕になると思うので、少しでも貯金じゃないですけど、今しかできないことをやろうと思って取り組んでいます。
日本代表に行くと、単純に身体がキツいのと、普段のチーム練習でエキストラとしてやっている部分を、日本代表ではリカバリーに使いたいので、どうしてもウエイトトレーニングに使う時間が限られてしまいます。
――精神的にはリフレッシュ出来ましたか?
いや、そこまで「疲れたー」という感じではなかったので・・・(笑)。
◆決勝では21番
――2022シーズン、再び準優勝でした
埼玉ワイルドナイツの方が良かったんじゃないですかね。まだ次のシーズンに向けて考えられていませんが、チームの活動が再開する頃には、次はどうすれば良いかという部分が明確になっていると思います。
チームというよりも自分に対してシーズンを通してどうだったかと考えた時には、個人としては決勝では21番だったということと、結果として準優勝ということは、物足りなさを感じました。
――21番でも出場した時にパフォーマンスは満足いくものでしたか?
シーズンを通して成長できたことは間違いないんですが、決勝では、試合の流れを変えられたとも思えなかったので、決勝でのパフォーマンスについては物足りなさがありました。
――シーズンを通していちばん成長した部分はどこですか?
年々、経験を重ねるにつれて落ち着きは出てきたかなと思います。周りが見えるようになって、今まで使っていた労力を他に使えるようになります。
◆時間を無駄には出来ない
――無駄なものを省こうと努力しているように感じますがいかがでしょう?
特に自主練の時には、人に合わせたくないというか、自分のやりたいことをひたすらやりたいと思っています。練習を手伝ってもらったら、僕もその人の練習の手伝いをするということは当たり前なんですが、練習の相手をコーチに頼んで、自分に使える時間を増やしたいと思っています。それだけ聞くと、なんか自己中みたいですよね(笑)。
――(笑)。 自分の世界を作り出して、それをやり切っている感じですが、それは意識してやっているんですか?
自分に使える時間は100%使いたいと思っています。シーズン中のチーム練習後の自主練の時間は、選手のコンディションに気を遣ってもらって、コーチから時間を区切られることがあります。そういうことがあるので、時間を無駄には出来ないと思って取り組んでいます。
――止められなければ、ずっと練習をしている?
いや、それは無いですね。ただ、やりたいことはやると思います。
――やりたいこととは、長所を伸ばすこと、短所を無くすこと、どちらになるんですか?
それはどっちもです。2022シーズンでは、あまりパスの練習はしませんでした。それは大学や1年目の頃から追求してきてある程度の形が出来たので、パスの練習については、今は全体練習の前に必ずやる手首のトレーニングを10分くらいやるだけですね。
無駄なものを省くじゃないですけど、出来るようになったことは優先順位が変わってきます。2022シーズンはかなりキックを蹴って、ほぼ毎日、練習後にキックを蹴っていました。1年目の時はその時間をパスに使っていて、パスはある程度、形が出来て、自信が持てるようになったので、2022シーズンはパスは全体練習前に終わらせて、練習後は他のことに時間を使っていました。
――それだけキックを蹴って、キックもパスのようになりましたか?
まだ絶対的にはなっていませんが、確実に成長したと思います。
――そういう部分も含め、マイペースですよね
自分の性格ではないですが、ラグビーに関してはどんどん成長したいですし、そのために必要なことを無駄を省きながらやりたいですね。
◆キックがテーマ
――若い頃には色々なことに手を出したくなりがちだと思いますが、無駄を省きやりたいことをとことんやるという意識はどこから生まれているんですか?
やると決めた日にはスケジュールをしっかりと立てて、それをやり切るようにしています。もし立てたスケジュールが出来なければ、それはそれで明確になるので、出来なかったことを1週間の中のどこかでやるようにしたりしています。
もちろん時間を省きたいと思っていますが、効率の良さと感覚を掴むまでとことんやるという部分には、自分の中での判断基準があります。パスをたくさん投げたからこそ掴めた感覚もあって、それをキックでも出来るんじゃないかと思って、2022シーズンはたくさん蹴りました。ただ闇雲に蹴っているわけじゃなくて、そこのバランスがとても大事だなって思っています。
――キックが引き続きのテーマですか?
キックがテーマですね。キックに加えて、ランニングをまだまだ伸ばしたいと思っています。
――ランニングも2022シーズンは上手くいきましたか?
何とも説明しづらいですけど、サポートプレーとか、スペースがあれば自分で走るとか、そういうチャンスは試合中には数少ないと思いますが、そのチャンスを逃さないために意識しています。
ただ、毎回意識することは難しくて、絶対にスペースが開きやすい瞬間とか、開きやすいシチュエーションがあって、その感覚を掴めてきているので、毎回上手くいくわけはないですが、失敗しないと成長もないと思うので、そこもチャレンジしていきたいと思っています。
――それはサンゴリアスでも、日本代表でも同じですか?
そこは共通していると思います。
◆若くないと思っている
――成長を感じられると、やっていて面白いですよね
自分が出来なかったことが出来るようになるのは、やっぱり嬉しいですよ。成長して、またひとつ上のレベルのプレーが出来る、質の高いプレーが出来るようになると思うと、モチベーションにもなりますね。
――上のレベルは無限大ですか?
やっぱり無限大じゃないですか(笑)。現役でいる以上は、そこへのチャンレジだと思います。
――意識の中で、現役でいられる時間は短いという感覚がありますか?
それは思っています。他の選手を見ていても、ざっくりですが、あと10年くらいが上のレベルで出来る時間なのかなと思います。その中で、極力長く上のレベルでやりたいと思っていますし、だからケアや食事も意識しているつもりです。あとは、若くないと思っているからですかね(笑)。
――なぜ若くないと思うんですか?
海外のラグビーをよく見ますが、僕の年齢は若くないです。今年25歳になりますが、代表でも去年はいちばん下とか下から2番目くらいだったのが、今では下から4番目くらいになっているので、もう若くはないなと思います。
――5年後、10年後にこんな選手になっていたいというイメージはありますか?
どんな選手かというよりは、成長し続けたいと思っています。
――身体に対する自信は?
ラグビーをやっていればどこも悪くないという人はいないと思いますが、シーズン通して試合に出られないような怪我はなかったので、そういう意味では2022シーズンもそうですし、その前からも、自分の身体と上手く相談しながら出来ているのかなと思います。
――コンディショニングが上手くいっているんですか?
そうだと思います。自分のフィーリングで、腰がやばいなと思ったら、ちゃんと休めるようになりました。前まではそんな状態でもやっていたと思いますが。
それも経験で、これ以上やったら痛めるとか、これまで失敗してきたからこそ気づける部分かなと思います。怪我をしてラグビーが出来ない時間がいちばんのストレスだと思うので、そうならないためにやっています。
――目の前の課題に100%集中できるコツは何ですか?
目標があって、それに対して何が必要かを明確にすることじゃないですかね。
――ビジネスでも成功しそうですね
いやー、ダメだと思います(笑)。目標を立てて、それに対して無駄を省きながら取り組んで、そこに他の人のアドバイスを取り入れながら取捨選択してやっていく、ということはずっとやってきたつもりです。
◆リーダーシップに100%取り組めた
――今回の日本代表でのパフォーマンスについてはどうでしたか?
コロナで試合に出られない時はありましたが、チームから求められていることは遂行できたと思います。代表でもリーダーグループに入れてもらって、リーダーシップのところは自分でも課題と思っていたので、それに対して100%取り組めたと思います。
――リーダーという役割では、何に気をつけていましたか?
チームがやりたいこと、コーチが伝えたいことを、リーダーがいちばん理解していなければいけないと思います。それが出来ていないと、他の選手にも伝えられないと思うので、そこをいちばん意識しました。
あとは、あのリーダー陣の中だと、声を出して盛り上げるということが自分の役割かと思ったので、それを意識してやっていました。
――監督やスタッフとも密にコミュニケーションを取ったんですね
リーダーだから取ったわけじゃないですけど、まずは理解できていいないことが無いようにしたので、分からないことは聞きました。特に意識してコミュニケーションを取ったわけではないですね。
◆ワールドカップ3大会に出ることと海外に挑戦
――今の目標は何ですか?
ずっと言っているんですが、ワールドカップ3大会に出ることと、海外に挑戦したいと思っています。ただ、まず目の前の目標は、2023年のワールドカップだと思っています。
――東京サンゴリアスでの目標は?
もちろんサンゴリアスでも100%やりたいです。どちらも9番で出たいですね。
――自信はありますか?
まずは代表でのポジション争いがあるので、良い状態で臨みたいと思います。
――本格的な始動はいつ頃になりますか?
8月末には代表の活動が始まると思います。
――いま楽しみにしていることは何ですか?
去年経験して分かったことが、7月~8月が唯一、自由と言うか、自分の時間として使える期間なので、もちろんトレーニングはやりますが、家族とか自分の周りの人とかと楽しく過ごしたいと思っています。バランスが大切だと思うので、やる時はやって、遊ぶ時は遊ぶ、ということをやろうと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]