2022年8月12日
#809 飯野 晃司 『秀でたものを見つけたい』
落ち着いた雰囲気を醸し出し、頼りになる男のイメージが増幅された飯野晃司選手。本インタビューでも、今までより少し深いところに触れられたのではないでしょうか。 (取材日:2022年6月下旬)
◆チームを盛り上げる
――2022シーズンを振り返って、どんな気持ちですか?
最後に2年連続で埼玉ワイルドナイツに負けたので、それについては何かしら足りない部分があったと思っています。僕個人としては、長いシーズンを怪我無く戦い切れたので、良かったと思っています。
――2022シーズンが終わって時間が経ちましたが、足りなかった部分は見えてきましたか?
決勝で足りなかった部分は選手全員が分かっていることだと思うので、次のシーズンではそれに対して取り組んでいきたいと思いますし、1つ1つのプレーに対してもしっかりと突き詰めていきたいと思っています。
――シーズン中盤からは試合に出る機会が多かったですね
怪我人の状況などもあって、試合に出るチャンスが広がったと思うので、それについては運が良かったと思っています。試合に出たらやるべきことは変わらないので、しっかりと自分自身が出来ることをやって来たかなと思います。
――やるべきこととは、どういったところがポイントでしたか?
ディフェンスだったらしっかりとタックルに行って、アタックだったらしっかりとキャリーして、ブレイクダウンだったらしっかりと激しくいくということです。その中で僕のキャラクターとして、チームを盛り上げるという部分もあるので、そこはブレずに、試合を通して出来たかなと思っています。
◆一貫性を持ったプレー
――レベルが上がった実感はありますか?
2022シーズンでというよりは、2シーズン前くらいにひとつレベルが上がった実感がありますね。
――レベルが上がって佇まいが落ち着いた感じがありますね
自信がついたという部分もあると思いますが、やるべきことが明確になって、それをやるだけという感覚になっていますね。練習から何をすべきかが明確になっていて、それを試合の中でもやると思って取り組んでいます。
――そのやるべきことは、自分で探して見つけたものなんですか?
僕はポジションがひとつだけじゃないので、その中で一貫性を持ったプレーを意識しています。それに加え、ラインアウトのコーラーをやるのであれば、しっかりとコーラーの役割もやりますし、バックローで出るのであれば、しっかりとワークレートを高くすることを練習から意識して取り組んでいます。スタッフや選手としっかりとコミュニケーションを取って、そういったところで何をやるべきなのかが、明確に出来ていたのかなと思います。
――今の課題は何ですか?
僕としてはひとつ何か秀でたものがないので、それを見つけていきたいと思っています。例えばタックルであれば、オザさん(小澤直輝)のようなタックル成功率であったり、ショーン(マクマーン)のような激しさであったり、辻のような力強さなどがバックローでは大事になってきます。
ラインアウトのコーラーで言えば、ヘンディ(ツイヘンドリック)やホッコ(ハリー・ホッキングス)の安定感に比べるとまだまだですし、みんなにそれぞれのポジションでの秀でたものがあると思うので、そこに追いつけるようにしていきたいと思っています。それが出来れば次のシーズンで、またひとつレベルアップ出来るのかなと思っています。
◆日本代表は緊張した
――シーズン後にNDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)に呼ばれましたが、そこではどうでしたか?
試合になれば、やること自体は変わらないので、自分のやるべきことをやることを意識して取り組んでいました。その中で、ひとつ日本代表のキャップが取れたということは、プレー云々じゃなく、素直に嬉しかったですね。これを足掛かりにして、次のステップが目に見えるところまで来ていると思うので、しっかりとやっていきたいと思っています。
――国際試合をやってみて、新たな課題は見つかりましたか?
緊張していてあまり身体が動かなかったですね(笑)。僕の中ではあまり緊張しないかなと思っていたんですが、何だかんだ日本代表の試合はこういうことなんだろうなって思いましたね。
――緊張するイメージがありませんでしたが、緊張することは良いことですよね
サンゴリアスの時も緊張しないわけではないんですが、違った緊張感で少しうわつきましたね。あとで駿太(中村)から「緊張していて全然動けてなかったぞ」って言われました(笑)。
――それは慣れの問題ですか?
慣れることで解決するかな、とは思っています。
――今までも緊張はしてきたんですね
2022シーズンに関しては、やらなきゃという気持ちの方が強かったかもしれません。今でこそ緊張していても何も変わらないと思うタイプですが、若手の頃は緊張していたかもしれないですね。緊張するなと思う方が緊張すると思うので、緊張を楽しむようにしています。けれど、日本代表の時は緊張しましたね(笑)。
――手応えはありましたか?
みんなが言うと思いますが、サンゴリアスで試合に出続けたら結果に繋がる、ということが目に見えたと思うので、まずはチームで試合に出続けられるように取り組みたいと思います。そうなったら自ずとプレーの質も上がると思いますし、代表レベルに近づけると思っています。
◆良い準備が出来ている
――東京サンゴリアスで試合に出続けることへのポイントは?
毎年変わらないですけど、練習でやるべきことをしっかりとやって、それを試合でパフォーマンスとして出せるかだと思います。サンゴリアスは高いスタンダードでやるチームなので、そこがポイントだと思います。
――しっかりやるということに対して、どういうことに気を付けて取り組んでいるんですか?
練習の時に何をやるべきかをしっかりと明確にして臨むことがいちばんで、試合ではやるだけです。僕の場合は試合のメンバーによってやるポジションが違うので、そこで迷ってしまうとベストなパフォーマンスは出せなくなってしまいます。どのポジションでも、サインプレーひとつにしても、ラインアウトひとつにしても、どのプレーでもどういう動きかを理解できるように練習中にするようにしています。
――グラウンドの外でもシミュレーションなどをしているんですか?
バックローには多いと思うんですが、どのポジションでもやらなければいけない場面があります。ただ、練習でできるのはひとつのポジションだったりするので、後から映像で8番の動きだけを追いかけたりしています。
――色々やらなければいけないけれど、やるべきことは明確になっているんですね
そうですね。しっかりと良い準備が出来ていると思います。
◆チーム一丸
――改めて、今の目標は何ですか?
まずはチームとして、しっかりとチャンピオンになるということがいちばんの目標です。それに向けてチーム一丸となり、僕自身も頑張っていきたいと思っています。
――1年目の時にチャンピオンになって、それ以降チャンピオンから離れてしまっていますね
優勝した時は、周りも見えず、ただがむしゃらにやるだけで余裕はありませんでした。なのでチームに関わって優勝したという感覚があまりありません。
――日本代表についてはどうですか?
今後、お声がかかればという状況ですね。次は9月か10月にまたツアーがあると思いますが、それまで試合があるわけじゃないですし、そこまで一旦、待つという感じですね。もし声がかかれば、やれることをしっかりとやりたいと思っています。
――それに向けたトレーニングのスケジュールを立てていますか?
2021シーズンが終わった後とかは、丸々1ヶ月くらいラグビーから離れて社業に専念していたんですが、今はラグビーをゼロにするつもりは無くて、計画しながら少しずつ動いています。
――社業に専念する時は、いわゆるサラリーマンとして動くんですか?
今も、シーズン中に仕事面を色々とサポートしてくださった方たちがいるので、ちゃんとお礼を言いに行ったり、代わりに仕事をやってくださっている方たちがいるので、その方たちの負担にならないように、自分がやるべきことはやるようにしています。その中で時間を見つけて身体を動かしたりしています。
――2021シーズン後のオフは仕事以外では何をしていましたか?
旅行に行ったり、実家に帰ったり、仲良いメンバーとバーベキューしたりしていましたね。今もそれが無いわけではないので、そういうことをしながら練習しているという感じです。
◆仕事とラグビーの両立
――安定感が飯野選手の良いところですよね
自分では意識していないですけど、波があるとチームからの信頼を得にくいと思いますし、試合で使われにくいと思います。
――コミュニケーション力も特徴だと思いますが、リーダーシップについてはどうですか?
特に考えたことはないですが、サンゴリアスにはリーダーシップを取れる選手がたくさんいますし、けれどその中で僕が喋らないということではないので、思ったことは言って、任せるところは任せるという感じです。
他のチームのことは分かりませんが、サンゴリアスの場合はみんながリーダーのような感じがします。その中で任せるとことろを任せて、言わなきゃいけない場面では言うという感じです。
――リーダー役にもなれてサポート役にもなれるので、本当にマルチだと思うんですが、中長期的に目指している姿はどんなものですか?
なんですかねー、ぜんぜん分からないです(笑)。質問が難しいです(笑)。将来の姿として、コーチという柄ではないと思うので、普通にビジネスマンとして働いているんじゃないですかね。仕事とラグビーの両立というところに憧れてサントリーに入ってきているので、目標というわけじゃないですが、将来も働いているだろうなと、うっすらと思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]