2022年8月 5日
#808 堀越 康介 『ライバルがいた方が自分が成長できる』
将来のサンゴリアス、そして日本代表チームを引っ張っていく役割を担っていると誰からも期待されている堀越康介選手。現在どんな位置にいて何を目指しているのか、じっくりと聞いてみました。 (取材日:2022年6月下旬)
◆より勝ちたかったシーズン
――2022シーズンを振り返ると、どんなシーズンでしたか?
優勝できなかったので、悔しさが残っています。2021シーズンとはまた違った悔しさで、2022シーズンの方が悔しかったですね。
まずはシーズンが長かったこともあると思いますが、チームにコミットすること、選手間でどうやっていくか、あとは2022シーズンは多くの選手が試合に出場して、全員でどう勝つか、優勝に向けてチームをどう持っていくかということを、練習の中でコンペティションしながらやってきたシーズンだったので、その分、悔しさが強かったのかなと思います。
あと、ノンメンバーもファンの皆さんも、そういう人たちの応援をより感じられたシーズンだったので、より勝ちたかったシーズンでした。
――チームに関わる人が増えたシーズンということでしょうか?
そうだと思います。新しくリーグワンに変わって、色々なことが変わったシーズンだったと思います。
――次のシーズンに向けて、イメージは出来始めていますか?
今のところは、具体的には浮かんできていないです。ただ、まだみんなと話せていないので、僕個人が考えていることはありますが、それが全てではありません。自分の考えとしか思っていないので、他の意見も色々聞いてみたいと思っています。
――シーズン中の自分のパフォーマンスについてはどうでしたか?
怪我が全てでした。調子が良いと思っていましたし、自信がついたシーズンでした。ただ、調子が上がっている時に怪我をしてしまって、チームから離れることがあったので、自分の課題はそこかなと思っています。
――そこは防げるものですか?
怪我はコントロール出来ないことなので、仕方ないと思っています。僕個人としては、怪我から戻っても先発で出たかったと思っていましたし、絶対に良いパフォーマンスを出せるという自信もありました。けれど、他にも良いプレーヤーがたくさんいて、メンバーを選ぶのは僕ではないので、その中では最大限の努力をしたと思っています。それは僕だけじゃなく、他のポジションのみんなもそういう想いで取り組んだと思います。
◆それが「ブレイクダウン」
――個人として成長を感じたシーズンでしたか?
そうですね。より自分がやるべきことが明確になったというか、「これでアピールするんだ」ということが、大きい枠から小さくなったと思います。
――なぜそこに気づいたんですか?
リーグでもやるべきことを追求していましたが、ずっと日本代表を狙っていて、代表に行ってもこのプレーは必要だし、そのプレーはずっと評価されると感じたプレーがあって、それが「ブレイクダウン」でした。やはり身長が小さいので、ボールキャリーで相手を倒したり、タックルで相手を倒すことは、狙ってはいますが、難しい部分でもあります。
ブレイクダウンって、仕事を1つ2つ増やせれば、カオスな状態を作ることが出来ます。カオスな状態がどれだけ大事かということが、プレーオフの決勝や埼玉ワイルドナイツを相手にする時にはクローズアップされますし、それを考えてシーズンを通りしてプレーしていました。
そこがより明確になりました。全体練習後の自主練の中でも、少数の人数でフルコンタクトでバチバチにやることにも2022シーズンでは取り組んでいたので、そこは伸びたのかなと思っています。ただ、まだ伸ばさなければいけないと思っています。
――ブレイクダウンでのカオスな状態とは、具体的に言うとどんな状態ですか?
手を相手にかけて、球出しを1秒でも遅らせるとか、ブレイクダウンに頭で突っ込んで相手にストレスを与えて相手の消耗を激しくしてペナルティーを誘うというプレーです。そういうプレーを一貫性を持って、僕がいるブレイクダウンでは絶対にやっていくという意識でやっていました。相手に気持ちよくプレーさせないようにグチャグチャにするという感じです。
――そういうプレーは、逆に相手にやられることもあるんですか?
ありますね。埼玉ワイルドナイツのラクラン・ボーシェとかは、一度引いたと思ったら、また上から入ってきたりして、決勝でも2~3回はそういったことがあったと思います。そういうプレーは自分でも出来ますし、そういうプレーをやっていきたいと思っています。ボーシェはめちゃくちゃパフォーマンスが良いですし、試合中も存在感がありますよね。そういう選手になりたいです。
――そういうプレーの実績が詰めたシーズンでしたか?
まだまだだと自分でも思っていて、触りの部分というか、これからどんどん成長していけると感じたシーズンでした。
◆何かが足りない
――日本代表に対する自信も生まれたシーズンでしたか?
そうですね。けれど、正直、シーズン中は日本代表をあまり意識していなかったですね。まずはサンゴリアスと考えていました。そこで日本代表ではなく、NDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)だったので、これが自分の実力だと思いましたし、ただこれでワールドカップの日本代表に選ばれないということではないので、これからやっていけばいいかなと思っています。
――日本代表・NDSに呼ばれるということは定着してきましたよね。目指していたスケジュールになっていますか?
欲を言えば全然違います(笑)。自分の中で、こうならなければいけないと思い描いていた姿は、日本代表にしっかりと定着して、試合で活躍する姿なので、この年齢になってまだそこに辿り着けていないということは、何かが足りないということだと思いますし、まだまだ努力が必要だと思っています。
――それに向けたポイントがブレイクダウンでカオスを作るということですね
そうですね。そこは自分の強みに出来ると思っています。あとはセットピースですね。
――セットピースの部分も成長していますか?
成長していると思います。
――リーダーシップの部分もチームからは求められていると思いますがどうでしょう?
2022シーズンはリーダーグループに入っていなかったので、表立ってみんなの前で引っ張るということはあまりありませんでした。自分の役割は1番~5番のパックをどれだけひとつにして、フィールド内外で意思疎通してやっていけるかというところが大事だと思っていたので、そこでは責任を持って取り組んでいました。リーダーじゃないからリーダーシップを発揮しないということは絶対になくて、そこは変わらずにやっていたと思っています。
――2021シーズンではバイス・キャプテンでしたが、その時はどうでしたか?
バイス・キャプテンとしては40点くらいですね。グラウンドに先発で立っていなかったことがあまり良くなかったことと、あとは考えすぎてあまり発言が出来なくなっていたと思います。
――そうならないための気の持ちようは見つけられましたか?
遠慮しないことが大事かなと思います。自分はこう思っている、違う人はこう思っているというように、意見が違うことはあるじゃないですか。そういう時に、相手のバックボーンまで考えてしまって、「そういう背景があるから、こういう発言をしたんじゃないか」、「じゃあ、何が正しいんだろう」ってなってしまって、結局発言できないという状態になってしまっていましたね(笑)。
――それは今、どう解決したんですか?
相手がそこまで考えていない場合があるのに、自分の中だけで深く考えてしまって、「結局、何言ってんの?」ってなっちゃうこともありました。その点、今は遠慮してないですね。「僕はこう思っている」と言えば、特に外国人選手は自分の意見を言ってくれるので、「あぁ、それもそうだね」という話をしたりしました。
◆チームメイトへの愛情
――リーダーシップも堀越選手の強みだと思いますが、チームの中でリーダーになっていきたいという考えはありますか?
キャプテンになりたい、リーダーになりたいという感情より、「やっぱりこのチームで優勝したい」という気持ちですね。その気持ちがあるから、「自分が出来ること、周りから求められていることは何だろう」と考え、それが要所要所でのリーダーシップであったり、さらにこのチームで必要だと思うことは続けていきたいと思っています。
もし周りからもそういうように見られて、リーダーやキャプテンを任せられるような状況になれば、それは嬉しいことですし、頑張りたいと思いますね。
――皆の話を聞いていると選手のチームへの愛情が強くなったように感じます
僕の場合は、チームメイトへの愛情が強いですね。僕がなぜサンゴリアスを好きになったかと言うと、大学生の時から「サンゴリアスはこういうチームだよ」と聞いていて、そういうチームというイメージを持って入りました。実際に入ってみて、カルチャーやチームの雰囲気、練習の雰囲気、社会人として、人としてどう成長していくか、そういうことを教えてくれたのがチームメイトやスタッフです。
イメージとは違う部分もありましたが、みんなでカルチャーを作って、「サンゴリアスはこういうもの」と直に教わって、どんどん愛が増した気がするので、チームメイトへの信頼、このチームで優勝したいという想いだと思います。
――チームメイトの何に対する信頼ですか?
取り組みや姿勢、あと僕は他のチームのことは分かりませんが、コンペティションがある環境ですかね。どのポジションもみんな戦っていますから。
――ライバルが多いチームに入るということは?
僕の場合は、まずサンゴリアスはカッコいい集団だなと(笑)。あと、最初はプロになる気がなかったので、仕事とラグビーがちゃんと両立できる環境に魅力を感じて入りました。同じポジションのライバルについては、入る前は、自分なら勝てるという気持ちで入ってきました。その中で、簡単に勝てる相手じゃないということも魅力だと思います。僕個人としては、好きな環境ですね。
――なぜそういう環境が好きなんですか?
何ですかね。ライバルがいないとつまらなそうですね。ライバルがいた方が自分が成長できると思います。このチームで先発というポジションを確立できれば、ラグビー選手として覚醒じゃないですけど、大きな選手になれるんじゃないかなと思っています。
正直、今の状況ってめちゃくちゃ苦しいですし、メンタルがそこまで強い方じゃないので、メンバー発表の前夜に眠れなくなる日もあります。そういう状況でやってきて、1年を振り返った時に、毎年ライバルがいて良かったと思うんですよ。
――ライバルの存在が自分に手を抜かせないということなんですね
そうですね。その中でやることで、人としても成長できると思います。
◆ライバルがいるから継続できる
――ラグビー選手として覚醒し始めていますか?
分からないです(笑)。結局は、割り切っている部分はあって、メンバーを選ぶのは僕らじゃないんですよ。コントロール出来ることに対して120%でやり続けて、そこで試合に出るチャンスがあれば、しっかりとパフォーマンスが出せるように、その準備をしっかりとやっていくことが大事かなと思っています。それを続けていくことによって良いことが起きるんじゃないかなと。
――継続力には自信がありますか?
そこもライバルがいるから継続できるのかなと思っています。
――今の目標は何ですか?
次のシーズンで優勝することです。サンゴリアスに入って、まだ優勝していないので、そろそろしないといけないですね。すべて準優勝です。
――それに向けた自信のほどは?
もちろんあります。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]