2022年7月22日
#806 中村 駿太 『闘争心がまた芽生えた』
激戦区のフッカーのポジションで、抜群の安定感を見せた中村駿太選手。もう一歩先に向けて、今何を考え何をやろうとしているのでしょうか?NDS活動から帰ってきた直後に聞きました。(取材日:2022年6月下旬)
◆スローイングとセットピースはレベルアップ出来た
――2022シーズンのリーグ戦にはほぼ出場しましたね
サンゴリアスのシーズンも、その後に参加したNDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)のキャンプも終わり、やっと少し休める時間が出来たかなと思っています。今はホッとしている感じです。シーズン中は毎年のことですが、ずっとスイッチが入った状態なので、やっとプレッシャーから解放された感じです。
――2022シーズンはどんなシーズンでしたか?
個人的には、プレーオフの準決勝、決勝とメンバーに入ることが出来なかったので、非常に残念というか、悔しい想いをしたシーズンでした。チームとしても、やっぱり決勝で勝つことの難しさを再認識できたんじゃないかなと思います。
準決勝と決勝で試合に出る事は出来ませんでしたが、素晴らしいライバルと切磋琢磨できた事は非常に楽しかったですし、また一つ人間としてもラグビー選手としても成長出来たと思います。
――準決勝、決勝では怪我をしていたわけではないんですか?
実力で選ばれませんでした。同じポジションにはレベルの高いメンバーがいますからね。
――シーズンを通して高いパフォーマンスを出していたように感じましたが、自分ではどう感じていましたか?
パフォーマンスのところは悪くなかったと思います。納得しているかと言うとちょっと違いますけれど、このくらいのレベルで出来るんだぞという部分は、ずっと示せていたかなと思います。
――2021シーズンもそうだったと思うので、2シーズン連続でそういうパフォーマンスを出せていただということですよね
そうですね。2021シーズンと比較しても、数字上は分からないですけど、ラインアウトのスローイングの部分とセットピースの部分は、2022シーズンにとてもレベルアップ出来たかなと思います。
◆コンディショニングは課題
――現時点での課題は?
全部なんですけど、強いて言うなら、コンディショニングをずっと保つこと。そこは課題として出たかなと思います。
――コンディションの維持は難しいですか?
2022シーズンに関しては、少し難しかった部分がありました。痛めている箇所などが、自分のベストの状態に持っていけなかったところがあります。
――そこはどうやって改善できそうですか?
僕は6歳からラグビーをやっていて、これだけラグビーをやってきて、痛めている箇所も多くなっています。その弱っている部分、痛めている部分の周りの筋肉をもう一度鍛えて、痛みが出ないようにする、コンディションを落とさないようにする、それをこのプレシーズンまでのオフ期間の間にやりたいと思っています。
――新しいチャレンジですね
そうですね。ちょこちょこはやっていましたが、そこに100%の重きをおいてやっていなかったので、このオフはそこにフォーカスしてやってみようかなと思います。
――自分の身体と向き合うことは、また良い経験になりそうですね
そこは自分しか分からない部分だと思いますし、自分でも分かっていない部分だと思います。そこを再度見つめ直して、そこを感じながらしっかりとやっていきたいと思っています。
◆飛び抜けた強み
――チームとしての2022シーズンの結果はどう見ていますか?
難しいですね。決勝も勝つチャンスは間違いなくあったと思います。何か飛び抜けた強みを、2022シーズンはチームとして作れなかったということが、ひとつの要因になるのかなと思います。そこが少し足りなかったのかなと思います。
選手はみんな、同じことを感じていると思います。1対1でのレビューミーティングも行いましたし、そこで来シーズンのある程度の方向性というか、やっていかなければいけない部分のすり合わせは、選手とスタッフで出来たんじゃないかなと思います。
――来シーズンは鍵になるシーズンになりそうですね
僕はサンゴリアスに入って6年になりますが、優勝か準優勝しか経験していません。他のチームから見れば、ずっとファイナルに進んでいて、成功していると思うかもしれません。けれど、サンゴリアスは優勝しか求められていないので、準優勝では喜べないんですよ。もし来シーズンでベスト4で終わってしまったら、そこから一気に崩れてしまうと思うので、そういう意味でも、「またファイナルに行って勝つ」という、マインドセット、準備を本当にやらなければいけないと思っています。
――そういう時の自分の役割とは?
やっぱり選手なので、試合に出てチームに貢献することです。これだけ素晴らしい選手がいるので、試合に出られないことは当然あると思います。そうなった時に、どういう態度でチームに対して貢献するか、その場その場を見ながら、感じながらやっていくことが大事かなと思っています。
◆人生思うようにはいかない
――NDSでの活動はどうでしたか?
とても勉強になりました。人生、そう上手くはいかないということですね(笑)。目標にしていた日本代表のキャップが取れませんでした。ラグビーを始めた時からそれを目標にやってきて、そういうチャンスを昨年も今年もいただきながら、試合には出ることが出来ませんでした。本当に人生って思うようにはいかないなって、再度思いました(笑)。
――次のチャンスでは、こうやって掴むというイメージはありますか?
全体的なボリュームアップが必要なのかなと。基本的には、サンゴリアスでコンスタントに試合に出ていれば選ばれるかなとは思っています。
――NDSで得たものはありますか?
他のチームの選手とプレーして、やっぱりサンゴリアスのレベルの高さを再認識しました。あと、映像でしか見たことない選手や1回しか試合をしたことがない選手たちとスクラムを組んだりして、そういう選手の特徴であったり、性格の部分を知ることが出来たというのは、自分にとってもプラスになったと思います。
――他の選手の特徴や性格を知るということは、対戦する時にも有利になりますか?
そうだと思います。実際に対戦した時に、スクラムで言えば、相手の傾向が分かるので、それに対してどう対応するかが事前に読みやすくなると思います。
――逆に言えば、中村選手も相手に知られたということですよね
そうですね。けれど、まあ、僕は派手なプレーをするわけでもないですし、感情を表に出すタイプではないので、見られて何も困ることは無いです。相手を知るという部分では、プラスしかなかったと思います。
――他のチームの選手を見て勉強になった部分はありましたか?
静岡ブルーレヴズの日野さんがいたので、スクラムのことを聞いたりしました。スクラムは学ばせてもらいましたね。あと、勉強じゃないですけど、晃司(飯野)がファーストキャップを取りましたし、康介(堀越)もとても良いパフォーマンスを出していて、そういう姿をウォーターボーイをやりながらテストマッチで見られたというのは、自分の中でエネルギーになりましたね。
◆上半身を鍛える
――今後の目標は?
もう一度、原点に戻るというか、まずはサンゴリアスでスタメンないしはリザーブで試合に出て、ファイナルで勝って優勝することが、いちばん大きな目標です。
――そのためにやろうと決めていることはありますか?
痛めている箇所をしっかりとリハビリして、来シーズンはもう少し上半身を鍛えていこうと思っています。
――2022シーズンは少し身体を絞ったんですか?
いや、自分としては、2021シーズンよりも2022シーズンの方がコンタクトが出来ていたと思っていますし、GPSの数値を見ても、感覚的にも、とても動けていましたし、自信を持っていました。だから、体重がどうとかではなく、もう少し上半身を鍛えることで成長できる部分、弱みを補える部分があると思うので、そこを狙ってやっていこうと思っています。
――そうなると身体が重くなりそうですね
体重が上がるかもしれませんし、体脂肪が減って体重は変わらないかもしれませんが、もう一度ベースを作り直したいと思っています。
◆メンバー発表の度に一喜一憂
――サンゴリアスで6年やって、準優勝か優勝しか経験していないというのはやはり素晴らしいですね
コロナで途中で終わってしまったシーズンもあったので、2勝3敗という成績ですね。その中で自分が決勝に出場できなかったのは、2022シーズンが初めてでした。
2022シーズンは自分の中でも欲が出たと思います。以前のインタビューで、リザーブでもスタメンでもどちらでも良いと言っていたと思うんですが、2021シーズンにあれだけのパフォーマンスを出して、かなりの数の試合でスタメン出場しました。良いか悪いかは別として、自分の中でそこがスタンダードになっていたと思います。
2022シーズンに関しては、スタメン、リザーブ、メンバー外と、メンバー発表の度に一喜一憂してしまっていました。スタメンで出たいという気持ちが強くなってしまった半面、プレーの硬さや守りに入ってしまったり、そういうところが無意識のうちにあったのかもしれません。
2021シーズンの時は、「リザーブでも何でも、試合に出たい」という気持ちがあったんですが、2022シーズンは「スタメンじゃなきゃ嫌だ」という気持ちに変わってしまったので、良くなかった部分なのかなと思います。
――そこはどう変えていくんですか?
気持ちの持ちようだと思います。準決勝と決勝でメンバーに入れなかったので、闘争心というか、負けたくないとか、言っていることが矛盾しているかもしれませんが、そういう気持ちがまた芽生えました。そこは自分の中でプラスだと思うので、それをエネルギーに変えて頑張りたいと思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]