2022年4月29日
#794 山本 凱 『もっとジャッカルを』
1ヶ月前まで大学生だった山本凱選手が、早くもリーグワンデビューを飾りました。記念すべき初キャップを獲得した山本選手の今を聞きました。(取材日:2022年4月下旬)
◆ワクワクした気持ち
――東京サンゴリアスに入ってすぐリーグワンデビュー、フル出場を果たしましたが、どうでしたか?
とても楽しかったですね。大学の時から試合前日は結構緊張するタイプなんですが、試合前のアップになると会場の雰囲気とかを感じられて、楽しみの方が大きくなります。
――どこかで緊張を吹っ切るんですか?
良いプレーが出来るのは、良い緊張感を持って会場に入って、会場に入った後はワクワクした気持ちになると、良いプレーが出来ます。
――どういうところでワクワクしますか?
リコー戦はデビュー戦でしたし、リーグワンという舞台ですし、お客さんも見に来てくれているし、ルーキーだし、という状況からワクワクしますね。
――緊張をしても落ち着いているタイプなんですね
全く緊張をしない人もいると思いますが、僕は緊張するタイプです。その緊張感と良い感じに向き合いながら、ワクワクするメンタルを持って試合に臨んでします。
――メンタルは強いと思いますか?
メンタルが強い弱いじゃなくて、良いメンタルを持てたら良いプレーが出来ますし、良いメンタルが持てない時には良くないプレーが出たりすると思います。
――良いメンタルとは?
僕の考えは、何も考えずにしっかりと身体を当てられたり、前に出られたりする。変に考えすぎずに、何も考えずにコンタクトプレーが出来たり、「やってやる」という意欲を持って取り組める状態だと思います。大学4年のシーズン最初の頃は、「チームが負けたらどうしよう」とか、チームのプレーのことを考えすぎていて、良いメンタルが持てない時がありました。
――大学4年の時には副将、その副将としての役割とプレーヤーとしての役割は、どう切り替えていたんですか?
試合になったらチームのことより、「自分がやってやるんだ」という気持ちをしっかりと持つようにしました。
◆もっともっとやれる
――デビュー戦の出来はどうでしたか?
もっともっとやれるという感じはあります。良いプレーもありましたが、もっと試合に出て、もっとやりたいというハングリーな気持ちが強いですね。
――良かったところは?
ディフェンスの部分は良かったと思います。しっかりと意欲を出して、たくさんの場面に絡もうと思って試合に臨みました。激しいタックルをして、キャリーでもボールを持って前に出ようと思ってやっていましたが、それが何回か出来たと思います。
――自分が思っていたデビューのタイミングでしたか?
1年目だから出られないということは考えず、試合に出たいと思ってこのチームに入りました。年度とか関係なく、試合に出たいという気持ちが強かったですね。
――試合の前から80分出るということは言われていたんですか?
練習の段階で「フルで行くんだろうな」と思いましたし、トレーナーからも「80分だと思うよ」と言われていました。
――フル出場してみて、身体への影響はありましたか?
リーグワンでのデビュー戦でしたし、80分出ることは不安だったんですが、結構TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)が多くて、合間合間で休憩できたので、それほど影響はなかったと思います。TMOが無かったとしても、思ったよりは大丈夫でした。
◆体をぶつける
――1試合出てみて、課題は何ですか?
もっとジャッカルしたかったですね。ジャッカルも出来るというところを見せたいことと、ブレイクダウンの質を上げたいと思っています。
――ジャッカルは得意ですか?
自信を持って得意と言えるほどではありませんが、それなりには出来ると思っています。
――ジャッカルのコツは?
経験も必要だと思いますが、しっかりとボールを持って、強い姿勢を取ることだと思います。
――話を聞いていると、身体には自信がありそうですね
そうですね。身体は小さいですが、身体をぶつける局面、タックルやボールキャリーは得意な方です。
――身体をぶつけることに喜びを感じますか?
喜びを感じますね(笑)。そういうプレーをしていると充実感があります。
――その他にもラグビーをやっていて楽しいところは?
試合に勝って、終わった後の雰囲気とか。その時の気持ちはとても楽しいですね。リコー戦の後も、ロッカーでチームソングを歌い、爽快な気持ちで音楽聞きながら帰って、楽しかったです(笑)。
◆みんながカッコよかった
――東京サンゴリアスに入ろうと思ったのはいつですか?
詳しいタイミングは覚えていませんが、大学3年の終わり頃だったと思います。他からもいくつか声を掛けていただいて、声を掛けてくれたチームの練習に参加して、それで決めました。練習からバチバチ身体を当てていて、みんなギラギラしていて競争が激しくて、そういう練習をしているみんながカッコよかったですね。
――あえて競争が激しいところに入ろうと思ったんですね
このチームで試合に出られなければ、自分はその先も見えないような選手ということだと思います。このチームで試合に出続けて活躍できれば、本物だと思いますし、その先も見えてくると思いました。そこで試合に出られないような選手であれば、それまでの選手ということだと思います。
――これから本格的にラグビーをやっていこうと思ったのは、いつ頃ですか?
大学に入ってからですね。大学に入る前は、自分が大学でどのくらい出来るか分かりませんでしたし、その段階ではトップレベルでやろうとは考えていませんでした。大学に入って、下級生の時から試合に出させてもらい、2年生くらいから社会人チームからも声を掛けてもらえるようになって、そこから考えるようになりました。
――大学時代に、下級生から試合に出られていたのはなぜだと思いますか?
慶應の中でもトレーニングからアピール出来ていましたし、しっかりトレーニングして、フィジカルでもそんなに負けなかったからだと思います。
◆68kg→93kg
――ラグビーはいつから始めたんですか?
小学生からです。記憶にあるのは、中学くらいからガッツリ練習して、週3回の練習でしたが、毎回ヘロヘロになって家に帰っていたのを覚えています。
――その当時のラグビーの面白さは?
フルコンタクトの練習で、いかにして相手を抜くか、ゲインするか、タックルで相手を倒せるか、そういうところが面白かったんだと思います。
――これまでポジションは変わっていませんか?
中学ではバックスでした。当時は足も速かったですね(笑)。慶應高校1年の春の関東大会くらいの時に、監督からバックローにコンバートされました。1年の頃は体重が軽くて思うようにプレー出来なかったので、体重を増やしました。中学を卒業した時には68kgくらいでしたが、高校を卒業する時には93kgくらいになっていました。
――トレーニングだけじゃなく、食事も意識してたくさん食べていたんですか?
そうですね。大食いではないので、1日の食事回数を増やして、定期的に食べるようにしていました。高校3年間でしっかりとトレーニングをして、そこで身体の基礎が作られたかなと思います。
――身体を大きくするとスピードは下がっていくものですか?
徐々に落ちて行ったと思いますが、高校3年間ではそれほど感じていませんでした。バックローでもショーン・マクマーンは足が速いので、自分も速くなりたいですね。
◆小澤さんから
――今後の目標は?
「試合に出たい」というところに尽きます。試合に出られなくても、「なぜ試合に出られないんだ」と卑屈になるのではなく、目の前のトレーニングにしっかりと打ち込むことが大事になると思います。これから伸ばしたいところは、もっとジャッカルできるようになるところですね。
――ジャッカルについては誰かに教わっているんですか?
小澤さんから教わったりしています。
――全体的に物事を整理して取り組んでいる印象を受けますが
いやー、物事を整理することは苦手な方です。がさつな性格で、部屋とかも結構汚いと思います(笑)。
――兄弟は?
2人兄妹で、妹がいます。
――デビュー戦は、ご家族も喜んでくれましたか?
そうですね。先輩なども声をかけてくれて嬉しかったです。両親は会場で見てくれて、とても喜んでくれました。
――苦手だからこそ、物事を整理して、自分の中で思い悩むことを無くそうとしているんですか?
思い悩むことは、あまり無いかもしれないですね。明るい性格なわけではありませんが、めちゃくちゃ落ち込むことも少ないと思います。
◆タックルに行きたい
――今シーズンはどういう形で終わりたいと思っていますか?
やっぱり試合に出て活躍したいですね。出られるか出られないか分かりませんが、まだ試合はあるので、1試合でも多く出場して、活躍したいと思っています。
――ファンの人に試合で注目して欲しいポイントは?
まずはタックルですね。あとはしっかりと身体を当てるところを見て欲しいです。思いっきりタックルに行くので、思い切りの良さは僕のタックルの特徴かなと思います。
――思いっきりタックルに行くためのコツは?
躊躇せずに思いっきり身体をぶつけることです。メンタルが整っていないと思いっきり行けないので、「タックルに行きたい」という気持ちを持って行くようにしています。そういう気持ちを持てることが多いので、良いタックルに繋がっていると思います。
――「タックルに行きたい」と思いすぎて空回りしてしまうことはありませんか?
そこは空回りすることなく、意欲がプレーに現れるかなと思います。大学の時に、意欲や熱意について監督から言われたんです。英語で"Enthusiasm"と言うんですが、「自分がタックルに行ってやる」とか「ボールキャリーをたくさんやる」とか、いかに意欲を出してラグビーが出来るかという部分で、プレーの質が変わってきます。なので、意欲を出してプレーすることを意識しています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]