2022年4月22日
#793 箸本 龍雅 『タックルに行くことにやりがいを感じています』
とうとう公式戦デビューを果たし、続けて試合に出場している箸本龍雅選手。いま何を課題として何を目指しているのでしょうか?初めて先発出場したその翌日に話を聞きました。 (取材日:2022年4月中旬)
◆動きやすい身体になってきた
――リザーブで出場して初キャップ、次の試合では先発出場、いまの状態はどうですか?
自分の中では、巡ってきたと思っています。デビュー戦がリザーブで、その試合での自分のターゲットは、得意な"強いボールキャリー"と、今まで自分に足りなかった"ブレイクダウンや細かい精度"、ディフェンスでの"1対1のタックルで絶対に外さない"という3つ、これらにフォーカスしました。実際に試合でボールをもらえた回数は1回くらいだったと思いますが、ブレイクダウンや2人目のサポート、タックルのところで、自分が準備してきたことが出せたので良かったと思います。
2試合目については、前半はなかなかボールが持てなくて攻め込まれて、自分自身についてあまり良い評価はしていません。攻め込まれた原因を考えると、自分がもっとこうしたら良かったとか、自分のプレーが攻められることに繋がっていたんじゃないかと、自分にベクトルを向けて反省をしました。そういう細かいところを詰められていないことが、自分の甘さかなと思っています。
――いま体重は?
今は108kgくらいで、ちょうどいいくらいになっています。昨シーズンが終わって、体重を112~113kgくらいまで増やしてプレシーズンをプレーしていたんですが、自分の強みであるワークレートを出すには少し重かったので、今年に入って1月~2月くらいで一気に体重を落として、そこからウエイトトレーニングで2~3kg増やして、動きやすい身体になってきました。
今の体重が自分としては良いと思っていますが、監督からは111~112kgくらいは欲しいと言われていて、世界のフランカーの選手を見ると、そのくらいの体重の選手が多いですよね。後々はそのくらいの体重でも、動けるようになれれば良いなと思っています。
――体重を増やすことは来シーズン以降の目標になりますか
どのくらいでなれるか分かりませんが、気がついたらそのくらいの体重になっている、というペースで良いかなと思っています。
◆自分が直すべきところ
――本人には不満があったかもしれませんが、2試合目も動けていたように見えましたが
動きの部分では、映像を見る前、試合をした感覚では悪くはなかったかなと思っていましたし、試合後にコーチなどから動けていたと言われました。ですけど、自分が出来るプレーには達していなかったと思っています。ディフェンスの部分は割と出来ていたかなと思いますが、モールで絡まれてしまったところがありました。
自分が原因だったのか、もっと別のところに原因があったのかは分かりませんが、モールで絡まれてしまったのは、自分が強く入れずに相手に入られて、モールが動いて絡まれてしまったので、自分が直すべきところがあります。
そこでショーン・マクマーンだったらと考えた時に、自分のやるべき仕事をもっともっと詰められるんじゃないかなと思います。あそこで良いモールを組んで、スコアまで持って行けていれば、前半の苦しい状況はもっと早い段階で修正できたんじゃないかなと思います。
――静岡ブルーレヴズのセットプレーは強かったですか?
そうですね。スクラムでもモールでもペナルティーを取られてしまいましたが、スクラムでペナルティーを取られて自陣にくぎ付けという状況が前半は多かったので、プレッシャーは感じていたと思います。
◆これが自分の強み
――自分が動きやすい楽しさは試合で感じましたか?
107~108kgくらいまで落として、練習の時も含めて、「これが自分の強みだな」って思うことが増えてきました。体重が重い時には、「ここに行きたいけれど身体が動かない」という状況もあって、ダメだなって思う時もありました。今はプレーしながら「これこれ」って感じることが増えてきたので、その辺は楽しい部分ですね。
――チーム内でのリーダーシップについてはどうですか?
今シーズンからブレイクダウンリーダーに入れてもらいました。自分が試合のメンバーに絡む2~3試合前くらいの時期は、試合に出られないことにフラストレーションがありました。自信も無くしてしまっていて、なかなかリーダーシップを出せない時もありました。
ブレイクダウンリーダーというところでは、週のミーティングで次の相手のブレイクダウンについて、みんなの前でプレビューをします。そういった面では、昨シーズンよりは進歩しているんじゃないかなと思います。アシスタントコーチのアオさん(青木佑輔)と事前にミーティングをして、こういう内容をみんなに話そうと打ち合わせをして行っています。
――言葉よりもプレーで引っ張るタイプだと思うので、それが出せるようになってきていると感じます
そうですね。自分もそう思います。
◆このチームにいて満足することは無い
――これからも試合に出続ける自信は?
自分のパフォーマンスが良い悪いだけじゃなく、スタッフとコミュニケーションを取っていくことも、試合に出続けるためには必要だと思っています。自分が良いパフォーマンスをして認めてもらうというやり方もあると思いますが、本当に些細なことでも聞きに行ったり、教えてもらったりすることで、コーチたちも気にかけてくれるようになりますし、やっていくうちに「こいつはもう分かってるな」っていう、そういう信頼の取り方もあると感じています。少しずつやろうとしていますが、まだまだな部分があるので、試合に出続けるために、そういうところも伸ばしていかなければいけないと思っています。
――コーチだけじゃなく、選手に聞いたりもしますか?
ヘンディ(ツイ ヘンドリック)に聞いたりします。プレーも素晴らしいですが、ラグビーのシステムを本当に理解しているんだなって思いますね。
――ツイ選手は100キャップ目の試合もとても良いプレーをしていましたが、箸本選手も100キャップまでの道は見えていますか?
そこまで行きたいとは思っていますが、まだまだ伸ばせるところがありますし、伸ばせるところが見つけられるチームだと思うので、このチームにいて満足することは無いのかなと思います。
◆タックルに行くことにやりがい
――今シーズンの終盤に入ってきましたが目標は?
試合に出ることは常に目標にしています。1試合1試合、試合メンバーに絡んで、自分の強みであるボールキャリーやワークレートのところを前面的にアピールして、優勝の瞬間にグラウンドに立っていたいです。
――改めて試合に出ることに対する手応えは?
2試合に出させてもらったからなのかは分かりませんが、「試合ってこんな感覚か」って分かった気がしていて、練習中でも割と良いプレーが出来るようになってきたので、そこに関しての自信が持てていると思います。
――試合に出た時にファンに注目してもらいたいところはどこですか?
いま自分がこのチームに貢献できるところは、ワークレートだと思っています。ボールキャリーは得意ですし、泥臭いプレー、ブレイクダウンに早く寄るとか、抜かれた時に思いっきり戻るとか、そういうところを見せられたら良いなと思います。
――いまラグビーをやっていて楽しいところはどこですか?
今まではどちらかと言うと、ボールを持って抜きに行くところにやりがいを感じていたんですが、最近はディフェンスで相手が突っ込んできたのに対してタックルに行くことにやりがいを感じています。そこが楽しいところと思っています。
――身体をぶつけると達成感があるんでしょうか?
そうですね。ディフェンスで相手を止めた時がいちばん自信になります。アタックの調子が良くても、相手に抜かれたりタックルを外されたりしたらへこんだりするんですが、ディフェンスで勝った時にはポジティブになれます。
――そこが自分自身の根本になっていますか?
自分の苦手意識だったということがいちばんだと思いますが、今までそこにフォーカスしてやってきた部分なので、逆に苦手意識があったからこそ、そこが出来るようになった時には自信になるというか、成長しているということを感じられる場面なのかなと思っています。
――早くもそれを感じられて、楽しいのでは?
やりながら、「意外とやれているな」と感じる場面もあります。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]