SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2022年2月18日

#784 宮本 啓希 『グラウンド内でもグラウンド外でも個を強くする』

サンゴリアスからまた一人、大学の監督が誕生しました。選手として9年間、スタッフとして4年間、チームに貢献してきた宮本啓希 前主務。同志社大学の監督に抜擢された理由が、この熱きロングインタビューから垣間見えて来るのではないでしょうか。 (取材日:2022年1月下旬)

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◆チームを前に進める

――主務 兼 採用 という役職でしたが、この役目をどう捉えていましたか?

スタッフになって1年目は 副務 兼 採用 をやって、それから3シーズン、主務 兼 採用 をやってきて、スタッフとして合計4シーズンやらせてもらいました。主務としての役割は、チームを前に進めるためにやらなければいけないことをやるということです。正直、それは違うのでは?と思うこともありましたが(笑)、結果としてチームを前に進めるために必要だから言われている、と思ってやっていました。
サンゴリアスの良さ、そして大事にする部分は、普通に前に進むことではありません。今日よりも明日、明日よりも明後日が良くなっていくことが、チームとして良いところです。無理言うなよ、、、というところでもありますが(笑)。ただ、葛藤はあったりしますが、最終的に大事な"優勝するために"という部分はブレないので、結果として前に進むために、チームの矢印が向いている方に進めることが大事です。やり方は色々ありますが、そこは自分の中でブラさずにやって来られたと思います。

――やり方の部分では自分の中で意見があると思いますが、その意見が採用されることもありましたか?

主務になった1年目に組織が大きく変わって、日本人監督と外国人監督の考え方の違いも学びました。簡単に言うと、トップダウンかボトムアップかの違いです。

――どう前に進めるかという部分のポイントは?

「ただ勝てば良い」、ということは違うと思ってやっていました。チームとしても勝った上で更に愛されるチームになろうとしていましたし、サンゴリアスは絶対に勝たなければいけないけれども、勝つためだったら何をやってもいいということではないと思います。

僕の個人的な考えとしては、みんなの意見を全部広げて、それをまとめるのは無理だと思っています。それで優勝しようとしても、みんなの中で逃げ道が出来ると思います。なので、ある程度は「これをやる」というメッセージは大事だと思います。それがサンゴリアスとして正しいんだなと。

新しくなった組織でも、そこは特にコーチ陣は意識されていたと思います。サンゴリアスで僕が今まで受けてきた教育が「絶対に勝たなければいけない」、「勝つためには努力を惜しまない」というものなので、それは変わらずやってきたつもりです。

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◆自分に対しても良い人では勝てない

――世の中は今までの「勝つために手段を選ばない」というところが、変わってきているように感じます。そういった時代の流れから、「良い人で勝てる」のがいちばん良いと思いますが、今の"サンゴリアスらしさ"と照らし合わせると、どう思いますか?

「良い人で勝てる」って良いですよね。けど、そういう人って自分に対しては良い人じゃないと思うんですよ。自分に対しても良い人では勝てないと思います。僕はそこがポイントかなと思います。サンゴリアスには良い選手がたくさんいて、若手がどんどん増えて世代交代をしている良い過程にいると思います。

それはもちろん、どちらに転ぶか分かりませんし、コーチも「こういうことをしたら良いよ」とかアドバイスはしますけど、結局やるのは自分です。そういう時に自分に対して良い人になってしまうのって、逃げなんじゃないかなと思います。「これくらいで良いかな」って自分に対して優しくなってしまう。そこがブレなければ、今のやり方でサンゴリアスは勝てると思います。

やっぱり人間って、「自分で考えてやったらいいよ」って言われたら、絶対に楽な方に行ってしまうじゃないですか。自分に対して良い人になったら、ダメかなと思うので、だから僕も嫌なことを言ったりします。例えば、ウイングの選手が「ここがこうで上手くいきました」って言っていたとします。結局ウイングはトライ取ることをチームから求められているので、もし練習でやったことが出せただけで満足しているようだったら「それで満足すんねや」って。僕は「こいつなんやねん」って思われてもいいから、「そうだな」って気づいてくれれば良いなって思っています。

――チクっと言われた選手はどういう反応をするんですか?

もちろんそう言われてどう思ったかなんて言ってこないですし、イラっとした顔になってもいいんですけれど、ちょっとひとりになった時に、「そういえばあんなこと言われたな。むかつくなー。けれど自分はどうだったかな」って思ってくれたらいいですね。

――主務を超えた部分だと思いますが、そこは引き継ぐことが出来るものですか?

僕は前の主務だったノムさん(野村直矢)を見ていて、そう思いました。サンゴリアスはそこが大事だし、自分がそういうことをやらなければいけないと感じました。でも、ノムさんから「やれよ」って言われたことはありません。ノムさんも「なんでちゃんとやらないんだ」「チームで決めたことをやれよ」ってズバッと言っていました。けれど、それを言うのってすごくパワーがいるんです。(笑)
正直、めちゃくちゃ嫌ですけど(笑)、それが僕が置かれている立場で、やらなければいけないこと、と考えてやってきたつもりです。

――それは主務の仕事よりも採用の仕事に近いかもしれないですね

直近リクルートした一年目の仁熊、甲嗣(下川)、箸本龍雅、片倉、尾﨑泰雅の代には色々言っていると思います。向こうがどう感じているかは分かりませんが、僕の中でネチネチしたことを言う事もありますし、「それで良いのか」って言ったり、逆に良かった時には「良かったな」って言うようにしています。その上の代のテビタ(タタフ)にも、今いいキャリアを積み重ねていて、ここから更に頑張らなければいけない時期なので、結構言っていると思います。テビタは、元サンゴリアスのS&Cコーチの若井さん(現 リコーブラックラムズ東京 ハイパフォーマンスマネージャー)からも言われていたので、みんな自分の中でどう受け止めたのかをもとに、リコー戦に向けてマインドセットしてくれると思います。リクルートの面では、そういうところを意識しますね。

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◆今いる選手がいちばん大事

――リクルートの部分では、誰を採るかという部分も任されているんですか?

大きくは任されています。だいたいリクルートでは、大学3年生になる選手に対してアプローチをし始めます。そのタイミングでリクルートのミーティングをして、今のサンゴリアスの現状として、どのポジションの選手に声をかけた方がいいのかを話し合います。その中で候補の選手などを挙げて、どうアプローチしていくかを考えます。

――相当、見ていないと分からないですね

大学の試合にはよく行きました。春シーズンなどでは練習も見に行かせてもらいましたね。

――他のチームのリクルートの人も来ていたりしましたか?

結構、来ていましたね。他のチームからしたら、「サンゴリアスは来るなよ」って思われていたかもしれないですね(笑)。

――リクルート面で大事にしていた視点は?

やっぱり今いる選手がいちばん大事だとは考えてました。だから、チームにいる選手がどう思うかも気にしていたつもりですが、やっぱり採らなければいけないので、例えば、プロップの選手に声をかけて、その選手がサンゴリアスの練習を見学に来たりしますよね。今のサンゴリアスの選手は、自分の中でしっかりとマインドセットが出来る選手が多いので、そういうことにグラグラするような選手はいないんですけれど、普通に人間として考えると、「2年後にあの選手が来るかも知れない。自分の年齢を考えたら、そろそろかな」とか考えちゃう人もいると思うんですよ。

いいプレッシャーを掛ける意味で、そういうことを少し思わせることは良いと思うですが、それを思わせ過ぎてしまうのは良くないと思います。やっぱり選手も気にするので、「あの選手が来るんですか?」とか聞いてくるんですよね。

そこから選手の人間性が出ると思います。そこで「なんやねん」って思う選手と、「やったる」と思う選手がいると思います。そこはラグビーの能力が、関係あるようで関係ない部分でもあると思います。そこは大事なところだと思います。今のサンゴリアスの選手に対しては、その事は心配していません。

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◆自分の色を出すためには

――スタッフとして4シーズンやりましたが、選手を引退した時にはチームに対して何かしらの力になりたいという気持ちがあったんですか?

もう昔の話になってしまいますが、現役最後の2017-2018シーズンの開幕前の網走合宿で言われたんですね。いま横浜キヤノンイーグルスの監督をやられている、あの方に呼ばれて(笑)。「ヒロキ、来シーズンはスタッフをやれ」って言われたんですけど、サントリーの仕事として業務用をやっていましたし、営業をやりたいとも思っていたので、「いやいや・・・」というところから始まりました。今ではそう言って頂けた事に感謝しかありません。
スタッフになって最初の頃は、選手の感覚も残ってたりどっちつかずの気持ちでしたが、自分の中でだんだん切り替えていきました。選手として最後のシーズンに優勝したんですけど、亮土(中村)が12番で出場して、亮土が1年間頑張ってきていた姿を見ていましたし、僕も引退ということが分かっていました。色々な感情が出て、最後に優勝して選手を終えて、逆にスムーズにスタッフとして入っていけたかなと思います。

――社業をやりたかった気持ちから、どう気持ちを切り替えたんですか?

耕太郎さん(田原/コーチングコーディネーター 兼 アシスタントコーチ)や前任のノムさんが、「サンゴリアスでやってみるか、と言われる人は限られているよ」って話をしてくれました。それを言われた時に「確かにそうだな」って思いましたし、サンゴリアスが好きでしたし、今でも好きですし、そこでどうしたいというより、もう声をかけてもらっているので、次のところに考えが進んでいましたね。「じゃあ、自分の色を出すためにはどうしようかな」って。

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◆これまでやってきたことなんて、どうでもいい

――声がかかるということは、周りから「そういう仕事が合っている」「そういう仕事をやって欲しい」と思わせるものがあったんだと思います。そこについてはどう思いますか?

そう思われることは嬉しいですよね。「自分がサンゴリアスでやってきたことが認められているのかな」と思える部分ですね。正直、選手の時って、辛い事の方が断然多かったですよ。優勝の時にグラウンドに立たせてもらっていたことは何回かありましたけれど、レギュラーとして試合に出ていた選手ではなかったですし、ある程度のキャップ数はありましたが、リザーブとしてチームの状況を見た上で、後半20分以降に出ることが多かったんです。もちろんノンメンバーの時も多かったですし、そっちの方が多かったと思います。トータルとして考えると、辛い、考える時間の方が多かったなと思います。

そこで終わりたくないと思いましたし、「どうやったら自分の色を出せるかな」とずっと考えていましたね。そこで「スタッフになれ」と言われた時に、「そうやって考えてきたこともマイナスじゃなかったんだな」と思った部分もあったんです。

――良い道を歩んでいると感じますが、やはりモヤモヤしたままの選手もいると思います。そういう選手に対しては、どう接したり、話したりしていたんですか?

やっぱり、絶対に自分の良さは分かっていると思うんですよ。それを前に出さなきゃいけないというところはベースにあるんですが、色々な選手がサンゴリアスに入ってきますし、その時々で組織も変わったりしますし、その時々でどれだけ順応するかという力だと思います。監督やコーチ、スタッフにどう思われるかって、やはり直接的な評価に繋がりますし、「これだけやっているのに」とか思っている選手は、一生試合には出られないと思います。

もちろん良い選手がたくさんいて、それぞれがプライドを持っていると思いますが、極端なことを言えば、僕はプライドを捨てましたね。「これまでやってきたことなんて、どうでもいい」って思って、「そんなことよりも、今ここで試合に出られなくて、3~4年くらいで辞めるのは嫌だ」と思ったんです。当時、監督だったエディーさん(ジョーンズ/ディレクター・オブ・ラグビー)が言っていることは何なのかといつも考えていましたし、それを今思い返すと、とても勉強になったなと思います。
よくコミュニケーションって言われるけど、「どういうコミュニケーションを求めているやろ」って考えていましたし、それによって自分が取るコミュニケーションが自然に細かくなったり、気づいたら深いことを話せるようになっていましたね。そういうところを意識するようにしていたので、いま振り返ると、あの時に自分で考えようとしたことが、とってもプラスだったなって思います。

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◆自信を持ってプレーしろ

――選手時代を含め、何名の監督を見てきましたか?

最初が清宮さん(克幸/現 日本ラグビーフットボール協会副会長)、エディーさん、直弥さん(大久保/現 静岡ブルーレヴズヘッドコーチ)、アンディ(フレンド)、敬介さん、ミルトン、で6人です。選手とスタッフと立場が違うので、感じ方も違います。

――スタッフという立場の方が、より監督を理解しやすいですか?

理解しやすいというか、やっぱり気にしますね。パソコンで作業をしていても、席が近いので、どんな話をしているかと耳に入ってきますし、その会話の流れで、次に自分にどんな球が飛んでくるかなと考えています。そういうことを考えながら仕事をしていたので、勉強になりましたね。

――それだけの監督と接してきて、今度は自分が監督になりますね

もうビックリですよね。

――学生時代にキャプテンの経験はありましたか?

いや、僕は中学、高校、大学とずっとバイスキャプテンなんですよ。監督って、キャプテンにはあまり言わないんですよね。たまにキャプテンに言う時もありますけど、だいたい横にいるバイスキャプテンに言うことが多いんですよ。僕は怒られ役ですね(笑)。

――同志社大学の監督の指名が来て、どういう決断をしたんですか?

まず気持ちとしては、母校ですし、とても光栄なことだと思いました。すぐ妻にも話しました。僕はずっとラグビーに関わってきているので、家に帰るのも遅いですし、休みの日も家にいないし、そのことを妻は気にしていたと思います。ですが、彼女も同じ大学なので、「良かったね」と言ってくれました。

監督になってどうしたいかという部分は、初めてのことで、正直、監督とはどういうものかが分からないです。だから、まずどういう場所なのかを理解するところから始めています。去年の大学選手権で最後に戦ったのは帝京大学でした。帝京大学が優勝しましたけど、同志社大学はその帝京大学に50点くらい差をつけられて負けました。それを見て、僕は「もうラグビーの差じゃない」「自信を持ってプレーしろよ」と思いました。その試合は、OBの目線で見ていましたが、「どうやったら自信をつけさせられるか」と感じましたね。それに対して、自分はどういうことが出来るかと、いま考えています。

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◆コミュニケーションが重要

――その未経験の分野で、何を強みとしてやっていこうと考えていますか?

まずはやってきたことしか出来ないと思うので、これまでサンゴリアスでやってきて、色々な経験もしましたし、大事だと思えたところからやっていくしかないと思います。それがやっぱりコミュニケーションだったので、相手がどう思っていて、何を考えていて、自分の考えとどこにズレがあるのか。

その中で、ゴールとして、やるからには絶対に優勝しなければいけないので、それを達成するためには、ズレがある部分を同じ方向に向かせなければいけなくて、それにはコミュニケーションが重要になると思います。そのためには色々なことを変えていくことになると思いますが、コミュニケーションをしっかりと取ることによって、変えるべきものを間違えないようにしたいと思います。そこをまずしっかりやりたいと思います。

――コミュニケーションを取って、今いる選手たちを把握し、この選手たちで何が出来るかという考え方ですか?それとも自分がこうやりたいという考え方ですか?

両方ですね。自分がどうやりたいということは、持っていなければいけないと思います。僕の考えですけれど、それがないと言い訳をしてしまうかなと。自分はここまで絶対に行くという強い考えがベースにあって、今いる選手たちをゴールに進ませるために、どう教えるかだと思います。

――いま考えている、こういうチームにしたい、どういうことをしたいというものは?

結局はチームなんですけど、やるのは個なんですよ。僕は本田圭佑(サッカー選手)の話が好きで、ワールドカップ後の取材で、「結局はチームだけど、個を強くしなきゃいけない」と話していて、それって大事なことだと思いました。結局は個が強くならないとチームは強くならなりません。強くなれって言ってやらせるんじゃなくて、ラグビーだけ強くするんじゃなく、「自分がなんでこれをやっているか」という部分をブレずに考えられる学生たちを、しっかりと作っていきたいと思います。

学生なので、大学でラグビーを終える選手もいますし、リーグワンでもラグビーをやりたいと思っている選手もいて、監督をやらせてもらうということは、その学生たちの次のステージに繋げる事だと思います。その中でブレないところは、グラウンド内でもグラウンド外でも、個を強くするというところをやっていかないといけないと思っています。

――サンゴリアスで選手からスタッフになる時に、なかなか出来ない仕事と言われましたが、同志社大学の監督も、なかなか出来ない仕事ですよね

そうですよね。本当、感謝しています。タイミングも、難しい時に送り出してもらえたと思います。コロナはもちろんの事、2月はビジターゲームが続いて、難しい試合が続く大事なタイミングでチームを離れることになって、感謝の気持ちとサントリーの「やってみなはれ」という部分をすごく感じました。とても感謝していますし、本当に覚悟を決めてやらなければいけないと思います。

――単身赴任ですか?

家族で行きます。妻も関西出身ですけど、子どもは東京で生まれてずっとこっちなので、初めての関西でどうなるかなと(笑)。僕は奈良出身なので、実家が近くなりますね。

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◆ホンマにこれで良いのか

――同志社大学の監督をやる上で楽しみにしていることは何ですか?

学生と話すことですね。色々な学生がいますし、サンゴリアスの選手がサンゴリアスの環境にいたら、当たり前と考えるベースがとても高いんですよ。良いとか悪いじゃなくて、学生のうちはそこまで持っていくやり方が分からないと思うんです。こっちからしたら「どういうこと!?」ってことが起きると思うんですが、まずはひとりひとりと向き合わなければいけないと思います。

逆にそれは、僕が選手の時にやってもらったことでもあったので、それで「自分のここが足りない」とか「自分のここが強みなんだな」と思ったこともありましたし、そうやってきた自分の立場が変わるんだなと。その時のことをしっかりと思い出しながら、まずは学生と向き合うことかなと思います。

――現時点での監督としての目標は?

監督としての目標、、、それは優勝です。50点差つけられた帝京大学に勝つことです。大学日本一になることです。良くも悪くも、サンゴリアスにいた人間として見られますし、サンゴリアスで学んだことをメッセージとして伝えることが大事だと思っています。常に優勝をターゲットにしていたチームにいたのに、チームが変わろうが自分の中でそのターゲットを下げる事はありません。

――同志社大学への合流はいつになるんですか?

2月2日です。その最初で、何かやってやろうと思います。そこでコケたら先が思いやられますけどね(笑)。

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――楽しみですね

色々なことにチャレンジしなければ変わらないと思いますし、サンゴリアスで学んだことがベースにはなっていくと思います。これから色々なことを学ばなければいけませんが、そのベースの部分の考え方としては、今日より明日、明日より明後日が良くなっていくような考えで、それが止まってしまうと勝てないということも実際に見ましたし、それが勝てない理由になることを実際に経験しました。

そこで昔からやっているやり方を変えるとなると、大きなブレーキがかかるとは思います。ただ、学生にただ「頑張って練習するんだ」って言っても、目標がなければ無理なので、そういったところですね。

あと、関東に対しては劣等感があると感じます。それは僕らの時代にもありました。去年の大学選手権であれだけ帝京大学と差が出ましたが、その劣等感は見えない部分として試合に出ていたと思います。そこを払しょくする事が大きな課題です。

――最後に、サンゴリアスへのメッセージをお願いします

昨シーズンの最後、正直、勝てると思っていましたが、結果的にああいう形になりました。今シーズンは"GOOD TO GREAT"というスローガンになって、細かい部分にもっとこだわって、そこのディテールを上げていくことを掲げています。新型コロナウイルスの影響でチームの活動も大変な状況ですが、今シーズンは絶対に優勝してくれると思います。僕は毎週のみんなの戦いぶりを見て、週末にその結果で活力をもらい、その活力で1週間をスタートさせたいですね。

最後に、ノンメンバーのことですね。メンバーは「ノンメンバーが大事」って言うんですよ。大事は大事だと思うんですけれど、メンバーはもちろん一生懸命頑張りますし、そのメンバーに入れるかどうか。メンバーに入れずにノンメンバーになってしまっている自分自身を「ホンマにこれで良いのか」とずっと思ってできるか。考えられる時間はあっという間に終わってしまいます。そこで後悔しないようにして欲しいと思います。今シーズンもそうですし、いつチャンスが巡ってくるか分からないので、その時に100%を出せることが大事です。そういった意味で、ノンメンバーは大事っていうことです。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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