SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2021年11月19日

#772 祝原 涼介 『スクラムとタックルとボールキャリー』

気は優しくて力持ち、そんな言葉がぴったりはまる祝原涼介選手。ところがその様子が段々と変わってきました。気になる祝原選手に、今シーズンにかける意気込みを聞いてみました。(取材日:2021年11月上旬)


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◆いつも通りやることがいちばん難しい

――昨シーズンは公式戦1試合出場でしたがどんなシーズンでしたか?

昨シーズンは結構苦しい思いをしました。高校、大学と試合に出ることが多かったので、こういう経験は初めてで、自分なりに足りない部分を考えて取り組みました。ただ言い訳になってしまうと思いますが、新型コロナウイルスの影響でスタートが1ヶ月遅れたということも、若手の僕にとってはかなり痛かったなと思います。スクラムがいちばん重要と言われていた中、自分のコンディションが仕上がるのが遅くなってしまったので、それが評価に繋がって、チャンスを逃してしまったと思っています。

調子は終盤にかけて上がってきたんですけど、トーナメント前ということもあり、起用するには難しいタイミングだったと思います。チャンスがない状態で、とにかく自分にフォーカスして身体を大きくしたり、技術を学んだり磨いたりすることをシーズンの後半は意識しました。

――気は優しくて力持ちという印象だったんですが、今は表情に厳しさや凛々しさが感じられますね

あまりそういうことを言われたことがなかったですね。周りから身体が大きくなったとは言われましたが、凛々しくなったとは初めて言われました(笑)。

――スタートが遅れた原因は何だと思いますか?

シーズンが始まってからの1ヶ月はかなり大事な時期なんですが、そこで上手く動けず、自分の調子が上がってきたのが3月、4月くらいで、シーズンの中盤から終盤にかけての時期でした。パフォーマンスが上がってきたという自覚はありましたが、なかなかチャンスを掴み取れませんでした。そんな中1試合だけチャンスをもらいましたが、あまり緊張をするタイプではないんですけど、普段やらないようなパスミスをしたり、ノックオンをしてしまいました。折角1試合出られたのに、あの試合は悔しくて後悔しています。本当にあり得ないようなミスをしてしまいました。

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――次に同じような状況になった時への対策は?

そうですね。次にそういう機会があったら、考えすぎてしまった部分があったので、自分なりにいつも通りにと考えています。いつも通りやることがいちばん難しいとは思いますが、まずはいつも通りにすることと、周りとのコミュニケーションも3年目になってだいぶ取りやすくなりましたし、プレッシャーを楽しめるようになってきています。そういう中で、身体の調子も良いので、昨シーズンよりも自信があります。

1年目が終わった後にも感じましたが、試合に出ていない若手がアピール出来るところって、プレシーズンマッチなどの練習試合です。そこでパフォーマンスを出さない限り、シーズンに入ってからはチャンスがないと思うので、そこでしっかりとアピールしてスタッフにプレッシャーを掛けられるように準備をすることが大事だと思います。昨シーズンはそこでつまずいてしまったので、今シーズンはプレシーズンの5試合でしっかりとアピールして、開幕戦のメンバーを掴み取りたいと思います。

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◆ずっとトレーニングを続けてきた

――その表情からは自信が伝わってきますが、今シーズンは順調に準備が出来ていますか?

オフの間も、1年目のシーズンが終わった後は、周りの先輩たちが休むので、それに合わせて休んでいたんですが、昨シーズンは終盤のパフォーマンスが良くて、それを落としたくなかったので、3~4日くらいだけ休んだら、それからずっとトレーニングを続けてきました。平松さん(S&Cコーチ)と相談して、継続してトレーニングしてきたので、数値も上がっていますし、色々なトレーニングをやってきたので身体の状態が良いです。

――身体は意識して大きくしたんですか?

そうですね。チーム練習が終わった後に必ずウエイトトレーニングをして、背中周りと肩周りはサイズアップしています。体重はそんなに変わっていませんが、上半身は色々な人から大きくなったと言われますし、変わってきたと思います。いちばんはスクラムに繋がるように、そこを重点的にやっています。

――背中を鍛えるということはずっとテーマにしていますよね

やっぱり背中が弱くて、曲がってしまうところが僕の弱さだったので、体幹と背中の強さを鍛えていて、それに伴ってスクラムの状態も昨シーズンと比べてかなり良くなってきていると思います。上手くいっているところは継続してやっていきたいと思っているので、このまま続けたいと思っています。

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◆スクラムにフォーカス

――スクラムは元々得意ですか?

苦手ではなかったんですが、得意というか、普通ですかね。大学の時は、明治大学で後ろの選手の体重が重かったので、大学時代は結構自信があったんですが、社会人になったら全然組めませんでした。フィールドプレーは通用する部分だったので、どちらかと言うと、スクラムにフォーカスを当てています。試合に出られない原因はスクラムと言われているので、自分のウィークポイントをどんどん伸ばしていって、アピールしていかなければいけないと思っています。

――学生時代と社会人とのスクラムのいちばんの違いは何ですか?

テクニックがぜんぜん違いますね。大学までは重さで押せる部分があると思いますが、相手の崩し方であったり、スクラムを組む前の準備、プレッシャーのかけ方、間合いなど、ベテラン選手や経験ある選手はやはり上手いので、そのレベルの違いを感じています。スクラムでは、感覚という部分もあると思いますが、やはり経験値がものを言うので、味方も相手も含め、色々な人と組まないと強くなれないと思います。

――今いちばんスクラムで気をつけていることは何ですか?

まずは自分のいちばん強い姿勢を取ることです。その姿勢が取れないと、後ろの重さを前に伝えられません。強い姿勢を取ることで良いスクラムが組めますし、相手にプレッシャーを掛けられると思うので、アオさん(青木佑輔アシスタントコーチ)と「どうすれば強い姿勢になれるか」といつも話しています。

――自分の強い姿勢はどうやって見つけるんですか?

自分がいちばん力を発揮できる姿勢なので、それは僕や慎太郎さん(石原)、由起乙さん(森川)、それぞれ違って、個人個人で押せる姿勢を考えて、その姿勢を取れるようにしています。相手にプレッシャーを掛けられているかどうかって、フロントローであれば見ていれば分かります。そういうところで、「ここの力がもっと入れば」とか、「足の角度のこっちにした方がもっと力が入るんじゃない?」とか、そういうことをアオさんと話しています。プレッシャーのかけ方は組まないと分からないので、言葉では説明できないですね。

シンプルな言葉でアドバイスをもらっても、頭では分かっても、すぐには出来ないんです。たくさん組んで、回数と経験を積まなければ、自分の中で整理は出来ないです。それにスクラムのルールは毎年変わるので、そのルールに応じたスクラムを作っていかなければいけません。

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◆弱みを強みにする

――今シーズンの自信のほどは?

自信はあります。昨シーズンの練習試合ではスクラムでペナルティーが取れていますし、強さは見せられているかなと思います。今シーズンはまだ試合をしていませんが、練習でプレッシャーを感じたりしていて、今シーズンの組み方にまだ適応できていないと思うので、これからのプレシーズンマッチで仕上がりを見ていただければと思っています。

やってきたことを出して、もしそれで出来ないんだったら、また何かを変えていかなければいけませんし、そこで試合に出られたら、それを継続していくだけだと思うので、とにかく先輩たちにプレッシャーをかけて、ジャージを着られるように頑張りたいと思います。

――自身が考えていたよりも、出場数は少ないですか?

1年目はシーズンが途中で終わってしまって2試合、昨シーズンは全然ダメで1試合で、悔しいですね。今シーズンは勝負の年だと思っています。

――新しいことをどんどん取り入れて、出来たり出来なかったりを繰り返すことは面白いんじゃないですか?そうやってスペシャリスト、スクラム職人になっていくことについては?

やっていることは面白いですよ。でも、僕は何かひとつに特化することよりも、色々なことが出来た方が良いと思っている人間です。自分がなぜ試合に出られていないかと考えた時に、その課題はスクラムと思っているので、その原因をどんどん無くしていけば、絶対に試合に出られると思います。要は弱みを強みにすることが大事で、他の強みはやりながら伸ばしていけばいいと思っています。

――試合に出たらどうしたいですか?

パフォーマンスを出して、試合に勝って優勝したいです。優勝する時にグラウンドに立っていたいです。試合に出ることによって経験値が積めますし、その先がどんどん見えてくると思います。もちろん日本代表になりたいと思っていますが、その前にこのチームでジャージを着て試合に出ることがいちばんの近道だと思ってサンゴリアスに入っているので、それを果たして成長したいと思っています。

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◆色々なことをやりたい

――色々なことが出来た方が良いという考えはどこから来ていますか?

高校の時からですかね。小澤さん、駿太さん(中村)、堀越さん、齋藤直人と同じ高校なんですが、みんな色々なことが出来る選手たちだと思います。そういうラグビーに憧れていましたし、サントリーに入った理由も、アタッキング・ラグビーでどんどんボールを動かして、そういうラグビーをやりたいと思って入ってきているので、色々なことをやりたいと思っています。

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――今シーズン、ファンの皆さんにここを見ていて欲しいというところはありますか?

成長したスクラムです。全てのスクラムに勝つつもりでやらないと、まず試合に出られないと思うので、そのぐらいの気持ちでやっていきます。あとはフィールドプレーでボールを持ったり、タックルのインパクトですね。ニュージーランドのプロップの選手などは、インパクトのあるタックルを1試合で1本は必ずやっているので、印象に残るタックルをしたいです。スクラムとタックルとボールキャリーと、アグレッシブにパワフルに行きたいと思います。

――自分にいちばん期待していることは何ですか?

いつも通りのプレーをすることです。昨シーズンの反省で、それがいちばん大事だと思います。そのためには考えすぎないことが大切だと思います。昨シーズンのNTTコミュニケーションズ戦は、久しぶりにジャージを着られて、嬉しさから空回りがあったので、シンプルに、考えすぎずにプレーすることを心掛けます。チャンスをもらえたら、先ほど言った3つのプレーをグラウンドで体現したいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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