2021年11月 5日
#770 森谷 圭介 『僕の周りでラインブレイクが起きる』
埼玉パナソニックワイルドナイツから移籍してきた森谷圭介選手。どんな思いで新天地を選び、どんな目標を持っているのでしょうか?ラグビーへの思いと意気込みを聞きました。(取材日:2021年9月下旬)
◆10番、12番、15番
――移籍を決断したのは何故ですか?
まずはパナソニックではあまり出場機会が得られなかったので、移籍したい意思がありました。移籍先を探す中で、自分が成長できるチームでやりたいという想いが強くあって、サンゴリアスから声をかけていただき、自分もレベルアップできると感じたので、移籍することを決めました。
――サンゴリアスでも競争が激しいと思いますが、そこを選ぶということは自信があるということでしょうか?
自信はないですけど(笑)、元々アタックが好きですし、個人的にもどのポジションが良いということもありません。アタックをメインに考えているチームの中で指導を受け、そういうチームの中でプレーすることで、自分にとってプラスになると思いました。簡単に試合に出られるようなチームではないので、もっと自分に厳しくしながらレベルアップできればと思っています。
――ポジションは10番から15番までプレーできるんですか?
チームからやって欲しいポジションというか、自分がそこに入ることでチームにとって良くなるポジションで出来ればと思っています。足があまり速くないので、ウイングはちょっと難しいかなとは思っていますが(笑)。
――個人的に好きなポジションはどこですか?
10番や12番のインサイドのポジションは好きですね。あと15番も好きです。周りにオプションがたくさんあるポジションでプレーすることが好きです。
――自分の良さを発揮しながら周りを活かすプレーが好きなんですね
ひとりで相手ディフェンスをこじ開けるとか、ひとりで抜いていくスキルは、これから伸ばさなければいけないところではありますが、周りとリンクしながらアタックすることが楽しいですね。
◆自然体
――今の課題は何ですか?
コンタクトのシチュエーションで少し受けてしまうところと、チャレンジするところとチャレンジせずに堅実に行くところの判断の部分だと思っています。個人的に見えた時に、あまりリスクを考えずにチャレンジしてしまう部分があるので、試合の流れやタイミングを考えながらプレーの選択が出来るようになりたいです。
――チャレンジするところも良さだと思いますが、その良さを抑えながらバランスを取ることは難しいことですよね
ギリギリまで判断を待ってしまう癖もあるので、早めに判断して、100%自分が良い状態でプレー選択が出きれば良いなと思っています。
――サンゴリアスに入って2~3ヶ月くらいですが、もうチームには慣れましたか?
そうですね。慣れてきたと思います。
――先ほどの課題は改善の兆しが見えてきていますか?
そこはコーチと話して、個人練習のために時間を割いてもらったり、レビューもしてもらっているので、ちょっとずつ良い方向には進んでいるかなと思っています。
――性格としては静かなタイプですか?
どうなんですかね。最初の頃は、家からクラブハウスに来る間、ずっと緊張していました(笑)。
――多面的というか、色々な面を持っているんですね
自分では分からないですが、そうかもしれないですね。
――そういった性格の中で、自分の長所はどこだと思いますか?
性格的な部分で長所は見つけられていないですね。ただ、人見知りしている間がもったいないと思っているので、新しい場所に入っても、出来る限り自然体でいられるように気をつけています。
――そのコツはありますか?
あまり良いことではないと思いますが、何にも気を遣わないようにしています(笑)。最低限の気は遣いますが、新しく入ったところでは色々な人の目を気にしてしまうので、そうしないように気をつけています。
◆パスやキックのスキルは強み
――プレーでの強みはどこですか?
パスやキックのスキルは強みとしてやっているので、その強みが活きるようにボールキャリーや自分で仕掛けることを、もっとやっていきたいと思っています。
――器用なんですね
どちらかと言うと、そうだと思います。
――何歳からラグビーを始めたんですか?
小学6年生からです。11歳か12歳の時にスクールで始めました。
――ラグビーを始めたきっかけは?
兄が2人いるんですが、兄が2人ともラグビーをやっていて、それについて行ったのが始まりですかね。
――ラグビーをやってみてどう感じましたか?
元々は野球をやっていたんですが、野球を止めなければいけなくなってしまったんです。親としては何か球技をやって欲しいと思っていて、バスケットボールなど色々とやっている中で、ラグビーもやってみました。ラグビーはぶつかっても良いし、ボールを蹴っても良いし、色々と出来たので、その時は楽しいと思いましたね。
――その楽しさは今でも続いていますか?
そうですね。色々な体型の人がいて、特徴がみんな違っていて、そういうところも楽しいですね。
◆兄の頑張っている姿
――これからもラグビーをやっていくと決めたのはいつ頃ですか?
中学生や高校生の時には、大学で強いチームでやるとか、自分がトップリーグでプレーするということは想像が出来ませんでしたが、7つ年上の兄がリコーに入って、そこで「あまりかけ離れた世界ではないんだな」と感じました。兄の頑張っている姿を見たら、自分も頑張れば行けるのかなと。
――二番目のお兄さんはどうだったんですか?
2つ年上で高校も一緒にやっていたので、真ん中の兄はポジションも近かったですし、身近な目標となる人でした。その兄はキヤノンに入って、その後は清水建設に移籍して、まだ現役を続けています。
――3人とも社会人まで続けたんですね。ご両親の運動神経が良いんですか?
あまり運動神経が良いなと感じたことは無いですね(笑)。けど、小学生の時には、母親にバドミントンでボロボロにやられていました。僕らが勝つようになったら、負けず嫌いなのか、一緒にやろうとはしなくなりましたね(笑)。
――ご両親は試合の応援に来てくれていますか?
毎試合くらい応援に来てくれています。
――兄弟で試合をしたことはありましたか?
二番目の兄は法政大学で、その時に練習試合をしました。あとは清水建設対パナソニックで試合をしたことがありますね。親はその試合を楽しんでくれていました。
――親からも期待されていますか?
期待を感じたことは無いですかね。そういう話をあまりしません。兄弟ともラグビーの話はあまりしたことが無くて、お互いに「怪我をするなよ」って話すくらいですかね。お互いに考えていることが違うので、そこで意見を交換したりすることもないです。
――いちばん上のお兄さんのポジションは?
最後はフランカーをやっていました。二番目は今はウイングをやったりフルバックをやったりしています。3人ともポジションが違うので、同じチームで一緒にプレーしてみたいですね。
◆指導者はやってみたい
――いまラグビーで目指しているところはどこですか?
僕が出場してトップリーグで優勝したことがなかったので、それは果たしたいですね。あとは日本代表になれればと思っています。試合に出て優勝できれば、それも近づいてくると思うので、まずはこのチームでレギュラーを勝ち取って、優勝したいです。
――長期的に考えた時に、やりたいことってありますか?
どのカテゴリーでも指導者はやってみたいと思っています。指導者にこだわらず、ラグビーに携わった仕事はしたいと思っていて、ラグビー以外の仕事をしている姿はまだ想像がつかないですね。
――パナソニックの時からプロ契約でしたか?
そうですね。僕は大学を卒業して、そのままプロとして入ったんですけど、人生の中で考えたら現役のスポーツ選手ってめちゃくちゃ短い期間しか出来ないので、その期間は競技に100%集中しても楽しいかなと個人的に思ったので、プロとしてパナソニックに入ることを選びました。
――実際プロとして活動してみて楽しいですか?
楽しいですね。楽しくないこともありますけど(笑)。試合に出られていない時や結果が出ていない時は楽しくないということもありますし、プロでやっていて良いのかなって思う時はありますが、もっと歳を取った時にやらなければ良かったとは思わない生活は出来ていると思います。
◆周りとリンクするプレーヤー
――思い描いているキャリアの中で、今はどの辺りまで来ていますか?
とくに計画的にやるタイプではないので、いつまでにこれをしてということは考えたことが無いんですが、やれるところまでずっとやっていきたいと思っています。ただ、怪我も多いので、指導者など、現役を終えた時には他より何かが出来ている状態になっておかなければいけないと思っています。
あとは、今はこのポジションでナンバーワンを目指すというような立ち位置にいないんですが、チームにいたら潤滑油になるような、周りとリンクするプレーヤーにはなりたいと思っています。このポジションだからこれが出来なければいけないということに縛られずに、何でも出来る選手になって、どのポジションでも周りも活かせるし、自分も活きるような選手になりたいです。
――今シーズン、どういったところに注目してもらいたいですか?
アタックが好きですし、僕の周りでラインブレイクが起きるところを見て欲しいですね。ただ、パナソニックから移籍してきたので、いちばんはしっかりと身体を張って、サントリーのチームメイトにもファンの人にも仲間として認めてもらえるように、ディフェンスで身体を張りたいと思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]