2021年10月22日
#768 北出 卓也 『開幕戦にスタメンで出る』
日本代表に選ばれてから、トップリーグではなかなか結果が出ないシーズンが続いた北出卓也選手。復活に向けてのターゲットを、約1年振りとなるインタビューでじっくりと聞きました。(取材日:2021年9月下旬)
◆自分が立ち帰れる自信があるところ
――まずは昨シーズンを振り返ると、どんなシーズンでしたか?
結果的にはあまり良くなく、悔しさの残るシーズンでした。自分にもチャンスのタイミング、評価が変わるタイミングはあったと思うんですが、そこでしょうもない怪我をしてしまったり、結局、そのチャンスを活かせず試合に出られないことが多くなってしまったと思います。チャンスのタイミングで自分のパフォーマンスを出せなかったことがいちばん悔しかったです。
――チャンスに対する焦りのようなものがあったんですか?
焦りというよりかは、自分がちゃんとパフォーマンスを出せれば公式戦に出られると思っていたので、やってやろうという気持ちの方が強かったですね。そこで怪我をしてしまったりしたので、そういう面が悔しかったです。
――これだけ試合に出られなったシーズンも珍しいんじゃないですか?
2019年のラグビーワールドカップの後のトップリーグは、シーズンの途中で終わってしまったんですが、その時もあまりパフォーマンスを出せずに、2~3試合くらいしか出られませんでした。あの年は、自分の中でもあまり試合に出た感覚がありませんでした。そして昨シーズンも、満足できるほどプレー出来ていないので、試合に出られていない期間がありますね。
――ワールドカップでは嬉しい想いと悔しい想いをして、更に昨シーズンで悔しさが倍増していますね
そこで空回りしないように、やっていきたいとは思っています。もう一度、自分がどこに自信を持つかというところで、昨シーズンは色々やろうとしていたと思います。振り返った時に、自分の軸がブレてしまっていたかなと思ったので、自分が立ち帰れる自信があるところを、今シーズンはもう一度いまのプレシーズン中に固めて、そこで勝負をしていきたいと思っています。
――2019年の悔しさから色々なことに取り組んだと思いますが、そこで更に悔しい想いをして、気持ちの切り替えは出来ていますか?
たしか僕が1年目の時のこのインタビューで、いろいろなプレーが出来る選手、ぜんぶが出来る選手になりたいと言ったと思いますが、そういうところで結局は自分がどこに立ち帰るかというところが、ブレてしまったのかなと思います。やっぱり自分が自信を持つところは、セットプレーやタックルです。そこはブラさずに、プラスαで取り組めば良いと思うんですが、自分が自信を持つところもブレてしまっていたかなと思います。そこがここ2シーズン、あまり試合に出られていないことに繋がっていると思います。
◆オンとオフが大事
――ターゲットをより明確にしていったから見えてきた部分なのかなと思いますが、プロ契約になったことも影響していますか?
いや、サンゴリアスで公式戦によく出ていた時はプロではなかったので、それはあまり関係がないかなと思います。プロになってラグビー以外に取り組まなければいけないことはないので、よりラグビーにコミット出来ているかなと思っています。
――ラグビーだけになったことで、気分転換など難しくなかったですか?
そこは大事にしています。正直、ラグビーが上手くいかないと、人生が上手くいかないというようなマインドになってしまっていた時期もありました。オフの時もクラブハウスに行って、トレーニングしたり、絶対に休まずやっていた時期があって、メンタル的にキツくなってしまっていました。
今はオンとオフの使い分けが上手くなってきたかなと思っていて、オフにはゴルフをしたり、一旦ラグビーから離れる時間も大事だと思っています。
――そこに気が付いたきっかけはありますか?
オンとオフが大事って、よく聞くじゃないですか?オフの時も休まずにラグビーをやっていて、そういう時期があったから気づけたと思うんですが、それをやっていた時って結構、試合に出られていたんです。だから、その時は苦ではないというか、結果に繋がっていたので、正解だと思ってやっていました。ただ、それが結果に繋がらなくなってきた時に、メンタル的にキツくなってきて、一旦ラグビーから離れることが大事、オンとオフが大事ということに気づきました。
――そこに気づく前は、かなり大変でしたよね
あまり試合に出られなくなってからは。キツかったですね。
――気分転換にゴルフを選んだ理由は?
新型コロナウイルスが流行して、飲みに出かけることも出来ず、ゴルフは屋外で密にならずに行えるので、ゴルフを始める選手が多かったですね。ゴルフをやることは、僕の中でラグビーから離れる良い時間になっています。
――ゴルフの腕前はどうですか?
いちばん上手いのは亮土さん(中村)で、ユタカ(流大)とかも上手いですね。チームの中で下手な方ではないですが、上には上がいます。
◆ラグビーから離れる時間を大切に
――いま気を付けているところ、目指しているところは何ですか?
目指しているところは、開幕戦にスタメンで出ること。それが、自分の中では絶対的なターゲットになっています。
――2023年のワールドカップを目指す上でも大事になりますね
そうですね。でも、サンゴリアスで試合に出ているメンバーが日本代表に呼ばれるので、今はあまり意識はしていません。サンゴリアスで試合に出ればついてくるものと思っているので、プライオリティー的にはサンゴリアスでスタメンを取ることを考えています。
――サンゴリアスでは世界のトップ選手たちと一緒に過ごしましたが、そういう選手の気分転換で参考になるところはありましたか?
やっぱり世界でトップにいる選手たちは、絶対にそこが上手いと思いますし、特に外国人選手はラグビーから離れる時間を大切にしていると感じます。ボーデン・バレットも小さい頃からやっていたそうでゴルフは上手ですし、クラブハウスに来たらスイッチを入れます。それを身近で見ることが出来たので、参考にはなりますね。
◆気分的にはまだまだ若手
――先ほど言っていた、自分自身が立ち帰れるところへの自信のほどはどうですか?
自信はありますね。まだチーム練習が始まって時間は経っていませんが、オフシーズン中も自分が自信を持つべきところに特化したトレーニングをやってきたので、そういうところから自信に繋がっています。
――体力的にはまだまだ伸び盛りですか?
今年29歳ですけど、疲れやすいとかは全く感じていないです。気分的にはまだまだ若手です。
――ラインアウトのスローについてはどうですか?
昨シーズンまでコーチだったタイ(マクアイザック)が僕の癖を見抜いてくれて、その癖をどう直すかと、プレシーズン中にアオさん(青木佑輔/アシスタントコーチ)に相談して、それが今は形になってきています。それによって、スローのミスが出なくなりましたね。
――以前までは、ルーティンなどを考えずにやっていましたよね
そうですね。考えるようになったきっかけが、力が全く入らなくなり、スローの投げ方も分からなくなってしまった時があって、以前の感覚で投げると、全く回転もかからないし、全然違う方向に投げてしまうようになってしまいました。そこで、いちから考え始めて、ようやく形になってきました。
――感覚で投げていた時と、いま考えながら投げている時とでは、どう違いますか?
今の方が、なぜミスをしたかが分かるようになりました。以前までは感覚でやっていたので、人にどうやって投げているかと聞かれた時に全く説明ができなかったんですけど、今は少しは言葉で説明できそうな気がしています。
――その部分については、スローだけじゃなく、全体的に良い影響があるんじゃないですか?
そうですね。僕自身、スローが調子良い時って、他のプレーもどんどんノッていけるので、良い方向に繋がっていくのかなと思っています。
――他のプレーについても考えるようになりましたか?
いちばん考えたのはスローですが、どんなプレーでも、自分の中でなぜミスしたのかが分かるのは大事なことだ思うので、そう思えるようになったことも成長かなと思います。
――ファンに向けて、今シーズン注目して欲しいポイントはどこですか?
まずはラインアウトのスローのところと、昨シーズンはスクラムのスタッツが良かったんですけど、今シーズンはリーグでいちばんのスクラムを目指しているので、自分が中心となってそういうスクラムを作っていきたいですし、サンゴリアスのスクラムを見て欲しいです。あとはタックルのところで、しっかりと身体を当てて、タックルに入っているところを見ていただきたいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]