SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2021年10月 8日

#766 箸本 龍雅 『ラグビーをやり切る』

新人インタビューのラストを飾る箸本龍雅選手。熱い思いを持ち、冷静な自己分析もできる箸本選手のトップリーグデビューの日が楽しみです。(取材日:2021年9月上旬)

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◆出来ないことがたくさん見つかる

――2021年4月にサントリーに入り実際に社会人として活動してみて、どんなことを感じましたか?

レベルの高さをいちばんに感じています。毎日毎日、練習を重ねるごとに自分は何が出来ていないのかと考え、出来ていないことがたくさん見つかるので、それをクリアしていくことに必死です。
昨シーズンが終わってオフシーズンに入って、約1ヶ月半くらい全体練習はありませんでしたが、その期間にたくさんトレーニングをしました。次のシーズンこそは試合に出たいという想いがあったので、個人的にはずっとトレーニングを続けています。

――ポジションとしては、フランカーやNo.8の他にロックも出来るとのこと、どこで勝負をしたいと思っていますか?

6番、7番、8番と、ぜんぶ出来るようになりたいんですが、ポジションによって役割が違うので、色々なことを一気にやるというより、ひとつひとつ自分がクリアしなければいけないことに優先順位をつけてやっていこうと思っています。昨シーズンはずっと7番をやらせてもらいましたが、どちらかと言うとライン際でプレーするよりも中の密集でプレーすることが好きです。それが出来るのが7番なので、個人的には7番でやりたいと思っています。

ただ、ひとつのポジションだけだと、なかなか試合では使ってもらえないと思うので、色々なポジションが出来た方がアピールポイントになると思いますし、7番をやりつつ6番、8番にもチャレンジしていきたいと思っています。

――密集でのプレーの面白さは?

なかなか大きな穴が開いていないところを、少しでも前に出る、あるいは僕はボールを持ってプレーすることが好きなので、早く起き上がってボールをもらってプレーすること。内側の方がそういう機会が多いですし、そういうプレーが好きです。

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◆自分の持ち味

――明治大学の時にはキャプテンでしたが、社会人1年目にキャプテンシップを発揮する場はありましたか?

そこは昨シーズンの反省として個人的に挙げているところです。周りには試合に出ている出ていない関係なく、色々なリーダーを経験してきた先輩たちがいて、何をしなければいけないのかを示してくれていましたが、その環境に自分自身が溶け込んでしまっていた部分がありました。自分自身もリーダーを経験してきていたので、試合には出られませんでしたが、自分の持ち味を発揮すべきだったと感じました。

シーズン最後にコーチたちと振り返りをした時に、「お前は大学でキャプテンをやっていたんだろ?」と言われました。チームに加入したばかりの時は喋っていたと思うんですが、シーズンが深まるにつれて「試合に出ていないから」と発言を控えてしまっていました。そういう心当たりがあったので、コーチたちから指摘を受けた時に「確かに、そうだな」と思いました。

自分が経験してきたことを、試合に出ている出ていないに関係なく、発信し続けることがチームのためにもなりますし、自分の成長に繋がると思ったので、今シーズンは積極的に、自分がどういう立場になっても発言できるようなメンタルを持ち続けて活動していきたいと思っています。

――大学以前にもリーダーシップを発揮していたんですか?

リーダーシップがあるかないかと言われたら、そこに関しては自分では分かりませんし、これまで発言してきた内容が正しいのかも分かりませんが、発言することには慣れているので、何も遠慮することなく、どんどん気づいたことは発信していきたいと思います。高校(東福岡高校)でもキャプテンをやらせてもらっていたので、自分の持ち味として頑張りたいと思っています。

――キャプテンとしての責任が新たな力を引き出すということもあるのではないでしょうか

発言することで、発言したからにはやらなきゃという行動力にも繋がるので、本当にその通りだと思います。

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◆ボールを持って前に出る

――サンゴリアスで半年やってみて、現状の7番での強みと課題は?

それは明確になっていて、ボールを持って前に出ることはある程度出来ているかなと思っています。まだまだやらなければいけないことはありますが、足りていない部分としては、タックルの精度や成功率です。7番としては小澤さん(直輝)のような泥臭いプレー、相手が嫌がるようなプレーをしていかなければいけないと思っています。そういうプレーはまだ足りていない部分だと思うので、全体練習後の個人練習で、アオさん(青木佑輔/アシスタントコーチ)などに見てもらい、ブレイクダウンのスキルを磨いています。練習で色々とチャレンジして、やっていかなければいけないところだと思っています。

――6番や8番での課題は?

6番、8番については、ライン際でバックスと一緒に立体的なアタックをするので、いわゆる気の利いたプレーのところかなと思います。昨シーズンは6番、8番で試合には出られていなくて、まだサンゴリアスでの経験はないので、実際にどうなるかは分からない状態です。ハンドリングスキルや状況判断、そういうところが大事になってくるんじゃないかなと思っています。

――課題がたくさんあり大変ですが、すべてをクリアしてやるという思いですか?

自分でもこんなに課題があるのか、どの課題からクリアしていこうかなという状況です(笑)。実際に課題は多い状況なので、自分の強みを伸ばしつつ、その中でもディフェンスとブレイクダウンのところにフォーカスして取り組んでいきたいと思います。

――器用な方ですか?

フィジカル的には全然器用ではないと思いますが、メンタル的には継続して何かをやるということは得意な方だと思っています。身体能力などはそんなに高くはないと思うので、繰り返しやって覚えていくという感じです。

――継続して取り組める秘訣は何ですか?

試合に出たいという想いですね。

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◆しぶとさ

――身長188cm、体重106kgですが、身体は更に大きくしたいと思っていますか?

そうですね。体重を110~112kgくらいでプレー出来るようにと言われたので、オフシーズン中にウエイトトレーニングに力を入れて取り組んできて、今は111~112kgくらいまで増えました。大学1、2年の時にもそのくらい体重があって、大学の時はそこから絞りました。

大学3年の時に、トップリーグの色々なチームの練習に参加させてもらったことがあって、そこで「動けないとダメだな」と実感して、身体つきを変えようと思いました。当時は112~113kgくらいあったんですが、栄養士さんと相談しながら、徐々に減らして105kgくらいまで絞りました。大学の強度であれば、そのくらいの体重でも戦えたんですが、社会人になって実際に身体をぶつけてみたら、この体重では軽いと感じました。体重が全てではないんですが、それもひとつの原因だと思ったので、オフシーズンに体重を増やして、それプラス、その身体を動かせるようにするトレーニングをしています。

――現時点で、身体の動きはどうですか?

悪くはないと思っています。その部分は成長できたところかなと思います。

――プロフィールを見ると、自分の性格を「常に冷静」と書いていますね

そうですね、あまり乱れないですね。そういう性格なので、何故かは分からないですけど(笑)、試合でも緊張はしないです。人前で話す時は緊張しますけど、キャプテンをやっていた時も、言葉で何かをするというより、プレーで身体を張ってみんなに示すようにしていました。ラグビー中であれば話すことは問題ないんですが、ミーティング中に話をするとか、グラウンド外でみんなの前で話すとか、そういうのは少し苦手ですね。

――「倒れても何度でも立ち上がる」とも書かれていますが、フィジカルには自信がありますか?

自信があるというよりは、何度でも立ち上がる、しぶとさということで書きました。そのためには運動力が絶対に必要で、倒れてもすぐに起き上がって、次にボールがもらえるところにすぐに行くというを繰り返すので、それが自分の持ち味だと思っています。

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◆キツイ練習が終わった後の達成感

――ラグビーの魅力、面白さは?

一人でキツイことをやるのは無理だと思うんですが、みんなでキツイことをやるので、キツイ練習が終わった後の達成感が魅力ですね。ラグビーの何が良いかというところは分からないですが、今はただ試合に出たいということが原動力になっています。試合に出るために何をしなければいけないのか、それを考えてやっています。

――ラグビーを今後も続けていこうと思ったのはいつ頃ですか?

高校に入る時ですね。親には止められたんですけど、東福岡高校に入って、そこで活躍すれば大学や社会人でもラグビーを続けられる環境があるので、東福岡高校に入るからにはラグビーで戦っていきたいと思いました。東福岡高校でラグビーをすることが決まった時から、大学では関東の学校に行って寮か一人暮らしして、トップリーグでプレーしたいという想いがあったので、その時からラグビーで生活していくと決めていました。

――中学までは他のスポーツもやっていたんですか?

サッカーもやっていました。中学までは親からラグビーをやらされている感じが強かったと思います。中学の福岡県選抜があって、「それに選ばれなかったらラグビーは続けない」と親に言っていたんですが、選ばれちゃいました(笑)。その選抜に選ばれると東福岡高校に声を掛けてもらえる確率が高くなって、その辺りからラグビーが好きになっていきました。いま振り返ると、その福岡県選抜に選ばれて良かったと思っています。

――ラグビーをやらされていたということですが、ご家族はラグビーへのこだわりが強かったんですか?

いや、家族はラグビーと全く関りがなかったので、なんででしょうね(笑)。人間的な成長を教えてくれるコーチなどがたくさんいたので、そういうところ学ばせたかったんじゃないかなと思います。

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――もともと高校でも何かしらのスポーツはやろうと思っていたんですか?

いや、ラグビーがダメだったら、他のスポーツはやらなくても良いかなと思っていました。スポーツ以外でもラグビー以外は特に考えていなくて、ラグビーがダメだったら近くの高校に行ってという薄いビジョンしかなかったですね(笑)。

――ラグビーで東福岡高校に入って、大学、社会人でもラグビーを続けるというイメージが魅力的だったんですか?

ラグビーをやらなくてもいいという時期は、福岡県選抜に選ばれた時に終わって、その選抜に選ばれた上手い人たちと一緒にやっていく中でラグビーは楽しいと思い始めました。高校に入る時にはラグビーが好きと思っていましたし、強豪校に入るからには絶対に試合に出て活躍しなければいけないと思いました。

高校に寮があって、家から通える距離だったんですけど、母が「大学は関東でラグビーやるんだから、高校から一人暮らしに慣れときな」と言って、高校の寮に入れてくれました。そこまでやってくれた母のために絶対に試合に出たいと思っています。試合に出て、母に応援に来てもらいたいと思っています。それがいちばん大きな理由かもしれないですね。

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◆その場を楽しんだ

――福岡県選抜でレベルの高いラグビーを経験して、当時はどの辺が楽しいと思いましたか?

東福岡高校に入ってからは本当にレベルが高くて、何が楽しいとかは考えていなかったですね。もうラグビーをやると決めていたので、試合に出るため、活躍するために何をしなければいけないのかということを考えていました。なので、何が楽しいって難しいですね。何が楽しいかというより、その場を楽しんだという感じですかね。何が楽しいとは感じたことは無いです。

――今シーズンの目標をお願いします

新しいリーグになって、これまでよりも少し試合数が増えると思うので、チャンスは回ってきやすくなると思っています。試合に出ていても出ていなくても、自分の持ち味を出し続けて成長して、1試合でも多く出場して活躍できるように頑張りたいと思います。試合に出るためにはというところから逆算して、活動していきたいと思います。

――まだそこまで考えていないかもしれませんが、逆算ということで言うと、何歳くらいまでラグビーを続けたいと思っていますか?

ちゃんとトップでやり続けて、30歳くらいまではやりたいですね。

――更にその先は何か見えていますか?

いや、全く見えていないです(笑)。まずはラグビーをやり切ることですね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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