2021年9月17日
#763 尾﨑 泰雅 『ラグビーが大好きだと感じてます』
兄・晟也選手の姿を見ながら育ち、兄のあとを追ってサンゴリアスに入部した尾﨑泰雅選手。元気が体から溢れ出てくるような尾﨑選手が目指すラグビーについて聞きました。(取材日:2021年8月下旬)
◆生まれた時からラグビーボール
――サンゴリアスには今2組の兄弟選手がいますが、尾﨑兄弟の家族構成を教えてもらえますか?
僕がいちばん下の末っ子で、3歳上に兄(尾﨑晟也)がいて、その上に姉が2人の4人姉弟です。父親が社会人でラグビーをやっていて、日本代表までは行けなかったそうですが、そこに食い込むような選手だったと聞いています。ユニチカでプレーして、神戸製鋼などとも試合をしていたそうです。今はユニチカで監督をしたり、小学生にラグビーを教えたりしています。
――お父さんが現役の時のプレーを見たことはありますか?
たぶん僕が生まれる前だったので、見たことは無いと思います。
――お父さんからラグビーを教えてもらったことは?
小学生のチームで父親がコーチをやっていたので、教えてもらったことはたくさんありました。兄も同じチームでやっていました。大学に入ってからは父はプレーについては言われなくなりましたが、それまではプレーについて何か言われると不貞腐れたりしていました。いま思うと、有難かったなと思いますね。
――ラグビー一家なんですね
そうですね。生まれた時からラグビーボールしか触らせてもらえませんでした(笑)。
――お兄さんからもラグビーを教えてもらったんですか?
一緒にラグビーで遊びながら、教えてもらったりもしました。学校もずっと同じだったので、最初の頃は比較されたりして、ラグビーが嫌になった時期もありました。途中からは僕は僕、兄は兄という考え方に変わったので、そこからは大丈夫でした。
――その考えになったのはいつ頃ですか?
高校3年生くらいから変わり始めました。ラグビーと一緒にバスケットボールもやっていて、中学の時にはバスケットだけにしようかとも考えましたね。
――バスケットボールの才能はあったと思いますか?
はい、才能があったと思います(笑)。一緒にバスケットをやっていた同期がBリーグの選手になっていたりもするので、僕もバスケットを選んでいたら、そうなっていたかもしれないですね。
◆兄を超えたい
――お兄さんからラグビーを教えてもらいつつ、弟という立場では兄をライバル視することもあるんですか?
ありますね。兄を見て育ってきたんですが、兄を超えたいという気持ちをずっと持っています。
――ラグビー選手としてお兄さんの素晴らしいところはどこだと思いますか?
試合の全体や流れを見たり、周りを鼓舞する力、各スキル含めて、一流選手だなと思います。
――お兄さんと比較して、自分の良さはどこだと思いますか?
自分の良さはアタックで、身長が高い方ですし、外国人選手のようなプレー、思い切ったプレーだと思います。他の日本人選手よりも手足が長いので、ハンドリング、オフロード、ステップなどが特徴かなと思います。ハンドリングやステップはバスケットで磨かれました。
――バスケットを始めたのは何故だったんですか?
そこは姉の影響です。姉2人も、兄もバスケットをやっていて、その影響でバスケットもやらせてもらっていました。姉は全国大会にも出ていましたね。家族仲が良いので、お互いにアドバイスをしたりしていました。
――家族がサンゴリアスの試合を応援に来ることもありますか?
ありますね。2021シーズンも応援に来てくれました。
◆自分の強いポジションに入る
――サンゴリアスに入って、社会人のラグビーはどう感じましたか?
楽しい気持ちが強くなりました。ラグビーがめちゃくちゃ楽しいです。ラグビーに取り組む時間であったり、取り組む内容が、自分のためになっていると感じることばかりですし、選手層も厚くて、上手い人たちと一緒にやっていると、ラグビーって改めて楽しいスポーツなんだなと思うようになりました。
――その楽しさは、具体的に言うとどの辺が楽しいですか?
練習の雰囲気や、やるべき時はしっかりとやるというところ。あとは上手い選手が多いので、そこで競い合えるところが楽しいところです。常に全力で出来る環境にいられることは、幸せなことだと思います。
――大変だと思うことはありますか?
やはり層が厚いので、試合に出ることが大変なことだと思います。
――2021シーズンでの手応えはどうでしたか?
まだ自分が苦手と思っている部分が、試合に出ている選手たちと比べて劣っていると思うので、そこを伸ばさないと試合には出られないと感じました。その課題の部分は、状況判断、ディフェンス、タックルのところで、他の選手たちと比べてまだレベルが低いと思っています。
――その課題を、どう向上させようとしているんですか?
中村亮土さん、村田大志さんなど上手い選手のプレーを、まずしっかりと見ることから始めて、一緒に練習に付き合ってもらってやっています。その2人は自分の強いポジションに入ることが上手くて、「ここで詰めるのか」と思うようなところでもしっかりと詰めて、そこから自分のいちばん強いポジションに持っていき、しっかりと倒すことが出来る、そういう駆け引きが上手い選手だと思います。あとは周りを活かしてタックルを成功させるところとか、考えてディフェンスをしていると感じます。
――相手と読み合いになるんですか?
そうですね。ただ、自分のいちばん強いポジションが何かを分かっているからこそ出来ることだと思います。そこで周りを活かしたり、周りを活かすために自分が詰めたりする判断がずば抜けていると思います。
――サンゴリアスで取り組み始めて、どのくらい出来るようになりましたか?
まだまだ追いつくまでにはいっていないですが、教えてもらったり勉強したりして、大学時代と比べるとだいぶ出来るようになったと思います。
――そこについて、お兄さんから教えてもらうこともありますか?
兄とはポジションが違いますが、タックルのスキルであったり、そういうところを教えてくれます。
◆センターで勝負したい
――ポジションはどこをメインにしていきたいと思っていますか?
昨シーズンはウイングとセンターでプレーしていたんですが、新しいシーズンではセンターで勝負したいと思っています。ボールを持ちたい派なので、自分がボールを持って周りを活かすプレーであったり、自分がボールを持ってこじ開けて行ったりして、チームに勢いが出るようなプレーが出来ると思っています。そういったところでセンターの方がボールをもらう回数が多いので、センターで勝負したいです。ただ、どのポジションでも出来るところも強みだとは思っています。
――フルバックも出来ますか?
そうですね。やれと言われれば出来ると思います。
――発言に自信を感じますが、その根拠は何ですか?
どうなんですかね。たぶん自信があるんですかね。これまではラグビーが嫌になったこともありましたし、自信が持てなかった時もありましたが、いまは全力でラグビーを楽しんでいて、どんどん自分の身になっているので、そういうことから自信になっているのかなと思います。
――ラグビーは自分のスポーツだ、自分のものだという感じがありますか?
はい、そういう感じがありますね(笑)。僕にはラグビーしかないと思っています。
――ラグビーの魅力は何ですか?
生身の身体がぶつかったりすることが最高に気持ちいいです。相手を抜いた時の感覚とか、自分がトライのチャンスを作ったり、他の選手がいちばん良い状態の時にパスをしたりなど、良いプレーをした時の感触とか、そういうところが楽しくて仕方ないですね。
――身体をぶつけることも嫌いじゃないんですね
そうですね、やった感があります。
――そこに気が付いた時は嬉しかったんじゃないですか?
そこにサンゴリアスに入ってから気付いたんです。ラグビーがとても大好きだと、サンゴリアスに入って気づきましたね。
――次のシーズンでの目標は?
まずはレギュラーを狙って試合に出て、チームを優勝に導けるような選手になりたいと思っています。
――複数のポジションが出来るとのこと、何番で試合に出たいと思っていますか?
13番です。
――長期的な目標はありますか?
日本代表になりたいです。あとは、7人制ラグビーでも、行けるのであれば2024年のパリオリンピックに出てみたいです。7人制日本代表にも呼ばれたことがあったんですが、その時は15人制で勝負をしたいという想いがあったので断らせてもらっていました。けれど、東京オリンピックを見て良い意味で衝撃を受けて、7人制でも勝負をしてみたい、自分もあの舞台に立ってチームに貢献したいという想いが出ました。
――パリオリンピックの前、2023年にはフランスでラグビーワールドカップもあるので、そこもターゲットですか?
まずはサンゴリアスで試合に出ることですね。もちろんワールドカップにも出たいので、目標は大きく持とうと思っています(笑)。
――サンゴリアスに入ってから自信を持つようになったと言っていましたが、その自信はこれからも持ち続けられそうですか?
例え、自信を失うことがあったとしても、それも楽しいと思えると思います。そういう考え方を持てたのも、サンゴリアスに入ったことで持てた考え方なので、とても感謝しています。サンゴリアスはラグビーをやる上でベストの場所かもしれないですね。
――そういう姿を見て、お兄さんは何か言っていますか?
前まではメンタルが弱いって言われていました。口だけにならず、しっかりと行動が伴うように頑張って、「今に見ておけ」と思っています(笑)。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]