2021年9月10日
#762 中野 将伍 『激しく前に出る&フィジカルにプレーする面白さ』
入部したての初インタビューに比べて、2回目の今回では次々と言葉が出て来た中野将伍選手。その情熱あふれる語り口からも、中野選手の成長を実感できた気がします。(取材日:2021年8月下旬)
◆チャレンジをしながら新しいことを覚えていった
――2021シーズンを振り返って、どんなシーズンでしたか?
振り返ってみるとトップリーグ2021で全試合に出場することが出来ましたが、シーズン前はウイングとセンターの2つのポジションで試合に出るということは想像が出来ていませんでした。またセンターとしても、大学までは12番で出場することが多かったんですが、13番で出場したり、今までやったことのなかったウイングで出場したり、そういった意味で学ぶことが多かったシーズンですし、チャレンジをしながら新しいことを覚えていったシーズンだったと思います。
ウイングは動き方も分からなかったので、先輩たちに聞きながら学んでいきました。練習でフルバックに尾﨑晟也さんがいたら、ディフェンスやアタックの立ち位置について「こういう時はどこに立ったら良いですか?」と聞いたり、練習試合を通して「こういう時はこう動いた方が良い」とか言ってもらい、練習や試合を通して聞きながら学びました。サインプレーについても、センターとウイングの両方を覚えなければいけなかったので、そういうことを含めて覚えることは多かったですね。
――ウイングも動きの幅が広いですよね
そうですね。思っていた以上に「こんなに動くんだ」と、実際にやってみて感じました。
――公式戦ではシーズンを通して5トライを取りました
何トライを取ろうということは考えておらず、毎試合でメンバーに入ることを意識して練習に取り組んでいました。メンバー発表の時には、1試合ごとに嬉しさがありました。
◆どちらでも使える選手に
――13番での活躍が目立ったように感じましたが、自分自身ではどう思っていますか?
サンゴリアスでセンターをやるとなると、13番の方が機会が多くなると思いますが、センターとして選んでもらった時には嬉しさがありました。ウイングとして選んでもらった時でも、もちろん試合に出られることが嬉しかったです。
――12番と13番では違いがありましたか?
13番はこれまでほとんどやる機会がなかったんですが、12番と13番での大きな違いはディフェンスのところです。ウイングで出た試合の次はセンターで出場する可能性もあって、どちらか片方ばっかり練習するわけにもいきませんでした。実際に13番のディフェンスで上手くいかない時もあったので、そういう時は村田大志さんやサム(ケレビ)に聞いたりして、勉強しながらやっていました。
――上手くいかない時に話を聞くと、やはり的確なアドバイスをしてくれましたか?
そうですね。こういうふうにやってみたら、というアドバイスをもらいました。あとは、やっていく中で自分に合うことを見つけるのも大事と分かったので、色々と先輩たちに聞きつつ、試しながらやっていました。シーズン中はもっとセンターで出たいと思う時もありましたが、監督と話していて、1年目からこれだけ試合に出ていることはチャンスだし、試合に出たくても出られていない選手がいるのだと改めて思いました。次のシーズンもメインはセンターだと思いますが、センターでもウイングでもどちらでも信頼されるベストなパフォーマンスが出せる選手になろうと思っています。
ポジションが2つ出来るというのは自分にとってプラスになると思いますし、センターをやっていてウイングで活きることもあると思いますし、ウイングをやっていてセンターで活きることもあると思います。どちらで出場しても活躍して、どちらでも使える選手と、もっと思ってもらえるようになろうと思いました。
◆走っているところにボールが飛んでくる
――4月に発表された日本代表候補には名前がありましたが、その後のメンバーには入ることが出来ませんでした。それについてはどうですか?
候補に入って、その後のメンバーに選ばれなかったことは悔しかったです。ですが、2021シーズンには新たにウイングとセンターのどちらもやるようになって、自分としてもずっと納得したパフォーマンスが出し続けられたわけではありませんでした。2021シーズンに学んだことを活かして、次のシーズンで2つのポジションで良いパフォーマンスを出せれば、もっと日本代表に近づくんじゃないかと思っています。
――現時点での課題とターゲットは?
いちばんは、センターでやっていきたいという想いがあります。13番だとディフェンスの幅が広がりますし、ディフェンスで判断する場面が増えてくると思うので、ディフェンスの幅を広げることと判断を良くすることを課題としています。練習で村田大志さんのディフェンスを見ていると、こういう場面では詰めた方が良いんだなとか、こういう時はちょっと待った方が良いんだなと感じる時があったので、そういうところの判断を良くしたいですね。
あと、サムのようにもっともっと味方のチャンスを作れるような、突破やオフロードが出来る選手になっていきたいと考えています。スピードは今後も課題ですが、スピードが上がればウイングでも活きてくると思うので、スピードトレーニングを行っていますし、オフロードのところも全体練習後にサムに教えてもらったりしたので、それを実戦で使えるように繋げていきたいと思っています。
サムとのオフロードの練習は2人でやる時もあれば、2~3人でやる時もあります。サムと2人でやる時には、オフロードの時には片手になるので、叩いたり邪魔をしてもらって、そういう時でもしっかりとボールコントロール出来るようにしたり、相手のタックルが下に来る時や上に来る時があるので、相手がどういうディフェンスをしてきたら、どうパスをするかとか、半身がずれていたらパスせずにキャリーした方が良いかなどです。その場面ごとでの状況判断をどうするか、いろいろとやっています。
――2021シーズンはボーデン・バレット選手ともプレーしましたが、どうでしたか?
ウイングでプレーしていて感じたことは、キックパスがめちゃくちゃ上手でした(笑)。走っているところにボールが飛んでくる感じでしたね。練習の時に10番が裏が空いていると判断してキックパスをした時に、こっちが反応できずに遅れてチャンスに繋がらなかったことがあったので、ウイングとしてもっと前や周りを見て、チャンスがある時には絶対にもらわなければいけないと感じました。
――ウイングの時にはどういうことを意識してプレーしていたんですか?
走り切ってトライを取りまくろうと言うよりは、自分の強みであるボールキャリーでボールを前に進めて、チャンスがあればオフロードで味方に繋ぐことを意識していました。相手を抜き去るというよりは、ボールを持ったら前に進めようという気持ちでやっていました。
――そこはセンターも兼ねている特徴かもしれませんね
中靏さんのように走り切れるようなスピードがあるわけではありませんし、外ですぐに倒されずにオフロードが出来ればチャンスになる場面が多かったので、ウイングでも自分の強みを出していこうと思っていました。
◆どちらのポジションでも質の高いプレーをし続ける
――次のシーズンも試合に出続けるためには、何が大切だと思いますか?
1年目の時は分からないことが多くてやりながら学ぶことが多かったんですが、次のシーズンも1年目みたいにというわけにはいかないので、センターでもウイングでも、どちらのポジションでも質の高いプレーをし続けることが大切だ思います。あとは、昨シーズンでは良い時があったり悪い時があったりと、プレーに波があったので、常に良いプレーをし続ける選手になれば、チームから更に信頼が得られるかなと思っています。
――質の高いプレー、良いプレーとは、具体的にはどうイメージしていますか?
センターであればボールを持って多くゲインするとか、ディフェンスでのタックル回数や成功率のところですね。13番であればタックル成功率が高くないと良くないので、タックル成功率とタックル回数を上げることが大事だと思います。
ウイングはボールを持っていない時が多いと思うので、そういう時にカバーに走るとか、ハイボールキャッチとか、あとはスペースが空いている時にボールをもらうとか、そのポジションとして必要なことをしっかりやるということですね。
――ラグビーの幅が広がったように感じますが、改めて感じるラグビーの面白さはどこですか?
僕としてはポジションが変わったからプレースタイルを変えようとは考えていないので、どちらで出ても激しく前に出るプレーを崩さないようにしようとしています。だから、フィジカルにプレーすることが面白さですかね。
◆ラグビーで行けるところまで上を目指したい
――プロ契約となりましたが、そこにはどんな想いが?
ラグビーで行けるところまで上のレベルを目指したいという想いがありましたし、同じポジションの海外の代表選手、日本代表選手との戦いの中で、もっとトレーニングやラグビーの為に使う時間を増やして、ラグビーのために生活して、勝負をしたいと思いました。
――これまでの生活とは変わりましたか?
これまでは、シーズン中であればラグビー中心でしたが、オフシーズン中は仕事が終わった後の空いた時間でトレーニングをしていました。今は自分でトレーニングの量や時間を決められますし、身体のケアに使える時間が増えました。それ以外の時間で、趣味やリラックスする方法は、いまどんなことをしようか探し中ですね。
――プロとしての責任も感じますか?
ラグビーで結果を残さなければいけないと思っています。ただ、社員選手だった時から試合で活躍するためにトレーニングをしていたので、その気持ちの持ち方はこれからも継続しようと思っています。
――次のシーズンの目標をお願いします
センターで出たいという想いはいちばんにありますが、どちらのポジションでも活躍できる選手になって、試合に出続けて活躍することが目標です。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]