2021年8月27日
#760 『コツコツやっていきたい』
喋るのが得意そうに見えて、インタビューはあまり好きではないという垣永真之介選手。それでも持ち前のサービス精神を発揮して、いろいろと語ってくれるインタビューとなりました。(取材日:2021年7月中旬)
◆新たに頑張っている
――6月の日本代表活動ではどんな成果がありましたか?
サンウルブズ戦では、それなりにインパクトを残せたと思っています。ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦、アイルランド戦は、テストマッチでそんなに簡単に試合に出られるものではないと思っていましたし、試合登録メンバーに入れませんでしたが、これからしっかりと信頼を築いて頑張りたいと思っています。
――心境としては、日本代表では新人というように聞こえますが、そんな感じでしたか?
5年振りでしたし、そんなにキャップが多いわけでもないので、気持ち新たに頑張っている感じですね。
――日本代表としてサンウルブズと試合をしてみてどうでしたか?
強かったですよ。日本代表として久しぶりの試合で上手くいかないことがありましたが、「やってやる」という気持ちは強かったですね。
――目立っていましたよね
そんな意識はなかったですけど、悪くはなかったですね。
――5年ぶりに日本代表に選ばれたわけですが、その間の自分自身としての成長の手応えは?
良く分からないですけど(笑)、トップリーグでの結果が繋がったのかなと思います。
◆スクラムが安定すると気持ちも安定する
――トップリーグ2021ではベスト・フィフティーンに選ばれましたね
意識はしていなかったので、率直に嬉しいかったですね。日本人で選ばれたのは3人だけだったので。
――どこが良かったからベスト・フィフティーンに選ばれたと思いますか?
スクラムが安定したからじゃないですかね。押されることもなくなりましたし、スクラムが安定すると試合中の気持ちも安定するので、そこが良かったと思います。気持ちがスクラムだけに集中せず他のことにも目がいって、個人のプレーにも集中することが出来ました。
――スクラムが安定した要因は?
プレシーズンが長かったので、アオさん(青木佑輔/アシスタントコーチ)と一緒にしっかりと取り組めて、自分の良い形が作れたことだと思います。詳しい数字を見ていないので分からないですが、チームとしても良くなったと思います。
――日本代表でのスクラムはどうでしたか?
日本代表には日本代表のやり方がありますし、トップリーグとテストマッチは全然違うので、サンゴリアスとは違う方法で組んで、色々な知識を得たという感じですね。
――どの辺が新たな知識になりましたか?
自分の力を発揮するというより、相手に力を発揮させないという部分ですね。しっかりと相手のことを研究して、相手の嫌がることをやっていくんです。テストマッチでもほとんど押されなかったので、その成果が出たと思います。
――それをチームに還元することも出来ますか?
日本代表の取り組みが全て正しいわけではありませんし、チームとしての方針もあるので、そこはアオさんに任せています。
◆ひとつひとつの精度
――トップリーグ2021を振り返ると、どんなシーズンでしたか?
優勝できるかなという自信はあったんですが、ひとつひとつの精度のところで、パナソニックが上だったかなと思います。もう単純にパナソニックが強かったですね。
――悔しさはありましたか?
それはもちろんありました。今でも悔しいですね。
――パナソニックに勝つためには何が足りなかったと思いますか?
そこはまだ考えてないですね。シーズンに入ってからチームと共に考えていきたいと思います。今はやるべきことをしっかりとやっていく感じなので、まだ先のことまで考えていないですね。
――今は何に取り組んでいるんですか?
秋の日本代表に呼ばれるかは分かりませんが、まずはそこに向けて、いつ呼ばれても良いような準備をすることですね。フィジカルやフィットネスは、まだテストマッチを戦うためには足りないと思うので、そこをブラッシュアップしていきたいです。ただ、あまり時間もないので、個人でコツコツやっていくだけですね。
――3月に行ったインタビューで、緊張をしなくなったという話がありましたが、日本代表でも緊張はしませんでしたか?
別にしなかったですね。別に失うものはありませんし、ダメだったらダメで変えるだけなので、緊張はしませんでした。日本代表からしばらく離れていて、積み上げてきたものなどもなかったですからね。
――普段から緊張することはありませんか?
まだ大舞台には立っていないので、そういう場面でどうかということは分かりませんが、仕事も含めて、基本的には緊張することは無いですね。
――6月の日本代表の活動を終えて、やりたかったことはありますか?
とりあえず休みたいですね。日本選手権決勝から1週間も経たずに日本代表の練習が始まって、ほぼ休みなく活動していたのでリフレッシュしたいです。以前、日本代表で活動した時もそんな感じではあったので、嬉しい悲鳴ですかね。
◆各々にはしっかりと責任が芽生えた
――日本選手権決勝で敗れるまでは全勝で進んでいたわけですが、チームとしては良い形で進んでいたと思いますか?
結果を見ると、そうだと思いますし、選手たちが自分の役割を考え、それを遂行できていたと思います。優勝できなかったので、チームとして成長できたかという部分は分かりませんが、各々にはしっかりと責任が芽生えたと思います。
――選手という立場で、他の選手も積極的になっていると感じますか?
どうですかね。自分のやるべきことをしっかりとやり、周りの選手を見ながらサポート出来るところはサポートするという日々を過ごしたので、あまり周りの選手がどうかということは分からないですね。自分自身のことについてはしっかりと出来たと思っています。
――少しリフレッシュした後、次に向けた課題やテーマは何ですか?
先がまだ見えないので分からないですが、とりあえずは日本代表にもう一度呼ばれても良いように準備をして、それがダメだったらサンゴリアスにしっかりとコミットしていきたいと思っています。
◆自分の強みをしっかりと出せる組み方
――昨シーズンのトップリーグはほぼ試合に出続けましたね。何が良かったと思いますか?
スクラムです。スクラムが安定したことが大きかったと思います。
――スクラムがものすごく大きな割合を占めているんですね
プロップはそれが仕事ですからね。相手も自分も日々変わるので、常に考えていますし、奥が深いと思います。
――スクラムが強いとは?
自分の強みをしっかりと出せる組み方をすることです。そこは相手も強くなるところなので、今はどのチームとも簡単に組めることはないですね。
――サンゴリアスとしての次の課題やテーマはありますか?
現役でいる限りは、ずっと良い影響を及ぼし続けることですね。日本代表に行くこともそうですし、チームにいる時には自分の役割があるので、それをしっかりとやっていくことを続けていくことです。しっかりとコツコツやっていきたいです。
◆広く浅く
――インタビューは苦手ですか?
正直、あまり好きじゃないですね。自分について話すことってあまり好きじゃないですよ。何かについて話すこともあまり好きじゃないですし、本もあまり読まないですし、自分のことを深掘りすること、チームのことを語ることもあまり好きじゃないですよね(笑)。
――コミュニケーションは話すことが大事だと思いますが、それはどうですか?
「ああした方が良いんじゃない?」「こうした方が良いんじゃない?」ということはありますけど、そういうことを考え始めると、自分がコントロール出来ることじゃなくなってしまいます。話すことの重要さはあると思いますが、そこは自分が出来ることをしっかりとやっていくしかないと思っています。
――垣永選手へのインタビューは、質問せずに何かやっていることを遠くから撮影しておく形式が良いでしょうか?
そういうわけじゃないですけど(笑)。スピリッツ・オブ・サンゴリアスのインタビューって深掘りするじゃないですか?普段、そこまで考えていないことを深掘りされても、出てこないじゃないですか(笑)。普段、特別なこともやっていないですからね。感覚で動いているわけじゃないけど、この歳になると、自分がどう振る舞えば良いか分かりますし、自分の役割を果たすという感じですね。
――役割を紐解くインタビューをすればいいですね
そんなに自分の役割を深く考えているわけではないので、聞かれても答えられないです(笑)。深く考えないようにしていて、深く考えない方が良いと思っています。最近は楽しいことしか考えてないですね。ラグビー、家族、バイク、旅行とかですかね。
――次のインタビューではそこをテーマにしましょうか
そこも別に人に言いたくないんですよ。楽しむ領域から外れちゃうじゃないですか(笑)。インタビューを受けるなら、広く浅くが良いですね。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]