SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2021年8月20日

#759 堀越 康介 『プレッシャーを愛する』

日本代表に選ばれ、ヨーロッパ遠征も体験した堀越康介選手。代表での活動と2021シーズンを振り返りながらの、熱い想いを聞きました。(取材日:2021年7月上旬)

◆もっと組める

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――日本代表の6月のヨーロッパ遠征で得たものは?

代表としてインターナショナルレベルのラグビーが体感できたことは、とても良かったと思います。そして、もっと自分のレベルを上げていかないと試合には出られないと感じました。もっと自分のレベルを上げる必要がある、と思います。

――レベルをいちばん上げなければいけないところはどこでしょうか?

いちばんはセットプレーのところです。日本代表に今まで参加してきて、スクラムもラインアウトもとても手応えを感じ、自信がつきました。ですが、インターナショナルレベルなのか?と考えた時には、まだそこまで達していないと感じました。セットプレーについては、これまでも課題としてきましたし、これからもずっと伸ばしていかなければいけない部分だと思っています。

――通じると感じた部分は?

フィジカルやコンタクトのところは負けている感じはしませんでしたし、通じる部分はあると感じました。例えばスクラムでは、自分がずっと思っていた感じとは違って、「もっと組めるな」と感じました。ワールドカップの日本代表には選ばれませんでしたが、ずっと長い間、慎さん(長谷川慎/日本代表アシスタントコーチ)の下でやってきましたし、日本代表の組み方を分かった上で出来たので、更に積み上げられたんだと思います。

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◆もっともっと良い選手に

――出場時間についてはどうでしたか?

2試合ともメンバーには入りましたが、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦は出番がなく、アイルランド戦は後半20分くらいの出場でした。正直、納得はいっていません。プレータイムが短かったということもありますし、いちばんは、もっと出場時間を得られるような選手になっていかなければいけないと思いました。

他の人が見て僕のプレーをどう思ったかは分かりませんが、自分としては大きなインパクトも残せなかったかなと思っています。もっとここを良くしていけば良くなると思う部分が、より明確になったので、これからそこをサンゴリアスでの活動などで改善して、もっともっと良い選手になっていきたいと思っています。

――もっとここを良くしていけば良くなると思う部分は?

大雑把に言えば、セットプレーのところ。あとはコンタクトは良いんですが、コンタクトに入るまでの周りとのコネクト、クリアなコミュニケーション、そして全ての場面においての状況判断。これらをもっと早くしていくことが、大事だと思いました。

――精神面では安定していましたか?

出番がなかった時にはめちゃくちゃ悔しかったですし、その日は落ち込みましたが、落ち込んでいても仕方ないと思って、「なぜ出られなかったのか」と考え、次の日からは切り替えて取り組みました。今までであれば引きずってしまうことがあったんですが、それが出来たことは良かったと思いましたね。強く見せているだけかもしれないですが(笑)、良い経験が出来ました。

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◆コミュニケーションを取ること

――少し時間が経ちましたが、2021シーズンについてはどうでしたか?

やっぱりいちばんは、優勝したかったですね。個人としては、リーダーグループに入らせてもらって、バイスキャプテンをやらせてもらいました。気負わずに、自分らしいリーダーシップを取ることが出来れば良いかなと思ってやってきました。特に若手のレベルアップを図ったり、話を聞いたりすることは、出来た部分もあれば、もっとやった方が良かったと思う部分があったので、そこは課題として引き続き取り組んでいきたいですね。

――リーダーとしてコミュニケーションが大事でしたか?

やっぱり大事ですね。普段から先輩でも後輩でも、コミュニケーションを取ることに変に気を遣ったりはしていないんですが、コロナウイルスの問題があり、外で飲みながらコミュニケーションを取るということが全く出来ませんでした。今までであれば、クラブハウスだけで取っているコミュニケーションとはまた違ったコミュニケーションもそこでとって、その両方を使いながら、先輩や色々な人とコミュニケーションを取ってきました。今回クラブハウスだけでコミュニケーションを取らなければいけなくなった訳ですが、もっと上手く出来る方法があったかなと思いました。

――コミュニケーションについては、ポジション柄もあるんですか?

あると思います。特にフッカーは、スクラムでは全員とコミュニケーションを取らなければいけませんし、ラインアウトでもジャンパーや外国人選手とコミュニケーションを取らなければいけないので、ポジション的に多くのコミュニケーションを取ってきたということもあると思います。

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◆ビビらない精神力

――一度聞きたかったのですが、ラインアウトのスローは、どのくらい狙った通りにいっているんですか?

無の状態に入っている時には、ほぼ100%思い通りにいけていると思います。その状態になればいけるということは自信にもなっているので、毎回、その状態にもっていくことが大事だと思っています。そのためには自信が必要で、だいぶ良くなっていると思いますが、自分のテクニックを信じることが大事だと思います。

精神的なところは、自分次第と言うか、普段の練習からハイプレッシャーの中で投げていかなければいけないと思っています。毎回の練習でインターナショナルレベルでのハイプレッシャーの中と同様に投げるということは難しいんですが、そうやって自分で意識して経験していかないと上手くいかないと思います。そのためには自分でそういう状況を作ったり、周りと協力してやっていくしかないと思います。

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――集中力も大事になりますね

ラインアウトに関して言えば、集中力というよりは、ビビらない精神力かもしれないですね(笑)。例えば、ラストワンプレーでのラインアウトで、これを取らなければ終わってしまうというような状況であったり、風が強い時だったり、ミスした次のラインアウトとか、自分で言っていてもゾワゾワするような状況ですが(笑)、試合では全てのラインアウトが試合でのターニングポイントになります。全てのラインアウトが大事なので、そういう場面でも無の状態で投げられるかどうかだと思います。

うまく行かない時は、そういう場面で考えすぎしまうんだと思います。例えば、ミスを引きずる選手っていると思うんですが、ミスがずっと頭に残ってしまって、その後のプレーもあまり良くないというような状況になってしまうことが、僕も多かったんです。今はだいぶ良くなりましたが、昔はそういうことが結構ありました。ミスをしたことを忘れて、次のプレー、次のプレーと切り替えられるようにマインドを強化していければ良いなと思います。一度ミスをしてしまうと、次はミス出来ないと思って、今度は違うミスをしてしまったりしていました。

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◆プレッシャーを好きになる

――フッカーというポジションをやる限りは、その問題とずっと向き合っていかなければいけませんね

そうですね。考え方次第だと思うんですが、プレッシャーを好きになるというか、プレッシャーを愛することが出来れば、もっと上手くなれるんじゃないかなと思います。プレッシャーを楽しめるようになれば良いのかなと。

――その状態には近づいていますか?

だいぶ良かったんですけどね。けど、感情って波があるので、上手くいかない時にどうしようと考えてしまうことはありますが、確実に良くなっていると思います。

――プレッシャーに向かうチャンスがあること、プレッシャーを克服した時は、やりがいを感じますか?

やっぱりやりがいであったり、達成感じゃないですかね。試合前には、良い意味でプレッシャーや緊張感があって、それは自分が思っている以上に感じていると思います。それを乗り越えて試合が終わった後は、達成感であったり、気持ち良さ的な感情になります。

――例えば、サッカーなどでプレッシャーがかかった状態でシュートを打ったらゴールの上に飛んで行ってしまうというようなことがありますが、ラインアウトのスローでも自分が思っている以上に飛んでしまうということはありますか?

結構ありますよ。変に力が入ってしまっているんでしょうね。投げた感覚ではすごく良くて、良いボールを投げられたと思っても、オーバーボールになることもあります。

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◆若手が練習からチームを引っ張っていく

――トップリーグ2021で優勝できなかった悔しさは、今もありますか?

もちろんあります。

――次のシーズンで優勝するために大事なことは何だと思いますか?

僕も含めてですが、若手選手の底上げ、レベルアップが絶対に大事だと思います。そこがチーム全体のレベルアップであったり、チームの雰囲気を作ることにもなってくるので、もっと若手が発言したり、若手が練習からチームを引っ張っていくんだという想いをもってやっていかないといけないと思います。サンゴリアスはこれからも強くなっていくと思いますが、そういう状況を作れれば、更に加速していけると思っています。

僕や晟也(尾﨑)がそういう状況を作らなければいけないと思いますし、リーダーシップを持った若手がたくさんいるので、そういう選手が遠慮して埋もれてしまうことがもったいないと思います。そういう選手含め、若手がチームの中心としてやっていくんだという気持ちを持ってやることが、大事だと思います。それが出来る雰囲気がサンゴリアスにありますし、亮土さん(中村)がキャプテンになって、若手のそういう想いも受け入れてくれるので、次のシーズンではもっと良くなっていくと思っています。

――自分自身のターゲットは?

2021シーズンの終盤ではリザーブに回ることが多かったので、同じポジションの選手と争ってスタメンを勝ち取りたいですね。

――次が4年目のシーズンとなりますが、飛躍の予感は?

飛躍しますよ。2023年にはワールドカップがありますし、ラグビー選手としても大事な年だと思うので、頑張ります。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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