SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2021年8月 6日

#757 齋藤 直人 『吹っ切ることができた』

日々成長を続ける齋藤直人選手。トップリーグ2021とヨーロッパ遠征を経て、新たに掴んだものは何でしょうか?前に進み続ける者の力強さが伝わってくるインタビューとなりました。(取材日:2021年7月上旬)

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◆思いっきりやれた

――日本代表での6月のヨーロッパ遠征、どんな収穫がありましたか?

まずはテストマッチ2試合で使ってもらって、強度の高い試合が出来たことが、自分にとって大きいかなと思います。

――サンウルブズでの試合とはまた違いましたか?

そうですね。ヨーロッパのチームということもありましたが、固いというか、ひとつひとつのプレーの重みみたいなものが違う感じがしました。スーパーラグビーの方は軽いということではないですが、エキサイティングな感じです。スーパーラグビーでは50:50のプレーも結構あったんですが、テストマッチでは固く固く、同じような状況になったら、そういうプレーは選択しないということもありました。

――実際にそういう試合を経験して、どうでしたか?

50:50じゃなくても、ひとつのミスによって結果が変わってしまうのがテストマッチなのかなと思いました。実際に自分のミスからペナルティーを与えて失点するシーンが、少なくとも2回はあって、単純計算ですけど、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦もアイルランド戦も8点差で負けたことを考えると、自分のその2つのミスは大きかったなと思います。

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――良かった点はありましたか?

もちろん緊張はしたんですが、かなり思いっきりやれたなと感じています。思いっきりやれた分、自分の強みであるテンポを上げることなど、通用するところを改めて認識できました。身体を当てる機会は多くありませんでしたが、全く歯が立たないとは思いませんでした。

日本代表としての活動は初めてだったんですが、実際にスクラムハーフに求められることなどが今までよりも明確になりました。そこが分かったので、これまでよりも良い準備が出来ると思っています。

――前回のインタビューで言っていた、良いパス、良いキックはどうでしたか?

いやー、やっぱりプレッシャー下になると、そこの精度は落ちてしまっていましたね。ですがプレッシャーがかかった中でそのスキルを発揮できなければ意味がないので、そこはしっかり準備していきたいですね。

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◆秋以降にもう一度結果で示したい

――しっかりステップアップしているように見えますが、日本代表の経験で、更にレベルが上がったと思いますか?

思いますね。気持ちの面ではかなり自信がついたと思っています。そして思っているだけじゃなく、秋以降にもう一度結果で示したいです。あまりこういうことを言うタイプじゃないですけど、やっぱり自信になりましたね。

――いちばん自信がついたところはどこですか?

プレー面というよりはメンタルのところで、大学の時もサントリーの時も、緊張の中に不安な気持ちを持ちながら試合に臨んだ時もあったんですが、今回のツアーでの2試合ではそれがありませんでした。なぜかと考えた時に、今までに経験したことのない強い相手、高いレベルだったので、逆に吹っ切ることが出来たのかなとも思いました。もうひとつは、試合当日までに2試合とも良い準備が出来たと感じていて、それで不安なく試合に臨めたのかなという思いもあります。

――なぜ良い準備が出来たと思いますか?

国内合宿も含めてゼロからのスタートだったので、分からないことは逐一、コーチや先輩に聞いていました。ここで結果を残したいと強く思っていたので、それが抜け目ない準備に繋がったかなと思います。

――不安のない緊張を、これからも持てたらいいですね

そうですね、本当にそう思います。そのコツを掴んだような気がしています。何となくですけれど(笑)。今は思っているだけかもしれませんし、これから結果として出さなければ意味がないと思っています。

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◆目が慣れた

――2020-2021シーズンでの成長があったから日本代表でも成果が出たと思いますが、トップリーグ2021での経験からはどこが成長したと思いますか?

プレーというよりは、良い意味で目が慣れたと思います。プレーやボールのスピードだったり、フィジカルだったり、これまでだったら怖いなと思っていたようなレベルだと思うんですが、そういう気持ちが全くなくやれたと思っています。

――元々やれるという自信があったんじゃないですか?

どうですかね(笑)。ひとつはスーパーラグビーを経験してからトップリーグを経験したということもあると思います。あとはシーズンに入る前からユタカさん(流大)を抜くということを考えてやっていたので、そんなことを言っておいてビビッていられないということもあったと思います。

――流選手も成長していて、それを更に超えていくということは大変なことだと思いますが、それについてはどうですか?

プレー面もそうですが、ユタカさんがこの6年で築き上げてきたチームからの信頼があり、1年ちょっとでそれ以上の信頼を得ることはかなり大変なことだと思っています。だからと言って諦めてもいられなくて、プレーを磨くことはもちろんで、ミルトン(ヘイグ/監督)とも話したんですが、その他に何かをして急に得られるものではなくて、日々正しいことをして、正しいことを発信していくしかないと言われたので、それを意識してやりましたし、スキルについては自分で磨きをかけることだけを意識していました。

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――話を聞いていると、フラットに自己分析ができていて、それが力になっているように感じます

人と比べたり、自己分析は結構やりますね。足りないところを誤魔化したりはしません。これは出来なくても良いということは絶対にないと思っているので、今は出来ないけど、出来るようになると思って取り組みますし、そうしなければ上にはいけないと思っています。その中で自分の特徴を出していきたいと思っています。

――やりたいことがたくさんありそうですね

そうですね。ただ、その中でも優先順位はあると思っています。サンゴリアスで1年やってみて、先輩から追い込みすぎと言われ、身体を休めることを学びました。これまでは満足いくまで練習して、ここまでやってきたと思っていて、先輩に言われて休みも増やしてみたんですが、その時はなんかしっくりきませんでした。怪我をしたら意味がないということは分かっているので、自分の中で休む時ははっきりさせて、やる時は満足いくまでやるようにしています。昨シーズン、今までよりも少し休みを多めにしてやっていた時があったんですが、それがしっくりこなくて、途中で「自分はこれまで満足いくまでやって、ここまでやってきた」と考えて、以前のように戻してやっていました。

――身体が頑丈なんですね

大学の時に怪我をして、怪我をしたら意味がないと強く思ったので、ストレッチなどは意識してやっています。身体が強いかは分からないですが、身体をケアはしっかりやっています。

――満足するまでとことんやるということは、元々はどこからなんですか?

みんなと同じ時間でやっていても差は開かない、と思ったことがいちばんですかね。差をつけたいわけじゃないですけど、上手くなるにはやる量は絶対に必要だと思っています。

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――とことんやるところに楽しさがある?

やらされていたら絶対に出来ないと思うので、本当に上手くなりたいと思っているから出来るんですかね。少しでも感覚が良くなったり、成長を感じると嬉しくなります。

――この2年くらいは、それを特に感じているんじゃないですか?

毎日感じているわけじゃないですけどね。パスにしても、サントリーに入ってから新しい技術を教わって、毎日コツコツやったことで感覚が良くなりましたし、いちばん良くなったと感じるのはスピードの部分で、お尻をしっかり使って走れるようになったと思っています。新しいことをやるとすぐには結果は出ませんが、積み上げて積み上げてやっと結果が出た時は嬉しいですね。パスはこれまでの癖が強く出てしまい、なかなか直せないことがあったんですが、続けることでちょっとずつ感覚が良くなっています。

――改めて感じたラグビーの魅力はありますか?

成長を感じられることですかね。

――サッカーも長くやっていたそうですが、例えばサッカーでも同じように感じていたんですか?

どうですかね。犬の散歩を父親と行く時とかにボールを持っていくのは、ラグビーでしたね。

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◆課題を明確にしてどうアプローチするか

――これから目指していることは何ですか?

まずは2023年のフランスワールドカップに、9番で出場することが目標です。近いところで言うと、秋のテストマッチシーズンでも日本代表に選ばれて、9番で出たいです。サントリーでも9番を着て試合に出たいですね。

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――その自信は?

まだチームが始動していないので分からないですが、他の9番の選手も成長していると思いますし、ただ、僕も少なからず成長していると思うので、どのくらい良い準備をしてシーズンを迎えられるかだと思います。秋にどうなるか分からないですが、日本代表に選ばれれば、チームでの活動はなかなか出来ないのかなと思っています。ただ、経験という意味では、絶対に代表の方が大きなものになると思っています。だから、今の期間にしっかりと良い準備をしたいと思います。

――そのためのポイントは?

課題を明確にして、それに対してどうアプローチするかをコーチたちと話をして、また代表に選ばれたら9月中旬頃から合宿があると思うので、そこまでにどう持っていくか、しっかりとスケジュール立てて実行することだと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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