2021年5月 7日
#745 サム ケレビ 『ロッカールームで仲間と一緒にサントリーのチームソングを歌う』
オン・ザ・フィールドのイメージとオフ・ザ・フィールドのイメージが、これほど異なっている選手は珍しいと、いつも感じさせられるサム・ケレビ選手。今回のインタビューで、オフでの仲間を思う気持ちがオンの激しさに通じているのだと、その繋がりを発見できた様な気がします。(取材日:2021年4月下旬)
◆仲間を信じてスタッフを信じて
――プレーオフトーナメントの心構えは?
すごくエキサイティングに感じていて、これからファイナルに向かって貢献できると感じていますし、ノックアウトステージで緊張感もある中、これからチームに貢献できることを楽しみにしています。
――これまで色々なファイナルラグビーを経験してきたと思いますが、これまでと違うところはありますか?
これまでも同じような気持ちを抱いてプレーしているんですが、多くの人の前で戦うことになるので、プレッシャーもかかってくると思います。そういうプレッシャーの中で、いかに落ち着いてプレー出来るかというところが問われるので、落ち着いてプレーすることが出来れば、優勝も見えてくると思います。
当然、決勝まで進めばプレッシャーがかかってくると思いますが、自分たちも練習からお互いにプレッシャーを掛け合いながら取り組んできているので、そこをしっかりとしたベースとして戦っていければ大丈夫だと思います。
――プレッシャーには強そうに見えますが
ラグビーとは極論を言えばスポーツで、人生ではもっとプレッシャーがかかることが多くあると思います。そういった意味でも、ラグビーは1人でやるものではなく、チームメイトがいるものなので、チームメイトとスタッフを信じて、自分たちがやっていることに自信を持ち、しっかりとコミット出来れば勝てるチャンスが必ず訪れると思いますし、勝機を掴むことも出来ると思っています。仲間を信じてスタッフを信じてやることが、プレッシャーに打ち勝つことに繋がると思っています。
――自分も信じて、ですね?
仲間を信じてスタッフを信じてやることは、自分を信じることにもなると思いますが、分析も含めてしっかりと全員で準備をしていくことになるので、そういったプロセスの中で自分たちがやっていることを信じて実行していくことだと思います。
◆チームとしても自分たちの自信度は上がっている
――今シーズンはボーデン・バレット選手が加入しましたが、バレット選手が入ったことでチームが変わったと思うところは?
オンフィールドでもオフフィールドでも、ポジティブな影響がありました。彼のおかげで自信を持ってプレー出来ている選手もいますし、チームとしても自分たちの自信度は上がっていると思います。特にアタックの部分での貢献度が高いですね。ただ、シーズンの最初から良いディフェンスをしなければ勝てないという話をしているので、ディフェンスでもアタックでも貢献してくれていると思います。また、ノンメンバーも練習でチーム一丸となってやっていて、良いトレーニングが出来ているので、それによってチームの状態が良いと思っています。
――以前、世界一のセンターになりたいと言っていましたが、同じく世界一のセンターを目指している中村亮土選手はどうですか?
亮土(中村)も12番としてすごく良い状態にあると感じています。彼はディフェンスでチームに貢献してくれていますし、ターンオーバーが起こるきっかけになるディフェンスをしてくれています。ボーデン・バレットがアタックに与えている影響と同じくらい、中村亮土はディフェンスで同じような良い影響をチームに与えていると思います。
彼はキャプテンシーもありますし、ディフェンスリーダーとしても引っ張ってくれていますし、言葉で語るというよりは行動で示してくれる部分が大きいと思います。彼の良いディフェンスのおかげで、私としてももっとディフェンスが上手くなりたいと刺激を受けています。他にも梶村や将伍(中野)、大志(村田)など良いセンターがたくさんいて、良い影響を受けるセンターが揃っているので、お互いに刺激をし合って良い方向に進んでいると思います。
◆とても良い状態でバックスラインが仕上がってきている
――ケレビ選手が出てくると何かやってくれるという期待感や力強さを感じますが、相手を突破する時はどんな気持ちですか?
選手たちそれぞれが、お互いに良い期待をしてプレーが出来ていると思っています。自分がラインブレイクすることをチームメイトが予測できてきています。将伍、江見、晟也(尾﨑)、亮土など、お互いにどういう形で抜けるかを予測しながらプレー出来ているので、とても良い状態でお互いを高め合いながら、バックスラインが仕上がってきていると思います。
相手を突破する時の感覚は、自分がずっと追いかけている感覚であり、それが気持ちの良いプレーになっているとは思いますが、自分はラインブレイクするだろうと期待されている部分でもあると思うので、そこは自分のスタンダードとして、これからもラインブレイクをしっかりとやっていかなければいけないと思っています。
自分の中での気持ちの良いプレーは、少し抜けてからオフロードでパスをして、そのパスを受けた選手が抜けていくというプレーが、いちばん良いです。
◆チームメイトが仲良く繋がっているということ
――改めて、ラグビーの魅力は何だと思いますか?
チームの絆や友情だと思っています。私はお酒を飲まないので、仲間とお酒を飲んで騒いだりするということは無いんですが、チームメイトが仲良く繋がっているということが、自分の中でラグビーの魅力になっています。
自分がいつかラグビーから引退した時に、優勝の記憶なども残ると思うんですが、ロッカールームで仲間と一緒にサントリーのチームソングを歌っているシーンの方が、自分の中で大切なものですし、記憶に残るものになるんじゃないかなと思っています。
――将来の夢は?
ずっとラグビーをしていると、なかなか家族と一緒に過ごす時間がないので、引退した後については、少なくとも何年かは家族と一緒に過ごしたいですね。その上で、ラグビーに戻ってくるのであれば、ヘッドコーチには興味がないのですが、バックスコーチとして、オンフィールド・オフフィールドで選手の成長に貢献できたら素晴らしいことだなと感じています。
――いま選手としての課題は何だと思っていますか?
アタックでもディフェンスでも、ボールを持っていても持っていなくても、アグレッシブにプレーするということが、今シーズン重要になっているので、特にディフェンスの部分はもっと磨いていきたいと思っています。
――今シーズンの目標は?
最後のトップリーグになるので、絶対にチーム一丸となって優勝したいと思っていますし、その努力をしています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/通訳:山口祐二/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]