2021年4月 2日
#740 ツイ ヘンドリック 『最後のトップリーグで優勝したい』
常にパワフルに前進し、トライも多発している今シーズンのツイヘンドリック選手。好調の秘訣と、いま目指しているラグビーについて聞きました。(取材日:2021年3月下旬)
◆しっかりとリカバリーした上で今シーズンを迎えることが出来た
――今シーズン絶好調ではないでしょうか?
80分間プレーしたのは第5節トヨタ自動車戦だけでしたが、コーチが上手くワークレートやゲームタイムをコントロールしてくれているので、パフォーマンスも徐々に上がってきている感覚があります。
――第5節までを終え、4試合に出場し4トライをあげていますが、トライも意識していますか?
意識している部分と、していない部分とがあります。トライはその前のチームメイトのハードワークがあってこその結果だと考えています。ただ、トライをするチャンスがあったら、しっかりと狙っていこうとは考えています。
――元々パワフルですが、更にパワフルになったような気がします
オフやプレシーズンが長かったこともあり、これまで身体の面で気になっていた箇所があったので、しっかりと身体を休めリカバリーした上で、今シーズンを迎えることが出来たことが、結果として出ているんじゃないかなと思います。
◆ZUUを本格的にやり始めた
――試合が毎週続いている状況ですが、体調面は問題ありませんか?
年齢も重ねてきているので、S&Cスタッフと一緒に、必要あれば自分のプログラムをアジャストしてもらいながらコンディションを整えているので、とても良い状態でプレーが出来ています。S&Cコーチの若井さんと一緒にコンディショニングをする機会が多くて、ZUU(ズー)というトレーニングをやっていることも、良い結果に繋がっているのだと思います。
――動物の動きを取り入れたZUUというトレーニングは、これまでにも経験しているんですか?
ZUUトレーニング自体は、サンゴリアスに入る前から知っていたんですが、本格的にやり始めたのは今シーズンからです。若井さんと一緒に追加でZUUトレーニングをやったりしていることが、良い効用になっていると感じています。
――先ほど年齢を重ねてという話がありましたが、まだまだ成長過程ですか?
年齢は重ねていますが、慢心していては成長もありませんし、謙虚に学ぶ姿勢をずっと持っていなければいけないと考えているので、まだまだこれから成長できる部分、向上できる部分はあると考えて取り組んでいます。
――さらに成長させたいプレーはどんなプレーですか?
疲れた時のプレーの精度を上げたいと思っています。疲れていてもボールキャリー、ブレイクダウン、ディフェンスという局面で、しっかりと自分の良いパフォーマンスを発揮するというところを、もっと磨いていきたいと思っています。
――今後も80分間プレーし続けることを目指すのですね
ルーキーも入りましたし、今までに比べて速くて強い選手が増えています。ラグビー自体もどんどん展開するラグビーに変わっているので、身体への要求はどんどん高まっていると思います。しっかりと80分間プレー出来る身体をこれからも作っていきたいですし、80分間プレーしていきたいという想いがあります。
◆自信を更に持つという部分で大きかった
――最近の顔つきから大きな自信が伺えますが、2019年ラグビーワールドカップの経験は大きかったのでしょうか?
2019年ワールドカップの経験は、自信を更に持つという部分で大きかったと思いますし、そこでの学びもたくさんありました。今シーズンに関しては、そこからリフレッシュして、サントリーでしっかりとプレーして優勝を勝ち取ることを目標にやっています。
――具体的に、どういう学びがありましたか?
日本代表に参加して、ジェイミー・ジョセフ監督からラインアウトディフェンスでの読みであったり、どうやってマイボールにするかというスティールの部分のスキルだったり、いろいろと自分の中で学びがありました。今シーズンもいくつかラインアウトでのスティールを決められていると思いますが、ラインアウトに限らずディフェンスの部分でも、相手のアタックを読む力、予測力がついたと思います。
――世界的に活躍している選手も加入していますが、そういった選手から学ぶこともありますか?
ポジションが違うのでプレー面でどう学ぶかということは難しい部分もありますが、彼らはインターナショナルレベルでプレーしている選手たちなので、そういう選手たちがどうプレーしているかということを学ぶことが重要で、そういう選手としっかりとコネクトしてプレーして結果を出さなければいけません。そして、彼らのプロフェッショナリズムは素晴らしいと感じています。
――ツイ選手はサンゴリアスの中でリーダーのひとりであり、伝える側でもあると思いますが
自分はまだ選手という立場で、プレー面でもまだまだ向上していかなければいけない部分、改善していかなければいけない部分があると思っているので、他の選手に何かを教えるという意識でプレーはしていません。あとは自分のパーソナリティーかもしれませんが、自分はティーチャーやコーチなどの立場になりたいとは思っていません。
リーダーシップという面で言うと、自分はチームの中でリーダーシップメンバーのひとりでもあるので、これまで培ってきた経験を伝えたい想いはありますが、どちらかと言うと、グラウンドで表現して伝えるタイプと思っています。
――試合中にラグビーを楽しんでいるよう見えるのですが、どの辺を楽しんでいますか?
まず勝利することは楽しいことなんですが、練習でハードワークしているので、スクラムやラインアウトからの動きが試合でしっかりと機能して、得点やトライに繋がるところに楽しさを感じてプレーしています。
◆優勝して家族と会いたい
――改めて聞きますが、ニュージーランドから日本に来る時、そしてパナソニックからサントリーに移籍する時、この2つが大きなチャレンジだったと思うのですがいかがでしょうか
両親もオークランドの出身で、19歳以下のオークランド代表などにも選ばれていたので、父親はニュージーランドに残って欲しいと思っていました。だから、ニュージーランドから日本に来る選択は難しかったですね。
パナソニックからサントリーに移籍する決断も難しいものでしたが、決断としてはスマートな決断が出来たと思っています。パナソニックにはパスポートホルダーの外国人選手も多かったので、自分のプレータイムを考えると、サントリーに来られて良かったと思っています。移籍したことを全く後悔していませんし、良い決断をしたと思っています。それによって今の自分のポジションがあると思っているので、とてもチャレンジングではありましたが、良かったと思っています。
――決断する時にいちばん大切にしていることは何ですか?
やっぱり決断する時には、家族が頭の中心に浮かんできます。ニュージーランドから日本に来る時にも、19歳だったんですが、両親をサポートしたいという想いがありましたし、パナソニックからサントリーに移る時も長男が生まれたばかりだったので、その時もファミリーについてしっかりと考えて決断をしました。
――お子さんは大きくなりましたか?
10歳と9歳の男の子で、特にスポーツはやっていないです。長男はビデオゲームなどをやっていて、典型的な10歳という感じです(笑)。子供たちにはスポーツを強要したくないと思っています。
――家族はいま日本ですか?
ニュージーランドです。コロナの影響で一緒に生活できず、7~8ヶ月くらい離れ離れに暮らしています。シーズンが終わって、6月に一時帰国する予定なので、その時に会える予定です。だから、優勝して家族と会いたいですね。
◆良い競争がある
――これからチャレンジしたいことは?
今は今シーズン優勝することだけにフォーカスしているんですが、年齢を重ねてきているので、このレベルでしっかりと長くプレー出来るようにと心掛けて取り組んでいます。
若くて勢いのある選手が同じポジションにも入ってきていて、競争自体は自分にとっても若い選手にとってもとても良いことですし、チームにとっても良い競争があるということは良いことだと思います。
――改めて、個人的な目標と、チームの目標をお願いします
個人の目標もチームの目標も同じようなものになりますが、やっぱり前回のファイナルでは負けてしまっていますし、今シーズンは最後のトップリーグになるので、優勝したいと強く思っています。
今シーズンの優勝は、特に意味のある優勝になると思っています。自分も含め、コロナの影響で家族に会えなかったりしていますが、その中でしっかりと優勝したいと思います。そうすればサポートしてくれているみんなも、より元気なってもらうことができるんじゃないかなと思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]