2021年3月19日
#738 齋藤 直人 『自信を持つために良い準備をしたい』
トップリーグ2021開幕戦でトップリーグデビューを果たし、第2戦では自ら2トライを挙げた齋藤直人選手。着実な成長は、一つ一つのコメントにも現れていると感じられるインタビューとなりました。(取材日:2021年3月中旬)
◆ようやくここまで来ることができた
――新型コロナウイルスの影響で色々なことがありましたが、ようやくトップリーグデビューを果たしましたね
まずは世界が厳しい問題に直面している中でも、こうしてトップリーグが開催されたこと、また自分がデビューを果たせたことを嬉しく思っています。色々なことを含めて、ようやくここまで来ることが出来たなと思っています。
――社会人になってからデビューまでは長かったですか?
そうでうね。実際に、昨シーズンのトップリーグが続いていれば、デビュー出来る可能性があったので、長かったなと。デビューもそうですし、このコロナの状況が続いていることも、そう思います。
――今シーズンの開幕戦、後半16分から出場しましたが、その時の気持ちは?
久しぶりにお客さんの前でラグビーが出来たことの嬉しさと、小さい頃から家族で見に来ていたこのトップリーグにデビュー出来たことへの嬉しさがありましたね。あと、開幕戦で言えば、僕の出身の神奈川県でプレー出来たことも、少し嬉しかったですね。
――子どもの頃に見ていた時には、「いつかここでやってやるぞ」と思っていたんですか?
小さい頃に見ていた時は、たぶん思っていたと思うんですが、具体的にはあまり思い出せません。いずれ目指したい、というくらいだったと思います。
◆無意識に出来るくらい習慣化
――開幕戦での出来はどうでしたか?
まずまずでしたね。裏のスペースなどは見ることが出来ていたんですが、終わった後に、少し丁寧に入り過ぎてしまったな、と思いました。リザーブで入る時には、ゲームの流れを変える役割があると思うんです。状況にもよると思いますが、テンポを変えたりしなければいけないと思います。点差が離れていたので難しい状況ではありましたが、もう少しテンポを上げられたな、と終わった後に感じました。リザーブから入ると、身体や呼吸が慣れていなくて、少し丁寧になってしまう部分が多いんですが、次にリザーブで入る時には改善できる部分だと感じています。
――第2節は先発での出場でしたね
最初からテンポを出すことをチームから求められていたんですけど、強風であったり、ホンダの気持ちの入ったディフェンスなどに圧力を受けて、上手く試合を運べなかったと思います。
――前半24分には初トライを獲りました
あれはイメージ通りで、パスをした後にどこにボールが動くかを事前に予測して走って、早くサポートに入るということを意識してやっていて、それが綺麗に出たシーンだったと思います。
――流選手のプレーを見ていても、そういうところを意識してプレーしていると感じますが、影響は受けていますか?
そのプレーはコーチから要求されているプレーですね。最初の頃は身についていなかったので意識してやることが多かったんですが、今は無意識に出来るくらい習慣化されています。
――習得が早いですね
プレシーズンの時からずっと言われて、練習後のレビューをもらいながら修正を重ねてここまで来たという感じです。まだ完ぺきではないので、これからも伸ばしていかなければいけない部分です。
◆成功体験を重ねていく
――後半16分の2つ目のトライはどうでしたか?
状況を見て判断しましたが、準備していたプレーなので、上手くいったシーンでしたね。あそこで上手くいったのは、タイミングが良かったと思います。
――プレースタイルとして、自分で仕掛けることが多いのでしょうか?
もともと多くなかったんですけど、積極的に走るとか、そういうところが自分の強みでもあると認識し始めました。あと、ユタカさん(流大)と比べた時に、そこが強みになると思って、練習中にチャレンジする機会が増えて、どんどん成功体験を重ねていくうちに、自信がついてきました。
――社会人になってから身についたことがたくさんありますね
ざっくり言うと、サントリーに入ってから自信がつきました。サントリーでは誰もが強みを増やそうと思っているのですが、自分も強みを増やそうとする中で、コーチと色々な話をしていると、「これって自分の強みかな」とか、「ここはユタカさんにはない部分かな」とか、気づくことがありました。
実際に一緒にやっていると分かりやすいので、そういう部分が増えて、「じゃあ、これも練習してみようかな」とか、そういうことをプレシーズンから積み重ねていくうちに、成功すると自信が生まれて、という繰り返しでしたね。上手くいかなければ相談して、「こういうトレーニングを教えて欲しい」とか、コーチとコミュニケーションを取るようにしてきました。それで大学の時と比べて、武器が増えたと思います。
――身につけることがしっかりと出来ているんですね
完ぺきではないと思うんですけど、まずそこに気づけるかが大事だと思います。
◆必要なことは良いパスと良いキック
――気づきのもとは環境ですか?
環境は間違いなく大きいと思います。違うポジションの選手のプレーを見ていても、「これって自分にも活かせるんじゃないか」と思うことがあって、そういう選手に教えてもらったりしています。色々身につけたいと思っているんですが、たくさんある中でも優先順位をつけるようにしています。チームから求められている最低限のことというか、これが出来なければチームに迷惑をかけてしまうこと、絶対に忘れてはいけないこと、そして絶対にしなければいけない役割、というものを忘れないようにして、そこを優先的に練習しています。
――もう少し具体的に言うとどんなことですか?
スクラムハーフであれば、ざっくり言うと良いパスと良いキックです。仮に僕がオフロードパスを覚えたいと思っても、それはその次にやることで、絶対に必要なことは良いパスと良いキックです。60分の練習時間があるならば、50分はパスとキックの練習に充てて、10分だけオフロードパスの練習をするというようなイメージで取り組んでいます。
――やりたいことも少しはやるようにしているんですね
そうですね、そこは自分の時間でという訳ですが、ただ本当に必要なスキルの練習時間を削ってまではやらないですね。
――そこの判断が的確なのではないでしょうか?
やっぱりおおもとにあるのは、自分が試合に出たい、試合に出るために必要なことという判断でやっています。
――分析力と戦略を考える素養を持っていると思うので、将来は良い監督になるかもしれないですね
それは分からないですね(笑)。以前のインタビューでも言いましたが、自己分析はずっとやっていて、そこが的確じゃないと、どこに時間を割くかなど少しずつずれてきてしまうと思います。やったことが無駄になってしまったり、足りない部分が出てきてしまったりすると思うんですが、やっぱり自己分析も完ぺきではないので、こまめにコーチたちと話しながら、他の人からの見え方と上手くすり合わせながら、何が必要なのかを常に考えてやっています。
――自分のことが客観的に見えていると思いますが、もっと上手くなりたいですか?
上手くなりたい一心です。まだ試合にもあまり出てないですし、自分のことを上手いとは思えないですね。日本代表にも入っていないですから。僕はそこを目指しているので、いくらでも上を目指したいですね。
◆昨日よりも感覚が良い
――第3節はメンバー外で、これまで先発もリザーブもメンバー外も経験していますが、今の自分自身の評価はどうですか?
まだまだやれると思っています。今のラグビーでのスクラムハーフというポジションでは、全試合先発フル出場というのは現実的でないと思うんですけど、開幕戦の三菱重工戦、第2節のホンダ戦と振り返って、まだまだ自分の力を出し切れていないと思っています。
チームが勝つことがいちばんですけど、これからの試合で自分の力を出し切りたいですし、チームが勝つためにそれぞれの選手のベストパフォーマンスが必要になってくると思うので、そういった意味でも自分のベストパフォーマンスを出したいですね。
――ベストのパフォーマンスを出すために気をつけていることは何ですか?
良い準備ですね。スクラムハーフに限らずかもしれませんが、自分が良いプレーするためにもチームに色々なことを求めていきたいですし、それもひとつの準備だと思っています。
――良い準備に限界はありませんか?
限界は無いです。試合では相手がいることなどで色々と変わってくると思いますが、試合前に出来る最大限の準備は、事前に分かる相手の情報を把握しながら、自分たちのやるべきことを確実にする、やれる限りの準備をすることですね。次の試合に向けて、更に高めていきたいと思います。
――今の目標は?
まずは9番を着て試合に出ることです。あと、トップリーグ優勝、そして日本代表に入りたいです。
――いまラグビーをやっていて、いちばん楽しいことは?
日々、自分の成長を感じること。少しでも上手くなったとか、昨日よりも感覚が良いなとか、そういうことを感じると嬉しいですね。
――それは毎日感じられていますか?
アップダウンはあるんですけど、ここが出来るようになってきたから、次はここを意識してやってみようとか、どのスキルもこれでいいやと満足せずに、全てをアップグレードしていきたいと思っています。日々、少しずつですけど、感覚が良くなっていると思います。
――直近で、ここをアップグレードさせたいと思っているワンポイントはどこですか?
いや、絞れないですね(笑)。メンタルの準備とかですかね。やるべきことがクリアになっていると自信も持てて心地良いというか、早く試合を迎えたいという気持ちが強くなります。それは自信があるからだと思うんですけど、自信を持つために良い準備をしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]