2021年3月12日
#737 垣永 真之介 『ピンチの時にチームを生き返らせるようなプレー』
インタビューの途中で「もう1回お願いします」と最初からの再スタートを望んだ垣永真之介選手。チームを語るのは難しいので自分のことを聞いて欲しいとのことで新たなインタビューでは、自分自身の大きな変化を語ってくれました。(取材日:2021年3月上旬)
◆可もなく不可もなく
――第2節、第3節と先発出場、調子は良いですか?
調子は、良くもなく悪くもなく、です。与えられた仕事をしっかりとこなせていると思いますが、期待以上の仕事はまだ出来ていないかなと思います。まだそういう試合展開になっていないということもあると思いますが、チームがピンチの時にチームを生き返らせるようなプレーとか、態度とか、そういう場面がないので、可もなく不可もなくという感じですね。まだ緊迫した状況の試合展開にはなっていないので、これからだと思います。
ひとつのプレーで勝つか負けるかという試合で、グラウンドにいて欲しいと思われるような存在になりたいと思っています。なので、第3節までを終えては、まだそういう存在にはなれていなくて、僕の代わりは誰でもいるという状況だと思います。
――そういう状況は、自分自身としてどうなんですか?
良くはないですよね。
――自分の代わりはいないという状況にするために、どうしようとしていますか?
与えられたことを一生懸命頑張る。あとはいつチャンスが与えられるか分からないですし、与えられた時に自分の100%を出し切るということですかね。
――シーズンを通じてその様な感じになるのでしょうか?
試合に出るだけが自分の役割じゃなくて、試合に出られなかったとしても出られない人の役割がありますし、試合に出る時にはその役割があります。そこは僕がコントロール出来るところじゃないので、その時その時の役割をしっかりやっていくことですね。
◆ワクワク感
――競争が激しい中でもチームの雰囲気が良いと感じますが、実際に中にいてどうですか?
良いんじゃないすかね。たぶん(笑)。
――チームの雰囲気は良いけど自分のプレーはまだまだ?
まだ自分のプレーに対してはワクワクしていないですね。一例ですけど、ラインブレイクとか、プロップなのにそんなプレーが出来るんだというようなプレーが出ると、ワクワク感が出ると思います。
――今までのシーズンでは、そういうプレーが出来る試合って1シーズンでどのくらいあるものですか?
1回あるかないかくらいじゃないですか。ただ昔は、試合前はめちゃくちゃ緊張するタイプだったんですが、最近は緊張をしなくなってきて、試合が楽しくなってきました。「もっとこう出来るんじゃないか」という自分自身への期待みたいなものがあります。
――以前はストレスに感じていたのが、ポジティブに変わってきたということですね
そうですね、試合前はポジティブな感じで、試合後は「出来なかったなー」という感じですね。メンタリティーが変わってきたと思います。
――それはなぜだと思いますか?
何ででしょうね。年齢ですかね(笑)。良い意味で緊張しなくなりましたね。
――緊張する性格ってなかなか変えにくいものだと思っていました
2018-2019シーズンの、神戸製鋼にボロ負けした決勝くらいからですね。今まで失敗し過ぎて、失敗が怖くなくなった状況ですかね。ラグビー人生で試合ではひと通りは失敗してきましたから。
――どんな失敗があったんですか?
良い局面でミスをしたり、スクラムを押されたり、それが原因で負けたりと、すべて経験してきたと思います。だから失敗が怖くないというか。失敗が怖いと緊張するじゃないですか。それを全然気にしなくなったので、メンタルとしては良い状況だと思います。
――失敗をしても良いという感覚ですか?
僕が失敗したくらいで負けるようなチームじゃないと思っています。試合中は、それくらいみんなのことを信頼していますね。
――その信頼感はどこから来ているんですか?
みんなと日々過ごしている時間。あと僕の中で監督が代わったことが大きいかもしれないですね。ひとつミスをしたら数試合出られないということも経験してきましたが、今は良い意味で失敗を恐れなくなりましたね。
◆最後に出る男
――ミスをしたら試合に出られなくなると考えてミスを恐れるのだと思いますが、チームとしてそういうことがあまりなくなってきているということですか?
人によると思います。若い選手はまだそう思っちゃうんじゃないですかね。僕は失敗しても仕方ないと思うようになりました。オフシーズンに、亮土(中村)と話した時があって、亮土ってメンタルが強すぎて凄いんですよ(笑)。
僕はあいつのメンタルをめちゃくちゃ尊敬していて、僕の中で何だかんだ「最後に出る男」だったんですよ。最後はやっぱり中村亮土でしょって。かと言って、亮土はずっと試合に出続けているわけでもないんですよ。結構試合に出られない時期があって、その間、ずっと準備していたみたいなんです。試合に出た時にベストパフォーマンスが出せるように、常に準備しているんです。
「失敗したら仕方ない、次に何をするか」と考えた時に、亮土の最近のラグビーを考えると、決勝に出てめちゃくちゃ活躍して優勝して、日本代表に選ばれて、日本代表でも出た試合では活躍して、最後は中村亮土でしょってなったじゃないですか。
僕なんか、ひとつミスをしただけで、自分は終わりだみたいに思ってしまうメンタリティーで、めちゃくちゃ切迫していたんですよ。だけど、最後にそういう男になれれば良いんだと、なれなかったらなれなかったで仕方ないですし、与えられたことをやっていけば、いつか必ずそうなれると。そういう亮土の話を聞いてすごく楽になりましたね。
――それはいつ頃の話ですか?
今シーズン、チームが始動する前くらいだと思います。
――同期だから響いたということもあるかもしれないですね
そうですね。同期ということと、ワールドカップを見て、亮土のことをめちゃくちゃ凄いって思ったんですよ。一緒のチームで活動していますが、改めて凄いと思って、あいつの話を聞いてみたいと思ったんですよ。それでそういう場を設けたんですけど、たぶん初めてそういう話をしましたね。
◆必ずチャンスは来る
――物事の捉え方が変わって、初めてのシーズン、初めての試合を経験して、今後はどういうことをやっていこうと思っていますか?
試合に出ようが出まいが、与えられた仕事をしっかりやる。クラブハウスに行ったら必ず仕事がありますし、どんな立場であれしっかりやっていくことです。そういうことをみんなに浸透させていきたいですね。
――そのために周りともコミュニケーションを取っているんですか?
やっぱり試合に出られないと悔しいと思うんですよ。練習するためだけにサンゴリアスに入ったわけじゃないと思いますし、みんな試合に出るために入っていると思うので、やっぱり悔しいと思うんですよね。僕も開幕戦に出られなくてめちゃくちゃ悔しかったです。それでも僕らはチームですし、仲間ですし、表に出なくても絶対にやるべきことってあるんですよ。それをやらなければサンゴリアスじゃないですし、優勝できないと思います。試合に出た時にはその役割があるし、出られなかった時にはその時の役割を、人を巻き込んでやっていきたいと思っています。
――それはチーム愛だと思うんですが、自分の中でそれが育まれたのはいつ頃ですか?
そういう気持ちはずっとあったんですけど、人を巻き込んでということは、今年からより強くなりましたね。
――人を巻き込むことの良さはどう考えているんですか?
優勝したいからですね。サンゴリアスでは2位以下は一緒なんですよ。優勝した時に初めて、あの感覚になれるんです。全てが報われると思うので、その想いだけですね。
――個人的なターゲットとしての日本代表はどうですか?
ここ1、2年が最後のチャンスだと思っています。メンタル的にも身体的にも。そこも焦らず、与えられた仕事をしっかりと100%こなしていれば、必ずチャンスは来ると思うので、準備しておきたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]