SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2021年2月26日

#735 辻 雄康 『ビッグドライブ』

開幕戦のスタメン出場で初キャップを獲得した辻雄康選手。55分間出場した試合を振り返りながら、試合前、試合中、試合後の心境、そしてさらに飛躍するための心構えを聞きました。(取材日:2021年2月下旬)

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◆「やるぞ」という気持ち

――トップリーグ2021開幕戦(三菱重工戦)スタメン出場での初キャップ、おめでとうございます。試合にはどんな気持ちで臨みましたか?

どんな形でもいいから開幕戦に出場するということを、プレシーズンから目標にして取り組んでいたので、開幕戦のメンバーに選ばれたことが素直に嬉しかったです。サンゴリアスに入って、本当に少しのことだと思いますが、立てていた目標を達成することが出来たことは、自分のことが少し好きになれるじゃないですけれど自信がつくことになったので、素直に嬉しく思います。頑張ってきた自分と、周りでサポートしてくれた人に感謝して試合に臨んで、自分のやるべきことをやろうという気持ちでした。

――開幕戦のメンバーに選ばれてから試合まではワクワクしていましたか?

ワクワクは、正直、なかったかなと思います(笑)。「やっときた、やるしかない」という気持ちでした。開幕戦のメンバーとして出場できる喜びはありましたが、楽しみよりも、「やるぞ」という気持ちの方が強かったです。

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――試合の当日や試合の直前は、気持ちのコントロールが出来ていましたか?

やはり練習試合とは違い、身体に力が入り過ぎてしまったり、コンディションも自分の中でいつもと違う感覚がありました。練習試合の方が身体が軽かったと感じたので、そこのコントロールは上手く出来ていなかったかなと思います。ただ、気持ちの部分では十分に入っていたので、身体の部分と心の部分の塩梅がもっと上手く出来るようにならなければいけないと感じています。

自分の中では練習でも試合でも開幕戦だとしても、やらなければいけないことは明確だと思うので、それに対してどういう状況でも100%で臨み続けることを目標に掲げてやっていました。ただ、開幕戦となると、分かってはいるんですが、その気持ちの部分の塩梅が難しくなってくるんだなと感じました。

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◆点差じゃなく、自分にフォーカス

――実際に試合が始まって、行けるぞと感じたのはどの辺ですか?

ファーストコンタクトで勝った時は、「よし、行けるぞ」という気持ちでした。ファーストコンタクトで勝つことを意識しているので、そこで上手くいくときはその後も上手くいきます。開幕戦ではフェーズを何度も重ねるような展開ではなくて、あまりボールを持つ機会も多くはなくて、ファーストコンタクトのタイミングがいつもよりも遅くなってしまったので、試合の最初から「よし、行けるぞ」という気持ちになれたのが遅かったかもしれません。自分の中で良いプレーをした時に気持ちが上がってくるので、例えファーストコンタクトがダメだったとしても、常に良いプレーをし続けることだけを考えてプレーしようと思っていました。

――試合中は一喜一憂していたような感じでしたか?

一喜一憂はしていないですね。とにかく目の前のことを100%やることに精一杯で、試合展開もキツかったですし、気温も高く、いつもとは違う環境だったので、「肺が自分のものじゃないんじゃないか」っていうくらいキツかったです(笑)。でもその中で、サントリーのスタンダードを見せ続けなければいけないということを意識していました。ミルトン監督も「点差じゃなく、とにかく自分にフォーカスしろ」と言っていて、それが求められていることだと思っていました。そこを意識して取り組みましたが、なかなか上手くいかない部分もあって、自分との戦いでした。

――ハーフタイムの時はどんなことを考えていましたか?

前半が終わって、一度クールダウンして冷静な状態に戻ることは出来ましたが、後半になって、そこで冷静になり過ぎていた部分というのがあったと思います。ボールのリリースであったり、倒れ方であったり、相手に当たる高さであったり、状況によって全然違いますが、そういう違いの細かいところを求められるシーンが何度もあって、そこを追及して実行できなかったなと感じる部分がありました。

トップリーグの開幕戦で、「サントリーとしてやらなければいけないんだ」という気合が先走り過ぎていた部分もあって、そういう細かいところまで意識し続けられなかったという気持ちです。実際に試合中に意識できることって少なくて、練習で無意識的に出来るようにしなければいけないことだと思うので、練習で無意識的に出来ていないところが試合で出てしまった、もっとレベルアップしなければいけないんだな、と感じた試合でした。

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◆こだわり切れなかった部分

――試合の中で出来たと思うところはどこですか?

コンタクトの部分で何度か強さを見せられた部分があるとは感じていて、高い姿勢だったとしても常にビッグドライブして、チームのテンポを作って貢献するというところは、自分の強みだと思うので、そこは良かったかなと感じています。ディフェンスでも必ず前に出て、周りとコミュニケーションを取って出来たと思います。課題としていたコミュニケーションの部分は実行できて、ラックでも何度か貢献できて、良いところを伸ばして、課題を修正できていたかなと感じました。

――手応えがあり、自信になった試合でしたか?

自分のフィジカルが通用すると理解できた部分はありますが、ひとつ大きなミスがあって、それを引きずっているというか、「あの時はこうすれば良かった」という反省がすごく頭に残っています。次の試合に出るために、そういう細かい部分を、もっと修正していかなければいけないんだという気持ちが強いです。初キャップが取れたことは嬉しいことなんですが、そこで一喜一憂してしまうと、試合に出続けられることはないと思うので、自分の立場をしっかりと理解し、メンバーに食い込むために、もっと頑張らなければいけないと思っています。

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――その大きなミスとは、どんなプレーでしたか?

試合でフォーカスするところが、ゲインラインを切ってテンポを出すことで、ボールのリリースを意識していたんですが、後半5分、10分くらいの時に、自分がゲインすることが頭にあり過ぎてしまい、そういう細かい部分までこだわり切れなかった部分がありました。こだわり切れなかった理由も、最初のキャリーで高く行き過ぎてしまい、ずっと練習していたショートステップも疎かになってしまい、最初のキャリーでストロングキャリーが出来なくて、そういうふうになってしまったので、そこをもう一度見つめ直したい気持ちです。

――そのプレーはコーチからも指摘されたんですか?

自分の中で深く考えているというところが大きいです。もちろんコーチからも指摘されましたが、自分にとってそのミスは大きいものなので、そこをこだわり続けられる日本人選手じゃなきゃいけないという意識があります。

――第2節ホンダ戦、第3節サニックス戦に向けて、どこを意識していきますか?

みんなが嫌がるコンタクトの部分で更にレベルを上げて、試合で発揮していきたいと思っています。そこが自分の強みでもあるので、ちゃんと自分にベクトルを向けて、気持ちの整理をつけて、しっかりと戦い続けられるようなマインドを自分で設定することが大切だと思っています。

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◆「気持ちいい」って自分をコントロールするために言っている

――チームの雰囲気はどうでしたか?

勝ったことに関してはチームとして喜んでいたと思いますし、自分たちのやってきたことを証明し、自分たちの強さを証明できた喜びを感じました。みんな喜びはあったと思いますが、ひとりひとりがサンゴリアスの選手として個人とチームにベクトルを向けて、サンゴリアスのスタンダードを試合で表現し続けていました。そのことにフォーカス出来ていたことを周りの選手から感じて、本当に手本になるチームメイトがたくさんいるのがサンゴリアスなんだなと実感しました。

――試合が終わった後に、同じポジションやフォワードの選手と話したりしましたか?

試合が終わった後にロックの選手たちと写真を撮って、初キャップの選手たちと写真を撮って、そこで試合に出て勝ったという喜びを共有しました。

――いいシーンですね

試合に向けて自分の中で100%やるだけとは思っていましたが、試合中は前半20分くらいがかなりキツくて、こんなにキツい時に周りの選手たちはどうやってメンタルをコントロールしているんだと、先輩たちに助けを求めたくなる時がありました。キックオフの時に慎太郎さん(石原)と「キツイな」という話をしている時に、慎太郎さんは「気持ちいい」って言ったんですよ。それを聞いて、自分をコントロールするために言っているんだなと感じましたし、自分にしっかりとフォーカスを当ててやっているんだなと感じた瞬間でした。

――初キャップを獲得した選手がたくさんいましたが、そういう中で勝ったことについてはどうですか?

一緒に頑張ってきた人たちと初キャップを迎えられたことは嬉しいことですし、競争が激しいチームであることは間違いないと思いました。そして誰が試合に出ても通用するチーム力と、そのプライドがあるチームだと実感しました。これまで試合に出てきた人たちが積み上げてきたサンゴリアスの雰囲気などを感じながら、自分とチームに向き合ってプレーしているんじゃないかなと感じました。

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◆やってみる、やり続けることが大切

――サンゴリアス2年目で初キャップとなりましたが、自身としては遅かったですか?それとも早かったですか?

自分の昨年の状況を考えると、開幕戦に出場することを目標にはしていましたが、本当に高い壁だと感じていて、自分を少し褒めてあげたい気持ちはあります。そしてさらにそれを積み重ねていかなければいけないとも思っています。初キャップのタイミングが遅いとか、そういうことが思えないというか、試合に出ることを目標にやってきたものの、自分の力を信用しきれていない部分がずっとありましたし、「自分がこのチームにいて、どういうふうに自分を証明できるんだろう」とそこが不透明でした。

ただ不透明ながら自分がやるべきことは分かっていたので、練習や練習試合でずっと表現し続けて、ひとつ結果を得られたことが嬉しいことです。「開幕戦のメンバーに選ばれたらどんな気持ちになるんだろう」ということを想像して、それを目標にやっていた感じで、タイミングが遅いとか早いとか、そういうことは思えない感じでした。

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――高いと感じていた壁を越えて、視界は広がりましたか?

結果が見えなかったとしても、とりあえずやってみる、やり続けることが大切なのかなと感じました。亮土さん(中村)が合宿の時に、「言葉で言うのは簡単だけど、それをグラウンドで実行し続けることが難しい」と言っていて、今それを本当に実感していますし、グラウンドで実行し続けて認められたことが、少しだけ自分に自信を持っていいんじゃないかなと思えました。

――この先の目標は何ですか?

試合に出場し続ける。それは間違いないですね。試合に出場し続けて、価値ある自分を作っていきたいと思っています。

――そのためにやることは何ですか?

まずはチームでやることをしっかりと理解して、個人としては自分の強みを発揮し、試合中に戦い続けること、アタックでもディフェンスでもスマッシュし続けて貢献することを、相手が誰であろうと貫き通したいと思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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