SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2021年1月20日

#730 ボーデン バレット 特別編『予測できないようなプレーを見せたい』 

今回はスピリッツ・オブ・サンゴリアス特別編として、1月6日に都内で行われた「ボーデン・バレット サントリー入団記者会見」の様子を。バレット選手と共に登壇し冒頭の挨拶を行った土田雅人シニアディレクターのコメントを先ずご紹介し、その後、バレット選手のコメントを記者からの質疑応答を含めてご紹介します。

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土田雅人シニアディレクター

「本日は、年初めのお忙しい中、このように多くの報道関係者の皆様にお集まりいただき、誠にありがとうございます。私も何度かこういう記者会見をしていますが、ジョージ・グレーガン、ジョージ・スミスの時の3倍以上の報道関係者が集まっていることを嬉しく思っております。ありがとうございます。皆様ご存知の通り、ジャパンラグビートップリーグ2021の開幕に向けまして、サントリーサンゴリアスにボーデン・バレットという頼もしい仲間が加わることとなりました。改めて説明することではないかと思いますが、彼は現役のニュージーランド代表・オールブラックスで88キャップを持つ選手です。またワールドラグビーの年間最優秀選手賞・MVPに2016年、2017年と連続して選ばれ、一昨年に日本で行われましたラグビーワールドカップでも大活躍するなど、名実ともに世界ナンバーワンの選手です。

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このような選手がサンゴリアスに加わってくれることを、非常に光栄に感じています。私も2試合、練習試合を見させてもらいましたが、東芝戦の後半20分から出て大活躍。すぐにトライを取る。さすがスター選手だなと思いましたし、1週間前にはパナソニックと練習試合をしましたが、テストマッチのような試合で彼のディフェンス力を見ることが出来ました。ジャッカルしてターンオーバーしたシーンも見られて、非常に楽しみな選手だと感じて嬉しく思いました。ただ選手としてのプレーだけでなく、期待することは試合や練習に臨む態度、そして日々の行動。これが素晴らしいと聞いていて、それがサンゴリアスにも大きく影響するんじゃないかなと考えております。

現行のトップリーグは今シーズンが最後になります。来年は新リーグとして生まれ変わります。これまでトップリーグで5度の優勝を達成したサンゴリアスは、東芝と並んで最多タイの優勝回数ですが、今シーズン彼の活躍で6回目のチャンピオンを獲得し、現行のトップリーグとしての有終の美を飾りたいと思っております。最後になりますが、新型コロナウイルスの感染拡大で様々なところで影響を受けておりますが、何とか今シーズンのトップリーグが無事に開催されて、多くのラグビーファン、スポーツファンの方々に彼のプレーを見ていただき、日本を元気にすると共に、スポーツ界、ラグビー界を盛り上げていければと思っております」

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◆"アグレッシブ・アタッキング・ラグビー"が自分に合っている

(日本語で)土田さん、ありがとうございます。こんにちは。(以下英語)まず日本に来られて嬉しいですし、家族も含めて快適に過ごせています。トップリーグの開幕を非常に楽しみにしていますし、サントリーサンゴリアスという素晴らしいチームの一員になれて非常に光栄に思っています。サンゴリアスのラグビーのスタイルである"アグレッシブ・アタッキング・ラグビー"が自分に合っていると思っているので、これからがとても楽しみです。
プレシーズンの練習試合に2試合出場しましたが、スキルレベルの高さに驚きましたし、自分自身もまだまだ成長できると思うので、これから自分のプレーをもっと磨いて良い経験にしたいと思っています。ファンの皆さんも、トップリーグが開幕し応援できることを楽しみにしていると思いますし、ファンの皆さんの応援が力になっている部分があるので、ぜひこれからも応援をよろしくお願いします。

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(以下、質疑応答)

◆若い才能ある選手が成長していくことが楽しみ

Q:日本でプレーすることになった経緯を教えていただけますでしょうか?

16~17ヶ月くらい前にニュージーランドのラグビー協会と契約についての見直しをしていた時期に、4年間の契約がある中でサバティカル(リフレッシュ期間)を許してもらい、海外でプレーするチャンスを得られたので、日本でプレーすることを選びました。ワールドカップで日本に来ていましたし、日本・東京の印象がすごく良かったので、日本でプレーしたい、新しい挑戦をしたいという気持ちになりました。その時に、フランスに行くチャンスもありましたが、日本の印象が良かったので、日本を選びました。

Q:日本のラグビーの印象を教えていただけますでしょうか?

いま日本のラグビーは世界の中でも良い位置にいると思っています。オールブラックスなどの仲間からもスキルレベルの高さについて聞いていましたし、インテンシティ(強度)も高いと聞いていました。あと自分の中では、若い才能ある選手、サンゴリアスにもいますが、そういった選手たちがこれから成長していくことが楽しみですし、そういう姿をしっかりと見ていきたいと思います。

Q:日本人選手の中で印象に残っている選手はいらっしゃいますか?

才能ある選手が揃っているサンゴリアスの中でも、中村亮土キャプテンのフィジカリティ(身体的強度)には驚いています。若い選手、これから成長が見込まれる選手としては、齋藤直人と中野将伍で、すごくポテンシャルのあって将来が楽しみな選手だと感じています。

Q:覚えた日本語があれば教えていただけますか?

(日本語で)お願いします。ありがとうございます。おはようございます。こんばんは。お元気ですか。(以下英語)現状は、日常的な会話が選手間でスムーズに出来るようにと心掛けているので、覚えている日本語は挨拶とか、基本的なものがメインになるんですが、次回機会があれば、もっと面白い日本語が披露できるように準備をしたいと思います(笑)。

Q:日本に来て好きになった日本食があれば教えてください

日本食の新鮮さには驚いていて、刺身、寿司、とんこつラーメン、焼肉はすごく好きな日本食です。こういうコロナ禍の厳しい状況の中で外食する機会がないので、チームメイトからは誘ってもらっていますが、まだ行けてないですね。

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◆自分のスタイルとしてはアグレッシブに攻めたい

Q:ファンに向けて、どういったプレーを見て欲しいかメッセージをお願いします

ギリギリでどういったプレーをするか判断する時があるので、ファンの皆さんには予測できないようなプレーを見せたいと思っています。ラン、キック、パスというオプションの中からどういった選択をするのか、そういうところをぜひ見てもらいたいと思います。

Q:土田シニアディレクターに、ボーデン・バレット選手がチームに与える影響、更には日本ラグビー界にもたらす影響は、どんなものを期待していますか?

私も試合を見てワクワクしますし、本当に世界ナンバーワンの現役選手が日本で活躍してくれる、そして先ほども申しましたが、2試合を見ても手を抜かずに一生懸命グラウンドの上で実力を出してくれることにワクワクしますし、期待しております。それにチームにとっても、日本のラグビー界、日本のスポーツ界に与える影響は、グラウンドはもちろんですが、日々の活動においても生活面や様々ところで影響を与えてくれることを期待しています。

我々サンゴリアスは創部40年になります。その中で、ジョージ・グレーガン、ジョージ・スミス、マット・ギタウなど、100キャップ以上、代表での試合を経験した選手たちが来てくれて、素晴らしい歴史を築いてくれました。そして辞めた後も我々のサポートをしてくれている。そういう関係を築きたいという考えで、バレット選手には来てもらいました。

Q:コロナ禍の中で、どういう準備をしていきますか?

選手として予期せぬことが起きる中で、上手く対応しなければいけないことは常に準備しているので、自分たちにネガティブなことが起きたとしてもしっかりと対応していきたいと思っていますし、その自信と責任を持ってしっかりとやっていきたいです。

Q:サントリーのプレースタイルをどう感じていて、自身のプレーがどれくらいマッチ出来ると考えていますか?

週末(1月2日)にパナソニックと試合をしましたが、相手のディフェンスのラインスピードがあって自分たちがなかなか前に出られないという局面が続いてので、そういった場合はキックを有効に使わなければいけないと思いますが、自分のスタイルとしてはアグレッシブに攻めたいという想いがあるので、サンゴリアスのスタイルとマッチしていると思います。プレシーズンではボールを展開して、ラックから素早くボールを回すことを多くやりたいと思っていますが、シーズンが始まって厳しい戦いになればなるほど、自分たちでアジャストしてキックを使わなければいけない状況も出てくると感じています。

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◆プレーしたいと思っているポジションは10番

Q:とても謙虚な印象を受けますが、グラウンド外でもそのように謙虚でいられる自身の行動指針を教えてください

ちょっと退屈で大人しい印象を持たれるかと思いますが、オンとオフはしっかりと持ちたいと思っています。ザ・プレミアム・モルツをチームメイトと一緒に飲んで盛り上がることもありますし(笑)、今の自分の人間性は育ててくれた家族、両親があってのものだと思っています。人間としてもプレーヤーとしても、高いスタンダードをもってやっていきたいと、いつも心掛けています。

Q:日本の中でプレーしてみたいスタジアムや行ってみたい場所があれば教えてください

できるだけ多くのサンゴリアスファンの皆さんに応援してもらいながらプレーしたいと思っています。豊田スタジアムや横浜国際総合競技場(日産スタジアム)など大きなスタジアムでプレーしたいという想いはありますが、ファンの皆さんに応援してもらえる環境をいちばん望んでいます。

Q:代表では15番でプレーすることが多いですが、10番、15番でプレーする上でそれぞれ意識していること、またどちらのポジションが好きかを教えてください

オールブラックスにも繋がることですが、自分がいちばんプレーしたいと思っているポジションは10番、スタンドオフです。10番の役割については、約2年間、15番でプレーしていた期間があるので、これから9番とのコンビネーションやセンターとのコミュニケーションを自分の中でしっかりとやっていきたいと思っています。

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◆プレッシャーがかかった状態でいかに解決策を導き出すのか

Q:フランスでプレーするチャンスもあった中、日本でプレーする決断に至った理由は何でしょうか?

2023年フランスワールドカップでプレーするというところから逆算して決断したんですが、ニュージーランド協会との話し合いの中でも4年契約の中でサバティカルで1年日本に行かせてもらえるという合意に至りました。

(土田シニアディレクターより)少しだけ付け加えさせていただくと、彼はサンゴリアスに入る前に6回ほど日本に来ているんですが、お寿司などの日本食が大好きですし、日本のおもてなし、日本人の人間性など、ワールドカップで40日間以上日本に滞在して日本の素晴らしさを経験したことが、サンゴリアスというより日本でプレーすることを選んだ理由と聞いています。また年俸などは答えられませんが、金額で言えばフランスの方が高かったんじゃないかと思います。そういう意味でも、ワールドカップ含めこれまで6回日本に来ている経験が大きかったのではないかと思います。あとトップリーグでもラグビーの質が落ちないということが大きかったと思います。

Q:10番でプレーされることで、流選手や齋藤選手、その他にも素晴らしいスクラムハーフの選手がサントリーにはいると思いますが、普段はどのようなコミュニケーションを取っていますか?

仲良く出来ていますし、良いコミュニケーションが取れています。日本人3人の優秀なスクラムハーフがいますし、ハリケーンズで一緒にプレーしていたジャディ(リチャード・ジャッド)がいます。コミュニケーションがとても重要で、スクラムハーフとのコミュニケーションもそうですが、特にセンターの選手や外側にいるウイングからコミュニケーションをしっかりとしてもらうことによって、自分の中でどこのスペースが空いているなどを判断して、どこを攻めるかを決めています。まだ言葉の壁があるのが現状なので、プレッシャーがかかった状態でいかに良いコミュニケーションをして解決策を導き出すのかという部分を、これからやっていかなければいけないと思っています。

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◆将来的にはまた日本に戻ってきてプレーしたい

Q:日本でプレーされるのは1年かと思いますが、来季以降はどういったイメージを持たれていますか?またこの1年の中でサントリーから期待されていることにどれくらい応えられるかというイメージがあれば聞かせてください

今シーズン以降の具体的なプランはありませんが、目の前の目標であるトップリーグ優勝ということと、2023年のワールドカップに出場することを考えています。チームメイトとのフレンドシップや家族と一緒に良い時間を過ごしたいと思っていますし、選手としてももっと改善できるところは改善していきたいと思っています。1シーズンしかプレーしないことになるかもしれませんが、将来的にはまた日本に戻ってきてプレーしたいという想いがあります。それは将来のことなのでどうなるかは分かりませんが、そういう気持ちを持っています。

Q:対戦が楽しみな選手やチームを教えてください

どの試合も厳しい戦いになると思っているので、しっかりと準備をして試合を楽しみたいと思っています。まず対戦したい選手としては、ブロディ・レタリック選手とベン・スミス選手(ともに神戸製鋼)とTJ・ペレナラ選手(NTTドコモ)。この3人が対戦したいトップ3の選手です。対戦したいチームとしては、神戸製鋼とパナソニックです。

Q:開幕スタメンを狙っていますか?

外国人選手の起用ルールがありますが、その中で先発でプレーしたいという想いがあります。今週は練習試合が組まれていない週になりますが、すでに開幕戦に向けた準備を始めているところなので、ぜひ先発でプレーしたいと思っています。

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(構成:針谷和昌/通訳:山口祐二/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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