2021年1月15日
#729 中村 亮土 『コツコツ積み重ねる』
選手としてのさらなる飛躍とリーダーシップの向上を自ら楽しみとして、新シーズンを迎えようとしている新キャプテン中村亮土選手。サンゴリアス 19代目キャプテンの意気込みと展望を聞きました。(取材日:2020年12月中旬=開幕延期決定前のインタビューとなります)
◆今シーズンこそは
――キャプテンとして臨むシーズンとなりますが、気合は入っていますか?
気合入っていますよ。例年以上にトップリーグが楽しみです。毎シーズン、開幕の前は楽しみなんですけど、「今シーズンこそは」という気持ちと、代表の活動がなかったのでチームのメンバーと一緒に時間をかけて準備してくることができた自信と、それが組み合わさって例年以上にという感じですね。例年だと、代表の活動があってチームとして準備できる時間は限られてしまうんですが、それがなかった分、外国人選手も早く合流できましたし、日本代表の活動もなくプレシーズンからチームとして活動できたので、非常に良い準備が出来ています。
――開幕戦から全開ですか?
もちろん、その気持ちでやっています。
――キャプテンと言われた時にはどんなことを考えましたか?
光栄なことだと思いました。歴史あるクラブで、キャプテンとして今シーズンを迎えることを嬉しく思いました。
――サンゴリアスでキャプテンをやるというイメージは持っていたんですか?
なかったですよ。これまでのサンゴリアスではリーダーなどを任されることがなくて、とにかく自分のパフォーマンスに集中することだけを考えていました。
――キャプテンを任されるには良いタイミングでしたか?
2~3年目の若手の頃、自分のパフォーマンスに集中したい時にキャプテンを任されるというよりは、ある程度、余裕を持てるようになった時にキャプテンを任された方が良いんじゃないかなと思うので、そういった意味では良いタイミングだったんじゃないかなと思います。
――ミルトン監督が前任キャプテンの流選手にも意見を聞きつつ、中村選手をキャプテンに指名したわけですが、それについてはどう思いますか?
ユタカ(流大)と話す機会があって、そういうことを言っていましたね。「次のキャプテンは亮土さんでしょ。僕は推薦します」と言っていたので、そう思ってくれているメンバーがいるんだなと思いましたね。
――後輩の後にキャプテンをやるということについては?
そこは何とも思わないですね。
――ひとつ前のスピリッツのインタビューにギタウ選手からのメッセージがあります
素直に応援してくれているので、非常に嬉しいですね。普通に一緒にプレーしていましたけど、本当にとてつもないレジェンドで、誰もが認めるスーパープレーヤーです。色々と学ぶことがありましたし、ギッツ(マット・ギタウ)がいたチームを汚すわけにはいかないという想いもあります。
◆絶対にやらなければいけないことは外さない
――高校、大学でもキャプテンをやってきましたが、自分のリーダーシップについてはどう思っていますか?
僕はキャプテンシーやリーダーシップとはこういうものであるとは固執しないタイプで、どちらかと言うと、自分はこうなりたい、自分はこうあるべきだ、というものを突き詰めていくことが、ひとつのリーダーシップだと思っています。これは、今までやってきたことと、キャプテンになったからやらなければいけないことと、あまり変わらないかなと思っていますし、そこは変えたくないと思っています。
――立場が変わっても見ている景色は変わらないということですね
そうですね。ただ、立場として僕が思っていることが言いやすくなったと思います。
――キャプテンとなって半年くらいが経ちましたが、実際にキャプテンとしてやってみてどうですか?
大変とは思わないですね。自分の中だけで考えて、こうしたいと思っているんじゃなくて、もちろん自分の意見を持ちつつ、他に適任がいるようなことについては任せているので、自分がやり過ぎないというか、考えすぎないように他のリーダーに役割分担をしてやってもらっています。他のリーダー陣に助けてもらいつつやっています。
――バイスキャプテンの堀越康介選手とトム・サベッジ選手の2人にも重要な役割を担ってもらっているんですか?
そうですね。バイスキャプテンとリーダー陣に、それぞれの理想像を築くためにやっていってもらいたいと思っています。もちろん優勝して全員で喜ぶという理想像がある中で、僕のやり方とホリ(堀越)やサベッジのやり方は違っていて、他のリーダーもそれぞれのやり方があると思います。それぞれのリーダーが向上心を持って、チームに対して貢献したいという強い意志があれば、チームはまとまると思いますし、レベルアップ出来ると思うので、僕が出来ないところを他のメンバーにやってもらったり、上手く周りを頼りながらやっています。
――今のサンゴリアスは自覚を持った選手が多いと思うんですが、そういったチームの中でキャプテンをやる上で気を付けていることはありますか?
ひとつの方向にそれぞれが向かっていくんですけど、やっぱり同じ絵を見ながら向かっていかないと、行く方向がバラバラになってしまうので、そこは意識していますね。それぞれのやり方が合って形は違っていても、ベースは一緒で、絶対にやらなければいけないことは外さないようにはしています。
具体的に言うと細かくなってしまいますが、例えば、みんなで話し合って決めたことに対して、それが出来なかった時には厳しく言うようにしています。グラウンド内のことで自分たちが決めたルール、自分たちの役割を果たそうとしなかった時に、「それは違う」ということを言うようにしています。
◆リーダーが示す道しるべ
――今シーズンの中で最も楽しみにしていることは何ですか?
決勝戦ですかね。今シーズンのトップリーグは例年よりも長くて、試合も多くて、もちろん開幕戦にピークを持っていきますが、トップリーグの期間の中で成長できるチームにしたいですね。なので、開幕の時と決勝の時では、実力やチームのまとまり、やろうとしていることのレベルは、全然違うチームになりたいと思っています。
――そのために大事なことは何だと思いますか?
積み重ねですね。細かいスキル、トレーニング、コミュニケーションなどの積み重ねが大事だと思います。
――いまキャプテンとして意識している課題は何ですか?
課題というよりは、どこのチームも同じだと思いますが、まだ開幕前で試合をしていないので、実際に試合をして自分たちが思ってもいないことが起きた時にどう対処するかということが必要になってくると思います。想像以上に相手が強かったり、想像以上に点差がついてしまったりした時にどう対応するかということもそうですし、グラウンド外で言えば、コロナ禍の中で、試合が無くなってしまった時のマインドセットであったり、試合メンバーに入っていなかった選手が急きょ当日メンバーに入ることになって、先発で試合に出ることになった時の対応力については、特に今シーズンは必要になってくるんじゃないかなと思います。
――そういった課題を克服していくことも楽しみのひとつではありますね
そうですね。そういう時こそリーダーの方向性の示し方とか、リーダーのまとまり、リーダーが示す道しるべが必要になってくると思うので、そういう状況になった時には、リーダーとして良い方向に示せるようにやっていきたいと思います。
――自分自身のマインドセットが大切になると思いますが、どういうことを意識していますか?
一喜一憂しないことですかね。何があっても少し俯瞰で物事を考えらるようにしています。あとは、元々そうなんですが、ポジティブに捉えられるような考え方をしています。捉え方次第で良くも悪くもなるので、そこは大事なことかなと思います。
――そこも普段からの積み重ねですか
そうですね。考え方の積み重ねですね。
◆理解力とスキル、対応力
――プレーヤーとして、今シーズンの課題は何でしょう?
ボールキャリアーとして、しっかりと前に出たいと思います。ゲームコントロールやディフェンスでの貢献は、今まで以上にやっていかなければいけないと思っていますが、世界一のセンターを目指している中で、他の世界のセンターと比べて劣るところとしては、ボールを持った時の脅威さだと思っているので、そこを意識して試合でもやっていきたいと思っています。
――世界一の選手を目指す中で、日本人選手の良さは何だと思いますか?
まずはラグビーの理解力が高いということとスキル、あとアジャスト出来る対応力だ思います。一概には言えませんが、日本人選手と海外の選手を比べた時に、武器になるところはそこだと思います。
――世界一の選手になるという目標に対して、いまはどの辺りまで来ていると思いますか?
正直、それは分からないですね。分からないからこそ、今の自分をレベルアップさせるしかないと思っています。そして、ワールドカップなどに出場した時に、自分のレベルが分かるんじゃないかなと思います。だから、次のワールドカップも楽しみにしています。
――プレーヤーとしての楽しみは何ですか?
僕個人としては、2019年までの道のりで、上手くなったとか、選手としてのレベルが上がったと思ったんですけど、それをもう一度味わいたいと思っています。その時も具体的なイメージはありませんでしたが、コツコツ積み重ねて、やってきたことが結果として見えた時にレベルアップしたと思えたので、今はコツコツ積み重ねることを、その時の楽しみにしながらやっていくだけかなと思っています。
――2019年までの道のりで、具体的にレベルアップしたところはどこだったんですか?
ディフェンスでの存在感、パスやキックなどの細かいスキルですね。ディフェンスやスキルの最終形態というものはなくて、より良いものにしていくためにやっていかなければいけませんし、それに加え、ボールを持った時に脅威となるプレーヤーになることも、ひとつのレベルアップだと思います。
――キャプテンとしてファンに今シーズンのメッセージをお願いします
これまでよりもチームのメンバー1人1人がレベルアップしていますし、チームとしても良い繋がりを持ったチームになっていると思います。アグレッシブ・アタッキング・ラグビーをこれまで以上に体現できるように、またエキサイティングなラグビーをお見せ出来るように日々取り組んでいきます。なかなか難しい時期ではありますが、それを吹き飛ばすくらいのラグビーをしたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]