2021年1月 8日
#728 流 大 『 強い信念をもって、自分の直感を信じて 』
歴代キャプテンが語るサンゴリアス史
18代目キャプテン 流 大&ショーン・マクマーン&マット・ギタウ 共同キャプテン
サンゴリアス史上、初めての複数しかも3人キャプテン。シーズン途中でリーグがストップし、新たな試みは志半ばで終了した形となりましたが、3人のキャプテンはどんなことを考え、何を大切にしながら複数キャプテンを推進していたのでしょうか。第18代キャプテンそれぞれに聞いてみました。
◆流大 「最終的な決断をする」
――サンゴリアスでは初めて共同キャプテンとなりましたが、その1人として2020シーズンはどうでしたか?
それぞれの立場とか強みがあってバランスは取れていたと思います。僕自身これまで違うチームで2人はありましたが3人は初めてだったので、手探りな感じはありましたけど、それぞれの役割は果たせたと思います。
ショーン(マクマーン)はグラウンドの中でハードワークして100%出すということが彼の良さですし、ギッツ(マット・ギタウ)はコミュニケーションやチームのカルチャー、戦術の部分をすごく引っ張ってくれました。僕自身としてはこれまでキャプテンをやっていたということもあり、チーム全体を見ていました。あとはゲームの中でのキャプテンとしてレフリーとのコミュニケーションなどを取っていました。難しいところもちょっとありましたけど、良い経験になりました。
――1人でやっていた時と比べて、3分の1になったという感じはありましたか?
そこの感覚はそこまで無いですかね。特にギッツやショーンは、僕に対して気を遣っているというか、元々キャプテンをやっていたということもあって、彼らから僕がチームのキャプテンという雰囲気が出ていたと思います。でも、ギッツもショーンもすごくサポートしてくれてリーダーシップを発揮してくれたと思います。
――複数人でキャプテンをやることは、どうですか?
それぞれチームの状況とかカラーがあるので、一概には言えませんが、2020シーズンに関しては最後まで戦えず結果が出ていないので、その評価はすこし難しいところがありますね。チームによって複数キャプテンが良い時もありますし、1人でやった方が良いチームやチーム状況があると思います。
――将来指導者になった時に、キャプテンを複数にする選択肢も出来たということですか?
そうですね。そういう選択もあるという、選択肢は増えたと思います。
――2020シーズンのサンゴリアスはどんどん良い状態になってきたところでトップリーグが中止となりました。キャプテンとしての手応えはどうでしたか?
最初は、監督がミルトン(ヘイグ)になったりスタッフが変わったりして、戦術も含めて少し不透明なところがあった中で開幕を迎えてしまったので、選手の中には実際に不安もありました。僕含めてリーダーシップグループがスタッフに正直な気持ちを伝えて、しっかりとディスカッションが出来て、徐々に良くなってチームがまとまって、「ここからは全勝で行ける」という雰囲気になってきたところだったので、振り返っても仕方ありませんが、残念です。
――改めて、キャプテンとは何だと思いますか?
今の状況で言うと、最後の決断をするというか、チームの色々な考えや意見についてディスカッションがある中で、最終的な決断をするというくらいだと思います。
――それは監督でも、どんなに素晴らしい選手でも出来ないことですよね
本当に試合の中では、キャプテンの判断、決断がすごく大事になるので、それくらいですかね。リーダーシップとかは、今いる他の選手でも取れる人が多くなってきているので、本当に大事な決断とか劣勢に立たされた時の判断とか、そこがキャプテンの役割だと思っています。
◆ショーン・マクマーン 「自分をプッシュした上で仲間をプッシュ」
――3人でキャプテンをやってみて、どんな役割分担だったのか、またその出来は自分としてはどうでしたか?
マット・ギタウと流と一緒にキャプテンをやりましたが、役割としては、誰が何をやるというよりは、3人がトライアングルになって上手く助け合いながらやっていました。グラウンドで話す時にも、順番に変えていて、ギッツ(マット・ギタウ)が話す日、ナギー(流大)が話す日、僕が話す日と、リードする人を変えていました。特にレフリーとのコミュニケーションで言うと、日本人ということもあってナギーが主に担当していました。あとは、3人でトレーニングなどを見ながら話して、何がチームにとってベストかを考え、アプローチしていました。
――3人の中で唯一フォワードでしたが、フォワードをリードする役割もあったんですか?
スクラムリーダー、ラインアウトリーダー、ブレイクダウンリーダーなど、それぞれにリーダーがいたので、僕が特にフォワードをリードするということはやっていませんでしたが、自分の役割としては良いお手本になるというか、グラウンド上でも姿勢を示すことを求められていたので、そこを意識しました。グラウンド上でのコミュニケーションなどは、ギッツやナギーなどがバックスの立場からよく見えていた部分もあったと思うので、その2人を中心にやっていました。
――お手本を示すことはイメージ通りに出来ましたか?
特にアグレッシブなプレーやハードなボールキャリー、試合の最初からチームに良い影響を及ぼすことが自分の役割だと思っていたので、それについては果たせたと思っています。チームには海外の代表キャップを持った選手が3人いたので、途中から試合に入ることもありましたが、自分が入った時にチームが良くなるよう、意識してやっていました。
――まだ26歳と若いですが、どこでキャプテンシップやリーダーシップなどを身につけたんですか?
いくつかあると思いますが、ひとつは親からの影響や教育が重要だったと思います。ラグビー選手としてだけじゃなく、人間的にも良い人間であることを教わってきました。最初はラグビーリーグからスタートし、その後に15人制に行き、7人制のオーストラリア代表にもなりましたが、ラグビーをしていく上で常に心掛けていたことは、自分がベストなパフォーマンスを発揮するということを妥協なくやり続けてきています。それが今、言葉でリードするというよりは、自分の姿勢、自分のプレーで引っ張るなど、自分をプッシュした上で仲間をプッシュ出来るようになっていると思います。そういう経験を積み重ね、更にスーパーラグビーやオーストラリア代表を経験したことで、自分のリーダーシップ形成に影響を与えていると思います。
――子どもの頃を含め、キャプテンをやったことはありましたか?
自分は若い頃にキャプテンをやっていた選手ではありませんでしたが、自分がお手本になるようなプレーをするということをずっと意識してやってきました。
――キャプテンをやってみて楽しかったですか?
気負うことなく楽しむことは出来ました。ただ、自分が良いお手本になるようなプレーをしなければ仲間を引っ張れないと思うので、そこは常に意識して取り組み、それに加えチームの一体感を作ることも意識しました。
――いま話したようなことが、ショーン・マクマーン選手が考えるキャプテン像ですか?
そうですね。当然ハードにプレーして、みんなにプレーで示していくことがキャプテンに求められることだと思いますし、常に先頭に立ってチームを引っ張らなければいけないという役割があると思います。ただ、チームに一体感が少し無くなってきている時やあまり良い状態じゃない時に、コミュニケーションを取ってチームをひとつにしていくという役割もあると思います。
◆マット・ギタウ 「話をしっかり聞く」
――昨シーズンのキャプテンの役割は自分ではどう考えていましたか?
尊敬できる仲間たちがいるチームでキャプテンができることを、光栄に感じていました。サンゴリアスはスペシャルなチームなので、その期待に応えられるように、キャプテン3人体制の内の1人としてベストを尽くしました。
――3人体制という特殊な形でしたが、やってみてどうでしたか?
スタートの頃はキャプテンの中で、誰がハドル(円陣)でどんな話をするのか、少しまとまりがないこともありましたが、毎週事前にプランニングをしていくことで解決しました。そこからは3人でうまく連携もできたので、他にはやりにくい点などはなかったです。
――これまでのキャプテン歴は?
ウエスタン・フォース(豪/Western Force)、ブランビーズ(豪/ACT Brumbies)、バーバリアンズ(Barbarians)、そしてサントリーサンゴリアスです。
――キャプテンにとって大切なものは何でしょう?
考えをクリアにして、話をしっかり聞くこと。選手たちの不平不満、問題を聞くということではなく、ハイスタンダードを保ちながら、プレーヤーとコーチの間の声(ボイス)になること。他の選手にも求める分、自分がお手本となってしっかりやっていかなくてはなりません。チームで取り組むことに納得して、行動で示していくことも重要だと思います。
――新キャプテン中村亮土選手へメッセージをお願いします
頑張って欲しいですね。亮土はチームメイトからも好かれる選手だと思います。特別なチームのキャプテンに選ばれたわけなので、強い信念をもって、自分の直感を信じて欲しいです。そしてハッピーにラグビーを楽しんでほしいです。また、色々と役割を果たしていくのに苦労もあると思いますが、彼のスタイルは変えて欲しくないですね。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]