SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年12月25日

#727 ミルトン ヘイグ 『アグレッシブ・アタッキング・ラグビーにプラスしてディフェンスも素晴らしいそしてフィジカルも強いチームに』

常に落ち着いた雰囲気の中にも厳しさを垣間見せるミルトン・ヘイグ監督。そのすべてのもとはラグビーへの熱さなのではないでしょうか。チームを率いて2シーズン目を迎えるミルトン監督に開幕前のインタビューを行いました。(取材日:2020年11月下旬)

①201001_0781.jpg

◆アグレッシブ・アタッキング・ラグビーに集中

――現在のチーム状況はどうですか?

コロナで悪い影響の方が多かったと思いますが、その中でも良かった点をひとつ挙げるとすれば、日本代表や日本代表候補に入っている選手たちがプレシーズンからチームトレーニングに参加してくれて、チーム全員で準備が出来ているということです。それは今までのシーズンには無かったことだったので、そういった意味ではプレシーズンから良い準備が出来ています。

――開幕までにやっておかなければいけないことで、いちばん大切なことは何ですか?

プレシーズンではしっかりと基礎固めをしていかなければいけなくて、そこから家を建てるように、フレームや壁、屋根などを作っていきます。プレシーズンの最後にはパナソニックとトレーニングマッチを行いますが、そこまでにはしっかりと屋根が出来ている状態にしたいと思っています。その途中で他のトレーニングマッチもあり、そこで自分たちの練習からだけでは見えないチャレンジも分かってくると思いますから、微調整をしながら準備をしていきたいと思っています。

②201219_6691.jpg

――サンゴリアスのいちばんの強みは何でしょう?

アグレッシブ・アタッキング・ラグビーというところで、自分たちのブランドでもあるスタイルを貫いてやっていきたいと思っています。松島がいない中でも、それをしっかりと確立したいですし、選手たちも楽しんでやってくれているので、そこにしっかりと集中していきたいですね。

ラインアウト、モール、スクラムなどセットピースのところで、いま良い準備が出来ているので強みにしていきたいですね。あと、ディフェンスのフィジカルの部分で、ブレイクダウンでのチャレンジやクリーンアウトなど、フィジカルで強さを発揮して、アタックと同じようにディフェンスでも強みを示していきたいと考えています。

昨シーズンで言うと、最後の3試合(4節・5節・6節)ではすごく良いディフェンスが出来ていて、他のチームと話をしても、ブレイクダウンやその周辺でのアグレッシブさが目立ったというフィードバックをもらっているので、そこは引き続き磨いていきたいと思っています。

③200928_10669.jpg

◆自信と独特のオーラ

――良いメンバーが揃っているので楽しみですね

すごくエキサイティングなシーズンになると思いますし、私としても楽しみにしています。尾崎晟也やテビタ・リー、サム・ケレビ、中村亮土など、素晴らしい選手でありながらしっかりとトレーニングをしていて、このまま良い状態をキープしてシーズンに入っていって欲しいと思っています。それにボーデン・バレットももうすぐ合流する予定です。プレシーズンで取り組んできたことを、まずはトレーニングマッチで発揮してくれると思っています。

――試合のメンバーを決める際、どうやって選んでいるんですか?

昨シーズンはプレシーズンでのトレーニングマッチを3試合しか行わずシーズンに入りましたが、今シーズンは5試合やって(編集 註:12月6日のコカ・コーラ戦は中止)シーズンに入っていこうと思っているので、しっかりとした準備が出来ると思っています。今シーズンのトップリーグのフォーマットを見ると、多くの選手が出場機会を得られるフォーマットになっていると考えているので、良いチャレンジが出来るシーズンになっていくと思っています。

セレクションのところで気にしていることは、代表クラスの選手が替わった時に戦力が落ちないように、ちゃんと均衡を保てるようになるよう考えてセレクションしています。

――中村亮土選手をキャプテンに選んだ理由は?

実際にキャプテンになってからも日に日に、その役割を果たしてくれていますが、彼は大学でもキャプテンの経験がありましたし、昨シーズンのリーダーシップグループにも入っていて発言もしっかりしていました。自信と独特のオーラがあって、コミュニケーション能力も高いですし、仲間やスタッフへしっかりと敬意を払えています。そういうキャラクターのところで求めているキャプテン像と一致したので、彼にキャプテンになってもらいました。

④200928_10290.jpg

◆心・技・体が繋がっている

――選手としてシーズンを迎えることと、監督としてシーズンを迎えることは、全く違うものですか?

監督として迎えることの方が、よりハードなことかなと思います(笑)。ずっと取り組んで、より改善できるように学んでいかなければいけないと常々思っています。ニュージーランドのスポーツ心理学者に協力をもらい、コーチングの勉強であったり、怪我をした時の対応など、スタッフ全員が学びながら取り組んでいます。これから改善が見えてくると思うんですが、自分自身もニュージーランドラグビー協会で働いていた時からジョージア代表監督もやることが出来て、そこでの経験が今の仕事にも活きていると思っています。
自分たちが落とし込む内容であったり、ディテールの部分をしっかりと選手たちに落とし込んでいかなければいけないので、最初に申し上げたような基礎の部分をしっかりと積み上げた上で、目的もはっきりとしていなければいけませんし、ロジックもしっかりとしていて、選手たちがしっかりと理解しやすい流れになっていなければいけないので、そこは注意をしてやってきています。

――日本には「心・技・体」という言葉があり、選手にとってはとても大事なことだと思いますが、それについてはどう思いますか?

やはり三位一体になっていないとダメだと思うので、その考えにはとても共感しています。しっかりと良い仕事をしていく意味でも心・技・体が繋がっていると思いますし、特にソウル(心)の部分で言うと、妻と2人の娘のために、しっかりと仕事が出来ていると言ってもおかしくはないので、家族との絆や関係性が重要で、それが自分を動かす原動力になっていると思います。2人の娘もとても良い子で、良い家族に恵まれて、妻とも22年間を一緒に過ごしているので、そこが自分の中でのモチベーションになっています。

⑤200825_4871.jpg

――現役時代はスクラムハーフをやっていて、とても負けず嫌いなんじゃないかと思うのですが

負けず嫌いです(笑)。やはり9番の選手は小さい選手が多く、負けず嫌いが多いですね。自分たちの気持ちが追いついていなかったり、自分たちが上手くいかずに負ける試合は本当に許せない気持ちになります。自分たちがベストのパフォーマンスを出して、自分もしっかりとしたパフォーマンスを出した上で、力の差があり負けてしまうというのは認めるしかないという気持ちになります。

――選手時代と監督時代では、どちらが負けず嫌いが表に出てきますか?

負けたくないという感情は、どちらの立場でも同じですね。コントロールできる部分が十分に出来ずに負けたというところにフラストレーションが溜まるので、特にメンタルのところでコントロール出来ずに負けてしまうと、選手の時も監督の時も不甲斐ない気持ちになります。

⑥201214_2143.jpg

◆ディフェンスを改善

――そのフラストレーションはどうやって解消するんですか?

自分自身に対するフラストレーションの場合は、正直に自分の感情を出して解消するようにします。ただ、そのフラストレーションを吐き出した後はすぐに切り替えるようにしていて、試合で起こってしまったことは変えられませんし、これから何をやるかという部分しか変えられません。「そこにフォーカスしよう」という話を昨シーズンもチーム内でしていました。

あとは選手のフラストレーションやフィールド上でのフラストレーションを如何に解消していくかというところでは、疲れてくると問題解決能力が落ちてしまうと思うので、練習の時から出来るだけ疲れた状態で、メンタル的にもフィジカル的にも追い込まれた状態で、如何に問題を解決するのかというところをやっています。

――今シーズンはどんなシーズンにしたいですか?

目標はトップリーグ優勝です。チームが目指しているアグレッシブ・アタッキング・ラグビーで多くの人を楽しませるスタイルを確立したいです。今年から新しくアタックコーチにジェイソン・オハロランが加わってくれたので更に進化できると思ってます。もうひとつ実現したいこととして、ディフェンスのスタッツを見ると、トップリーグのチームの中で中間くらいの位置にいるんです。優勝するためには、ディフェンスでもスタッツ的にトップ3に入るくらいの位置まで行かなければいけないと思うので、タックルやディフェンスのブレイクダウンのフィジカルを上げて、ディフェンスでもしっかりと支配していけるようにやっていきたいと考えています。そして、今シーズンはアタックだけでなくディフェンスも素晴らしいチーム、フィジカルも強いチームと、他のチームからも認められるようになっていきたいと思っています。


⑦200218_4468.jpg

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ