2020年12月10日
#725 トム サベッジ 『常にオープンマインドで新しいことにチャレンジしていきたい』
サンゴリアスの外国人選手は総じて真面目な選手が多く、その中でも一際真面目に見えるトム・サベッジ選手。実際にその中身はどうなのでしょうか?ラグビーのこと、家族のことについて聞きながら、その人間性に迫ってみました。(取材日:2020年11月中旬)
◆このスポーツは自分にピッタリ
――日本でプレーすること、そしてサンゴリアスを選んだ理由は何ですか?
ワールドカップで日本代表の活躍を見ていて、日本代表に入っている選手たちと一緒にプレーすることが楽しみになりました。またトップリーグで世界のトップ選手たちがプレーしているところに魅力を感じました。新しい環境でラグビーをやることに対しても魅力を感じていたこともあって、日本に来ることを決断したんです。グロスター(イングランド・プレミアシップ)で8シーズンくらいプレーしてきましたし、200試合くらい出場してきましたが、サントリーはクラブとしてしっかりとしていて、結果も出しているクラブなので、自分にフィットするんじゃないかと思い、決めました。
――子どもの頃からずっとラグビーを続けてきたんですか?
15歳の時にラグビーを始めて、最初から自分に合ったスポーツだと感じました。それまでは、兄がマウンテンバイクのプロとして活動をしていたこともあり、私もラグビーを始める前はマウンテンバイクをやっていました。
――マウンテンバイクの選手としては身体が大きいですよね?
兄は私よりも小さいんですが、私は体が大きかったので、ラグビーを始めた時に「このスポーツは自分にピッタリだ」と思いましたね。兄がやっている競技は、プッシュバイクトライアルと言って、10個くらいの障害物などを飛び越えたりする時間を競うものです。
――ラグビーが自分に合っていると思ったのは、具体的にどこですか?
子どもの頃はマウンテンバイクだけをやっていたわけじゃなく、色々なスポーツを経験して、アスリートとしてのベースを作っていきました。ラグビーは非日常的というか、人にぶつかって行くこともラグビーの中では許されるので、そういうフィジカル的な部分は自分に合っていると感じました。あとはチームスポーツという部分で、仲間や友人たちと一緒に楽しめるスポーツというところも魅力のひとつでした。
――ラグビーを始めたのは家族の影響などもあるんですか?
私は3人兄弟の真ん中で、全員が男で、家族揃ってスポーツが好きでしたし、兄弟に負けたくないという競争心はずっと小さい頃から持っていました。それはラグビーにも通じていて、今もその想いは持っています。昨シーズン、父が試合を見に来てくれたんですが、私と同じくらいのサイズなので、みんなが驚いていましたね。なので、家族の影響はとても大きいと思いますし、兄弟も含めてスポーツが好きな環境で育ったので、そこも良かったと思います。
◆常にハードワーク
――グロスターで200試合出場は素晴らしいと思いますが、振り返るとどうでしたか?
チャンスを掴むことが重要だったと思いますが、私は15歳からラグビーを始めて、周りにはもっと小さい頃からラグビーを始めた選手もいたので、早く学んで上達しなければいけないと思っていましたし、常にハードワークして向上心を持って取り組んできました。そこから結果がついてきて、入った大学がグロスターと繋がりがあり、大学を卒業したらすぐにグロスターと契約するチャンスをもらいました。グロスターでも最初から出場することが出来て、200試合まで到達することが出来ました。
――ラグビーを仕事にしていこうと思ったのは、グロスターと契約するタイミングですか?
そうですね。大学4年の時に優勝を経験して、そういう結果もありグロスターから誘ってもらいました。自分自身が更に成長できる環境に行けると思いましたし、ラグビーで生活していけるチャンスがありました。
――イギリスがラグビー発祥と言われていますし、ラグビーをやっている上でそのプライドなどはあるんでしょうか?
確かにラグビーはイギリス発祥ですが、あまり考えすぎることはありませんし、それを意識してプレーするということはありません。集中していることは、自分のパフォーマンスでチームに貢献するということと、自分の役割をしっかりと果たすということです。常にそこに集中してプレーしています。
――グロスターの時にはキャプテンもやっているんですね
まずは自分のハイスタンダードを維持してお手本になることがリーダーとして重要だと思うので、そのことをいつも心掛けています。自分のパフォーマンスを100%出すことに集中した上で、それが上手く周りの選手たちに良い影響を与えて、リーダーとしてチームを引っ張っていくということを、理想としてやってきました。例えキャプテンだとしても自分1人で結果を出すことは出来ませんし、1人だけでチームの目標を達成できるとも思っていないので、周りの人に力を借りながら結果を出すことを学んでいったと思います。若くてキャプテンになったということもあったので、最初から上手くいったわけではありませんが、学びながら成長できたと思います。
◆ワークレートを上げ機能的で効果的なキャリーをする
――サンゴリアスでの役割は何だと思っていますか?
まずは自分の状態がベストであることが重要ですし、自分がチームから求められている役割を考えた上で行動することが重要だと思います。その状況によって変わってくると思いますが、自分がどうチームに貢献しなければいけないのかを考えた上で、自分のベストの状態、ベストのバージョンに常にレベルアップして、改善をやめずにしっかりとやっていくことを意識しています。
――自分らしさをいちばん発揮できるプレーは何だと思いますか?
ワークレートを出来る限り上げるということと、場面ごとに役割は変わってきますが、しっかりと機能的で効果的なキャリーをするというところです。あとはフィジカルの強さがあるので、ラックやタックルでフィジカル的な強さを示して、周りにいい影響を及ぼすことが強みだと思っています。
――見た目や発言から、フィジカルの強さと共にスマートさを感じますが、自分ではどう思いますか?
日々の積み重ね、そしてこれまでの経験も影響していると思います。経験を積むことでスマートにプレー出来るようになると思うので、自分の中で自然とラグビーのことを考えられるようになればなるほど、その状況に応じて判断のスピードも速くなっていきますし、それが今の自分のラグビーに繋がっていると思います。
――だとすると、日本のラグビーに対して違和感なくプレー出来ましたか?
当然、アジャストしなければいけない部分はありましたが、ヨーロッパでプレーしていた時は、雨が多いということもあり、セットピースに重きを置いていました。キックの使い方や、スクラムに時間を掛けたり、ペナルティーからのモールなど、そういうところに時間を使い、いかにポゼッションを高く保つかというところを意識していました。
ただ、日本のラグビーはディフェンスよりもアタックに重きを置いていて、ラックの展開も速いですし、ボールをアグレッシブにバックスに展開するので、よりスピーディーなラグビーだと思います。あと、天気がヨーロッパに比べて良いので、ボールを展開するラグビーは日本の方が多いですね。スタイルが違うので、そこはアジャストしなければいけませんでした。
――日本のラグビーは好きなスタイルですか?
日本で開催されたラグビーワールドカップの成功は素晴らしいと感じていますし、日本の速いラグビーにチャレンジしなければいけない部分はありますが、ボール・イン・プレーが長くて、よりボールを触るチャンスがありますし、キャリーするチャンスがありますし、タックルする機会も多いので、とても楽しめています。
――日本語を書いたり、話したりすることも積極的にやっているんですか?
(日本語で)毎週2回、日本語の勉強をしました。(以下、英語で)日本語は難しいですけれど、出来る限り学ぼうと思っています。
――日本のどこが好きですか?
子どもがまだ小さいということもあり、清潔な環境で生活できるということが、まずは素晴らしいことですし、皆さん礼儀正しくて、良くしてくれる人の良さがあります。あと日本の食事もすごく好きです。(再び日本語で)私の赤ちゃんは、いま10ヶ月。娘です。めっちゃかわいいね(笑)。ちょっと重くて、12キロで、73センチメートルです。
――奥さんも日本を気に入ってくれていますか?
(以下、英語で)環境は大きく変わりましたが、楽しんでくれています。
◆絶対に優勝したい
――今シーズンの目標は?
チームとしてもハードワークをしてきているので、絶対に優勝したいと思っています。個人の目標としても優勝ですし、常に日々成長していくことを意識してやっていきたいと思います。
――今シーズンはバイスキャプテンになりましたね
亮土(中村)がキャプテンで、もうひとりのバイスキャプテンがホリ(堀越康介)になります。お互いにサポートしながらしっかりとチームに貢献して、結果を出せるようにやっていきたいと思っています。リーダーシップグループには素晴らしいメンバーが揃っているので、その中に入れるということはとても名誉なことです。リーダーの中でも役割を分けて、私はディフェンスとセットピースを担当していきます。
――将来のターゲットは何かありますか?
まだまだこの先、何年もプレー出来ると考えていますが、引退後にはコーチやスタッフとして、自分の経験を活かしながらチームを優勝に導けるようになっていければと思っています。
――イングランドや日本の代表になる可能性もありますよね
もしそういう声がかかれば、ぜひチャレンジしたいですね。他の選手もそうだと思いますが、トップの環境でチャレンジしたいという想いを持っています。
――真面目だと感じますが、自分では自分の性格をどう思いますか?
色々な人に聞くと、また違った意見があると思いますけど、若い頃は常にアグレッシブにプレーするという感じでしたが、それだと続かなくなってしまうので、今は平日は出来るだけリラックスして、週末の試合でパフォーマンスを発揮できるようにエナジーを残すとか、オンとオフのバランスを上手く取れるようになっています。あとは、常にオープンマインドでありたいと思っていて、新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。
プロのラグビー選手としてやっていけるということは、誰もが得られる機会ではないですし、自分が思い描いていたいちばんの理想の仕事で、それが出来ているので、楽しむことを意識してやっています。それに、ラグビー選手は限られた時間しかできない仕事なので、楽しむことをしっかりと意識しています。
――小さい頃はどんな子どもでしたか?
そんな悪いことはしていませんが(笑)、いたずらっ子だったかなと思います。悪さもしていないので、基本的には良い子だったかなと思います(笑)。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]